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2015/07/12

生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(5) 二 胎生(Ⅱ) カモノハシとハリモグラの赤ちゃん

Kamonohasi

[かものはし]

Harimoguranoko

[「針もぐら」の子]

 

 また獸類は模範的の胎生であるというたが、これも悉く然りとはいはれぬ。即ち獸類の中にも、その胎生の有樣には種々程度の違うたものがあつて、極めて稀な場合には卵の形で生まれるものさへある。卵生する獸類といふのは、今日僅にオーストラリヤ地方に限り棲息する二三の珍しい種類で、鳥類の如くに生殖器の開き口と肛門とが一つになつて居るから、總括して單孔類と名づける。「あひる」の如き嘴を有する「かものはし」、「針鼠」に似てしかも吻の長い「針もぐら」などがその例であるが、これらは直徑二糎位の丸い卵を一度に一個ずつ産む。しかし生まれたばかりの卵の殼を切り開いて見ると、中には既に相應に發育した幼兒の形が出來て居るから、鳥類などの簡單な卵生とは趣が違ふ。假にこれらの類で、卵が生まれる途端に殼が割れたと想像すれば、卵生と名づけてよいか胎生と名づけてよいか判斷が難しからう。「針もぐら」は産んだ子を更に腹の外面にある凹みの中に入れて温めるが、「かものはし」は常に水中を泳ぐもの故、卵を身に附けて歩くことは出來ぬ。卵が産まれるまで留まつて居る處は、鳥類に於けると同じく輸卵管の末端であるが、近來の研究によると、その部の粘膜から一種の乳の如き滋養液を分泌し、子はそれを吸うて發育するとのこと故、この點も幾分か普通の獸類に似て居る。

[やぶちゃん注:「生殖器の開き口と肛門とが一つになつて居る」既に述べたが、こうした生物の器官を総排泄腔と称する。

「單孔類」哺乳綱原獣亜綱単孔目 Monotremata のこと。本邦では代表種の名を採ってカモノハシ目とも呼ぶ。以下、ウィキの「カモノハシ目」より引く。『カモノハシ科と2つの化石科を含むカモノハシ亜目(Platypoda)と、ハリモグラ科を含むハリモグラ亜目 Tachyglossa)に分かれる』が、現存するのは科(family)はカモノハシ科 Ornithorhynchidae とハリモグラ科 Tachyglossidae のみで、『化石を含めても4科しかいない。現生群はわずか2科3属5種しかいないが、オーストラリア区に広く分布する』。『単孔目(カモノハシ目)は、現存する哺乳類としては唯一、爬虫類や鳥類のように卵を産むグループとして知られている(卵生である)。(大部分の鳥類と同じように)母親が卵を温めて子を孵化させ、孵化した子は(他のすべての哺乳類と同じように)母乳によって育てられる。母親は他の哺乳類のような乳首をもたず、子は母親の乳腺から染み出した乳をなめている』。『爬虫類や鳥類と同様の総排出腔をもつ(これが単孔目 Monotremata という名の由来である)。尿や糞の排出も生殖も、全てここで共通に行われる』。『内温動物であるが、気温により保ちうる体温が変動するなど、有胎盤類や多くの鳥類に比べ、体温調節能力が低い』。『以上のような特徴から、単孔目(カモノハシ目)は、進化史の中で、非常に早い時期(おそらく三畳紀)に他の全ての哺乳類のグループと分岐したと考えられ、現生哺乳類で最も原始的なグループとされる。そのため、このグループは、「原獣亜綱」として、亜綱のレベルで他の哺乳類(獣亜綱)と区別されている』。

「あひる」鳥綱カモ目カモ科マガモ属マガモ Anas platyrhynchos を家禽化して人為的に生み出した品種アヒル Anas platyrhynchos var. domesticus

「かものはし」私自身がカモノハシの生態をよく知らないので、以下、自身が学びながら注したため、引用が長くなった。お許しあれ。単孔目カモノハシ科カモノハシ Ornithorhynchus anatinus  (Shaw, 1799)。一属一種。以下、ウィキの「カモノハシ」に拠る。『オーストラリア(クイーンズランド州東部、ニューサウスウェールズ州東部、ビクトリア州、タスマニア州)。分布域内では、熱帯雨林、亜熱帯雨林、ユーカリなどの硬葉樹林、高山地帯などの淡水の河川や湖沼などに』棲息する。『カモノハシがヨーロッパ人により最初に発見されたのは』一七九八年のことで、毛皮やスケッチが首長国であったイギリスへ送られたが、『科学者達は、当初はこの標本は模造品であると考え』、『「それが本物であることを疑わずにはいられない」と主張』したり、『アジア人の剥製師に』よって、『ビーバーのような動物の体にカモのくちばしを縫い付けた物であると考え』た者もいた。『Ornithorhynchus anatinus という学名はギリシア語で「鳥の口吻」を意味する』“ornithorhynkhos”と、『ラテン語で「カモのような」を意味する“anatinus”からなる』。全長はが最大六十三センチメートル、が最大五十五センチメートル、尾長は孰れも八・五~十五センチメートル、体重はが一~三キログラム、が七百グラムから一・八キログラムに達すし、全身に一平方センチメートル当り六百本以上の『柔らかい体毛が生えている。体毛の色は背面は褐色から茶褐色で、腹面は乳白色である。外側の毛は水を弾き、内側の毛は保温性に優れている』。『名前の通りカモのように幅が広く、ゴムのような弾性のあるくちばしを持ち、外見上の大きな特徴の一つとなっている。このくちばしには鋭敏な神経が通っていて、獲物の生体電流を感知することができる』。『四肢は短く、水掻きが発達している。オスの後脚には』石灰質で出来た蹴爪があり、ここから毒(後述)『が分泌されている。メスも若い時には後脚に蹴爪があるが、成長の過程で消失する』。『哺乳類ではあるが乳首は持たず、メスが育児で授乳の際は、腹部にある乳腺から乳が分泌される』。『カモノハシはオスもメスも蹴爪を持って生まれるが、オスのみが毒の混合物を分泌する蹴爪を持って』おり、『この毒は主にディフェンシンのようなタンパク質類(DPL)で構成されており、その中の三種はカモノハシ特有のものである』。『このディフェンシンのようなタンパク質はカモノハシの免疫機構により生産されている。イヌのような小動物を殺すのには十分な強さの毒で、ヒトに対しては致死的ではないものの、被害者が無力になるほどの強い痛みがある』。『毒による浮腫(むくみ)は傷の周囲から急速に広がり、四肢まで徐々に広がっていく。事例研究から得られた情報によると、痛みは持続的な痛みに対して高い感受性を持つ感覚過敏症となり、数日から時には数ヶ月も続くことが指摘されている』(因みにカモノハシの本毒によるヒトの死亡例報告はない)。『毒はオスの足にある胞状腺で生産されており、この腎臓の形をした胞状腺は後肢の踵骨の蹴爪へ、管によってつながっている。メスのカモノハシ』には未発達の蹴爪の芽があるが、これは発達することなく、誕生後一年経つ前に脱落し、毒腺も機能を持たない。『毒は哺乳類以外の種によって生産される毒とは異なった機能を持つと考えられている。毒の効果は生命に危険を及ぼすほどではないが、それでも外敵を弱めるには十分な強さである。オスのみが毒を生産し、繁殖期の間に生産量が増すため、この期間に優位性を主張するための攻撃的な武器として使われると考えられている』。以下、「生態」の項。『群れは形成せず単独で生活し、夕方や早朝に活動が最も活発になる薄明薄暮性である』。『水中では目を閉じて泳ぐが、くちばしで生体電流を感知し獲物を探す。動かなければ最大』十一分程度、『水中に潜っていることができるが、通常』の潜水時間は一~二分ほどである。『食性は肉食性で昆虫類、甲殻類、貝類、ミミズ、魚類、両生類等を食べる』。『陸上を移動する場合、前足が地面に着く時に水掻きのある指を後ろに折りたたむようにして歩く』。『水辺に穴を掘り巣にする。巣穴の入り口は水中や土手にあり、さらに水辺の植物等に隠れ、外からはわからないようになっている』。緯度によりズレがあるが、繁殖期は八月から十月で、『繁殖形態は哺乳類では非常に珍しい卵生で、巣穴の中で』一回に一~三個の卵を産む。卵の大きさは約一・七センチメートルで、『卵殻は弾性がありかつ粘り気のある物質で覆われている。卵はメスが抱卵し』、凡そ十日から十二日で孵化する。『子供はくちばしの先端に卵嘴を持ち、卵嘴を使用して卵殻を割って』自律的に出てくる。成体の四分の三程度の大きさになるまでに離乳し、約四ヶ月で独立、は約二年で成熟し、寿命は最大で二十一年』という。『日本国内の動物園で飼育された事例はない』が、私はタスマニアで飼育されているそれを実見したことがある。実に可愛い(個人的には獣亜綱有袋上目オーストラリア有袋大目フクロネコ目フクロネコ科フクロネコ亜科タスマニアデビル Sarcophilus harrisii の昼寝姿が最も可愛いと感じたが)。

「針鼠」哺乳綱ハリネズミ目ハリネズミ科ハリネズミ亜科 Erinaceinae。五属十六種が知られ、ヨーロッパ・アフリカ・中近東・日本を除く東アジア・ロシア・インドに棲息する。因みに彼らの背や側部を覆う自己防衛用の針のような棘は体毛の一本一本が纏まって硬化したものである。彼らはその形状から、ここで語られる単孔目のハリモグラや齧歯(ネズミ)目ヤマアラシ上科ヤマアラシ科アメリカヤマアラシ科 Erethizontidae のヤマアラシ類(因みにヤマアラシの棘は毛の進化した針毛)と混同されやすいが、孰れも系統分類学的にはハリネズミとは全く無関係である(ウィキの「ハリネズミ」に拠った)。

「針もぐら」同じく、私自身がハリモグラの生態をよく知らないので、以下、自身が学びながら注したため、引用が長くなった。お許しあれ。まず、ウィキの「ハリモグラ科」から引く。ハリモグラ科 Tachyglossidae は『脊椎動物亜門哺乳綱カモノハシ目(単孔目)ハリモグラ亜目の唯一の科で』、分類説によっては『ハリモグラ目 Tachyglossa 唯一の科と』もする。『単孔目の中で、カモノハシ亜目(カモノハシのみが現生)と姉妹群をなすグループで』、『ハリモグラ科には、ハリモグラ属のハリモグラと、ミユビハリモグラ属に属する』三種の計四種が現生する。『英語圏では Echidna(エキドナ、ギリシア神話に登場する上半身が美女で下半身はヘビという魔神)、または、Spiny Anteater(トゲのあるアリクイ)と呼ばれる』。このハリモグラ類は『オーストラリア(タスマニアを含む)およびニューギニアに、ミユビハリモグラ属はニューギニアに分布』している。以下、狭義の種としてのカモノハシ目ハリモグラ科ハリモグラ属ハリモグラ Tachyglossus aculeatu (Shaw, 1792) に就いて、ウィキの「ハリモグラ」から引く。ハリモグラ Tachyglossus aculeatu は、『現存している原獣亜綱カモノハシ目ハリモグラ科の4種のうちの1種であり、ハリモグラ属 Tachyglossus の唯一の種である。ハリモグラは背面がトゲで覆われている。また特有の吻と特化した舌を持ち、それを使い獲物であるアリやシロアリを素早く捕らえる。現存している他の単孔類であるカモノハシやミユビハリモグラ属のように、ハリモグラも卵を産み、メスは子育ての期間にのみ育児嚢を発達させ、母乳で子供を育てる』。本種は『オーストラリア(タスマニア島を含む)の砂漠を除くほぼ全域と、ニューギニア島南西部の高地および海岸地帯』に棲息し、『分布域内では、餌となるアリやシロアリが豊富であれば、生息できる』。全長は三十~四十五センチメートル(口吻は約七・五ミリメートル)、体重約二~七キログラム(『タスマニア亜種 T. a. setosus は大陸亜種よりも大きく、また体毛はトゲよりも長くなる』)。『首は外部に見えないため首と胴が一緒になっているように見える。耳の穴は頭部の両側についているが、耳介は持たない。目は小さく、くさび形の口吻の基部にある。鼻孔と口は口吻の先端にある』が、彼らは五ミリメートル以上、口を開けることが出来ない。『ハリモグラの体は、腹部、顔、脚を除きクリーム色のトゲで覆われている』。最大五センチメートルにもなるこの棘は、『体毛が変化したもので』、『トゲの筋肉はそれぞれ独立していて、トゲを別々に動かすことができる』。『ハリモグラの四肢は土を素早く掘るのに適応している。四肢は短いが、強力な爪がついて』おり、四肢ともに五本の指を有し、後足の第二指及び第三指の爪は『長く伸び、トゲの間を清潔に毛繕いすることができるよう、後ろ向きに曲がっており、“groomig claw”(毛繕いをする爪)と呼ばれ』ている。『また、オスは後肢にカモノハシのオスと同じように蹴爪があるが、この蹴爪はカモノハシとは違い、毒を出さない』。カモノハシのように、ハリモグラの体温は低く、摂氏三十度から三十二度の間であるが、『不活発になったり冬眠を行うという証明のないカモノハシとは違い、ハリモグラの体温は』摂氏五度近くまで就下する。『ハリモグラは息を荒くしたり、汗腺がないため汗をかくことはなく』、『暑い時にはシェルターを探す。秋から冬にかけて、ハリモグラは不活性状態もしくは冬眠する』。『他の単孔類のように総排出腔を持ち、尿や糞、卵が通過する』『オスは体内に精巣を持ち、体外には陰嚢はなく、先端が4つに分かれた特殊な陰茎を持つ。妊娠したメスは腹部に、幼獣を育てるための育児嚢を発達させる』。『ハリモグラの筋肉構造は独特のものである。皮筋は大量の筋からなり、皮膚の直下にあり、体全体を覆っている。皮筋の様々な部分の収縮により、ハリモグラは形態を変えることができ、最も特徴的な形状は危険が迫った時にボールのように丸まることであり、腹部を守り、鋭いトゲで防御する。他の動物よりも全長に対し短い脊髄を持ち、胸腔をできる限り広げられる』。『顔、あご、舌の筋肉構造はハリモグラが採食するのに特化している。ハリモグラの舌は獲物を捕らえる唯一の手段であり』、開口不全の口吻から凡そ十八センチメートルも出すことが出来る。。『舌は糖タンパク質が豊富な粘液を出すため粘ついている。この粘液は口吻から舌を出し入れする潤滑油の役割と、アリやシロアリを粘着させて捕らえるのに役立つ。舌を出す行動は、舌の形を変え、舌を前方へ出すのを強制する環状筋を収縮させ、舌の基部とあごの二つのオトガイ舌筋を収縮させることにより可能となる。出した舌は血流により堅くなり、木や土壌を貫通することができるようになる。舌を引っ込める時は、2つの内部縦走筋の収縮により行われる。ハリモグラは歯を持たず、舌が引っ込められる時に捕らえられた獲物は口蓋の奥にあるケラチン質の歯のようなもので擦り潰される』。舌の動きは恐ろしく速く、一分間に百回も出し入れすることが可能で、『腸はアリなどの外骨格や餌と同時に飲み込んだ土を粉砕するために長くなっており、成獣で』総延長が約三・四メートルにも及ぶ、とある。『多くの生理学適応性がハリモグラの生活スタイルを手助けしている。穴に潜るので、身の回りの空気中の二酸化炭素が高レベルであっても耐えられ、二酸化炭素濃度が高い環境であっても生存ができる。耳は低周波を感じることができ、アリやシロアリが地中から出す音を感じることができる。鼻は周囲環境の情報を収集するための機械受容器と温度受容器で覆われている』。『ハリモグラの嗅覚は良く発達しており、仲間や捕食者を捜すのに使われている。良く発達した視神経をもち、視覚的分別能力と空間記憶能力はネズミのそれと同程度である』。『ハリモグラの脳と中枢神経系は、有胎盤類の進化的比較のために手広く研究された。ハリモグラは体の大きさと比較し、他の動物よりも大きな前頭前皮質を持ち、レム睡眠を行うことが知られ、脳は有胎盤類の前障と同等のを持っており、このことはこれらが共通の祖先から分化したことを示している』。『ハリモグラは単独性で、子供を育てるために穴を掘るのを別とすると、特定のシェルターやねぐらは持たない。特定のなわばりを持たず、行動圏は幅広い』。『獲物を掘り当てるためやシェルターにする穴を掘るために前足の爪を使い、強力に穴を掘ることができる。もし危険が迫り、逃げ場所が見つからなかった時には素早く地面を掘る』。以下、「繁殖」の項。単独性のハリモグラは五月から九月の間に繁殖相手を探す(明確な繁殖期は地方により異なる)。『繁殖期の間、雌雄ともに強い匂いを発する。1989年に最初に観察されたのであるが、求愛行動の間、オスはメスを探し出し、追いかける。最大4週間続く求愛行動では、最大10頭のオスの列が1頭のメスを追いかける。この求愛行動の期間は場所により様々である』。『分布域の冷温な場所、例えばタスマニアなどでは、メスは冬眠から目覚めた数時間以内に交尾を行うことがある』。『交尾の前に、オスはメスの、特に総排出口の匂いに注意して匂いをかぐ。オスはしばしばメスの周りを回りながら観察し、そして2頭が腹部と腹部を合わせられるように、同じような体勢をとる』。『左右対称の、ロゼットのような、先端が4つに分かれた陰茎(爬虫類に似ている)を、射精の間は半分が閉じ、交互に使用する。各々約100の精子の塊がさらに高い精子の運動性を与えるようで、オス間の精子の競争の可能性がある』。『それぞれの交尾により一つの卵が生産され、メスは繁殖期の間、ただ1度だけ交尾することが知られている。つまり、各々の交尾は成功する』。受精は卵管で行われ、妊娠期間は二十一~二十八日で、『その間メスは育児するための巣穴を掘る。この巣穴の中の気温は』摂氏十五度前後に保たれ、『他の哺乳類の育児のための巣穴よりも』著しく低い。『妊娠期間の後、腹部に発達させた育児嚢に』、直径十四~十六ミリメートルの弾性を持った卵を一つ産み、産卵後十日でその育児嚢の中で孵化をする。『胎芽は抱卵期間中に卵歯を発達させ、それを使用し卵殻を割る。卵歯は孵化後すぐに消える』。新生児は約一・五センチメートル、体重三百から四百グラムしかない。『新生児は母親の乳輪を自身で探し出す。単孔類は乳首を持たず、この乳輪は母乳が染み出してくる特化した部分である』。『新生児が母乳を飲む方法はまだ知られていないが、各々の授乳期間に多量の母乳を摂取することが観察されて』いる。『母乳の主成分は脂肪、プロテイン(フコシルラクトースとシアリルラクトース)、鉄分が多く含まれ』、ピンク色を呈する。幼獣は棘が成長するため、二~三ヶ月で育児嚢から出て来る。幼獣の乳離れは約六ヶ月で、授乳期間は約二百日、幼獣は凡そ百八十日から二百四十日後には巣穴を出る(下線やぶちゃん)。『性成熟の年齢は不確実であるが』四~五年とされ、繁殖頻度は二年に一回から六年に一回であることが判明しており、寿命も野外では最大四十五年と長いことが分かっている。また、『単孔類の仲間のカモノハシのように、ハリモグラの性染色体のシステムは非常に珍しく、オスはメスよりも性染色体数が少ない。メスはXXXXXXXXXX(5対)であるが、オスの最後のX染色体は対とはならず、XYXYXYXYX(4対と1つ)である。染色体間に不充分な同一性しかないために、減数分裂時の対合』(ついごう:synapsis。二本の染色分体からなる相同染色体くっつき合って四本の染色分体が一つになることを言う。)『ではXXXXXとYYYYの2種類のみの精子の遺伝子型しか可能とならず、そのためにこの性染色体の複雑なシステムが保存されている』とある。]

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