フォト

カテゴリー

サイト増設コンテンツ及びブログ掲載の特異点テクスト等一覧(2008年1月以降)

The Picture of Dorian Gray

  • Sans Souci
    畢竟惨めなる自身の肖像

Alice's Adventures in Wonderland

  • ふぅむ♡
    僕の三女アリスのアルバム

忘れ得ぬ人々:写真版

  • 縄文の母子像 後影
    ブログ・カテゴリの「忘れ得ぬ人々」の写真版

Exlibris Puer Eternus

  • 吾輩ハ僕ノ頗ル氣ニ入ツタ教ヘ子ノ猫デアル
    僕が立ち止まって振り向いた君のArt

SCULPTING IN TIME

  • 熊野波速玉大社牛王符
    写真帖とコレクションから

Pierre Bonnard Histoires Naturelles

  • 樹々の一家   Une famille d'arbres
    Jules Renard “Histoires Naturelles”の全挿絵 岸田国士訳本文は以下 http://yab.o.oo7.jp/haku.html

僕の視線の中のCaspar David Friedrich

  • 海辺の月の出(部分)
    1996年ドイツにて撮影

シリエトク日記写真版

  • 地の涯の岬
    2010年8月1日~5日の知床旅情(2010年8月8日~16日のブログ「シリエトク日記」他全18篇を参照されたい)

氷國絶佳瀧篇

  • Gullfoss
    2008年8月9日~18日のアイスランド瀧紀行(2008年8月19日~21日のブログ「氷國絶佳」全11篇を参照されたい)

Air de Tasmania

  • タスマニアの幸せなコバヤシチヨジ
    2007年12月23~30日 タスマニアにて (2008年1月1日及び2日のブログ「タスマニア紀行」全8篇を参照されたい)

僕の見た三丁目の夕日

  • blog-2007-7-29
    遠き日の僕の絵日記から
無料ブログはココログ

« 生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(2) 一 卵生(Ⅰ) | トップページ | 生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(4) 一 胎生(Ⅰ) »

2015/07/11

生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(3) 一 卵生(Ⅱ)

Tugumi_sigi

[鳥の體と卵]

[左)よく飛ぶ鳥、つぐみ (右)よく飛ばぬ鳥、しぎ]

 

 なほ鳥類の中にも、親の身體の割合に卵のやや小さな種類と大きな種類とがあるが、これも飛翔の力と關係して居る。生育上最もよく飛ぶ必要のある鳥は、なるべく身を輕くするために、卵巣内の卵も幾分か小さく、隨つて産まれた卵も稍々小さいが、「きじ」や雞などの如く常に地上に住んで居て、飛ぶことが少々拙でも生存の出來るやうな鳥では、卵は十分の滋養を含んで幾分か大きくなる。そこで、大きな卵から孵つて出る雛は發育もそれだけ進んで居るから、始から獨りで走り廻つて餌を求めるが、小さな卵から出た雛は勢ひ發育が不十分なるを免れぬから、孵つても始の間は自分で何をすることも出來ぬ。小さな卵を産む鳥は常に身が輕くて、よく飛べるといふ利益がある代りに、雛が孵つてから骨折つてこれを世話せねばならぬ面倒があり、大きな卵を産む鳥は身體が幾分か重くなつて飛ぶ時には多少不便であるが、雛の孵つてからの世話は餘程樂である。自然界はすべてかうしたもので、いづれの方面にも利益ばかりを得ることは到底許されぬ。「さうは問屋で卸さぬ、」といふ世俗の言葉は、こゝにもよく當て嵌るやうに見える。

Kiui

[ニユージーランド産の鴫駝鳥とその卵]

[やぶちゃん注:本図は底本の画像が薄く粗く、肝心の『卵』がほとんど見えないので、国立国会図書館蔵の原本(同図書館「近代デジタルライブラリー」内)の画像からトリミングし、補正をしたものを用いた。]

 

[やぶちゃん注:挿絵(これは底本の画像)の「つぐみ」はスズメ目ツグミ科ツグミ Turdus eunomus で体長は全長約二十四、翼開長約三十九センチメートル。「しぎ」はチドリ目チドリ亜目シギ科 Scolopacidae のシギ類である。本邦で最も多く見られる種である「浜千鳥」ことオバシギ属ハマシギ Calidris alpine などは実はツグミより小さい(全長は約二十一、翼開長約三十七センチメートル)であるが、中型種はツグミより遙かに大きく、本邦に於けるシギの最大種であるシギ科 Numenius 属ホウロクシギ Numenius madagascariensis 及びダイシャクシギ属 Numeniusダイシャクシギ Numenius arquata では体長約六十センチメートルにも達する。

「さうは問屋で卸さぬ、」読点はママ。老婆心乍ら、この「然(さ)うは問屋が卸さない」

とは、買い手が法外に安い値段を言い掛けた場合、そんな安値では問屋が卸売りなどしない、商売が成り立たない、とんでもないの意味で、そんなに具合よく行くものではないとか、身勝手な要求をしても簡単に応じては貰えないとか、更には、広くなかなか思い通りには行かないことの譬えとして用いられるようになった語である。

「鴫駝鳥」漢字でこう書くのは現在の、

古顎上目シギダチョウ目の唯一の科であるシギダチョウ(鴫駝鳥)科 Tinamidae に属する古くは深胸類 Carinatae とも言った北アメリカ大陸南部・南アメリカ大陸の森林や草原に棲息する、短距離しか飛翔出来ないシギダチョウ類

を指すのであるが、ウィキシギダチョウ科の模式属オオシギダチョウ Tinamus major を見ても、この絵とは似ても似つかないし、分布域も異なる。しかして、もう、お分かりと思われるが、この絵の鳥は一目瞭然、ニュージーランドに棲息する飛べない鳥(ここでは飛べない鳥であることから丘先生は登場させたと考えてよい)

古顎上目キーウィ目キーウィ科キーウィ属 Apteryx

の鳥の「キーウィ」に他ならない。この丘先生の混乱はどこに起因するのか考えてみようとしたところが、ウィキシギダチョウ科の「系統と上位分類」の項を見て腑に落ちた。シギダチョウ類については『伝統的に、単独でシギダチョウ目を構成してきた。古口蓋型の口蓋を持つため、ダチョウ目などと共に古顎類に分類される』。『かつて古顎類は、竜骨突起を持つ深胸類 Carinatae(シギダチョウ目のみ)と、竜骨突起を失った平胸類 Ratitae(他の全ての目)に分かれ、互いに姉妹群だと考えられていた。Mayr (1979) はその考えに従い、平胸類の目を統合し広義のダチョウ目とし、Sibley分類もそれを踏襲した』。『しかしDNAシーケンス解析により、平胸類は側系統であることが判明した。ダチョウ目以外の古顎類が単系統をなす可能性が高いが、シギダチョウ目の姉妹群がレア目なのかヒクイドリ目+キーウィ目なのかは不確実である』。なお、『「シギダチョウ」という名に反し、ダチョウとは(もちろんシギとも)特に近縁ではない』とある。即ち、本書刊行当時は、少なくとも鳥類の専門家以外の生物学者の間では、古顎類のダチョウ目を除くレア・シギダチョウ・ヒクイドリ・キーウィ目の鳥が近縁として十把一絡げにされていた、その模式鳥類が「鴫駝鳥」であったからであろうと思われる。キーウィは一科一属とされるが、ウィキキーウィには『ダチョウ目やモア目に含める説もある』とある(しかし、ウィキシギダチョウ科の「系統と上位分類」の分子系統図からはダチョウ目はあり得ない。同ウィキでも後の方でもそれを述べている)。キーウィは『ニワトリくらいの大きさ翼は、すっかり退化してしまっていて、まったく飛べない。翼は近くから見ても外見上まったく無いように見えるほどに退化している。骨の構造上は、翼(前肢)は一応は存在しているが、成熟した個体をとらえて羽毛を強引にめくるようにして調べてみても、その長さはせいぜい』五センチメートルほどしかないまでに『退化している。翼が退化したかわりに、同程度の体格を持つ他の鳥類に比べてたくましい脚を持ち、速く走る』。『ニュージーランド固有の鳥で、ニュージーランドの国鳥とされていて、しばしばニュージランドやニュージランド人のシンボル、象徴とされる』。かつては一千万羽ほどいたらしいが、今では三万羽ほどまで減少してしまっていて『危機的な状況だという。ひとつは、人間が食用に捕えていたからだという。また、人間がニュージーランドに持ち込んだネコなどの哺乳類にキーウィは適応しておらず、それらの哺乳類がキーウィの雛をとらえて食べてしまうからだという』。『「キーウィー」と口笛のような声で鳴くため、ニュージーランドの先住民であるマオリ族からキーウィーと名付けられた』。『天敵のいない環境に適応していることから、ネコやネズミなどの移入動物(人間が作為的に持ち込んだ動物)の影響で雛が食べられてしまい、個体数は減少傾向にあり、絶滅の危機にある。人間を警戒しない。好奇心で人間の後をついていくこともある』。『夜行性で、視力が弱く、昼間は樹の洞などに隠れている。夕方以降、餌を求めて歩き回る。くちばしの尖端に鼻孔があり、またセンサーのようになっているヒゲを用いて、鋭敏な嗅覚によって餌を探す。地面にくちばしを差し込んで、地中にいるミミズや昆虫の幼虫、果実などを探し、食べている』。『メスは体重の1/4ほどの卵を産む抱卵はオスがするが、卵が大きいため卵全体を暖めることができず、卵の上下で温度差が』摂氏十度近くにもなる、とある(下線やぶちゃん)。既に述べた通り、ニュージーランド固有種であるが、以下の五種(内、一種は二亜種に分かれるので総計六種)が棲息する(但し『より少ない種しか認めない説もある』)。

 Apteryx australis

 Apteryx haastii

 Apteryx mantelli

 Apteryx owenii

 Apteryx rowi

(なお、『果物「キウイフルーツ」は、ニュージーランドからアメリカ合衆国へ輸出されるようになった際、ニュージーランドのシンボルであるキーウィに因んで1959年に命名された』とあり、これも目からキゥイ。]

« 生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(2) 一 卵生(Ⅰ) | トップページ | 生物學講話 丘淺次郎 第十三章 産卵と姙娠(4) 一 胎生(Ⅰ) »