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2015/09/30

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十三章 習慣と迷信(5)/第二十三章~了

 先日外山教授が私に、彼と矢田部教授ともう一人別の友人とが、しばらくの間、シェークスピアその他の著者の作品を訳しつつあったと語った。これ等の和訳は出版され、日本人に熱心に読まれる。これ迄すでに彼等は、以下のものを訳した――ハムレットの独白、カーディナル・ウオルゼーの独白、ヘンリー四世の独白、グレーの「哀詩」、ロングフェロ-の「人世の頌歌」、テニソンの「軽騎兵隊の突撃」、そして今や彼等は、他の作品を訳しつつある。日本人は過去に於て、英、仏、独の書物を沢山訳した。事実十六世紀の終りに、オランダ人が最初に長崎へ行った時、日本の学者達は歴史、医学、解剖その他に関する蘭書を翻訳するために、この上もなく苦心して、オランダ語を学んだものである。すでに翻訳された書物のある物の性質は、興味が深い。外山教授は英語から訳された本の名を、記憶にあるものから話してくれた。即ちダーウィンの「人間の降下」と「種の起原」、ハックスレーの「自然に於る人間の位置」、スペンサーの「教育論」(これは何千となく売れた)、モンテスキューの「法の精神」、ルソーの「民約論」、ミルの「自由に就て」、「宗教に関する三論文」及び「功利説」、ベンサムの「法律制定」、リーバァの「民事自由と自治政府」、スペンサーの「社会静学」、「社会学原論」、「代表的政府」及び「法律制定」、ペインの「理論時代」バークの「新旧民権党員」。この最後の本はすでに一万部以上売れた。

[やぶちゃん注:まず、原文を総て提示しておく。

   *

Professor Toyama informed me the other day that he and Professor Yatabe and another friend had been for some time engaged in translating the works of Shakespeare and other authors. These are published and eagerly read by the Japanese. Thus far they have already translated the following: Hamlet's soliloquy; Cardinal Wolsey's soliloquy; Henry the Fourth's soliloquy; Gray's "Elegy"; Longfellow's "Psalm of Life"; Tennyson's "Charge of the Light Brigade"; and they are at work on others. The Japanese have in the past translated many books from the English, French, and German ; indeed, when the Dutch first went to Nagasaki, in the last years of the sixteenth century, the Japanese scholars, with the most painful efforts, learned Dutch in order to translate Dutch books on history, medicine, anatomy, and other subjects. The character of some of the books already translated is interesting. Professor Toyama gave me a list from memory of some of these translations from the English: Darwin's "Descent of Man," and "Origin of Species"; Huxley's "Man's Place in Nature"; Spencer's "Education" (of which thousands were sold); Montesquieu's "Spirit of Law"; Rousseau's "Social Contract"; Mill's "On Liberty," "Three Essays on Religion," and "Utilitarianism"; Bentham's "Legislation"; Lieber's "Civil Liberty and Self-Government"; Spencer's "Social Statics," "Principles of Sociology," "Representative Government," and "Legislation"; Paine's "Age of Reason," and Burke's "Old Whig and the New"; of this last book over ten thousand copies have already been sold.

   *

モース一行が関西旅行から横浜に帰着したのは明治一五(一八八二)年九月十一日であったが、東京大学の教職にあった外山正一(文学者・社会学者)と矢田部良吉(植物学者・詩人)及び井上哲次郎(哲学者)の共編著になる、日本近代史の濫觴と文学史では喧伝される(ものの名ばかりの極めて非文学的で退屈な)「新体詩抄 初編」は、まさにこの前月、同年八月刊である(国立国会図書館デジタルライブラリ同書画像の奥付をみると版権取得免許は七月二十一日。「初編」とあるものの続編は刊行されていない)。内容は訳詩十四編・創作詩五編から成る。以下に同書の「目次」を示す(頁番号は省略)。

   *

 目次

ブルウムフールド氏兵土帰郷の詩(丶山仙士)

カムプベル氏英国海軍の詩(尚今居士)

テニソン氏輕騎隊進擊ノ詩(丶山仙士)

グレー氏墳上感懷の詩(尚今居士)

ロングフルロー氏人生の詩(丶山仙士)

玉の緒の歌(巽軒居士)

テニソン氏船將の詩(尚今居士)

拔刀隊の詩(丶山居士)

勸學の歌(尚今居士)

チヤールス、キングスレー氏悲歌(丶山仙士)

鎌倉の大佛に詣でゝ感あり(尚今居士)

高僧ウルゼーの詩(丶山仙士)

シヤール、ドレアン氏春の詩(尚今居士)

社會學の原理に題す(丶山仙士)

ロングフロー氏兒童の詩(尚今居士)

ーキスピール氏ヘンリー第四世中の一段(丶山仙士)

ークスピール氏ハムレト中の一段(尚今居士)

ーキスピール氏ハムレト中の一段(丶山仙士)

春夏秋冬の詩(尚今居士)

   *

この内、「丶山(ちゅざん)」は外山正一の、「尚今」は矢田部良吉の、「巽軒」は井上哲次郎のそれぞれの号である。

 以上のモースの記載と一致しており、これは「新体詩抄 初編」の出版を指していると読むべきである。されば幾らも研究書はある。個々のデータ注は省略する(実際にはあまり興味がない。悪しからず)。御関心のある向きは、読み易く電子化したものが「J-TEXT 日本電子図書館」のにある(但し、新字表記)。

『ダーウィンの「人間の降下」』これはダーウィンの“The Descent of Man and Selection in Relation to Sex”のことであろう。現行では「人間の進化と性淘汰」などと邦訳される。

「リーバァ」アメリカ合衆国創生期のフランシス・リーバー(Francis Lieber 一八〇〇年~一八七二年)の一八五三初版の“On Civil Liberty and Self-Government”(「市民的自由と自治論」)のことではないかと思われる。以下、私にとって全く以って不明なる人物と書名についてしか注していないので悪しからず。

『ペインの「理論時代」』イギリス出身のアメリカの社会哲学者・政治哲学者で革命思想家であったトマス・ペイン(Thomas Paine 一七三七年~一八〇九年)が一七九三年~一七九四年にかけて完成させた“The Age of Reason”(現行では「理性の時代」と邦題される)のことである。

『バークの「新旧民権党員」』「保守主義の父」として知られる、アイルランド生まれのイギリスの哲学者で政治家のであったエドマンド・バーク(Edmund Burke 一七二九年~一七九七年)の一七九一年刊の“Appeal from the New to the Old Whigs”(「新ホイッグ党員から旧ホイッグ党員への訴え」)であろう。ウィキエドマンド・バークを見ると、日本に初めてバークを紹介したのは明治の官僚・政治家であった金子堅太郎で、この前年明治一四(一八八一)年に『金子はバークの『フランス革命の省察』と『新ウィッグから旧ウィッグへ』を抄訳『政治論略』として元老院から刊行し』ているとある。]

 

 翻訳について私が屢々気がついたのは、日本人は漢字が逆になっていてもすぐ識読するが、陶器の不明瞭な記印を読む時には、出来得べくんば漢字を、上は上にすることである。

[やぶちゃん注:原文を示す。

   *

In translating I have often observed that the Japanese instantly recognize a Chinese character upside down, but in reading an obscure mark on pottery they turn the character right side up in preference.

   *

私が馬鹿なのか、後半部の意味が判らない。これはハーンの皮肉ではなかろうか? 即ち、ハーンの見たところ、陶器鑑定をする日本人の中の多くが、陶工の記印の上下をしばしば逆にして判読に苦しんでいたり、不明とするシーンに出くわすことが多いと暗に言っているのではあるまいか? 識者の御教授を乞うものである。]

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