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2015/10/18

橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(7) 昭和七(一九三二)年 二十五句

 昭和七(一九三二)年

 

よく見れば蝗干したる筵なり

 

青廉くらきをこのみ住ひけり

 

霜柱ゆるぎそめたるけはひなり

 

鹿うらゝぬかせんべいもたべあきし

 

風邪の夫こどものごときことをいふ

 

永き日の機(はた)に生(あ)れたる花鳥かな

 

ねころべる衞士にちろちろ燒くる芝

 

[やぶちゃん注:「衞士」は「ゑじ」。若草山の山焼きの嘱目吟か? とすれば、この「衞士」は春日大社から出向いた古式の風俗を成した山焼きの護衛の者か? しかし呑気に寝転んでいる、そこの近くでちろちろと火が燃えているのも気づかずにという景か? トンデモ誤読かも知れぬ。]

 

   難波病院三句

 

たよたよとして遊び女の靑きふむ

 

遊び女の帶の細しも靑き踏む

 

茨籬遊び女と吾とへだてけり

 

[やぶちゃん注:「難波病院」不詳。年譜に同年の項なく、状況も不詳。三句目の「茨籬」及び前二句の「靑き」「帶」を「踏む」「遊び女(め)」というところからは、隣りの病室の庭に出た遊女然としたの派手な女の入院患者(?)を私はイメージするが、とんだ誤読か?]

 

母の手をとればつめたし花篝

 

[やぶちゃん注:「花篝」「はなかがり」と読み、夜桜を観賞するために焚く篝り火を指す。京都祇園のものが有名であるが、これをそれと断定は出来ない。]

 

晝寢する夫によしなし舟遊び

 

遊船のみよし細さよ葦の中

 

秋篠やこゝは遲れて麥の秋

 

[やぶちゃん注:「秋篠」現在の奈良市の秋篠町・秋篠新町及び秋篠早月町一・二丁目と秋篠三和町一帯を指す地名で、平城京の北西端にあった西大寺の北側に広がる地域を広く総称する古称。歌枕。]

 

子等が手に端午のよもぎなへてあり

 

  櫓山にかへりて二句

 

かの男ぼうふら抱いてたづね來し

 

隣なる舊家は絶えぬ葛の花

 

[やぶちゃん注:「櫓山」福岡に別荘として残していた櫓山荘。「ぼうふら」はネットで調べたところでは、博多弁で南瓜(かぼちゃ)のことをかく言うようである(博多弁ちょい上級編参照)。]

 

無月の灯みさゝぎ守はをられけり

 

[やぶちゃん注:「みさゝぎ」どこの御陵かは不詳。夜間の衛士(えじ)がいるというのは明治天皇を祀る伏見桃山陵か?]

 

あらあらと熊手をもるゝ萩の塵

 

花ぬなはひとつらなりにひかれける

 

[やぶちゃん注:「花ぬなは」万葉時代からの古語である「花沼繩」(はなぬなは(なはぬなわ))は多年生の水生植物で食用に供するスイレン目ハゴロモモ科ジュンサイ(蓴菜)Brasenia schreberi の開花した状態のものを指す。ウィキジュンサイによれば、花期は六月から八月で『花は茎から水面に伸びた柄の先につき』、直径一~一・六センチメートル、花弁・萼片(がくへん)は三枚ずつで、『スイレンの花を細くしたような姿だが、花弁は紫褐色であまり目立たない』とある。]

 

草の穗のつんつんとして刈籠に

 

[やぶちゃん注:以上、『ホトトギス』掲載分。]

 

 

踏み入りし竹柏の林も花曇

 

[やぶちゃん注:「竹柏」これで「なぎ」と訓じていよう。裸子植物門マツ綱マツ目マキ科ナギ(梛)Nageia nagi のこと(ナギ属とぜずにマキ属 Podocarpusに含める説もある)。ウィキナギによれば、雌雄異株で『比較的温暖な場所に自生』し、高さは二十メートル程の巨木に達する。『葉の形は楕円状披針形で、針葉樹であるが広葉樹のような葉型である。若枝は緑色で葉を十字対生につけ、それがやや歪んで』二列に『並んだようになる。五月頃開花して十月頃になると、『丸く青白色の実が熟す。多くの場合、根に根粒を形成する』。『海南島や台湾、日本の本州南岸、四国九州、南西諸島などの温暖地方に分布する。しかし、紀伊半島や伊豆半島に生育する個体は古い時代に持ち込まれたものが逸出したものが起源と考えられる(史前帰化植物)。少なくとも春日大社のものは』千年以上前に『植栽されたとされている。生育は関東南部が北限といわれる。ただし、化石が関西近辺でも出土する』。『熊野神社及び熊野三山系の神社では神木とされ、一般的には雄雌一対が参道に植えられている。また、その名が凪に通じるとして特に船乗りに信仰されて葉を災難よけにお守り袋や鏡の裏などに入れる俗習がある。神社の中には代用木としてモチノキが植えている場合もある』。『造園木のほか、材を家具器具材や、床柱などとしても利用する』とある。私は北条政子が頼朝と逢瀬を重ねたと伝えられる伊豆権現、現在の静岡県熱海市伊豆山にある伊豆山神社で初めて知った。源頼朝と北条政子がその葉を変わらぬ愛の証に持ったとされるいわくつきの梛である。なお、ここで「林」と詠んでいることから、私は高い確率で奈良春日大社の境内の景ではないかと考えている(非常に珍しくも有意な林相を成していることから大正一二(一九二三)年に国天然記念物に指定されている)。]

 

春光や手にまろまろと竹柏の珠

 

[やぶちゃん注:「竹柏の珠」梛の実のことと思われる。秋に結果するが、翌年の夏頃まで成った状態で大きくなるので、春でも何ら、おかしくない。]

 

花あしびみどりの壺のふくらみ來

 

[やぶちゃん注:「花あしび」ツツジ目ツツジ科スノキ亜科ネジキ連アセビ属 Pieris subg. Pieris 亜属アセビ Pieris japonica 亜種アセビ Pieris japonica subsp. japonica の花。早春に枝先に複総状の花序を垂らして多くの白く壺状の花を咲かせるが、結花の直前直後のものは薄い緑色を呈している。]

 

春の海熔岩の流れの來て沈む

 

[やぶちゃん注:ロケーション不詳。

 以上、俳誌『天の川』掲載分。多佳子、三十三歳。]

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