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2015/10/22

橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(18) 昭和十八(一九四三)年 九句

 昭和十八(一九四三)年

 

   雁(母病篤くいそぎ上京)三句

 

夕燒くる運河ひとゆきひといそぎ

 

夜々の雁ふるさとに病む母に侍す

 

母とゐて母は雁がねはやわかず

 

[やぶちゃん注:これは前年の詠吟。昭和十七年十一月七日、多佳子の母津留は多佳子の看病と看取りを受け、東京にて享年八十二で亡くなった。]

 

   笹子 二句

 

笹鳴の羽の幼なき雪をはね

 

[やぶちゃん注:「笹子」は「ささこ」と読み、は鶯の笹鳴きのこと。鶯が冬になって餌を求めるため、山を下りて人里で暮らし始めると、草藪の中でチャッチャッという地鳴きをすることを言う語で、「笹子鳴き」などとも称して晩冬の季語であるが、こう鳴くのは幼鳥に限らず、鶯の冬の鳴き方である。]

 

時雨更く市電わが乘る間をとまり

 

紅梅にわれは征く靴ふきそろへ

 

寒夜の燈ひとつに母と子とふたり

 

靑簾くらき起居のさわやかに

 

わくら葉の降るに急なり吾子を戀ふ

 

[やぶちゃん注:以上、『馬醉木』掲載分。多佳子、四十四歳。]

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