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2015/11/20

橋本多佳子 生前句集及び遺稿句集「命終」未収録作品(31) 昭和三十一(一九五六)年 三十八句

 昭和三十一(一九五六)年

 

水欲りて日覚む岬の夕暁

 

仰臥の胸十指に蔽へず崖飛雪

 

山の冬子供のこゑに日が当る

 

冬日蝶宙にこゑある如くなり

 

野の猫がひそむ床下風邪癒らず

 

猟人の手にて銃身艶めける

 

[やぶちゃん注:昭和三十一年の年譜に、『二月十九日、猟好きの尼崎の医師の案内で、近江八幡に鴨打ちに行く。清子同伴。自家用車に猟人の運転手、猟銃二挺。その夜は猟師宿(長命寺)に泊り、翌朝四時、雪しまく中、魚舟の中にコンロを持ち込み、筵を被って雪を避けつつ猟場へ』行ったとある。以下『七曜』のそれらしいものもこの折りの句と採ってよかろう。

 以上、『天狼』掲載分。]

 

濤を聴く瞼に冬日ぬくし赤し

 

濤さわぐ鵜のゐる岩も吾の岩も

 

洋(わだ)に落つ大日(だいにち)冬濤かきたてて

 

[やぶちゃん注:この三句は前年十二月の誓子との室戸岬の旅中吟と思われる。]

 

冬薊句帖に載せて蕊複雑

 

綿虫の宙に暮れゆく素直さよ

 

猟舟に瀕死の鷺が羽うちたり

 

こめかみをがくがく猟犬飯食へり

 

猟舟に鴨置くすぐに雪つもる

 

猟夫臭はげしわが髪に浸まずや

 

猟舟に身低うをりぬ白伊吹

 

遁るる鴨猟夫の眼中を招くる

 

鴨のこゑ吹雪千分けて日射したり

 

[やぶちゃん注:「吹雪千分けて」底本では「千分けて」の右に『(ママ)』注記がある。しかし、中村草田男の句に「花蕎麥や雲を千分けて日の霽るる」があり、これらは上代語「ちわく」(道別く)で、進路を分け開く、神々しい日の光りがあまたの雑物をざっと引き分けて差すの意として、自然に採れるが、如何?]

 

身がしびる猟夫の殺気ゆるすなり

 

鵜群見て立つ翼なき黒衣われ

 

[やぶちゃん注:これは「黒衣」から、底本年譜の昭和三一(一九五六)年の七月の条に、『岐阜「流域」主宰、松井利彦に招かれ、誓子と鵜飼を見る。鵜匠頭(かみ)の山下幹司の鵜舟に乗り、川下りすることを懇願。古来、女性が鵜舟に乗ることは堅く禁じられていたので困惑。一晩思案の後、黒装束(男装)をつける条件で許さる。上流の津保川より長良川を二里半下る』とある折りの嘱目吟と見る。]

 

草木瓜のさびしさ女童にも摘ます

 

羊の毛刈る伏眼のまつげは刈られず

 

高野の虹そのいのち短しとせず

 

夕顔のひらく白芯何秘(かく)す

 

あきらかに左眼に充つる青野分

 

夏野昃る発掘宮址ともにかげる

 

[やぶちゃん注:「昃る」は「かげる」と訓じていよう。前年の平城京跡での旧吟。

 以上、『七曜』掲載分。]

 

照る蜜柑千万をもて山低し

 

蜜柑山我ら下りて夕焼くる

 

墨すれば蜂とぶ近く巣がありて

 

肉血にゐる家蜂を怒らさず

 

[やぶちゃん注:「肉血」不詳。これ、「肉皿」の誤植(原雑誌か底本かは不詳)ではあるまいか?]

 

いなづまを惜しみて放つ雲立てり

 

[やぶちゃん注:以上、『俳句研究』掲載分。]

 

海蝶に逢へり岩群寂しき中

 

蕎麦打つて生木砧の重たさよ

 

冬薊葉の斑をもつて我に触る

 

吾隠れて了うすや冬の千五百厳

 

[やぶちゃん注:これも前年末の室戸岬の吟か。]

 

冬遍路きぞの日遠く明日遠く

 

遍路下るさきに登りし道の険

 

[やぶちゃん注:以上、『俳句』掲載分。]

 

青木曽や山墓はみな村へ向く

 

[やぶちゃん注:本句は『文庫版「海彦」より』とある。多佳子、五十六歳。底本の同年年譜の末尾には、『十一月、心臓発作続く』とある。多佳子はこの四年前の昭和二七(一九五二)年四月に心臓に不調を訴え、診た平畑静塔から心臓ノイローゼの診断を受けている。]

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