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2015/11/21

生物學講話 丘淺次郎 第十七章 親子(2) 二 子の保護(Ⅰ)

     二 子の保護

Kowohogosuruhitode

[子を保護する「ひとで」]

 [やぶちゃん注:これは国立国会図書館国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えた。]

 卵なり子なりを進んでから後、暫くの間親がこれを保護する動物も相應に多い。獸類や烏類は悉くこの仲間に屬するが、それ以外の動物にも澤山の例がある。概していふと、子を保護するものは稍々高等の動物に多く、下等の動物は殆ど悉く、卵を放すだけであるが、「うに」・「ひとで」の如き類でさへ、例外として子を保護するものがある。こゝに圖を掲げたのは、卵を體で覆ひ保護する「ひとで」の一種であるが、かゝる種類では、普通の「ひとで」に比して、卵が直徑十倍乃至二十倍も大きい。直徑が十倍乃至二十倍も大きければ、これを体積として算へると、一千倍乃至八千倍も大きいことに當るから、同じ大きさの卵巣内に生じたとすれば、卵の數は一千分の一乃至八千分の一より出來ぬ筈である。如何なる動物でも種族の維持のためには、小さい子を無數に産んで、運を天に委せるか、大きな子を僅に産んで、これを大事に保護するかの二途の中、いづれかを選まねばならぬことがどの場合にも明に知れる。

[やぶちゃん注:『「うに」・「ひとで」の如き類でさへ、例外として子を保護するものがある』という叙述がひっかっかる。この『「うに」・「ひとで」の如き類』を、圧倒的に受精後直ちに放卵する種が多い「棘皮動物の類」という意味で次の抱卵性の「ひとで」を言わんとしているのなら問題ないが、この表記では「うに」の中にもそうした産卵した後の卵を保護する種がいると読める。読めるから家中にある数多の関連書・学術書・図鑑類を管見してみたが、ウニ類で産卵後に抱卵をして卵を保護する属や種についての記載を見出すことは出来なかった。形状と棲息場所から考えるとあり得そうに私が思うのは、砂泥中に潜るタイプのウニ綱 Euechinoidea 亜綱無ランタン上目ブンブク目 Spatangoida や有ランタン上目タコノマクラ目 Clypeasteroida であるが、そうした記載を見出すことは出来なかった。ウニ類でそうした特異習性を持つものを御存じの識者の方の御教授を是非とも乞うものである。

『卵を體で覆ひ保護する「ひとで」の一種』挿絵を見る限り、この絵は抱卵習性を持つコヒトデ属 Leptasterias の仲間と考えてよいように思われる。西村三郎「原色検索日本海岸動物図鑑[]」(平成七(一九九五)年保育社刊)のコヒトデ Leptasterias ochotensis similispinis の記載によれば、『本種は低質に卵塊を産みつけた後その上を覆い』、『卵が孵化して幼体になるまで保護する習性を有する』とあり、佐波征機氏と入村精一氏の共著にで楚山勇氏の写真になる「ヒトデガイドブック」(二〇〇二年TBSブリタニカ刊)のコヒトデ Leptasterias ochotensis similispinis に載るカラー・バリエーション六体を観察(上部のみ)すると、腕部の形状も本種に非常によく一致する(以下の引用の下線部を参照)。そのデータによれば、挿絵からも分かるようにヒトデ類ではお馴染みのマヒトデ属 Asterias に『よく似ているが、腕の側縁が膨れ、腹側側列がよく発達し、生殖孔が腹面に開口することで区別できる』(ここ以下の下線はやぶちゃん。なお、一般にヒトデ類では背側に生殖孔を持つものが多い)。『多くは卵胎生で、卵は大きく、浮遊幼生期がない直接発生である。卵塊を口の周囲や胃の中で保護する習性がある』(即ち、筆者はこれを以って広義の『卵胎生』という語を用いていていることが判る)。『北極周縁の寒冷な海域に分布し、地域による変異が著しく』、『分類が非常に難しいグループである』とある。本種コヒトデ Leptasterias ochotensis similispinis は軸長二~三センチメートルほどの小型種で、『背側の骨格は狭い網目状で、各網目には普通』一~二個の皮鰓がある。『体表は太い短棘で覆われ、各棘に数個のくちばし型叉棘が付着する』(中略)。本邦では『根室、厚岸や知床の潮間帯の転石の下に見られる』。繫殖期は四~五月で、『親ヒトデは転石の下面に産みつけた卵塊に覆いかぶさり、稚ヒトデが孵化するまで卵塊を保護する』とある。また、同書の中のコラム「子育てするヒトデ」の記事ではかなり詳細に卵保護や保育性のヒトデについて語ってある。それによれば、上記のような卵を覆う行為や口部や胃部に卵を含む方法以外にも、背部に背負ったり、独自の育児嚢や『保育カゴに入れたりと多様である』と述べ、『なかには卵が一人前になるまで寝食』『を忘れて育児に専念する』種や、『親ヒトデが保育中の幼ヒトデを』『附着糸』のようなもので『結びつけて』『親から離れるのを防いでいる』ように見える種もあると記す(具体種が挙げられ、それぞれ別個に解説されてあり、孰れも実に巧妙で面白い。お読みになられることを強くお薦めする)。以下、

   《引用開始》

 北極周縁の浅海にすむコヒトデ属やヒメヒトデ属には、腕を底質につけ盤を持ち上げ底質との間に卵塊を入れ、体で覆って保護する習性があるものが多い。腕の先端を底質につけるだけのものから、腕の基部を底質に押しつけ盤を上方に膨らませてできた空所に卵塊を入れるものなど卵塊を覆う姿勢は種により微妙に異なる。体で覆った卵塊に管足を吸着させては離すことを繰り返して、卵塊に付着した汚れを取り除いたり新鮮な海水を供給したりする面倒見のよい種もいる。

 コヒトデ属の Leptasterias groenlandica は卵塊を胃に飲み込んで保育し、発生が進んで幼ヒトデになる頃には噴門胃にまで入り込むので体が異常に膨れ、あたかも妊婦のような姿になる。近縁の L. tenera では初めは卵を胃の中で保育し、発生が進むと胚を盤の育児のうに移して保育する。一般に、口の下や胃の中で保育する場合には親ヒトデは保育期間中(長いものでは3月)餌が取れずひたすら育児に専念することになる。

   《引用終了》

とある。なお、カリフォルニア州立大学フラトン校の“Biol. 317 - Field Marine Biology Spring 2015 - Prof. Eernisse”というサイト内のこちらの海岸生物観察記録の画像集の中央附近にあるLeptasterias 属の一種とするヒトデの抱卵写真である“A brooding female Leptasterias cf. hexactis”(左端)と“The embryos of both this female and the different brooder below appeared at a fairly early stage of development.”(中央)とその下の三枚の画像を参照されたい。少なくともこのコヒトデ属 Leptasterias とある、その本体と卵の大きさが、まさに丘先生の添えられた挿絵と一致することが判っていただけるものと存ずる。]

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