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2016/01/13

譚海 卷之一 加州城中幷家士等の事

 加州城中幷家士等の事

〇加賀の城内玄關の額は、杜牧之(とぼくし)が阿房宮(あばうきう)の賦(ふ)の末章を大書にて懸(かけ)られたり。始祖利家卿の眞蹟なりと云。又孔廟あり、その額も同卿の筆にて、人不ㇾ知而不ㇾ恨の七字を懸られたりとぞ。靈屋(みたまや)には利家卿の時(とき)童謠に、加賀はやけよと城さへやけざ、城に親子はもたねどもと、云(いふ)詞を書(かき)てかけられしとなり。又獄屋のかべには、一方には極樂の莊嚴(しやうごん)の體(てい)、一方には八大地獄の苦惱の體を繪にうつし、白漆にてまきゑにせられしとぞ。白うるしは加州の名品なり。又毎年冬百姓町人に布子(ぬのこ)繻絆(じゆばん)をたまはる事例にてあり。其家すぢの宗領家(そうりやうけ)をはぶき、二男庶流の家すぢのものばかりへ給(たまは)る事なり。百姓も水のみといへる程の者ばかりに給ふ事也とぞ。また加賀の家中に六十六人同格の世家(せいか)あり。日本の國のかずに准じてたてられたる事なりとぞ。いづれも二三千石づつの知行也。其中に七人は世々女子にて繼來(つぎきた)る家有(あり)。其夫は家中の内の二男を以て配する也。極めて子どものうちに女子を生ずる事なりとぞ。其女子を家督にさだめ、其夫は一代ごとに別に二三百石づつ賜り、外の役をつとむる也。此女子式日(しきじつ)には諸士と同樣に登城す。容體(ようてい)はみな馬上にて長刀(なぎなた)等は室(しつ)を去り、白刄(はくじん)には隨身(ずいじん)する事也。女子の家、代々堪能(かんのう)たえず、武術學問躾方(しつけかた)等それぞれの業(わざ)をつたへたり。百間(けん)の堀を飛こゆる婦人など、其業を傳(つたへ)て絶(たえ)ず有(ある)事也。

[やぶちゃん注:「杜牧之」晩唐の詩人杜牧の字(あざな)。

「阿房宮の賦」「阿房宮」は秦の始皇帝が建てようとした未完の大宮殿で、遺跡が現在の陝西省西安市西方の阿房村に残る。杜牧の「阿房宮の賦」は、古えの始皇帝の失政・驕慢・奢侈を強調する阿房宮の故事を借りて、当時の現皇帝敬宗の行為を風刺した、と友人に心情を吐露した、と嘉穂のフーケモン氏のブログ「板橋村だより」の漢詩(26杜牧(2)阿房宮賦(にある。原田俊介氏のサイト内ので全文や訓読及び口語訳が読める。「末章」とすれば、

   *

○原文(以下は中文サイトより引用し、一部の漢字を正字に代えた)

嗚呼、滅六國者、六國也、非秦也。族秦者、秦也、非天下也。嗟夫、使六國各愛其人、則足以拒秦、秦復愛六國之人、則遞三世可至萬世而爲君、誰得而族滅也。

秦人不暇自哀、而後人哀之、後人哀之、而不鑑之、亦使後人而復哀後人也。

○やぶちゃんの書き下し文(上記の方々や他の訓読を参考にしつつも、手前勝手に訓じた)

嗚呼(ああ)、六國を滅ぼす者は、六國なり、秦に非ざるなり。秦を族(ぞく)する者は、秦なり、天下に非ざるなり。嗟夫(ああ)、六國をして各々(おのおの)其の人を愛さしめば、則ち、以つて秦を拒(ふせ)ぐに足らん。秦、復た六國の人を愛せば、則ち、三世より遞(てい)して、萬世に至りて君たるべし。誰(たれ)か得て族滅せんや。

秦人(しんひと)、自ら哀(かん)しむに暇(いと)まあらず、而して後人、之れを哀しむ。後人、之れを哀しむも、之れに鑑(かんが)みざれば、亦た、後の人をして、復た後の人を哀しましめん。

   *

「族」は滅ぼす。前田利家が墨書したというのは、この「秦人不暇自哀 而後人哀之 後人哀之 而不鑑之 亦使後人而復哀後人也」の全部か後半部であろう。

「人不ㇾ知而不ㇾ恨の七字」人口に膾炙する「論語」の「學而第一」の、

   *

子曰、學而時習之、不亦説也乎。有朋自遠方來、不亦樂乎。人不知而不恨、不亦君子乎。

○やぶちゃんの書き下し文

子、曰く、「學びて時にこれを習ふ、また説(よろこ)ばしからずや。朋(とも)あり、遠方より來る、亦、樂しからずや。人、知らずして恨みず、亦、君子ならずや。

   *

言わずもがなであるが――他者が自分のことを知らず、理解もして呉れないとしても、全く以って恨みを抱くこともない――の謂いである。

「靈屋」「れいをく(れいおく)」と音読みしているかも知れぬ。

「加賀はやけよと城さへやけざ、城に親子はもたねども」私が馬鹿なのか、意味が解からない。識者の御教授を乞うものである。

「白漆」白色の色漆。透(す)き漆(上質の生漆をゆっくりと熱して水分を除去し、透明度を高くしたもの)に二酸化チタンなどの白色顔料を混ぜて作るが、漆は完全な透明にはならず茶褐色を帯びているため、ややベージュがかった色となる。

「白うるしは加州の名品」加賀蒔絵に古くから用られてきた。

「布子」木綿の綿入れ。

「繻絆」襦袢に同じい。

「式日」藩公式の祭日。

「室」鞘(さや)。

「白刄には隨身する」鞘から抜いた状態で、藩主に拝謁することを指す。

「堪能」「たんのう」は慣用読みで正しくない。「勘能」とも書き、技能・学芸などに勝れ、熟達していることをいう。

「百間」百八十一・八メートル。]

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