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2016/02/24

生物學講話 丘淺次郎 第十七章 親子(6) 三 子の飼育(Ⅰ)

     三  子の養育

 

 以上述べたのはいづれも親が何らかの方法で卵を保護するだけの例であるが、誰も知る通り動物の中には、親が幼兒に食物を與へて養ふものが幾らもゐる。しかしこれは殆ど獸類・鳥類の如き神經系の發達した高等の動物に限ることであつて、昆蟲類には多少その例があるが、それより以下の動物ではこれに類することは一つも行はれぬ。親が子を養ふといふ以上は、親の生存時期と子の生存時期とが一部重なり合ひ、その間親と子とが相接觸して共同に生活して居ることはいふを待たぬが、子が聊かなりとも親を慕ふ形跡の見えるのは、全動物界中かやうな類のみに限られ、しかも子が親に養はれる期間のみに限られて居る。その他のものに至つては子は決して親を知らず、全く無關係の如くに生活して代を重ねて行く。前に卵を保護する種類は卵を産み放しにするものに比べると、遙に少數の卵を産むことを述べたが、親が子を養ふ種類では、子の生まれる數はなほ一層少い。しかもこの少數の子を大事に保護し養育するのも、小さな卵を無數に産み放すのも、種族の維持繼續を目的とすることに至つては全く同じであつて、その効力にも決して甲乙はない。たゞ各種動物の構造・習性等に適した方法を採つて居るといふに過ぎぬ。


Hyounititiwonomaseruinu

[豹の子に乳を呑ませる犬]

[やぶちゃん注:この図は講談社学術文庫版では省略されているので、底本の国立国会図書館国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えた。]

 

 獸類の幼兒はすべて母の乳汁で養はれるが、乳汁は動物の種類によつて各々成分が幾らかづつ違うて、或は脂肪が多いとか糖分が少いとかいふことがある。それ故、幼兒を養ふのに最も適するのは無論その兒を産んだ母か、またはこれと同じ位の同類の雌が分泌した乳であつて、人間の幼兒を育てるのに。人の乳よりも牛の乳とか山羊の乳とかの方

が更に宜しいといふやうな理窟は決してない。しかし乳汁なるものは一種の食物に過ぎず、兒の腸胃に入つてから消化せられ吸牧せられるのであるから、一定の滋養成分を含んで居る以上は、甲の動物の乳汁を以て乙の動物の幼兒を育てることも素より出來る。外國の動物園では獅子や虎の幼兒に、牝犬の乳を呑ませて健全に育てた例もある。以前駒場の農科大學では牝犬が狸の子に乳を呑ませて居たことがある。幼兒が乳汁のみで育てられる時期の長さは種類によつて大に違ひ、概して大形の獸は生長も遲く乳を呑む間も長い。しかし人間程に長い間乳を呑むものは他になからう。幼兒が乳を呑むことを止める前から、既に何か食物を食ひ始めるが、これは大抵母親が多少嚙み碎いて、兒の容易く食へるやうにしてやる。猫や犬が子を育てるのを見ても、その例は澤山ある。

Sitateyadori

[仕立屋鳥]

Syokuyouennsou

[食用燕巣]

Hataoridori

[機織鳥]

[草の纎維を織り合せて樹の枝から垂れ下つた囊狀の巣を造る巣の入口は下に向いてゐる短い筒の先に開いてゐるので飛ぶ動物でなければ巣の内に入ることができぬ 圖に示したのは印度産の一種である]

[やぶちゃん注:以上の三図は総て底本の国立国会図書館国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えた。]

 

 烏鷲の雛が卵から孵つて出たときの有樣は種類によつて甚だ違ひ、雞の如く直に走るもの、あひるの如く直に游ぐものもゐるが、巧に飛ぶ種類の鳥では雛は實に憐なもので、親に養はれなければ一日も生きては居られぬ。鳥類には隨分精巧な巣を造るものがあるが、これは皆卵を温め且卵から孵つた雛を安全に育て得るためでゐる。今最も精巧なものとして有名な例をこ一二擧げて見るに、アフリカの諸地方に産する「機織(はたおり)鳥」と稱するものは、「つぐみ」か「ひよどり」位の大きさの鳥であるが、草の莖の細い纎維などを巧に布の如く編み合せて、樹の枝から垂れた囊のやうな形の巣を造る。また東印度の島に住む「仕立屋鳥」といふ小鳥は、大きな木の葉を二枚寄せ、その緣を植物の纎維で巧に縫ひ合せ、その間に巣を造る。その他にも鳥の巣には精巧なものが種々あるが、中には他の材料を用ゐず、自分の口から出す唾液だけで巣を造るものあがある。支那人が最上等の料埋として珍重する有名な燕の巣はそれで、今では西洋人にもこれを嗜むものがなかなか多くなつた。普通の燕は口に泥を銜へて來て、泥と唾とを混ぜて黑い堅い巣を造るが、この燕はたゞ唾液だけで造るから、巣は純白で恰も乾いた寒天の如くである。産地は東印度の島々であるが、海岸の絶壁の處に造られるから、澤山あるにも拘らずこれを採集することはなかなか容易でない。

[やぶちゃん注:「機織(はたおり)鳥」スズメ目スズメ亜目スズメ小目スズメ上科ハタオリドリ科 Ploceidae に属するハタオリドリの仲間で、ここに記されている通り、草などを編んで枝から垂れ下がる袋状の巣を作る。多様な種がおり、グーグル画像検索「Ploceidaeでも色彩も巣の形状も多様であることが知れる。酷似した巣を造る以前に注した「共和政治鳥」(スズメ目スズメ亜目スズメ小目スズメ上科スズメ科スズメハタオリ亜科 Philetairus(フィレタイルス)属シャカイハタオリ Philetairus socius(英名“Sociable Weaver”)も参照されたい。

「仕立屋鳥」これはスズメ目セッカ科サイホウチョウ(裁縫鳥)属Orthotomus に属するサイホウチョウの仲間(現行では全十二種)のことを指している。全長 十二~十六センチメートル、羽色は一般に背面がオリーブ色或いは褐色を呈し、下面は白い。かなり大き目の二枚の葉の縁を、植物繊維や蜘蛛の糸を以って縫い合わせ、袋状の巣を造ることで知られる。グーグル画像検索「Orthotomus tailorbird nestで鳥の様子と巣型がよく判る。

「自分の口から出す唾液だけで巣を造るものあがある。支那人が最上等の料埋として珍重する有名な燕の巣はそれ」一般に知られる中華料理の「燕の巣のスープ」、広東料理の高級食材とされる「燕窩」の原材料は、

アマツバメ目アマツバメ科アナツバメ族 Collocaliini ヒマラヤアナツバメ属 Aerodramus

のアナツバメ類の内、空中から集めた巣材をわずかしか使わずに巣の殆んど全ての部分が唾液腺分泌物で出来ているとされる、

マレーアナツバメ(ジャワアナツバメ)Aerodramus fuciphagus germani

や、

オオアナツバメ Aerodramus maximus

など数種の巣のみが中華食材では高級品とされている。なお、和名に「ツバメ」が附き、それを用いた中華料理が普通に『「燕」の巣のスープ』と呼ばれ、しかも飛翔時の形状もよく似ていることから、所謂、

スズメ目ツバメ科ツバメ属ツバメ Hirundo rustica

などのツバメ類とさも近縁種のように思われている向きがあるが、以上の分類からも判る通り、アマツバメ目とスズメ目で目レベルで違い、真正のツバメ類とは脚の構造なども有意に異なっていることから、全くの縁遠い異種であるので注意が必要である。まあしかし、「穴燕の巣のスープ」とか、中国語の「目」表記で「雨燕の巣のスープ」とか言ってもあんまり美味そうではないなぁ……ウィキの「燕の巣によれば、『アナツバメの巣は海岸近くの断崖につくられるが、断崖絶壁などに巣を作る習性の鳥は、しばしば鉄筋コンクリート製の建造物の増加した近代的な都市を本来の営巣環境に近似した環境と受け止めて巣作りを行う。ハヤブサやチョウゲンボウの例が著名であるが、アナツバメ類にもこうした傾向が見られる。近年ではこのような習性を利用して、東南アジア諸国の鉄筋コンクリート製建造物の内部に条件を整えることで集団営巣地を作らせることができるようになり、市場への供給量が増した』。『アナツバメの巣の採取については東南アジア各国で採取の時期、採取方法などを厳重に管理し、またアナツバメの生息地の環境保護のために立ち入り制限を行っている。アナツバメは雛が巣立ちしてしまうと同じ巣を利用することはないため、アナツバメが放棄した巣を採取している。オスは次の発情期になればまた唾液腺から特殊な分泌物を吐き出して新たに巣をつくる』。『断崖絶壁における採取作業は非常に危険が伴う作業である』。清の乾隆三六(一七七一)年頃には完成されていたと考えられている阮葵生(げんきせい)の「茶余客話(ちゃよきゃくわ)」(全三十巻。政治・経済・文化・法律等、学術領域の豊富な内容が含まれる重要史料。特に清朝初期の制度・地誌記載は史料価値が高いとされ、また、人物伝や「荊釵記」「元曲」「水滸伝」「琵琶記」「金瓶梅」「西游記」など戯曲・小説等も多数収録された恐るべき博物学的叢書である)には、『よく訓練した猿に布袋を背負わせて採取したと記されている』。『日本で人家の軒先などに一般的に見られるツバメの巣は、唾液だけでなく泥や枯れ草によって作られるので食用には適さないが、アナツバメの巣は世界中で高い人気を誇る食材となっており、スープの具やデザートの素材や飾り付けとして用いられる』。『中華料理の中でも特に広東料理で利用される。元末明初頃に中華世界に知られるようになり、清代になるとふかひれや乾しあわびと並ぶ高級中華食材として珍重されるようになった。燕の巣が出る宴席は「燕菜席」と呼ばれ、満漢全席に次いで格式の高い宴席となっている』。二〇一三年、『中国政府は綱紀粛正の一環として、接待の宴席に高級料理を用いることを禁じた。この際、高級食材の例としてふかひれとともにツバメの巣が挙げるなど』、二十一世紀の『現代においても贅沢品の代表格であることが窺える』。『日本においても、江戸時代初期の料理書『料理物語』に、「燕巣(えんず)」という名で記載されており、吸い物や刺身のつまとして用いられていた。日本では上記のとおり生産されておらず、交易によって輸入されたものであり、中国同様に貴重な食材である』。『独特のゼリー状の食感が特徴で』、『古くから美容と健康に良いとされている漢方食材であり、清の西太后も連日のように食したと伝えられている』。『巣によって羽毛などの巣材を比較的多く含むものから、全くと言っていいほど含まないものまで差がある。混ざり物などが少なく作られて間もない物が重宝され高値がつきやすい。調理に際しては湯で柔らかく戻してから、ピンセットなどで丁寧に羽毛などを除去する』とある。しかし、同ウィキには、『中国では古くから赤い燕の巣が珍重されてきた。現在においても赤い巣、オレンジ色の巣は高価で取引される傾向がある為、顧客の好みの色に着色して出荷する生産者も珍しくない。赤やオレンジに発色する原因は、岩石からの鉄分や壁土などの色素を含むからとも発酵の結果によるともされる。ただし、こういった赤やオレンジの巣には人体に有害な亜硝酸塩が多く含まれるという調査報告が出ている』。『亜硝酸塩は水溶性なので水で洗い流すことが出来るが、天然、着色を問わず赤やオレンジの色素もなくなってしまう』。『見た目の立派さが価格に影響することもあり、乾燥した巣の表面に糊を塗布して外観を整える手法も広く行われている。水に溶いた巣の他、海藻、豚皮、ラード、植物樹脂などが糊として用いられるケースがある』。『白さを強調する為に薬品によって漂白された燕の巣は、独特の匂いが無くなっていたり、薄くなっている』とあるから、色附きや真っ白な、しかも安価な値段のそれは食さない方が無難な感じもする。何度か食べたことがあるが、ゼリー系が苦手な私は全く美味いとは思わなかった。さても最後に。しかしだ、そもそもが中国語の同食材を指す「燕窩」の「窩」、私の雅号の「心朽窩主人」の「窩」の字の字体も、敦煌で落款を彫って貰った中国の篆刻家は、如何にも意味深長にニヤリと笑い、「この字は良い字ではない。」という意味の中国語を言って、しきりに「別な字にしなさい。」と言うていたのを、ふと思い出した……。]

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