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2016/03/14

ツルゲーネフ原作米川正夫譯「生きた御遺骸」(「獵人日記」より)(Ⅲ)

「それで退屈でないかい、可哀さうに、ルケリヤ、不氣味でないかい?」

「どうも致し方がございません! 噓をつくのは厭ですから正直に申しますが、初めの間はとても情けなうございました。けれど、やがて馴れつこになつて、辛抱しぬいてみると――もう何ともありません。世の中にはもつと不運な人もあるんですからね。」

「それは又どういふ事だい?」

「中にはまるで身を寄せるところのない人もありますもの! また中には目が見えなかつたり、耳が聞えをかつたりして! ところが、わたしは、有難いことに眼もよく見えますし、何でもはつきり聞えます、それこそ何でも。土龍(もぐら)が地の中を掘つてゐる――それさへちやんと聞えますからね。又どんな匂ひでも、それこそ、どんなに微かな匂ひでも鼻が利きますので! 畑で蕎麥の花が咲くとか、お庭で菩提樹の花が開くとかすれば、わたしは教へて貰はなくても、すぐさま一番に知るのでございます。たゞそちらの方から風がそよそよと吹いて來さへすれば分りますものね。えゝえ、なんの神さまをお恨み申しませう? まだまだ運の惡い人は、たくさん居りますからね。それに、かういふ事だつてあります。達者な人といふものは、ともすれば罪なことをし勝ちなものですけれど、わたしなどは罪の方が自分で逃げて行つてくれました。この間もお坊さまが、アレクセイ神父さまがわたしに聖餐を授けようとなされて、『お前には懺悔をさせるがものはない。さういふ風になつては罪を犯すわけがないからな?』と仰つしやいました。けれどもわたしはその御返事に、『でも心の中の罪はどうなりますので?』とお訊ねしたら、『いや、それは大した罪ぢやないよ。』と云つて、笑つていらつしやるのでございます。」

「それに、わたしは屹度その心の中の罪も餘り犯してはゐないと思ひます。」とルケリヤは續けた。「だつて、わたしは物を考へたり、第一、そのことを思ひ出したりしないやうに、自分を躾けてしまつたからでございます。その方が、月日が早く經つてくれます。」

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