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2016/03/22

飯田蛇笏 山響集 昭和十五(一九四〇)年 夏/秋

〈昭和十五年・夏〉

 

チェロを擁(だ)き夏夕月の黃をめづる

 

夏風邪の娘のはなやかに愁ひけり

 

旅愁あり浴房(バス)にたゞよふ夏日翳

 

風鈴に雨やむ闇の更たけぬ 

 

窓近く立葵咲く登山宿

 

   樹海を出て河口湖に向ふ

 

五湖のみちゆくゆく餘花の曇りけり

 

[やぶちゃん注:「ゆくゆく」の後半は踊り字「〱」。「余花」は「よくわ(よか)」で、夏になっても若葉の中に咲き残っている桜の花を指す。歳時記によれば初夏の季語で、立夏前のそれは「残花」、立夏後に「余花」になるとある。というより、これは古語の雅語であり、季語嫌いの私としてはそれなら腑に落ちるのである。]

 

   哈爾賓滯在  三句

 

白露の娘瞳の水色に夏きたる

 

楡靑葉して白露の娘虹を見る

 

露人墓地靑葉隱りに虹消ゆる

 

[やぶちゃん注:「哈爾賓」旧満州国ハルビン(現在の中国人民共和国黒竜江省省都)。ウィキの「飯田蛇笏によれば、昭和一五(一九四〇)年の春に、『雲母』の『小川鴻翔とともに朝鮮半島から中国北部にかけてを縦断旅行し』、四月七日に開催された『京城俳句大会など大陸各地で俳句会や講演を開いた』とある。関係性は不明であるが、飯田蛇笏の三男飯田麗三は、この四年後の昭和一九(一九四四)年にハルピンで応召されている(戦後抑留され、昭和二十一年五月に外蒙古アモグロン収容所にて労働使役中の事故により死亡している。病死とも)。]

 

群ら嶺立つ雲海を出て夏つばめ

 

雲うすく夏翳にじむお花畑

 

夏嶽の月に霧とぶさるをがせ

 

[やぶちゃん注:「さるをがせ」樹皮に付着して懸垂する糸状の地衣類で、山地や高山帯に植生する菌界子嚢菌門チャシブゴケ菌綱チャシブゴケ目ウメノキゴケ科サルオガセ(猿尾枷・猿麻桛)属 Usnea の総称。「霧藻」「蘿衣」とも称する。ブナ林など落葉広葉樹林の霧のかかるような森林の樹上に着生し、木の枝状に枝分かれして下垂する。本邦ではヨコワサルオガセUsnea diffracta(「横輪」。糸状の枝状体に環状の割れ目を持つ)やアカサルオガセ(アカヒゲゴケモドキ)Usnea rubrotincta(皮層が赤色を呈する)以下、凡そ四十種が確認されている(ウィキの「サルオガセ他、複数の記載を参照した)。]

 

合歡咲いて嶽どんよりと川奏づ

 

山茱萸の風にゆれあふ實を擇りぬ

 

[やぶちゃん注:「山茱萸」「やまぐみ」と読んでおく(後述)。私はこれは季節的に見て、我々が「茱萸」と認識しているバラ亜綱バラ目グミ科グミ属 Elaeagnus のナツグミ Elaeagnus multiflora の偽果(通常の果実のような子房ではなくて隣接組織に由来する果実状器官)であるように思われる。ウィキの「ナツグミによれば、『本州の関東〜中部、四国の山地に自生する落葉小高木であるが、庭木にされることもある』。四〜五月頃に『淡黄色の花(正確には萼筒)を咲かせ』、『果実(正確には偽果)は』六月頃に『赤く熟して食べることができる』とある。実は正真正銘の和名ではミズキ目ミズキ科ミズキ属サンシュユ(山茱萸) Cornus officinalis があり、同じく黄色い花で赤い偽果をつけるのであるが、ウィキの「サンシュによれば、「ハルコガネバナ(春黄金花)」・「アキサンゴ(秋珊瑚)」・「ヤマグミ(山茱萸)」とも呼ばれ、『季語は春』。『晩秋に付ける紅色楕円形の実は渋くて生食には向かない』。但し、『内部にある種子を取り除き乾燥させた果肉(正確には偽果)は生薬に利用され、「サンシュユ」の名で日本薬局方に収録されており、強精薬、止血、解熱作用がある』。『温めた牛乳にサンシュユの枝を入れ、保温して一晩置くとヨーグルトができる。ブルガリアにはヨーグルトの木と呼ばれる木があり、サンシュユはヨーグルトの木の親戚にあたるため、実際に同じようにヨーグルトを作れる』。『山茱萸の音読みが、和名の由来で』、『早春、葉がつく前に木一面に黄色の花をつけることから、「ハルコガネバナ」とも呼ばれ』、『秋のグミのような赤い実を珊瑚に例えて、「アキサンゴ」とも呼ばれる』(下線やぶちゃん)とあることから、後者ではあり得ない。従ってこれはあくまで、「やま」の「ぐみ」(山の赤茱萸。ナツグミ Elaeagnus multiflora の「実」)であって、「さんしゆゆ(さんしゅゆ」の「実」ではないと私は判断したのである。大方の御叱正を俟つ。]

 

蒟蒻の花ゑみわるゝ驟雨霽れ

 

[やぶちゃん注:「蒟蒻の花」単子葉植物綱オモダカ目サトイモ科コンニャク属コンニャク Amorphophallus konjac の花は、ある程度の大きさまで成長しないと『花はつかない。栽培下では』開花するまでは五~六年かかる。『開花するときには葉は出ず、また開花後に株は枯れる。花は全体の高さが』二メートルほど『にもなる。いわゆる肉穂花序の付属体は円錐形で高くまっすぐに伸び上がり、仏縁苞は上向きにラッパ状に開き、舷部(伸び出した部分)は背面に反り返る。花全体は黒っぽい紫。独特の臭いを放つ』(ウィキの「コンニャクより引用。下線やぶちゃん)。私も見たことがあるが、形状は同じサトイモ科のテンナンショウ属マムシグサ Arisaema serratum に似ていると思うが、とてつもなくでかく、色が毒々しくて臭いともに頗る禍々しいと私は感じた。因みに世界最大の花として知られるコンニャク属ショクダイオオコンニャク Amorphophallus titanium はその激しい腐臭でも有名である。そういう意味では本句はある種、「鬼趣」を持つ佳句(生理的には厳しいが、私は昨年に前頭葉を挫滅し嗅覚を失ているから今は平っちゃらである)と思うのである。]

 

 

 

〈昭和十五年・秋〉

 

草は冷め巖なほ温く曼珠沙華

 

屠所の花卉冷気にみだれ渡り鳥

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