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2016/03/20

進化論講話 丘淺次郎 藪野直史附注 第三章 人の飼養する動植物の變異(4) 三 他の動物の變種

     三 他の動物の變種

 

 尚その他どの家畜を見ても全く變種のないものは殆ど一つもない。馬なども西洋では種々の形のものがあり、競馬用のものは丈が高く足が細くして、如何にも身輕に見え、荷車を挽かせる馬は身體が極めて大きくて足も非常に太く、その蹄に附ける鐵靴は我が國普通の馬の二倍以上もある。初めてヨーロッパに行つた人は先づ市中を通行する荷馬の大なるを見て一驚を喫する位である。馬車を挽かせるための馬、人の乘るための馬なども各々その用途に應じて形が違ふが、中にも、シエットランドポニーといつて富家の子供などの乘る小馬は、高さ僅に三尺に足らず、殆ど犬より少し大きなだけである。

[やぶちゃん注:「鐡靴」蹄鉄。

「シェトランドポニー」(Shetland Pony)はイギリス北方にあるシェトランド諸島を原産とする小型種で、最小のウマの一つとされる。肩高は平均して九〇~一一〇センチメートル程であるが、一般には一四五或は一四二センチメートル以下でシェトランド諸島原産のものを指す。

「三尺」九〇・九センチメートル。]

 飼牛にも今ではなかなか種類が澤山あり、角の長いもの、角の短いもの、角の殆どないもの、または乳の澤山出るもの、肉の澤山あるもの、或は極めて速く生長するものなどがあり、その用途も各々多少違ふから、ゼルシーとか、ショートホーンとか、ホルスタインとか、一種毎に特別な名を附けて之を區別する。豚にも耳の短いもの、耳の長いもの、肉の多いもの、脂の多いもの、その他種々の點で相異なつた種類が幾つもあり、羊の如きは肉の善おもの、毛の多いもの、同じく毛の多いものの中にも毛の細いもの、毛の粗いもの、縮れたもの、延びて長いものなど、實に夥しく種類の數がある。かの有名なエスパニア産のメリノ羊などはたゞその中の一種に過ぎぬ。

[やぶちゃん注:「ゼルシー」乳牛のジャージー(Jersey)種のこと。イギリス領チャンネル諸島のジャージー島原産。

「ショートホーン」(Shorthorn)は肉牛品種の一つ。イングランド北部とスコットランド南部が接するダラム地方の低地原産。十八世紀初めに作られた。

「ホルスタイン」 (Holstein) は別に「ホルスタイン・フリーシアン・キャットル」(Holstein Friesian cattle)とも呼ばれる。名前はドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州に由来する。本邦では主に乳牛としてのイメージが強いが、欧州では肉用乳用両方を目的として肥育されている(ウィキの「ホルスタインに拠る)。

「エスパニア」スペイン。

「メリノ」羊の毛用品種の一種。毛質が繊細で最も優れているとされ、体質も強健な上に強い群居性を持つことから、放牧にも適する。起源は明らかでないが、最初に注目されたのは十八世紀末のスペイン産の本種であった。]

Kinigyohensyu

[金魚の變種

和金(左上)   らんちう(右上)

琉金(左下)   で  め(右下)]

[やぶちゃん注:本図は底本の国立国会図書館国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えたものである。]

 

 我が國で從來飼養する金魚も中々變種の多い動物で、和金といふ類は胴が長くて尾が割合に短く、琉金といふ類は胴が比較的に短くて尾が頗る長く、甚だ見事なものである。また東京邊で丸子といふ類は腹が無暗(むやみ)に圓く頸が短くて殆ど畸形の如くに見え、先年支那から輸入せられて來た眼鏡金魚といふは著しく眼球が突出して居る。また鰭の形にも種々あつて、或るものは鮒尾と稱して尾の鰭が單に鮒・鯉等の如く縱に扁平な一枚の板に過ぎぬが、普通の金魚では尾鰭は二枚に裂けて左右に擴がつて居る。特に或る種類では尾鰭のみならず、臀鰭といつて腹の後部の下面にある鰭までが左右二枚に分れて居て、頗る賑に見える。

[やぶちゃん注:「丸子」「まるこ」と読む。蘭鋳(らんちゅう)型、所謂、「ランチュウ」の仲間である。ウィキの「金魚の品種の一覧によれば、『背びれが無いのが最大の特徴。体は丸みを帯びており、江戸時代には「卵虫」という表記も見られたという。当時は「マルコ(丸子)」と呼ばれ、頭部の肉瘤は発達していないものであった。その後、幕末以降になって頭部の肉瘤の発達したランチュウが一般的となった』。

「眼鏡金魚」「めがねきんぎよ(めがねきんぎょ)」と読んでいるか。出目金(デメキン)のこと。以外であるが、明治時代に中国から輸入されたのが最初とされる。時代劇で出目金が出てきたら、考証家はアウト!

「鮒尾」「ふなお」と読む。対して、尾の後方が左右に三叉になっている「三つ尾」や四叉になってる「四つ尾」は「開き尾」と呼ぶ。

「臀鰭」「しりびれ」。

「賑」「にぎやか」。]

 以上掲げた所の數例では變種がいつ頃から生じたかその起源が判然分らぬが、現今我々の飼養して居る動物の中には、比較的短い時の間に種々の變種を生じたものが幾らもある。これらの動物は變種の少しもなかつた頃から今日に至るまでの變化の歷史が、明瞭に解つて居るのであるから、動植物は代々多少變化し得るものであるといふ

ことの最も著しい目前の例といつて宜しい。

 

Kanariahensyu

[カナリヤの變種

イ 野生のカナリア

ロハニ 飼養に依つて生じた變種]

[やぶちゃん注:「野生のカナリヤ」スズメ目アトリ科カナリア属カナリア Serinus canaria

「ロ」頭頂部の羽が冠状に立っていることから、ノーウィッチ・カナリア(Norwich canary)か。

「ハ」スタイル・カナリア(style canary)或いは「細カナリア」と呼ばれるものと思われる。

「ニ」もっとも一般的な品種であるレモン・カナリア(Lemon canary)。]

 

 例へば今日多く人に飼はれて居るカナリヤ鳥の如きは、人が始めて之を飼養してからまだ三百年にはならぬ位であるが、既に隨分多くの變種が出來て、白いのもあれば斑のもあり、頸の長いのもあり、毛の逆立つたのもあつて、非常に著しい相違が生じた。こゝに掲げた圖の中で、(イ)は野生のカナリヤ、(ニ)は我が國などで普通に飼養する純黃色の變種、(ロ)は頭の上に帽子の如き毛冠あるもの、(ハ)は體が細くて頸も尾も長い特別の變

種であるが、これらは澤山にある變種の中から少數を選み出したに過ぎぬ。

 その他七面鳥・モルモットの如きも比較的近い頃より人の飼ひ始めたものであるが、既に種々の變種が出來て居る。モルモットはもと南アメリカブラジル國の産であるが、今日ヨーロッパ・日本などで人の飼養して居るものは、最早ブラジル産の原種とは餘程違つて、その間には間(あひ)の子も出來ぬ位である。またマデイラ島の東北に當るポルト、サントーといふ島の兎は、今より五百年許前に、ヨーロッパから輸入したものであるが、今ではヨーロッパ産の兎とは全く違つて、動物學者によつては之を特別の一種と見倣す人もある位である。前に例に擧げたタンブラーと名づける鳩の一變種なども、確に一變種と人が認めるに至つたのは僅に今より四百年許前のことである。

[やぶちゃん注:「モルモット」ウィキの「モルモットによれば、齧歯目ヤマアラシ亜目テンジクネズミ上科テンジクネズミ科テンジクネズミ属モルモット Cavia porcellus は、『原産地は南米(ペルー南部、ボリビア南部、アルゼンチン北部、チリ北部)。古代インディオによって野生種を家畜化したものと言われている』とあり、パンパステンジクネズミ Cavia aperea・アマゾンテンジクネズミ Cavia fulgida・ペルーテンジクネズミ Cavia tschudii などと『近縁の野生種から』紀元前五千年頃の『アンデス地方で食肉用に家畜化されたと考えられてきたが、ミトコンドリアDNAのシトクロムb領域の比較から、ペルーテンジクネズミが起源となっていることが確実視されるようになった』。十六世紀に『スペイン人が南米に到達したときには、すでにインカ帝国で『クイ』という名で食肉用として家畜化されていた。現在では愛玩用や実験動物用とされることが多い』とある。

「マデイラ島」マデイラ諸島(ポルトガル語:Arquipélago da Madeira)は北大西洋上のマカロネシアに位置するポルトガル領の諸島で、ポルトガルの首都リスボンから見て、南西に約一千 キロメートルに位置する。

「ポルト、サントー」ポルト・サント島(Porto Santo)はポルトガル領マデイラ諸島の東北端にある島で、マデイラ島からは北東へ五〇キロメートルの位置にある。ウィキの「ポルト・サント島には、『ポルト・サント島はマデイラ諸島の中で最も初期に入植された。入植者は森林を切り開き、耕作やヤギの放牧を営んだ』。十五世紀半ばに『島を統治したバルトロメウ・ペレストレーリョが放ったウサギが制御不能なほど繁殖し、食料の調達ができなくなった島民は島を一時放棄した。島の自生植物はウサギによって全て食い荒らされ、その生態系へのダメージは以後回復することはなかった』ともある。]

 カナリアの變種でもポルト、サントーの兎でも比較的短い期限内に變化したのではあるが、一代一代の間に目に觸れぬ程の少しづゝの變化をなし、之が積り重なつて終に明な變種となつたのであるから、いつの間に變化したやら解らぬが、かやうなものの外、或るとき突然親と形狀・性質の著しく異なつた子が生れ、それが基となつて一變種の出來ることも往々ある。この種類の例で世に知られて居るものは決して少くないが、最も有名なものの一つ二つだけを擧げて見るに、千七百九十一年に米國のセス、ライトといふ農夫の所有して居た多くの羊の中に一疋形の異なつた子を産んだものがあつた。この子羊は胴が長くて足が短く、一見他の子羊とは大に體形が違つたが、之から出來た子孫は皆この羊の性質を受け繼いで胴が長く足が短くて、明に他の羊群とは異なつた一變種を成した。また南米パラグワイ國の「角なし牛」といふ牛の一變種は千七百七十年に突然生れた角なし牡牛の子孫である。

[やぶちゃん注:ここに出る羊の変種はアメリカン・メリノ種のことか?

『パラグワイ國の「角なし牛」』検索する限りでは、無角の「ネローレ・モッショ」と呼ばれるネローレ種の一種と思われる。]

 斯くの如く我々の飼養する動物には、突然變種を生じたものもあれば、また知らぬ間に漸々變種の出來たものもあるが、兎に角幾らかの變種を含まぬものは今日の所殆ど一種もない有樣で、この後尚何程の變種が出來るか解らぬといふことは、以上掲げた數個の例だけによつても明に解る。

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