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2016/03/25

偶作   原民喜

 偶 作   原 民喜

 

旅に來て

日輪の赤らむのを見た

朝は田家の霜に明けそめて

磯松原が澄んで居る

一色につづく海が寒さうだ

 

 冬 日

 

ここのこの橡(とち)の樹は

身の丈ほどの高さである

太い樹の机の

節々の圓い芽がついて居る

私のせには冬の日が

かんかんと照りつける

 

 春 雨

 

雨は宵に入つてから

一層靜かであつた

床についてからは

降るさまがよく描かれた

 

[やぶちゃん注:以上は、原民喜が大正一五(一九二六)年一月から五月まで発刊した詩の同人雑誌『春鶯囀』三号に載る(四号で廃刊するが、二号と三号の発刊月のクレジットは不詳である)。

 底本は一九七八年青土社刊「定本 原民喜全集 Ⅱ」を用いたが、戦前の作品なので恣意的に正字化した。活字のポイント差はママ。やはり前号などと同じく、総標題が「偶作」で、それが無題の序詞と小題「冬日」及び「春雨」の三連構成になっている一篇である。]

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