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2016/03/29

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 (序)

寺島良安「和漢三才図会」の「虫部」(私の最も生理的に苦手とする昆虫類である)の電子化注を始動する。

私は既に、こちら

卷第四十  寓類 恠類

及び

卷第四十五 龍蛇部 龍類 蛇類

卷第四十六 介甲部 龜類 鼈類 蟹類

卷第四十七 介貝部

卷第四十八 魚類 河湖有鱗魚

卷第四十九 魚類 江海有鱗魚

卷第五十  魚類 河湖無鱗魚

卷第五十一 魚類 江海無鱗魚

及び

卷第九十七 水草部 藻類 苔類

を電子化注している。総て、底本及び凡例は以上に準ずる(「卷第四十六 介甲部 龜類 鼈類 蟹類」を参照されたい)HTML版での、原文の熟語記号の漢字間のダッシュや頁の柱、注のあることを示す下線は五月蠅いだけなので、これを省略することとし、また、漢字は異体字との判別に迷う場合は原則、正字で示すこととする。また、私が恣意的に送った送り仮名の一部は特に記号で示さない(これも五月蠅くなるからである。但し、原典にない補塡字は従来通り、〔 〕で示し、難読字で読みを補った場合も〔( )〕で示した(読みは注を極力減らすために本文で意味が消化出来るように恣意的に和訓による当て読みをした箇所がある。その中には東洋文庫版現代語訳等を参考にさせて戴いた箇所もある)。原典の清音を濁音化した場合も特に断らない)。ポイントの違いは一部を除いて同ポイントとした。この「蟲部」は三巻分(第五十二から第五十四)で恐らく、異様に長い時間がかかる(言っておくが、本文は原文を見ながら総て私がタイプしている。活字を読み込んだものではない。私は平凡社東洋文庫版の現代語訳しか所持していないからである)。ゆっくらと、お付き合い戴ければ幸いである。【2016年3月29日始動 藪野直史】

 

 

和漢三才圖會卷第五十二

  蟲部

 

蟲【音仲】乃生物之微者其類甚繁有足曰蟲無足曰豸裸毛

 羽鱗介之總名也與虫字不同

虫【音毀】乃古虺字蛇之屬1文字象形然俗讀仲音以蛇虫

[やぶちゃん字注:「1」は以下の絵文字。画像は平凡社東洋文庫版(現代語訳)からトリミングした。]

Musi

 之虫爲蟲豸之蟲今順非通用【和名無之】

有外骨内骨却行仄行連行紆行之異

有羽毛鱗介裸之形胎卵風濕化之異

以脰鳴咮鳴旁鳴翼鳴腹鳴胸鳴者謂小蟲之屬

 蠢動有靈各具性氣也蟲部分爲三類卵生化生濕生

 本草綱目所載凡一百六種今刋遠而繁補近而洩者

 記之耳

蝦蟆於端午日知人取之必四遠逃遁 麝知人欲得香

 輙自抉其臍 蛤蚧爲人所捕輒自斷其尾 2蛇膽

[やぶちゃん字注:「2」=「虫」(へん)+「冉」(つくり)。以下、特に言わない場合はこの順列。]

 曾經割取者見人則坦腹呈創物類之有知惜命如此

 不獨雞之憚爲犧也

張子和云蟲之變皆以濕熱爲主得木氣乃生得雨氣乃

 化豈非風木主熱雨澤主濕即故五行之中皆有蟲

 諸木有蠹諸果有螬諸菽有3五穀有螟螣蝥4 麥

[やぶちゃん字注:「3」=「虫」+「方」。「4」(上)「財」+(下)「虫」。]

 朽蛾飛栗破蟲出草腐螢化皆木之蟲也 烈火有鼠

 爛灰生蠅皆火之蟲也 穴蟻墻蝎田螻石蜴皆土之

 蟲也 蝌蚪馬蛭魚鼈蛟龍皆水之蟲也 昔有冶工

 破一釜見其斷處白中有一蟲如米蟲色正赤此則金

 中亦有蟲也


 

和漢三才圖會卷第五十二

  蟲部

 

蟲は【音、仲。】、乃ち、生物の微なる者、其の類、甚だ繁く、足、有るを「蟲」と曰ふ。足、無きを「豸〔(ち)〕」と曰ふ。裸・毛・羽・鱗・介の總名なり。虫の字とは同じからず。

虫は【音、毀〔(き)〕。】、乃ち、古へ、「虺」の字。蛇の屬。「1」〔の〕文字、形に象〔(かた)〕どる。然るに、俗、「仲(ちゆう)」の音に讀んで、「蛇虫(じやき)」の虫を以て「蟲豸(ちゆうち)」の蟲と爲〔(な)〕す。今、非に順ひて通用す。【和名、無之〔(むし)〕。】

[やぶちゃん字注:「1」は以下の絵文字。画像は平凡社東洋文庫版(現代語訳)からトリミングした。]

Musi_2

外骨・内骨・却行・仄行〔(そくかう)〕・連行・紆行〔(うかう)〕の異、有り。

羽毛・鱗介・裸の形(かたち)、胎・卵・風・濕・化の異、有り。

脰(くびすぢ)にて鳴き、咮(くちばし)にて鳴き、旁〔(わき)〕にて鳴き、翼(つばさ)にて鳴き、腹にて鳴き、胸にて鳴く者を以て、小蟲の屬と謂ふ。

[やぶちゃん注:以下、原典本文で示した通り、本来は全体が一字下げ。以下、原文を示してあるので、この注は略す。]

蠢動〔(しゆんどう)〕、有靈〔(いうれい)〕、各々性氣を具(そな)ふ。蟲の部、分けて、三類と爲〔(し)〕、卵生・化生・濕生〔たり〕。

「本草綱目」に載する所、凡そ一百六種、今、遠くして繁〔なる〕を刋(けづ)り、近くして洩(もる)ゝ者を補ひて、之に記すのみ。

蝦蟆〔(がま)〕は端午の日に於て、人、之を取るを知りて、必ず四(よも)に遠く逃げ遁(のが)る。 麝(じやかうじか)は、人、香を得んと欲するを知りて、輙〔(すなは)〕ち、自〔(みづか)〕ら其の臍〔(へそ)〕を抉〔(えぐ)〕る。 蛤蚧〔(とかげ)〕は人の爲めに捕らはるれば、輒〔(すなは)〕ち、自ら其の尾を斷つ。 2蛇〔(にしきへび)〕の膽〔(きも)〕を曾て割(さ)き取(と)らへらる者は、人を見れば、則ち、腹を坦(たいら)かにして創(きず)を呈(しめ)す。物類の知有りて命を惜しむこと、此くのごとし。獨り雞〔(にはとり)〕の犧(いけにへ)と爲〔(な)〕ることを憚るにあらず。

[やぶちゃん字注:「2」=「虫」+「冉」。]

張子和が云はく、「蟲の變、皆、濕熱(しつ〔ねつ〕)を以て主と爲(す)。木氣を得て、乃ち、生〔(しやう)〕じ、雨氣を得て、乃ち、化す。豈に風木、熱を主〔つかさど〕り、雨澤、濕を主るに非ずや。即ち、故に、五行の中に、皆、蟲、有り。諸々〔(もろもろ)〕の木に蠹〔(きくひむし)〕有り、諸々の果(このみ)に螬〔(こくそむし)〕有り、諸々の菽〔(まめ)〕に3〔(ほう)〕有り、五穀に螟〔(ずゐむし)〕・螣〔(はくひむし)〕・蝥〔(ねきりむし)〕・4〔(ざい)〕有り。 麥は朽ちて、蛾、飛び、栗、破れて、蟲、出づ。草、腐(く)ちて、螢〔と〕化するは、皆、木の蟲なり。 烈火に、鼠、有り。爛灰〔(らんくわい)〕に蠅を生ずるは、皆、火の蟲なり。 穴の蟻(あり)・墻(かき)の蝎(かみきりむし)・田の螻(けら)・石の蜴(とかげ)、皆、土の蟲なり。 蝌蚪(かいるのこ)・馬蛭(うまびる)・魚鼈(すつぽん)・蛟龍(みづち)、皆、水の蟲なり。昔し、冶工(いものし)有り、破一つ釜を破り、其の斷てる處を見るに、白中に、一蟲、有り。米蟲(よねむし)のごとく、色、正赤なり。此れ、則ち、金の中にも亦、蟲、有る。」とあり。

[やぶちゃん字注:「3」=「虫」+「方」。「4」(上)「財」+(下)「虫」。]

 

[やぶちゃん注:虫の総論部。

・「豸」音は他に「ヂ・ダイ」。大修館書店「廣井漢和辭典」には、ながむし(長虫)・はいむし(這虫)、『足のない虫類の総称』とし、良安の言うように、蛇っぽいニュアンスである。

・「虺」は「廣井漢和辭典」によれば、音は「キ」まむし(爬虫綱有鱗目ヘビ亜目クサリヘビ科マムシ亜科マムシ属 Gloydius のマムシ類)、蜥蜴(とかげ)、ひばかり(ヘビ亜目ナミヘビ科ヒバカリ属ヒバカリ Amphiesma vibakari。本種や近縁種は皆、無毒蛇であるが、ウィキの「ヒバカリ」によれば、『性質は温和。しかし、追いつめられると噛みつくような激しい威嚇行為を行うので、かつては毒蛇と考えられ』ていた。『和名の「ヒバカリ」は、「噛まれたら命がその日ばかり」と考えられていたことに由来する』(太字は引用元)とある)、小さな蛇などとある。

・「1」の字形は、「廣井漢和辭典」の解字によれば、『獣が体をふせ、背を高くして、えものをねらっている形』とする。

・「蟲豸(ちうち)」足のない虫の意。

・「今、非に順ひて通用す」現在、その誤りをそのままに(直さずに)通用させている、以ての外、という、これは実は良安らしい謂い方なのである。

・「外骨」現行の昆虫類の外骨格に極めて近い。

・「内骨」現行の内骨格は大型哺乳類のそれであるが、この場合は、体表が柔らかく、内部に骨のような節構造を持つ(或いはそのように感じられる)虫類(この場合は昆虫に限定されない本草学上の「蟲類」である点に注意)を指していよう。

・「却行」後ろに後退するように、退くように動くこと。昆虫綱内翅上目アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ上科ウスバカゲロウ科 Myrmeleontidae に属する一部の種の幼生であるアリジゴク(ウスバカゲロウ類の総てがアリジゴク幼生を経る訳ではない)などはそうである(但し、アリジゴクも初齢幼虫の時には前進して餌を捕える)。

・「仄行」傾いて斜めや横に動くこと。

・「連行」個体群が連なって動くこと。

・「紆行」巡りくねって動くこと。

・「胎・卵・風・濕・化」通常の仏教上の生物学では「四生(ししょう)」と称して、胎生・卵生・湿生(湿気から生ずること。蚊や蛙がこれに相当すると考えられた)・化生(けしょう:自分の超自然的な力によって忽然と生ずること。天人や物怪の誕生、死者が地獄に生まれ変わることなどを指す)の四種を挙げるが、ここはさらに恐らくは中国の本草学上から、風生(風の気から生ずること)が加えられているようである。

・「旁〔(わき)〕にて鳴き」蟬などの鳴き方を指すものか。他のものもあまりよく判らない。中国の本草学は実証を伴わずに、やたらにまず分類ありきの傾向がある(と私は思っている)。

・「蠢動」蠕動して蠢(うごめ)くこと。

・「有靈〔(いうれい)〕」霊魂を持っていること。

・「性氣」区別し得る個別の性質・気質。

・「本草綱目」明の李時珍の薬物書。五十二巻。一五九六年頃の刊行。巻頭の巻一及び二は序例(総論)、巻三及び四は百病主治として各病症に合わせた薬を示し、巻五以降が薬物各論で、それぞれの起源に基づいた分類がなされている。収録薬種は千八百九十二種、図版千百九枚、処方に至っては、一万千九十六種にのぼる。

・「遠くして繁〔なる〕を刋(けづ)り、近くして洩(もる)ゝ者を補ひて」日本人とって疎遠な種や細分化するとやたらに煩雑な種は削って、卑近な種で、しかも「本草綱目」から漏れているもの(本邦固有種など)を補って。

・「蝦蟆〔(がま)〕端午の日に於て、人、之を取る」中国では現在でも旧暦の五月には五毒(サソリ・ヘビ・ムカデ・トカゲ・ガマガエル)が出没する季節だとされる。この場合は、まさにその五毒を目出度い節句に合わせて捕獲して殺すことで、招福を願うという謂いであろうと私は読む。ガマの油採りではあるまい(但し、本草上の薬物採取の謂いもないとはいえないが、実際上はヒキガエルの毒は強く、漢方薬方としては一般的ではない)。因みに日本で言う場合の「蝦蟇(がま)」は両生綱無尾目ナミガエル亜目ヒキガエル科ヒキガエル属ニホンヒキガエル Bufo japonicus を指し、彼らが皮膚から強い毒を分泌することは御存じであろうが、実は有毒蛇である爬虫綱有鱗目ヘビ亜目ナミヘビ科ヤマカガシ属ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus が頸部から分泌する毒は、本種の毒に耐性を持つヤマカガシが本種を摂餌した際、その毒を蓄積して再利用しているということはあまり知られているとは思われない(というよりも、未だに日本本土の毒蛇はマムシだけだと思っているお目出度い連中が多いと私は感じている。ヤマカガシに深く咬まれて(奥歯に毒腺は接続している)死亡した例が実際にあることも知らずに、である)

・「四(よも)」四方。

・「麝(じやかうじか)」哺乳綱鯨偶蹄目反芻亜目真反芻亜目ジャコウジカ科ジャコウジカ亜科ジャコウジカ(麝香鹿)属 Moschus の仲間。成獣のを誘うための性フェロモンを分泌する麝香腺を持つ。麝香腺は陰部と臍の間にある。無論、その嚢を抜き取って乾燥させたものが媚薬として人間が珍重する「麝香」である。

・「蛤蚧〔(とかげ)〕」音なら「ガフカイ(ごうかい)」。前の五毒の一つと捉えてもよいが、この場合、トカゲ類は広汎であり、漢方としても媚薬としてもポピュラーであるから、こっちは薬物としての採取の可能性が寧ろ、髙いようにも思われる。

・「2蛇〔(にしきへび)〕」「2」は「蚦」の俗字で、音なら「ゼンジヤ(ゼンジャ)・センジヤ(センジャ)」で「蚦」はまさにヘビ亜目ムカシヘビ上科ニシキヘビ科 Pythonidae に属する巨大蛇類を指す。

・「膽〔(きも)〕」これはもう漢方薬剤であろう。しかし、ここで「もう私の胆は取られましたよ」と腹を見せるニシキヘビというのは、何だか、妙に不憫である。

・「獨り雞〔(にはとり)〕の犧(いけにへ)と爲〔(な)〕る」アジアの農耕民の儀礼では、しばしばキジ目キジ科ヤケイ(野鶏)属セキショクヤケイ(赤色野鶏)亜種ニワトリ(鶏) Gallus gallus domesticus が生贄として神に捧げられる。

・「張子和」張志和(七三〇年?~八一〇年?)は中唐の詩人。字は子同。粛宗の時に待詔翰林に進んだが、事件に連座して左遷され、後に太湖の附近に隠棲、「煙波釣徒」と称した道家の徒であった。書画・音楽にも優れ、現在、その詩は殆んど残っていないものの、「漁歌子」など詞五首が知られる。著作には「玄真子」(十二巻)・「大易」十五巻があるので、ここはそれらの記載にあるものであろう。

・「濕熱」湿度と気温。

・「主と爲(す)」強い影響によって変化する。

・「木氣」五行の元素(エレメント)である、木・火・土・金・水に於ける、「木」に分類される「気」のこと。ここに限っては植物の「木」はイメージしない方が理解し易い。

・「雨氣」これは具体な「雨」(水分・湿気)を匂わせた五行の「水」に属する気である。

・「豈に風木、熱を主〔つかさど〕り、雨澤、濕を主るに非ずや」東洋文庫版では、『どうして風木(五行で風は木に属する)だけが熱を主(つかさど)り、雨沢だけが湿を主るということがあろうか』(雨沢は著しい水気のことか)とある。反語であって、「そうではない」、と言っているのであるが、要するに変化を起こさせるのは五行の「木」と「水」ではあるが、他の「火」「土」「金」のエレメントが掌っている(そこから生ずる)虫も当然、いる、というのである。

・「蠹〔(きくひむし)〕」現行の昆虫学では狭義には昆虫綱鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目 Cucujiformia 下目ゾウムシ上科キクイムシ科 Scolytidae に属する「木喰虫」を指すが、実際には恐らく、木質部や紙を食害する多食亜目ナガシンクイ上科シバンムシ科 Anobiidae に属する「死番虫」や、書物を食害するとされた昆虫綱シミ目 Thysanura の「紙魚」(実際には顕在的な食害は認められないのが事実である)の仲間をも含んでいるようである。

・「螬〔(こくそむし)〕」以下の「ねきりむし」までの読みは東洋文庫版を参考にさせて戴いた。地虫(じむし)。多食(カブトムシ)亜目コガネムシ下目コガネムシ上科コガネムシ科スジコガネ亜科スジコガネ族スジコガネ亜族コガネムシ属コガネムシ Mimela splendens などの甲虫類の幼虫に多い、地中で丸まった状態でいる不活発な虫を指す。

・「菽〔(まめ)〕」豆。マメ科植物の中でも人が食用にする大豆・小豆・隠元などを指し、狭義には特に大豆のこと。

・「3〔(ほう)〕」(「3」=「虫」+「方」)「廣漢和」にも載らない。東洋文庫版では『苗を食べる虫』という訳者の割注がある。

・「螟〔(ずゐむし)〕」昆虫綱 Panorpida上目チョウ目 Glossata 亜目 Heteroneura 下目メイガ上科メイガ科 Pyralidae に属するニカメイガ(二化螟蛾)Chilo suppressalis の幼虫など、水稲などの茎や芯葉に食入して食害する害虫を指す(食害されると枯死したり、不稔になったり、米が小さくなったりする)。和名は年二回発生(二化)することに由来する。

・「螣〔(はくひむし)〕」「廣漢和」にも載らない。中文サイトの字書に『專食苗葉的小青蟲』とある。いろいろとネット上の記載を見てみると、本邦ではどうも「芋虫」と同義的らしいという感じがする。そこでウィキの「イモムシ」を引いておく。『イモムシは、芋虫の意で、元来はサトイモの葉につくセスジスズメ』(鱗翅(チョウ)目スズメガ上科スズメガ科ホウジャク亜科コスズメ属セスジスズメ Theretra oldenlandiae)『やキイロスズメ』(スズメガ科コスズメ属キイロスズメ Theretra nessus)、『サツマイモの葉につくエビガラスズメ』(スズメガ科スズメガ亜科 Agrius Agrius convolvuli)『などの芋類の葉を食べるスズメガ科』(Sphingidae)『の幼虫を指す言葉である。決してイモのような風貌なのでイモムシなのではない。伝統的な日本人の食生活においてサトイモやサツマイモは穀物に次ぐ重要な主食作物であった。そのため、これらの葉を食害する巨大なスズメガ科の幼虫は、農村で農耕に携わる日本人にとって非常に印象深い昆虫であった。そのため、イモムシが毛の目立たないチョウやガの幼虫の代名詞として定着するに至ったと考えられる。よく名前の知られたイモムシには、ヨトウガ類』(鱗翅目ヤガ科ヨトウガ亜科 Hadeninae 或いはヨトウガ属 Mamestra の仲間)『の幼虫であるヨトウムシ』(夜盗虫:夜行性に由来)、『イチモンジセセリ』(鱗翅目セセリチョウ上科セセリチョウ科イチモンジセセリ属イチモンジセセリ(一文字挵:「せせる」は物をあちこち突っつきまわす意、「一文字」は後翅の裏の銀紋が一文字状に並んでいことに由来)Parnara guttata)はチョウ目(鱗翅目)セセリチョウ科に属するチョウの一種。特徴として後翅裏の銀紋が一文字状に並んでいるためこの名前がある。Parnara guttata)『等の幼虫でイネの害虫であるツトムシ、モンシロチョウ』(鱗翅目アゲハチョウ上科シロチョウ科シロチョウ亜科シロチョウ族モンシロチョウ属モンシロチョウPieris rapae)『の幼虫でキャベツ等を食害するアオムシ、シャクガ科』(鱗翅目シャクガ(尺蛾)科 Geometridae:幼虫の尺取虫に由来)『に属するガの幼虫のシャクトリムシ等がある』。

・「蝥〔(ねきりむし)〕」「根切り虫」は鱗翅目ヤガ科モンヤガ亜科 Agrotis 属カブラヤガ Agrotis segetum・同属タマナヤガ Agrotis ipsilon など、茎を食害するヤガ(夜蛾:ヤガ科 Noctuidae)の幼虫の総称で、一見すると、根を切られたように見えることからかく呼ばれているらしい。

・「4〔(ざい)〕」(「4」(上)「財」+(下)「虫」。)不詳。東洋文庫はルビさえ振っていない。識者の御教授を乞う。

・「麥は朽ちて、蛾、飛び」以下は化生の類いに含まれる生成と言える。

・「烈火に、鼠、有り」中国の想像上の生物である火鼠(ひねずみ)。「竹取物語」にも出る。ウィキの「火鼠」によれば、『火光獣(かこうじゅう)とも呼ばれ』、『南方の果ての火山の炎の中にある、不尽木(ふじんぼく)という燃え尽きない木の中に棲んでいるとされる。一説に、崑崙に棲むとも言われる』。『日本の江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では中国の『本草綱目』から引用し、中国西域および何息の火州(ひのしま)の山に、春夏に燃えて秋冬に消える野火があり、その中に生息すると述べられている』(そのうち、電子化する)。体重が約二百五十キログラムもある大鼠であって、毛の長さは五十センチメートルもあって、絹糸よりも細いとする。『火の中では身体が赤く、外に出ると白くなる。火の外に出ているときに水をかけると死んでしまうという』とある。

・「爛灰〔(らんばひ)〕」腐った灰。

・「墻(かき)」垣根。

・「蝎(かみきりむし)」カブトムシ亜目ハムシ上科カミキリムシ科 Cerambycidae のカミキリムシ(髪切虫)の類。

・「螻(けら)」直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目コオロギ上科ケラ科 Gryllotalpidae のケラ(螻蛄)類。

・「蝌蚪(かいるのこ)」の読みはママ。

・「馬蛭(うまびる)」教義のそれは、環形動物門環帯(ヒル)綱ヒル亜綱吻無蛭目ヒルド科 Whitmania 属ウマビルWhitmania pigra。オリーブ色の地に五本の黒い縦線をもつ派手なヒルで、体長一〇~一五センチメートル、中央部の体幅 二センチメートル内外と大きく、体は長い紡錘形で扁平。腹面には黒い斑点が縦に並び、側縁は淡黄色とおどろおどろしいが、実は貝類を摂餌し、非吸血性である。ここで言っているのはしかし、恐らくは見た目が良く似ている吸血性のチスイビル Hirudo nipponica のことではなかろうかと思われる。

・「魚鼈(すつぽん)」音は「ギヨベツ(ギョベツ)」で、カメ目潜頸亜目スッポン上科スッポン科スッポン亜科キョクトウスッポン属 Pelodiscus に属するスッポン(鼈)類。

・「蛟龍(みづち)」音は「カウリヨウ(コウリョウ)」(「リュウ」は慣用音)中国の龍の一種。或いは、姿が変態する龍の類の子(成長過程の幼齢期又は未成個体)ともされる。

・「冶工(いものし)」鋳物師。

・「米蟲(よねむし)」甲虫(コウチュウ)目多食亜目ゾウムシ上科オサゾウムシ科オサゾウムシ亜科コクゾウムシ族コクゾウムシ属コクゾウムシ Sitophilus zeamais としておく。和名は突出した口刎が象の鼻のように見えることに由来する。ウィキの「コクゾウムシによれば、『口吻で穀物に穴をあけて産卵し、孵化した幼虫は穀物を食い荒らす。気温が』摂氏十八度以下『であると活動が休止』、二十三度以上『になると活発に活動する』。一匹の『メスが一生に産む卵は』200個以上『とされる』。『米びつに紛れ込んだ場合、成虫は黒色なので気がつきやすいが、幼虫は白色なので気づきにくい』。但し、『どちらも水に浮くので慎重に米研ぎをすれば気づくことがある。もし万が一気づかずに炊いてしまったり、食べてしまっても害はない』。『赤褐色のコクゾウムシは、農家の間では越冬コクゾウムシ(冬を越している)、暗褐色はその年に孵化したものと言われている。(確証は低いが大体の農家はそのように判別していることが多い) また、光に反応するため、米に虫が湧いたという状態になった場合は、ムシロに米を広げてコクゾウムシを排除する方法をとっている』とあるが、私は一度、そうして排除し、十分に乾燥させた米を炊いて食ってみたことがあるが、言語を絶する不味さで、総て捨てた(恐らく彼らの排泄物によって汚染されていたものであろう)。最後に。

 

穀象の群を天より見るごとく

 

穀象を九天高く手の上に

 

數百と數ふ穀象くらがりへ

 

穀象に大小ありてああ急ぐ

 

穀象の逃ぐる板の間むずがゆし

 

穀象の一匹だにもふりむかず

 

穀象と生れしものを見つつ愛す

 

総て、偏愛する西東三鬼のである(リンク先は「やぶちゃん正字化版西東三鬼句集」)。]

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