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2016/03/31

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 赤翅蜂

Akabati

あかはち

赤翅蜂

チッ ツウ フヲン

 

本綱赤翅蜂狀如土蜂翅赤頭黒大如螃蟹穿土爲窠食

蜘蛛蜘蛛遙知蜂來皆狼狽藏隱蜂以預知其處食之無

獨蜂 作窠於木其窠大如鵞卵皮厚蒼黃色只有一箇

 蜂人馬被螫立亡也

蜂 在褰鼻蛇穴内其毒倍常中人手胸即圮裂非方

藥可療惟禁術可制

[やぶちゃん字注:「」=「虫」+「各」。]

獨脚蜂 在嶺南似小蜂黒色一足連樹根不得去不能

 動揺

又有獨脚蟻是亦如此蓋嶺南有樹小兒樹蛺蝶及此蜂

蟻皆生於樹是亦氣化乃無情而生有情也

 

 

あかばち

赤翅蜂

チッ ツウ フヲン

 

「本綱」、赤翅蜂、狀、土蜂のごとく、翅、赤くして、頭、黒く、大いさ、螃蟹〔(かに)〕のごとく、土を穿ちて窠と爲し、蜘蛛を食ふ。蜘蛛、遙かに蜂の來ることを知りて、皆、狼狽(うろた)へて藏(かく)れ隱(かく)る。蜂、以預(あらかじ)め、其の處を知り、之〔(れを)〕食ひて、遺(のこ)すこと無し。

獨蜂 窠を木に作る。其の窠の大いさ、鵞卵のごとし。皮、厚く、蒼黃色にして、只だ、一箇の蜂、有り。人馬、螫されて立処に亡〔(し)〕す。

蜂〔(らくほう)〕 褰鼻蛇〔(けんびだ)〕の穴の内に在り。其の毒、常に倍す。人の手・胸に中〔(あた)〕れば、即ち、圮(やぶ)れ裂く。方藥の療すべきに非ず。惟だ禁術(まじな)ひて制すべし。

[やぶちゃん字注:「」=「虫」+「各」。]

獨脚(かたあし)蜂 嶺南に在り。小蜂に似て、黒色、一足。樹の根に連なりて、去ることを得ず、動揺すること、能はず。

又、獨脚(ひとつあし)の蟻、有り。是れも亦、此くのごとし。蓋し、嶺南に〔は〕樹小兒〔(じゆしやうに)〕・樹蛺蝶〔(じゆけふてふ)〕、有り、及び、此の蜂・蟻〔も〕皆、樹より生(しやう)ず。是れも亦、氣化なり。乃〔(すなは)〕ち、無情より有情を生ずるなり。

 

[やぶちゃん注:いろいろ探ってみると、この「赤翅蜂」とは、クモを襲うという限定的習性に着目するなら、

膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目ミツバチ上科ギングチバチ科ギングチバチ亜科ジガバチモドキ属 Trypoxylon のジガバチモドキ類

と判定する。「モドキ」とあるぐらいで、実は細腰(ハチ)亜目アナバチ科ジガバチ亜科ジガバチ族 Ammophilini とは形状が酷似しながら、科のタクサで異なる全くの別種であるので注意されたい。調べた限りではジガバチモドキ類は総てがクモを狩るようである。但し、彼らの多くは、土中ではなく、竹や木の孔の中に営巣産卵(例の麻酔されたクモに産卵してそれを封入するタイプの寄生蜂である)するようである。翅ではないが、スリムな腹部上部が鮮やかな赤い色をしている但し、ウィキの「ジガバチによれば、アナバチ『科で似た生態だがジガバチ亜科でない』キゴシジガバチ亜科の『Sceliphron 属はクモを捕る』とはあるので、これも同定候補とはなる(但し、封入は土中と思われる)。

「螃蟹〔(かに)〕」は現代中国語でも広く甲殻亜門軟甲綱真軟甲亜綱ホンエビ上目十脚(エビ)目抱卵(エビ)亜目短尾(カニ)下目 Brachyura に属するカニ類を指す。

「褰鼻蛇〔(けんびだ)〕」東洋文庫版では『白花蛇。中国南方山中にいる』と割注するが、これは有鱗目ヘビ亜目ナミヘビ上科クサリヘビ科マムシ亜科ヒャッポダ属ヒャッポダ Deinagkistrodon acutus のことである。「百歩蛇」でこれは、咬まれると百歩歩くうちに死ぬとされる伝説的な実在する毒蛇である(但し、後で引用するが、毒性そのものは強くはない)。ウィキの「ヒャッポダ」によれば、特に台湾で「百歩蛇」と呼ばれ、『日本名、英名もこれに準ずる。中国では』「白花蛇」「百花蛇」「五歩蛇」「七歩蛇」とも、また、その独特の頭部の形状から「尖吻蝮」(音なら「センフンフク」)とも呼ぶ。分布は『中国(南東部、海南島)、台湾、ベトナム』で全長は八〇~一二〇センチメートル、『ニホンマムシと同じく、全長に比して胴が太く体形は太短い。体色は濃褐色で、暗褐色の三角形に縁取られた明色の斑紋が入る。この斑紋は落ち葉の中では保護色になる。鱗には隆起(キール)が入る』。『頭部は三角形で吻端は尖り、上方に反り返っている。目は金色で細い縦長の瞳を持つ』。『毒自体の強さは高くないが、毒の量が多く』、咬まれた場合は危険である。『山地の森林に住み、特に水辺を好む。動きは緩怠』。『食性は動物食で、ネズミ、鳥類、カエル等を食べ』、『繁殖形態は卵生で』、一回で二十~三十個を産卵する。『数が少なく、蛇取りもなかなかお目に掛かることがないため、幻の蛇と呼ばれている』。

「獨蜂」前の章の「露蜂房」に既出。不詳。

蜂〔(らくほう)〕」不詳。強烈な毒性(或いはアナフラキシー・ショック。人の手や胸にちょっと刺さっただけでそこが爛れ破れて裂け、本草記載であり乍ら、処方箋もないと匙を投げ、あろうことか、呪(まじな)いしか手はない、とは何ちゅうこっちゃ! と義憤に駆られるのだが、これは実はまさに劇症型のアナフラキシー・ショックを連想させるようでもあるのである)からやはりオオスズメバチの類いであるか。

「其の毒、常に倍す」他の蜂に比すと、という意。強毒ヒャッポダの強毒共生することによる毒の強化という連想、所謂、「類感呪術」的な似非本草家が思いつきそうな――何だかな――ではある。しかし、よく想像してみると、ヒャッポダがとぐろを巻いている色とその形は、スズメバチ類が地面や木の洞(うろ)の中に作る円盤状の何層もの大きな巣を、どこか連想させる。これこそまさに「類感」なのではなかろうか? などと妄想してしまった。

「獨脚(かたあし)蜂」この名前は、現行では前にも出した膜翅(ハチ)目広腰(ハバチ)亜目キバチ上科キバチ科キバチ亜科 Siricinae のキバチ(木蜂)類を指す。キバチ類は腹端に角状の有意に長い突起を持つが、それを一本足と見立てたものだろうか?

「嶺南」現在の広東省・広西チワン族自治区の全域と湖南省及び江西省の一部に相当する地域の古称。

「黒色、一足。樹の根に連なりて、去ることを得ず、動揺すること、能はず」……真黒で一本足で木の根っこに連なっている……ように見えるというのは……これ、地面の中に根を張っているように見え……そこから直立して生えているように見えるということだろ?……しかもそれは蜂なんだよ……確かに蜂なんだよ!……だのに、羽根を広げてそこから飛び立つことも出来ず……微動だにしないんだよ!……どうも、これ……おかしいぞ?!……これは……特定の蜂に寄生する「冬虫夏草」じゃあ、あるまいか? おった!おった!ズバリ! 菌界子嚢菌門チャワンタケ亜門フンタマカビ綱ボタンタケ亜綱ボタンタケ目オフィオコルディケプス科オフィオコルディケプス属ハチタケ Ophiocordyceps sphecocephala つぅがおるやないかい!(画像も発見したが、エグいのでパス)

「獨脚(ひとつあし)の蟻」特定のアリの「冬虫夏草」じゃねえか? 凄いのがいるぞ! アリに寄生してアリを操作して適切な場所に移動させて(!)発芽するちゅう Ophiocordyceps属のとんでもない奴が!(やはり画像も発見したが、エグいのでパス)

「樹小兒〔(じゆしやうに)〕」これもい小さな人の形に見える「冬虫夏草」か、或いは、最近、日本でも問題になった、触れただけで毒にやられる(!)ちゅう、子嚢菌門カノコカビ綱ニクザキン目ニクザキン科ニクザキン属カエンタケ Hypocrea cornu-damae なんてどうよ! 俺にはありゃ、赤い腹掛けした子どものようにも見えるで!(これも画像はワンサカあるが、色も形も結構、強烈なのでパス)

「樹蛺蝶〔(じゆけふてふ)〕」…………人の小躍りに水を注すものを見つけてしまった……この「蛺蝶」に東洋文庫版現代語訳は『あげはちょう』とルビするんだわ(悔しいから言わしてもらうとや! 「樹」は何やねん!)……鱗翅(チョウ)目アゲハチョウ上科アゲハチョウ科 Papilionidae のことだね……しかも……さらに調べてみるとだな……「蛺蝶」はこれで普通に「たてはちょう」、鱗翅目アゲハチョウ上科タテハチョウ科 Nymphalidae と読むことも知っちまったんだわ……でもなぁ、やっぱさ……「樹」が頭についとるやで! 動かんのやで! ぴくりともせえへんのやで! 「冬虫夏草」なら、総て丸く収まるんだけどなぁ……(ト、筆者、未だ納得出来ぬ風にて、下手へすごすごと退場)

「氣化」五行説や漢方医学で、ある物質を別の物質に変化させる気の働きを言う語。以下にように「無情より有情を生ずる」という驚くべき「化生(けしょう)」(仏教の謂い)のことらしい。]

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