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2016/04/15

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 水蠆

Yago

たいこむし  水蠆

水蠆   【俗云太以

       古無之】

シユイ タイ

 

本綱水蠆長身如蝎能變蜻蜓【附于水馬下】蜻蜓仍交于水上

附物散卵復爲水蠆也

按水蠆形畧似蟷蜋而灰黑色露眼無翅六脚纎長前

 二脚附吻而似髭亦如手毎若打太皷貌故俗呼曰太

 皷蟲二尾纎長一齋長於身常蚑行泥中夏月緣於草

 晒身於旭乃背裂蜻蛉出去則爲蛻也蓋水蠆乃卵生

 蜻蛉乃化生者矣

 本綱所謂如蝎之蝎字當作蠍【蝎木蠹也 蠍蠆尾蟲也】

 

 

たいこむし  水蠆〔(すいたい)〕

水蠆   【俗に云ふ、太以古無之〔(たいこむし)〕。】

シユイ タイ

 

「本綱」、水蠆の長き身、蝎〔(かつ)〕のごとく、能く蜻蜓〔(とんぼ)〕に變ず【「水馬」の下に附す。】。蜻蜓、仍〔(よつ)〕て水上に交〔(まぐわ)〕ひて物に附きて卵を散じ、復た水蠆と爲るなり。

按ずるに、水蠆は形ち、畧〔(ほぼ)〕、蟷蜋〔(かまきり)〕に似て、灰黑色。露(あらは)なる眼、翅、無く、六つの脚、纎(ほそ)く長く、前の二つの脚、吻(くちのわき)に附きて髭に似て、亦た、手のごとし。毎〔(つね)〕に太皷〔(たいこ)〕を打つ貌〔(かたち)〕のごとし。故え、俗に呼んで「太皷蟲」と曰ふ。二尾つの纎長(ほそ〔なが〕)く、一齋に、身より長し。常に泥の中を蚑(は)い行き、夏月、草に緣(はいのぼ)り、身を旭(あさひ)に晒し、乃ち、背、裂(さ)けて、蜻蛉、出で去れば、則ち、蛻(ぬけがら)と爲るなり。蓋し、水蠆は、乃ち、卵生、蜻蛉は、乃ち、化生なる者なり。

 「本綱」に、所謂る、蝎のごとし、と云ふ之の「蝎」の字、當に「蠍」に作るべし【「蝎」は「木蠹〔(きくひむし)〕」なり。「蠍」は「蠆尾蟲(さそり)」なり。】。

 

[やぶちゃん注:蜻蛉(トンボ)目 Odonata 或いはその中でも特に、不均翅(トンボ)亜目 Anisoptera に属するトンボの類の、肉食性の幼虫の通称(俗称)である「ヤゴ」(現行でも「水蠆」と漢字表記し、中国語でも同じ)のこと。ウィキの「ヤゴによれば、『語源は成虫であるトンボを表す「ヤンマの子」を略して「ヤゴ」と称された』とある。『昆虫の幼虫の中には、成虫とはとても異なる姿のものがあり、それらの中で、昔からよく知られているものには、成虫とは別名で呼ばれているものが存在する。ヤゴもそのひとつで、成虫とは外見や生態は全く異なるがトンボ目の幼虫である。ただし、トンボ目の中でもイトトンボ亜目(均翅亜目)』(Zygoptera)『の幼虫は姿が随分異なり、恐らく本来のヤゴはこれを指すものではなかったのではないか、とする説がある。しかし、現在ではトンボ目の幼虫を総じてヤゴと呼ぶ場合が多い』。『トンボはすべて空中での生活に高度に適応した陸生動物であるが、その幼虫であるヤゴは、水中に生息する水生昆虫である。不完全変態であるから、基本的には成虫とさほど変わらない構造をしているはずであり、実際、余計な付属肢があったりもしないし、翅も小さなものが背面に出ている。しかし外見は大きく異なり、一見すると軽やかに空を飛ぶ成虫からは想像できない姿をしている。肉食で、主に小型の水棲昆虫を食べる。小魚の体液を吸うこともある』。『様々な形のものがあるが、共通する特徴としては以下が挙げられる』。『下唇が折り畳み式になっており、先端にある鋏状の牙で獲物を捕らえることができる。ヤゴはすべて肉食で、普段は折り畳まれている下唇を瞬時に伸ばすことで離れた距離から獲物を捕食する。そのスピードと精度は日本国内の水生昆虫の中では屈指であり、狩りのスケールを度外視すれば非常に獰猛な捕食者と言って差し支えない』。『鰓があり、呼吸のために空気に触れる必要がない(鰓を体内に持つ種類もいる)』。『水生昆虫の脚部は泳ぐことに適した形になっているものが多いが、ヤゴの脚はむしろ水底を歩くのに適した形をしており、水生昆虫としてはあまり泳ぎが得意な方ではない。これはヤゴが泳ぐ際には脚を使わないこととも関係している。但し、水からすくい上げると存外しっかりとした足取りで歩けるものも多い。また、脚関節が全て前方に曲がるようになっている』。『幼虫の期間は数週間のものから数年に及ぶものまでさまざまであるが、最終的にはヤゴが陸に登って羽化し、成虫(トンボ)となる。ヤゴのいる水辺を探せば、その時の抜け殻を探すことができる。羽化を行うとき、トンボ、ヤンマ』(不均翅(トンボ)亜目ヤンマ上科ヤンマ科 Aeshnidae)、『イトトンボなどは脱皮の際に抜け殻に腹部で引っかかることによって背後に向けてぶら下がる姿勢を取るので、ほぼ垂直な面で頭を上に向けてとまる。これに対して、サナエトンボ類』(ヤンマ上科サナエトンボ科 Gomphidae)『は抜け殻から腹部を使って立ち上がった姿勢をとって、ぶら下がらないので、ほぼ水平な面にとまる』。『トンボ類は、その多くがよく似た姿で、分類群の違いに基づく外見上の差は大きくない。トンボ亜目かイトトンボ亜目かがはっきり判別できる以外は、あまり変わり映えがしない。しかし、ヤゴにおいては、その姿は大きく異なり、分類群によってはっきりとした差が見られる。例えば、ギンヤンマ』(ヤンマ科ギンヤンマ属ギンヤンマ亜種(東アジア産)Anax parthenope julius)・オニヤンマ(オニヤンマ科オニヤンマ属オニヤンマ Anotogaster sieboldii))・コオニヤンマ(サナエトンボ科 Hageniinae亜科コオニヤンマ属コオニヤンマ Sieboldius albardae)を『並べると、成虫ではこれらが別の科に属することは、専門家でなければ分からないだろう。逆に、これらの幼虫だけを並べて見れば、それが同じ仲間であると考えるものはいないだろう』とある。外見上では、イトトンボ亜目とトンボ亜目との差が大きい。ムカシトンボ類』(均翅不均翅(ムカシトンボ)亜目ムカシトンボ科 Epiophlebiidae 或いは同科ムカシトンボ属 Epiophlebia に属するもの)『の幼虫は、トンボ目の、特にサナエトンボ類のそれに近い』とし、イトトンボ亜目の『イトトンボ、カワトンボ類』(カワトンボ上科カワトンボ科 Calopterygidae に属するもの)『のヤゴは、外見が一般的なヤゴとははっきり異なる。頭は左右に長い棒状で、体は前後に細長い棒状、あるいは管状になっている。短い体のものもあるが、幅広くはならない。足は細長く、それを使って歩くが、全身をくねらせて泳ぐものもある。一般にイトトンボ類は体が細長く、柔らかな感じで、褐色から緑に近い色をしている。カワトンボ類は細いがやや短い体で、がっしりとしており、茶褐色から黒っぽい色をしている』。『特に目立つ特徴は、腹部末端に細長くて扁平な気管鰓があることである。この鰓は背中側に一つ、腹側左右に一つ、合計三つあって、内部には気管が入り込み、細かく枝分かれしている。この鰓は自切することができて、捕まえた時など、たやすく外れてしまうが、幼虫の生存には影響ないようである』。『また、この類のミナミカワトンボ科』(Euphaeidae)『のヤゴは渓流に生息し、体はやや偏平で、その姿は渓流性のカゲロウの幼虫にやや似る。また、腹部の下面に、節ごとに対になった細い腹鰓をもつ。これは、腹部の付属肢に由来するもので、トンボ目では他に例がない。節足動物は一般に体節ごとに一対の付属肢を持つのが基本である。昆虫においてもそうで、祖先は腹部の体節にも付属肢を持っていたものが、退化してなくなったものと考えられる。幼虫では腹部に付属肢を持つものもあるが、トンボではこの類以外では全く見られない。したがって、それがなんらかの形で残っていることは、原始的特徴と見なしてよい』。以下、トンボ亜目一般のヤゴ。『トンボ亜目のヤゴは、体は太短く、あまり体をくねらせて泳いだりはしない。腹部末端には尾肢などが刺状の突起の束となっている。外には鰓がなく、呼吸は直腸の内側に皺状の突起となっている気管鰓で行う。呼吸のための水は肛門から吸い込み、また肛門から吹き出す。この水の噴出を使って、ジェット推進の要領で素早く泳ぐこともできる。外見は、下位グループごとにかなり違っている』。サナエトンボ科のそれは、『一般に細長い体でやや偏平、足は短め。砂や泥にもぐるものが多く、動きはにぶい。中でもコオニヤンマの幼虫は腹部が団扇状に広がる上、触角も団扇のようになった特異な姿である』。ムカシヤンマ科(Petaluridae)・オニヤンマ科(Cordulegastridae)では、『円筒形で長い体、足は長くない。全身に短い毛がはえている』。ヤンマ科(Aeshnidae:前にも述べたが「ヤンマ」と「オニヤンマ」は科のタクサで異なるので要注意)は、『円筒形で、頭と胴の間がややくびれる。頭は丸くて、目が大きい。全身が滑らかなものが多い。動きは俊敏な方』。エゾトンボ科(Corduliidae)は、『体は偏平で前後に短い。足が長く、アシダカグモか何かのように見えるものがある』。トンボ科(Libellulidae)一般は、『中庸なヤゴ。体は楕円形くらい、やや偏平。足はそこそこか、やや長い』とある。

 

・「たいこむし」本文で解説されている通り、前肢を動かすさまを和太鼓を打つそれに喩えた和名。

・「蝎〔(かつ)〕」後で字解するように蠍、サソリ類(節足動物門鋏角亜門クモ綱サソリ目 Scorpiones)のこと。まぁ、似てるちゃあ、似てるか。

・『「水馬」の下に附す』正確には「本草綱目」の「蟲之四」の「濕生類」に「水黽」(すいばう(すいぼう)/すいまう(すいもう)」として出る。但し、以下に見る通り。別名を「水馬」とする。

   *

水黽【拾遺】

釋名 水馬【拾遺】。

集解 水黽群游水上、水涸即飛。長寸許、四脚。亦名水馬、非「海中主産難」海馬之水。時珍曰、水蟲甚多、此類亦有數種。今有一種水爬蟲、扁身大腹而背硬者、即此也。水爬、水馬之訛耳。一種水蠆、長身如蠍、能變蜻蜓。

氣味 有毒。

主治 令人不渴、殺雞犬【藏器】。

   *

但し、これは時珍も述べている通り、広汎な水棲昆虫(昆虫類の水棲幼虫を含む)を指し、オーソドックスな「水黽」は寧ろ(私などでも)、半翅(カメムシ)目異翅(カメムシ)亜目アメンボ下目アメンボ上科アメンボ科 Gerridae のアメンボ類を真っ先に想起する。

・「吻(くちにわき)」口の脇。前の引用で判る通り、これは鬚(触角)や前肢ではなく、発達した下唇(下顎)であるので、注意されたい。

・「二尾つの纎長(ほそ〔なが〕)く、一齋に、身より長し」均翅(イトトンボ)亜目のイトトンボ類・カワトンボ類のヤゴは体部が有意に細長く、腹の先に三つ(「二尾」は観察の不注意)の「尾鰓(びさい)」を持っており、ここで水中の溶存酸素を吸収するがそれを指すのであろう。それにしても身体より長いというのはちょっと誇大表現であろう。不均翅(トンボ)亜目では体部が遙かに太めで、しかも尾鰓を持たないので当て嵌まらない(側棘(そっきょく)という棘状突起が尾部にあるにはあるものの、極めて微小である)。

・「蚑(は)い」「い」はママ。這い。

・「緣(はいのぼ)り」這い登り。

・「蓋し、水蠆は、乃ち、卵生、蜻蛉は、乃ち、化生なる者なり」なるほどね、生活環のそのステージだけを観察し、それを発生説と結びつけると、そうなるわけか! 面白い!

・「蝎のごとし」蛇蝎(だかつ)の如く忌み嫌う、と言う、あれですよ、あれ。

・「木蠹〔(きくひむし)〕」複数既出既注

・「「蠆尾蟲(さそり)」この「サソリ」のルビは左側に附されてある。]

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