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2016/04/05

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 蠶

Kaiko

かいこ   蠺【俗】

【音慙】【和名 賀比古】

      俗作蚕字非

      也蚕【音腆】蚯蚓

      之名也

ツアン

[やぶちゃん字注:私の持つ底本では中国音が表示されていないので、東洋文庫版で補った。]

 

本綱蠶病風死其色白故自死者名白殭蠶【死而不朽曰殭】再養

者曰原蠶【奈都古】蠶之屎曰沙皮曰蛻甕曰繭【末由】蛹曰1【音龜】

[やぶちゃん字注:「1」=「虫」+「鬼」。]

蛾曰羅卵曰2蠶初出曰3【音苗】蠶紙曰連

[やぶちゃん字注:「2」=「虫」+「允」。「3」=「虫」+「少」。]

其種類甚多有大小白烏斑色之異屬陽喜燥惡濕食而

不飮三眠三起二十七日而老自卵出而爲3自3蛻而

爲蠶蠶而繭繭而蛹蛹而䖸䖸而卵卵而復

又有胎生蠶與母同老蓋神蟲也凡諸草木皆有4蠋之

[やぶちゃん注:「4」=「虫」+「厄」。]

類食葉吐絲不如蠶絲可以衣被天下故莫得並稱

 

 
[やぶちゃん注:以下、ここは下部を分けて、一段とした。]

 
かいこ        

【音。慙〔(ざん)〕】

 蠺【俗。】

ツアン

 

【和名 賀比古〔(かひこ)〕。】

俗に「蚕」の字に作〔るは〕非なり。「蚕」【音、腆〔(てん)〕。】は「蚯蚓〔(みみづ)〕」の名なり。

 

「本綱」、蠶、風を病みて死す。其の色、白し。故に自死の者を「白殭蠶〔(びやくきやうさん)〕」と名づく【死して朽らずを「殭」と曰ふ。】。再び養ひする者を「原蠶(なつご)」【奈都古。】と曰ふ。蠶の屎〔(くそ)〕を「沙」と曰ひ、皮を「蛻〔(だつ)〕」と曰ひ、甕〔(かめ)〕を「繭(まゆ)」【末由。】と曰ひ、蛹〔(さなぎ)〕を「1〔(き)〕」【音、龜。】と曰ひ、蛾を「羅」と曰ひ、卵を「2〔(いん)〕」と曰ひ、蠶の初めて出づるを「3〔(びやう)〕」【音、苗。】と曰ひ、蠶紙〔(さんし)〕を「連」と曰ふ。

[やぶちゃん字注:「1」=「虫」+「鬼」。「2」=「虫」+「允」。「3」=「虫」+「少」。]

其の種類、甚だ多し。大小、白・烏〔(う)〕・斑(まだら)〔と〕色の異、有り。陽に屬し、燥を喜(この)み、濕を惡〔(にく)〕む。食して飮まず。三たび眠〔り〕、三たび起く。二十七日にして老〔(ろう)〕す。卵より出でて3と爲〔(な)〕り、3より蛻(ぬ)けて蠶と爲る。蠶にして繭、繭にして蛹、蛹にして䖸〔(が)〕、䖸にして卵、卵にして復た3〔たり〕。

又、胎生の蠶、有り、母と老〔ゆるを〕同じくす。蓋し、神蟲なり。凡そ諸草木、皆、4〔(いもむし)〕・蠋〔(けむし)〕の類、有り。葉を食ひ、絲を吐〔くも〕、蠶絲〔(さんし)〕の天下に衣被〔(いひ)〕すべきがごときにあらず。故に、並び稱するを得る〔もの〕莫し。

[やぶちゃん注:「4」=「虫」+「厄」。]

 

[やぶちゃん注:鱗翅目カイコガ科カイコガ亜科カイコガ属カイコガ Bombyx mori の総論部である(以下、「白殭蠶(びやつきやうさん)」「原蠶(なつご)」「繭(まゆ)」「雪蠶(せつさん)」「水蠶」「石蠶」「海蠶」と続く)。

・『俗に「蚕」の字に作〔るは〕非なり。「蚕」【音、腆〔(てん)〕。】は「蚯蚓〔(みみづ)〕」の名なり』「廣漢和辭典」によれば、現在、我々が常用漢字として用いている「蚕」という字は、本来はかの環形動物門貧毛綱 Oligochaeta のミミズ類を指す語であった。但し、中国でも古くから「蠶」の俗字としても使用されていたことが、同辞典の最初の掲げる「かいこ(かひこ)」の意のパートに「説文」「廣韻」「詩経」「書経」からの例が引かれていることからも判る。因みに、「蠶」という字は形声文字で、上半分は「隠れる」の意で、糸を吐いて自身を隠し、繭を作るカイコの意を表したものとある。因みに、「蠶」は音「サン・ザン」であるのに対し、「蚕」の方はそれを音「テン」と読んだ場合に限って「蚯蚓(みみず)」の意となる。良安先生、凄いワ!

・「風を病みて死す」この風は冷気と湿気を含んだそれか。なお、現在の専門学術記載その他を管見したところ、カイコが罹患する疾患には以下のようなものがある。

感染症

核多角体病(膿病)・細胞質多角体病・伝染性軟化病・濃核病(病原はウィルス)

細菌性消化器病・卒倒病・敗血症(病原は細菌)

白殭病・黄殭病・緑殭病・コウジカビ病(病原は糸状菌(カビ類))

微粒子病(病原は原虫)

寄生虫病

きょうそ病(ひらがな表記で確認出来ないが、これは「殭蛆」ではあるまいか?)・多化性蚕蛆(さんそ)病(病原は昆虫。孰れも寄生性のハエ類)

シラミダニ病(病原はダニ類)

中毒症

タバコ中毒症・農薬中毒症(前者も後者もカイコの餌とする桑畑に近隣で栽培するタバコのニコチン成分、或いは散布された農薬成分が浸透、それを摂餌することによる化学的中毒である)

こらを考えると、目に見えない「風」に乗った目に見えない「ウィルス」「細菌」「カビ」「原虫」及び化学物質、さらに「風」に乗って入りこんだ、目につきにくい小さな蠅が産み附けた卵から孵化した幼虫に侵されていくという事実は、これまさに「風の病い」と言って私はおかしくないと思うのである。

・「自死の者を「白殭蠶〔(びやくきやうさん)〕」と名づく」自死とするのは、原因が分からないからであろう。これはしかし、先に掲げた「白殭病」と酷似する。但し、実はそれ以外に、ウィキの「カイコ」によると、『多くの品種の幼虫は』、五齢で『終齢を迎え、蛹(さなぎ)となる。蛹化が近づくと、体はクリーム色に近い半透明に変わる。カイコは繭を作るのに適した隙間を求めて歩き回るようになり、摂食した餌をすべて糞として排泄してしまう。やがて口から絹糸を出し、頭部を字型に動かしながら米俵型の繭を作り、その中で蛹化する。絹糸は唾液腺の変化した絹糸腺(けんしせん)という器官で作られる。後部絹糸腺では糸の主体となるフィブロインが合成される。中部絹糸腺は後部絹糸腺から送られてきたフィブロインを濃縮・蓄積するとともに、もう一つの絹タンパク質であるセリシンを分泌する。これを吐ききらないとアミノ酸過剰状態になり死んでしまうので、カイコは歩きながらでも糸を吐いて繭を作る準備をする』とあり(下線やぶちゃん)、何らかの事情でセリシンを吐ききらずにアミノ酸過剰状態で死んでしまうのを見たら、人はそれを「自死」と見るかも知れないな、などと私は考えてしまった。孰れにせよ、「白殭蠶」は次に掲げられるのでそこで「白殭病」については詳述したい。

・「死して朽らずを「殭」と曰ふ」確かに、「廣漢和」を引くと、「殭」は『かたくなる・こわばる。死んでくさらない』という意、二番目に『しろこ。死んで白くかたまった蚕』とある。次の「白殭蠶」で考察したい。

・『再び養ひする者を「原蠶(なつご)」【奈都古。】と曰ふ』年に二回、繭を作らせる場合は、春蚕(はるご/しゅんさん)・夏蚕(なつご/かさん)と称する。春蚕は四月中旬に孵化した蚕で、飼育環境がよいことから夏蚕よりも繭は量・質ともに優る。夏に孵化して飼われる蚕であるが、飼養日数が短く、環境も蚕にはストレスが高く春蚕より遙かに劣る。本邦では他に「初秋蚕(しょしゅうさん)」「晩秋蚕(ばんしゅうさん)」を加えて、年四回、蚕を飼うことも出来る。

・「屎〔(くそ)〕」糞。

・「沙」取り敢えず私は「しや(しゃ)」と読んでおきたい。

・「蛻〔(だつ)〕」東洋文庫版現代語訳では『ぬけがら』とルビする。孵化した直後のカイコガの幼虫は二~三ミリメートルで「蟻蚕(ぎさん)」とも呼び、これが一齢幼虫として五ミリメートル強(約三日間)となり、その後、二齢で八ミリメートル~一センチメートル強となって休眠し、脱皮(約三日間)を行い、その後三齢で一・四センチメートルから二・五センチメートル弱(約四日間)となって四齢で二・五センチメートル強から一気に四・五センチメートルを越えて(約六日間)、最終齢の、五齢では五・五センチメートルから一度、八・五センチメートルをも越える(約八日間)ものの、熟蚕(じゅくさん:摂餌をしなくなり、少し小さくなる。糸を吐き始める直前の状態。約二日)になると七センチメートル弱になる。以上は「財団法人 大日本蚕糸会」の公式サイト「カイコからのおくりもの」の「カイコを育てよう」にある幼虫の各齢でのスケールを視認して測ったものである。

・「蠶紙〔(さんし)〕」ウィキの「蚕紙より引く。『蚕の卵である蚕種が産み付けられた紙を指す。蚕種紙(さんしゅし)・蚕卵紙(さんらんし)ともいう。専門の蚕種製造業者によって製造される』。蚕のを寒冷紗(かんれいしゃ:英語 cheesecloth。荒く平織に織り込んだ布。織り糸は主に麻や綿などが用いられる)・『クラフト紙・硫酸紙・糊引紙などの粘着性のある台紙の上で卵を産み付けさせた後で、水で余分な糊を洗い落とし、更に塩水や風による自然乾燥によって不純な卵を落とした後に製品化する』。『幕末の日本における生糸の輸出規制の抜け道として蚕紙の欧米への輸出が盛んに行われた。また、この時期に病気の蔓延によって蚕が壊滅的な被害を受けたフランスに対して日本の江戸幕府から蚕紙の緊急援助も行われている』とある。

・「烏〔(う)〕」黒。

・「陽」陰陽五行説の「陽」気である。

・「燥」乾燥。

・「惡〔(にく)〕む」東洋文庫版現代語訳では「いむ」(忌む)と読んでいる。採らない。

・「三たび眠〔り〕、三たび起く。二十七日にして老〔(ろう)〕す」前の私の「蛻〔(だつ)〕」の注を参照のこと。信頼出来る記載を見ると、カイコが口から糸を吐いて繭作りを開始するのは孵化後二十六から二十八日目とあるから、「二十七日」は中を採ってすこぶる正しい記載と言える。

・「卵より出でて3と爲〔(な)〕り、3より蛻(ぬ)けて蠶と爲る。蠶にして繭、繭にして蛹、蛹にして䖸〔(が)〕、䖸にして卵、卵にして復た3〔たり〕」簡便にして確かな周年生活環(ライフ・サイクル)の表示である。

・「胎生の蠶、有り、母と老〔ゆるを〕同じくす」不審。ウィキの「カイコ」に、『羽化すると、尾部から茶色い液(蛾尿)を出し、絹糸を溶かすタンパク質分解酵素を出して自らの作った繭を破って出てくる。成虫は全身白い毛に覆われており、翅を有するが、体が大きいことや飛翔筋が退化していることなどにより飛翔能力を全く持たない上、口吻が無いため餌を取ることは無い。交尾の後、やや扁平な丸い卵を約』五百粒産み、約十日で死ぬ、とある成虫のステージを勘違いしたか、或いは、胎生というところからは、上に挙げた寄生蜂の羽化を勘違いしたものか(その可能性は大かも知れぬ)? もしそうだとしたら、カイコは無慚に内側から食われ、そこから寄生蜂が孵化(羽化)するのを「神蟲なり」なんどと言っている時珍や、それを平然と引いて恥じない良安は、いい面の皮ということになる。

・「4〔(いもむし)〕・蠋〔(けむし)〕」解り易いので孰れも東洋文庫版現代語訳のルビを援用させて戴いた。

・「蠶絲〔(さんし)〕の天下に衣被〔(いひ)〕すべきがごときにあらず」絹糸のみがこの世界で(優れた)衣料の材料となっている、その事実に比すべき性質はその他(の虫どもが吐き出す糸)には全く以って認められない。]

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