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2016/04/09

雨   原民喜

  雨   草葉

 

敏「おばん今晩(コンヤ)も雨が降るんで」

雨がぼおしよぼおしよ降つて居る

雨降る夏の夜の食事

卓をかこんだ四人が

大水話に米(メシ)を食ふ

千ヅ子の口が早すぎる

それ一粒また落ちた

恭子そんなに一時に

食べると腹がいたむぞへ

雨がしよぼりと降りつゞく

ゆかの下からかへるの子

恭「おばん今晩大水が出るん」

千「出るとも出るとも そんなに麥湯のんだなら」

 

 

[やぶちゃん注:前掲と同じく、原民喜がすぐ上の兄守夫と出した兄弟同人誌、大正九(一九二〇)年九月号『ポギー』三号に所収。既に述べた通り、「草葉」は民喜のペン・ネームと思われる。

 原民喜の分かち書き形式のこうした近代詩の中では、現存する最古のものと思われる。 底本は青土社版「原民喜全集 Ⅰ」の「拾遺集」に拠ったが、戦前の作品であるので、恣意的に漢字を正字化した。

 「敏」原民喜の弟の一人の名は「敏」で、原家七男(民喜は五男)で民喜の十一歳年下。事実の設定なら、この当時は未だ四歳。

 「千ヅ子」民喜の妹の一人の名は「千鶴子」で、原家四女。民喜の五歳年下。事実の設定なら当時、十歳。

 「恭子」民喜の妹の一人の名は「恭子」で、原家五女。民喜の六歳年下。事実の設定なら当時、九歳。

 「おばん」受けるのがすぐ上の姉と思われる「千ヅ子」であるから、お姉さんの謂いの広島弁なのか? 調べて見たが、よく判らない。識者の御教授を乞うものである。

 四行目に「卓をかこんだ四人」と出るところ、詩篇から見て、この四人目は民喜自身であろうと思われる。当時父信吉は既に亡い(大正六(一九一七)年満四十九で胃癌で死去)。母はいるが、この詩篇には登場していない。他に長女操、三男の信嗣、三女千代、四男守夫が居てもおかしくないが(二人の姉(特に長女)は既に嫁に行っている可能性が高い)、描かれてはいない。寧ろ、母が描かれていないのは、子らに先に食べさせているからであろう。田舎ではかつてはそれが普通であった。

 個人的には、すこぶる興味深い映像的詩篇である。]

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