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2016/04/11

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 鳳蝶

Agehatyou

あげはの  鳳子車 鬼車

  てふ   【和名 保

鳳蝶     保天布】

     【俗云阿介波乃蝶】

 

崔豹古今注云其大如蝙蝠或黒色或青斑也

按鳳蝶柑橙木枝葉大蠹身有白輪文者羽化爲鳳蝶

 黒色有白點稀飛不如蝴蝶之多也

異物志云有人浮南海見蛺蝶大如蒲帆稱肉得八十斤

噉之極肥美

 


 

あげはのてふ  鳳子車〔(ほうししや)〕 鬼車〔(きしや)〕

鳳蝶      【和名、保保天布〔(ほほてふ)〕。】

     【俗に云ふ、阿介波乃蝶〔(あげはのてふ)〕。】

 

崔豹が「古今注」に云ふ、其の大なること蝙蝠〔(かはほり)〕のごとく、或いは黒色、或いは青斑〔(あほまだら)〕なり。

按ずるに、鳳蝶は柑〔(かうじ)〕・橙(だいだい)の木の枝葉にをる、大きなる蠹〔(きくひむし)にて〕、身に白き輪文〔(わもん)〕有る者、羽化して鳳蝶と爲る。黒色に白點有りて、稀に飛ぶ。蝴蝶の多きごとく〔は〕ならざるなり。

「異物志」に云ふ、人、有りて、南海に浮ぶ蛺蝶〔(けふてふ)〕を見る。大いさ、蒲の帆のごとく、肉を稱(はか)るに、八十斤を得〔たり〕。之れを噉〔く〕ふに極めて肥美なり〔と〕。

 

[やぶちゃん注:やや内容に不審(「蛺蝶」)はあるものの、一応、

鱗翅目アゲハチョウ上科アゲハチョウ科 Papilionidae(ウラギンアゲハ亜科 Baroniinae・ウスバアゲハ亜科 Parnassiinae・アゲハチョウ亜科 Papilioninae)のアゲハチョウ(揚羽蝶)類

と考えてよかろう。我々が普通に「あげはちょう(揚羽蝶)」と認識しているものは、

アゲハチョウ上科アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科アゲハチョウ族 アゲハチョウ属 Papilio 亜属 Papilio (Sinoprinceps) ナミアゲハ(或いはアゲハ)Papilio Xuthus

である。ウィキの「アゲハチョウ科」によれば、『日本で「アゲハチョウ」といえばアゲハチョウ亜科(Papilioninae)の種を指すことが多いが、アゲハチョウ科にはギフチョウ』(アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科ギフチョウ族ギフチョウ属ギフチョウ(岐阜蝶:和名は明治一六(一八八三)年四月二十四日にかの名和靖(なわやすし)によって岐阜県郡上郡祖師野(そしの)村(現在の下呂市金山町祖師野)で採集されたことに由来) Luehdorfia japonica)『やウスバシロチョウ』(ウスバアゲハ亜科ウスバシロチョウ族ウスバシロチョウ属 Parnassius 亜属 Driopa ウスバシロチョウ(薄羽白蝶) Parnassius citrinarius)『なども含まれる』。『南極大陸を除く全ての大陸に分布する。高山に生息するウスバシロチョウなどもいるが、分布の中心は熱帯地方である』。五百五十種類ほどが『知られるが、その中には小型でシロチョウ』(アゲハチョウ上科シロチョウ科 Pieridae の仲間。因みに「シロチョウ」とい和名の蝶は存在しない)『によく似たウスバシロチョウ類』(ウスバシロチョウ族 Parnassiini)『や、世界最大のチョウを含むトリバネアゲハ類』(アゲハチョウ科ジャコウアゲハ(麝香揚羽)族 Troidini の仲間、或いは同族のトリバネアゲハ(鳥翅揚羽)属 Ornithoptera・アカエリトリバネアゲハ(赤襟鳥翅揚羽)属 Trogonoptera・キシタアゲハ(黄下揚羽)属 Troides の種群)をも含む。『チョウの中では最も大型の分類群である。成虫は大きな翅をもつが、中にはアオスジアゲハ』(アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科アオスジアゲハ族アオスジアゲハ属アオスジアゲハ Graphium sarpedon)『のようにわりと小さな翅をもち速く飛びまわるものもいる。翅の鱗粉は種類によって黒・白・赤・黄・青・緑など様々に彩られている。また後翅の縁には大小の突起があり、特に後翅から斜め後方に伸びる長い突起のことを尾状突起という。これらの突起の長さや有無も種類を判別する有効な手がかりである』。『成虫はほぼ全ての種類が花に飛来するが、地面の水たまりや海岸などで水分を吸う習性がある種類も多い。大きな翅をはばたかせて飛び、吸水・吸蜜や産卵もはばたきながらおこなう』。『幼虫の食草は種類によってちがうが、日本産のアゲハチョウ類はミカンやサンショウなどのミカン科植物を食草とするものが多い。また、ジャコウアゲハ』(アゲハチョウ亜科キシタアゲハ族ジャコウアゲハ属ジャコウアゲハ Byasa alcinous)『やトリバネアゲハ類はウマノスズクサ』(多年生蔓植物である、コショウ目ウマノスズクサ科 Aristolochioideae 亜科ウマノスズクサ属 Aristolochia に属する種或いは同属のウマノスズクサ(馬の鈴草)Aristolochia debilis。和名は花の基部が膨らんで球形なし、それが馬の首に掛ける鈴に似ていることに由来すると言われる)『類を食草とし、アルカロイド』(alkaloid))『を体内に蓄えて鳥などの天敵に食べられないよう適応している』。『アゲハチョウ類の幼虫は頭部と胸部の間に「臭角(しゅうかく)」という』一対の『角をもち、これが他のチョウ目幼虫と異なる大きな特徴である。この角は二股に分かれた半透明のゴムの袋のような構造で、種類によって赤から黄色といった派手な色彩をしている。ふだんは体内に靴下を裏返したように収納しているが、強い衝撃を受けると頭部と胸部を反らせ、しまっていた角を体液の圧力で反転し、突き出す。この角の表面にはテルペノイド』(Terpenoid)『を主成分とした強い臭い物質が分泌されており、外敵を撃退する』。『蛹は帯蛹型で、尾部のカギ状突起と胸の部分の帯糸で上向きに自分の体を固定する』とある。

 なお、挿絵で揚羽蝶が訪れている花は、私の好きな可憐なる、かの桜草(ツツジ目サクラソウ科サクラソウ属サクラソウ Primula sieboldii )のように見受けられるが、如何か?

 

・「和名、保保天布〔(ほほてふ)〕」不審。この「保」の一字は衍字か、或いは反切のように「保」の「ホ」の「ほ」と、「保」の「ほう」の「ウ」を繋げて、「ほうてふ」ではなかろうか? 「ほうてふ」なら「鳳蝶」で、揚羽蝶の古名として存在したことが判明しているからである。

・「崔豹」は西晋の恵帝(二五九年~三〇七年:第二代皇帝。生来の暗愚とされるが、演技であったともされる)の時に太傅(たいふ)丞(天子の師(教授役))となった医師で学者。

「古今注」崔豹の代表作で諸書に出る事物について紹介・解説したもので、学術的価値が高いとされる。同書には「蛺蝶」(後にも出るが、これは現行では「たてはちょう」と読め、鱗翅目アゲハチョウ上科タテハチョウ科 Nymphalidae を指す)の条で、この一節が以下のように載る。

   *

蛺蝶、一名野蛾、一名風蝶。江東呼爲撻末、色白背靑者是也。其大如蝙蝠者、或黑色、或靑斑、名爲鳳子、一名鳳車、一名鬼車、生江南柑橘園中。

   *

・「蝙蝠〔(かはほり)〕」哺乳綱ローラシア獣上目翼手(コウモリ)目 Chiroptera のコウモリ(蝙蝠)のこと。

・「柑〔(かうじ)〕」現行では、狭義にはバラ亜綱ムクロジ目ミカン科ミカン亜科ミカン属コウジ Citrus leiocarpa 、別名ウスカワミカン(薄皮蜜柑)を指すが、ここは広く柑橘類の蜜柑類を指すと考えてよかろう。

・「橙(だいだい)」正月の注連飾りに使うミカン属ダイダイ Citrus aurantium のこと。

・「大きなる蠹(きくひむし)にて〕、身に白き輪文〔(わもん)〕有る者」

・「蝴蝶の多きごとく〔は〕ならざるなり」他の蝶(蝴蝶は広義の「蝶」)類は多いようには、多くはいない。だから、稀にしか飛ぶのを見ない、と言うのである。

・「異物志」正しくは「嶺南異物志」。唐代の吏員であった孟琯(もうかん)が撰した、嶺南(現在の広東省・広西チワン族自治区の全域と湖南省及び江西省の一部に相当する地域の古称)地方の珍奇な生物などについて記録した博物書。ここは東洋文庫書名注による。

・「南海に浮ぶ蛺蝶〔(けふてふ)〕を見る」「蛺蝶」は現行では鱗翅目アゲハチョウ上科タテハチョウ科 Nymphalidae の漢名及び和名漢字表記としてあることは既に述べたが、ここはそう読むと、アゲハチョウ類から外れてしまうのでわざと音で読んでおいた。「南海に浮ぶ」とあるが、「南海」の空に「浮」かぶ(飛ぶ)の謂いであろう。海の上に浮かんでいた死骸では、これ、ちと、食い気が起こらん、と私は思うからである。

・「蒲の帆」蒲(単子葉植物綱イネ目ガマ科ガマ属ガマ Typha latifolia)の穂。これはその蛾の体部(羽を除いた頭部・胸部・腹部)の大きさがあたかも蒲の穂ほどもあったというのであろう。さればこそ食えるだけの大きさとは言える。蒲の穂の雌花穂(しかほ:先端の尖った十センチメートルほどの部分は実は雄花穂)は普通のものでも、長さが二十センチメートル、太さは二・五センチメートルぐらいはあるから、これは途轍もない大型個体であることが判る。因みに、体部がそこまでデカくはないものの、世界最大のチョウとして知られるアゲハチョウ科ジャコウアゲハ族トリバネアゲハ属アレクサンドラトリバネアゲハ Ornithoptera alexandrae(英名:Queen Alexandra's Birdwing)のの翼長は実に最大二十八センチメートル以上になる(因みに、楊幼虫もビッグで、体長は十二センチメートル以上にもなる巨大な芋虫で、黒い体に毛状の突起が節ごとに発達、中央がオレンジ色という恐るべきものである。ここはウィキの「アレクサンドラトリバネアゲハに拠った)。同種の分布はパプア・ニューギニア東部のオロ州の限られた場所とあるから、「嶺南異物志」の記載には「南海」とするから、必ずしも眉唾とは限らぬかもしれぬ。但し、事実、食って安全かどうかは、これ、存ぜぬ。

・「稱(はか)る」計量する。

・「八十斤」現行では四十八キログラム相当。唐代でも四十七・七四キログラムであまり変わらない。重過ぎ!

・「噉〔く〕ふ」食う。

・「肥美」脂がのって美味いこと。しかしこれ、先のトンデモ重量といい、ホンマかいな?]

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