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2016/04/06

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 白殭蠶

[やぶちゃん注:以下、「蠶」の本論の後に縦罫一本で掲載。「蠶」の個別・周年生活環のステージ別、或いは特異状態、及び地方・地域別の呼称(但し、明らかに同類別種或いは変種扱い)の小項目立て記載が続く。]

 

白殭蠶 〇鹹辛微溫【惡桔梗茯苓伏神萆薢】

主治小兒驚癇夜啼撮口臍風中風失音喉痺

 

 

白殭蠶(びやつきやうさん) 〇鹹辛、微溫。【桔梗〔(ききやう)〕・茯苓〔(ぶくりやう)〕・伏神〔(ふくしん)〕・萆薢〔(ひかい)〕を惡〔(い)〕む。】

小兒の驚癇・夜啼〔(よなき)〕・撮口〔(さつこう)〕・臍風〔(さつふう)〕・中風〔(ちゆうぶう)〕・失音〔(こへがれ)〕・喉〔の〕痺〔れ〕を治することを主〔(つかさど)〕る。

 

[やぶちゃん注:見出しとして出しているのは、実は漢方の生薬名であることが判るが、さてもこれは前項でカイコが「自死」してしかし腐らない死体、謂わばミイラになったカイコとある。そこで述べた通り、実は私は、これはカイコの病変死したものではないかとまずは疑っている。前項の注で参考にさせて戴いた「養蚕技術研究所」公式サイト内の大きな学術論文「養蚕」の中の「第8章 蚕病とその防除法」(PDF)の「第4節 糸状菌病」から冒頭の概説と続く、ここで本記載の病いと私が疑っている「白殭病」(以下本文では「白きょう病」)の項を総て引かせて戴く(コンマを読点に、一部の句点を読点に変更させて貰い、一部に読点を追加、画像指示注は省略した。下線はやぶちゃん)。

   《引用開始》

第1. 糸状菌病の種類と性状

 糸状菌病は糸状菌、すなわちかび類の寄生によって起こる病気である。糸状菌の種類にもよるが、多くの糸状菌病では、その死体がミイラのように堅くなるので、糸状菌病は一般に硬化病ともいわれている。本病は多湿のときに発生しやすく、夏秋蚕期、特に晩秋蚕期に多く発生してしばしば大害を与える。

 蚕の糸状菌病は現在30種類ほどあるが、養蚕上被害が大きいのは白きょう病・緑きょう病・黄きょう病・こうじかび病の4種類である。

1 白きょう病  白きょう病は死体がミイラ化して白い粉をふいたようになるのでこの名がある。病原は白きょう病菌であってその分生胞子が蚕の皮膚について適当な温湿度を得ると、ただちに発芽して菌糸を出し、これが皮膚を貫通して蚕体内に侵入する。白きょう病にかぎらず、糸状菌病は一般に経皮的に感染し、経口的に感染することはない。このようにして感染が起こると、体内に侵入した菌糸は短菌糸といわれる形をとり、血液中でさかんに増殖してついに蚕を倒す。

 罹病初期の蚕は特に病徴を示さないが、病勢がやや進むと、蚕体の所々に油のにじんだような病斑を生ずる。このころになると病蚕は食欲が減退して動きがにぶくなり、吐液あるいは下痢を伴ってやがて致死する。重症の病蚕の血液は多少濁っているが、これは血液中に短菌糸、菌糸及びそれらの生産物である蓚酸(しゅうさん)石灰の結晶が多数浮遊しているためである。本病の感染後、蚕は普通3~7日ぐらいで致死するが、この潜伏期間は壮蚕よりも稚蚕で短い。

 病死体は漸次(ぜんじ)堅くなり、死後1~2日すると、まず体節間膜・気門などから白色の菌糸があらわれ、やがて頭部をのぞく他の全面にも菌糸が発育し、これがおびただしい数の白色の分生胞子を形成するために、体全面が白粉(おしろい)に覆われたようにみえる。これらの胞子は容易に飛散し、次の感染源になる。壮蚕末期に罹病した蚕は上蔟後あるいは営繭中に致死するものがあり、また完全に営繭するものもあるが、この場合は蛹になった状態で死体が硬化している。蛾で発病することはまれであるが、やはり死体は硬化し、体の表面が白粉状になる。

   《引用終了》

文中の「上蔟」は「じょうぞく」と読み、食桑を止めて営繭(引用文中にも出るが、これで「えいけん」と読む)にかかろうとしている熟蚕を蔟(まぶし:「蚕簿」とも書く。蚕が繭を作るときの足場にするもので、ボール紙などを井桁(いげた)に組んで区画したものが用いられてその一区画に一つの繭を作らせるもの)に移す作業で、養蚕労働の中で最も多忙な作業の一つ。調べてみるに、病原体は、

菌界子嚢菌門チャワンタケ亜門フンタマカビ綱ボタンタケ目バッカクキン科 Beauveria 属白きょう病菌(黄きょう病菌とも)Beauveria bassiana(ボーベリア・バッシアナ)

を具体に挙げているデータがあり、本種或いはその近縁種の菌類が原因菌と考えられる。

 さて、先の「蠶」の項にはこう書かれてあった。

   *

蠶、風を病みて死す。其の色、白し。故に自死の者を「白殭蠶(びやくきやうさん)」と名づく【死して朽らずを「殭」と曰ふ。】。

   *

これを上記引用に照らし合わせてみると、病態記載の内、「その死体がミイラのように堅くな」って「白い粉をふいたようになる」点で完全に「白殭蠶」の「其の色、白し」「白殭蠶と名づく【死して朽らずを「殭」と曰ふ。】」という様態と完全に一致する。既に注した通り、「殭」は「かたくなる」「こわばる」「死んでくさらない」という意があり、そもそもが中国で既に「しろこ」「死んで白くかたまった蚕」に既にこの字を当てているのである。これは「白殭蠶」が木乃伊(ミイラ)状に腐敗や著しい瓦解崩壊を示さずに硬化した特殊な死骸であることを意味しているのである。

 しかも上記の論文では「本病は多湿のときに発生しやすく、夏秋蚕期、特に晩秋蚕期に多く発生」し、「一般に経皮的に感染」するとあるが、これはまさしく、目に見えない菌の胞子が目に見えない「風」に乗って散布されたものが漂い来って「蠶」が「病みて死す」という感染ルートとも一致すると私は思う。

 加えて、白きょう病の「潜伏期間は壮蚕よりも稚蚕で短」く、「病死体は」次第に「堅くなり、死後」一~二日もしないうちに、「まず体節間膜・気門などから白色の菌糸があらわれ、やがて頭部をのぞく他の全面にも菌糸が発育し、これがおびただしい数の白色の分生胞子を形成するために、体全面が白粉(おしろい)に覆われたようにみえる」とあるのは、この短期に死とミイラ化が起きるシークエンスを想起してみるに、幼齢期だった場合には、昨日まで盛んに動いていて桑の葉をむしゃむしゃ食っていた蚕が、「あれ? 動かなくなっちゃった!」という思った時には既に死んでおり、みるみるうちに、真っ白になって硬くなるのである。しかも「壮蚕末期に罹病した蚕は上蔟後あるいは営繭中に致死するもの」もあるというのは、まさに病原も目に見えぬ故にこそ、古人にとっては「ここまでやってきたのに! 何で?!」という不可解を湧き起させ、それはまさしく「自死」という自然の暴威としてしか捉えられないという点でも合致し、さても《ここでの李時珍の「本草綱目」からの寺島良安の「白殭蠶」の引用の一字一句が完全に一致している》と、私は信じて疑わないのである。

 なお、私は前項の注で、今一つ、ウィキの「カイコ」に、『多くの品種の幼虫は』、五齢で『終齢を迎え、蛹(さなぎ)となる。蛹化が近づくと、体はクリーム色に近い半透明に変わる。カイコは繭を作るのに適した隙間を求めて歩き回るようになり、摂食した餌をすべて糞として排泄してしまう。やがて口から絹糸を出し、頭部を字型に動かしながら米俵型の繭を作り、その中で蛹化する。絹糸は唾液腺の変化した絹糸腺(けんしせん)という器官で作られる。後部絹糸腺では糸の主体となるフィブロインが合成される。中部絹糸腺は後部絹糸腺から送られてきたフィブロインを濃縮・蓄積するとともに、もう一つの絹タンパク質であるセリシンを分泌する。これを吐ききらないとアミノ酸過剰状態になり死んでしまうので、カイコは歩きながらでも糸を吐いて繭を作る準備をする』(下線やぶちゃん)という箇所を引き、『何らかの事情でセリシンを吐ききらずにアミノ酸過剰状態で死んでしまうのを見たら、人はそれを「自死」と見るかも知れない』などという見解を添えたのであるが、上記の「養蚕技術研究所」の「養蚕」の「第3章 蚕体の構造と各器官のはたらき」(PDF:なお、各章分割ファイルではなく、膨大な全文を一ファイルで落すこともこちらのページ(HTML)の冒頭のリンクで可能である)を読んでみても、自己機能不全によるアミノ酸過剰による自死の記載がない。これは「疾患」であり、近世以前なら蚕の「病い」に類したはずであろうに、先の「第8章 蚕病とその防除法」(PDF)にすら挙がっていないのである。ということ(これだけ完備した学術論文にその記載がないということ)は、この機能不全は頻繁には起こらない、極めて稀である、と考えられるということである。しかもアミノ酸を体内に過剰に持って死んだ蚕が硬化して白くなり、ミイラ化するとは逆立ちしても思われない。寧ろ、急速に腐敗し、変色すると考えられ、これを候補とするのは引き下げることとする。

 また、今一つ、私が考えていた現象(病態)があった。所謂、カイコの「冬虫夏草」である。ところが、奥沢康正氏の「冬虫夏草の文化誌」のネット上の抜粋版を読んだところ、「(1)日本の古典籍から昆虫病原菌(白彊蚕・セミ生虫生菌・冬虫夏草)を探る」(PDF抄録)で、まさにこの「白殭蠶」(奥沢氏は「白彊蚕」と表記されている)を探求した詳細が出ていて、仰天した。そのコラム「覚書1 白彊蚕の初出」では本邦での「白殭蠶」の記録を丹念に調査され、日本では奈良時代の天平九(七三六)年六月附の太政官官符に『「天然痘による皮膚の瘢痕(はんこん)をなくすために白疆蚕の粉末とゴマの粉を蜜で練って塗布すべし」との記載があることから、少なくとも』七〇〇年代には、『薬用として白疆蚕が具体的に使用されている』という最古の記録に始まり、以下、「延喜式」「医心方」の記載を挙げ、『その他の古書にカイコが死しても朽ちないものを「彊」といい、タオレガイコ、シロガイコ、カイコの舎利などの別名が見られる』とする(但し、『日本の食物本草書中には記載が少な』いとある)。さらに、「明治前日本薬物学史」(明治一一(一九七八)年刊)で、江戸期の本草書「食用簡便」「本草弁疑」中に『「本朝に古くあって今日なきもの延喜式に出ず」と記した』七十二種の『中に白疆蚕を載せ』たのを引用した上、『「江戸時代には我が国に産出しなかった」と記すが、これは大きな誤りである。日本の菌類中、最も早く実際に利用されたのは白彊蚕であった。養蚕家が「彊蚕」を見つけるとコシャリが出たといい、その年のカイコの収益が多く、めでたいとされてきた。上記の如く医史学、一部本草学史から薬物に利用された代表的な菌類を調査した結果、中国医学及び本草学が大きく影響していた。日本の古医書に載る薬物利用頻度は、植物、鉱物、動物、魚介、昆虫に次いで菌類となっている。その中で白彊蚕・蝉茸・冬虫夏草がいかに薬物に利用されつづけてきたかを箇条書きにしてみた』と記述された上、八箇条を掲げておられる。その内で「白殭蠶」に関わり条を抄出させて戴くと、『 菌類の中でも比較的腐敗しにくい、乾燥により長期間保存に耐えるキノコであること―白彊蚕・蝉茸・冬虫夏草・霊芝(れいし)・茯苓(ぶくりょう)・猪苓(ちょれい)・雷丸(らいがん)―』、『 [やぶちゃん注:前略。]発生量が少なく貴重な(高貴薬)キノコであること―白彊蚕・冬虫夏草―』、『  蚕が死しても石のように硬くなってこわばった状態で腐敗せずに蚕の原型を保つのを見て人間のミイラ化、生命再生への願望を重ねた―白彊蚕―』、『  身体が硬くこわばった中風を、硬くてこわばって死んだ蚕に見立て、毒をもって毒を制すというような考えから中風が治癒すると考えたキノコであること―白彊蚕―』とある(なお、原著は限定五百部で少々高価であるが、この抄録を読むだけでも価値がある)。ところが、これ、以下に続く奥沢氏の以上の古記録の詳述本文の四五頁の記載に(抄録がここまであってよかった!)、『ムシカビの白彊蚕(Beauveria Bassiana)』(下線やぶちゃん)とあって、これは先に掲げた「白きょう病」の病原菌と同一であることが判明したのであった。

 かくして「白殭蠶」の正体は私にとっては解明されたのであった。

 

・「桔梗〔(ききやう)〕」。「きちかう(きちこう)」とも読む。ここは生薬名で「桔梗根」とも称する。キク目キキョウ科キキョウ属キキョウ Platycodon grandiflorus の根でサポニン(saponin)を多く含み、去痰・鎮咳・鎮痛・鎮静・解熱作用があるとされる。

・「茯苓〔(ぶくりやう)〕」アカマツ・クロマツなどのマツ属の植物の根に寄生する菌界担子菌門菌じん綱ヒダナシタケ目サルノコシカケ科ウォルフィポリア属マツホド(松塊)Wolfiporia extensa の菌核の外層をほぼ取り除いた生薬名。利尿・鎮静作用がある。

・「伏神〔(ぶくしん)〕」「茯神」とも書く。前記の「茯苓」の原料であるマツホド(松塊)Wolfiporia extensa のうち、菌核の中間部分で松の根を天然に抱いた状態の、その白色の部分(元は松の根のようである)を採取して生薬としたものを指す。一部記載には、女性ホルモンの変動による心理的症状に効果があるとされ、それらを緩和すると同時に、胃腸の働きを助け、余分な水分を排出し、生理前に気になるむくみの解消を促す、などとある(本当にそんな効果があるかどうかは、私のネット上の感触では、やや疑問である)。

・「萆薢〔(ひかい)〕」生薬名。こちらの漢方サイトによれば、これには「粉萆薢」(「ふんひかい」と音読みしておく。次も同じ)と「綿萆薢」(めんひかい)の二種があえい、「粉萆薢」は単子葉植物綱ユリ目ヤマノイモ科ヤマノイモ属オニドコロ Dioscorea tokoro や同属の Dioscorea hypoglauca などの根茎(担根体)を、「綿萆薢」は同属のキクバドコロ Dioscorea septemloba Dioscorea futschauensis などの根茎が原材料であるとある(但し、これら狭義のトコロ類は強烈な苦みがあって灰汁抜きしない限りは食用にはならないので注意されたい)。効能は「膏淋」(こうりん:混濁尿・尿量減少・排尿困難・残尿感などの諸症状)の常用薬とある。

・「撮口〔(さつこう)〕・臍風〔(さつふう)〕」これは孰れも同義語と思われる。小児科内科医の広田嘩子氏の論文「日本における臍風の記載について」(PDF)に、『臍風は撮口ともいい、現代でいう臍破傷風のことだったと思われる』とある。「臍破傷風」(恐らくは「さい/はしょうふう」と読む)は新生児の臍帯の傷からの破傷風菌(細菌(ドメイン)フィルミクテス門クロストリジウム綱クロストリジウム目クロストリジウム科クロストリジウム属クロストリジウム・ テタニ(破傷風菌)Clostridium tetani)感染によって起こる破傷風のことを指す。ウィキの「破傷風」によれば、『新生児の破傷風は、衛生管理が不十分な施設での出産の際に、新生児の臍帯の切断面を汚染し』て発症するもので、『破傷風菌は毒素として、神経毒であるテタノスパスミン』(Tetanospasmin)『と溶血毒であるテタノリジン』(Tetanolysin)『を産生する。テタノスパスミンは、脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し、重症の場合は全身の強直性痙攣をひき起こす』乳幼児ではない一般的な症状では、『前駆症状として、肩が強く凝る、口が開きにくい等、舌がもつれ会話の支障をきたす、顔面の強い引き攣りなどから始ま』『(「牙関緊急」と呼ばれる開口不全、lockjaw)』り、『徐々に、喉が狭まり硬直する、歩行障害や全身の痙攣(特に強直性痙攣により、手足、背中の筋肉が硬直、全身が弓なりに反る』)『など重篤な症状が現れ、最悪の場合、激烈な全身性の痙攣発作や、脊椎骨折などを伴いながら、呼吸困難により死に至る。感染から発症までの潜伏期間は』三日から三週間で、『短いほど重症で予後不良』である。『神経毒による症状が激烈である割に、作用範囲が筋肉に留まるため意識混濁は無く鮮明である場合が多い。このため患者は、絶命に至るまで症状に苦しめられ、古来より恐れられる要因となっている』。『破傷風の死亡率は』五〇%である。成人でも一五〜六〇%、新生児に至っては八〇〜九〇%と高率である。『新生児破傷風は生存しても難聴を来すことがある』。『治療体制が整っていない地域や戦場ではさらに高い致死率を示す。日本でも戦前戦中は「ガス壊疽」などと呼ばれ恐れられていた』とある。

・「中風〔(ちゆうぶう)〕」「ちゆうふう(ちゅうふう)」「ちゆうぶ(ちゅうぶ)」とも読む。「中気」に同じい。『悪しき「風」(かぜ)に「中」(あた) る』の謂いで、半身の不随や、腕や足の麻痺する病態を広く指すが、一般的には、脳卒中・脳出血などの後遺症としての麻痺状態を言う。

・「失音〔(こへがれ)〕」ここは東洋文庫版現代語訳のルビを参考にさせて戴いた。

・「喉〔の〕痺〔れ〕」同前。なお、漢方サイトを調べると、解熱・抗痙攣・去痰作用があるとし、一日の使用量(上限であろう)は三グラム、鎮痙・鎮痛薬として小児痙攣・扁桃炎・頭痛・歯痛のほか、中風を原因とする言語障害や半身不随などに内服するとする他、破傷風や小児性熱性痙攣の鎮痙、頭部・顔面部・口腔疾患で熱或いは熱性由来と判断出来るケース、特に咽喉炎・咽喉部化膿症などによる咽喉の腫脹・疼痛及び嗄声(しゃがれごえ)などに用いると、その清熱・消炎・腫脹消退の効果により音声を正常化させるとし、頸部リンパ節腫や種々のしこりにも応用される、とある。当然の如く、まさにここに記されたものと一致している。主成分はタンパク質と蓚酸カルシウムとある。]

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