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2016/04/05

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 (毛虫)

Kemusi

けむし   蛅蟖 髯虫

【音墨】 烏毛虫

      【和名加波無之

       俗云介無之】

[やぶちゃん字注:「」=「虫」+「黑」。なお、以下の本文では「黑」でなく「黒」になっている。]

 

俗云毛虫也與紅姑娘一類二種而其形狀亦各

 別也然本草綱目以爲一物者欠詳

 正黒色大者二三寸圓身深毛其毛易脱螫毒亦輕

 又有褐色者

 蚝者形扁淺毛色斑而螫毒甚重

 

 

けむし   蛅蟖 髯虫

【音墨】 烏毛虫

      【和名、加波無之〔(かはむし)〕。俗に云ふ、介無之〔(けむし)〕。】

[やぶちゃん字注:「」=「虫」+「黑」。なお、以下の本文では「黑」でなく「黒」になっている。]

 

按ずるに、「」、俗に云ふ、毛虫なり。「紅姑娘(いらむし)」と一類二種なり。而〔も〕其の形狀、亦、各々別なり。然れども、「本草綱目」に、以て一物と爲すは、詳らかなることを欠く。

」は正黒色、大きなる者の、二、三寸。圓き身、深毛〔にして〕、其の毛、脱(ぬ)け易く、螫す毒も亦、輕し。又、褐(きぐろ)色の者、有り。

「蚝(いらむし)」は、形、扁〔(ひらた)〕く、淺き毛色、斑〔(まだら)〕にして、螫〔す〕毒、甚だ重し。

 

[やぶちゃん注:寺島良安が御大李時珍に反旗を翻す項である。この毛虫は何だろう? 一般には真黒であるが、褐色の個体もいる(それを良安は同一種と見ている)。大きいものは六~九センチメートルに達し、ずんぐりとまるまるしている。毛は密生していて、それはすこぶる抜け易い。刺さるが、その毒は軽い(或いは、アレルギー反応は起こすものの、毒は含まれない)、と謂うのである。これは読んで、即、しばしば見かけるところの鱗翅目有吻亜目二門下目ヤガ上科ヒトリガ科ヒトリガ亜科 Arctiinae の幼虫群、或いはその中の代表種であるヒトリガ属ヒトリガ Arctia caja のそれを私は想起した。彼らは俗に「くまけむし」(熊毛虫)と呼ばれる(この「くま」はクマンバチの注で示した通り、動物の「熊」というよりは、「がたいが大きい」という謂いであろう)。ウィキの「ヒトリガ」によれば(下線はやぶちゃん)、同種の産卵期は七月で、『薄青白い卵は成虫に比較してかなり大きい。卵には粘着性があり、ふつうは葉の裏などに付着されるが、後述する幼虫の習性から、ともすればメスは産卵場所に無頓着になり、どこにでも構わず産卵する傾向がある』。幼虫は八月に孵化し、終齢期には体長六センチメートルほどまで『成長する。赤茶色の長い柔毛に覆われており、まさに毛虫そのものの外観を呈する。日本ではクマケムシの別名がある。広食性であり多種多様な草本、低高木の葉を食べ、エサを求めて地上を積極的に移動する。なお移動中、身に危険を感じるとひっくり返って死んだふりをする。幼虫のまま落ち葉の下などで越冬し、翌年』の六月から七月までに蛹化し、七月から八月までには羽化する。『幼虫は基本的に食樹、食草は選ばないが、なぜか庭木に適した低木のキイチゴ、ブラックベリー、ガマズミ、スイカズラ、エリカ、エニシダといった種を特に好むため、農家や園芸家からひどく嫌われる』。『毛虫そのものの幼虫は、知らない人が見るといかにも毒々しいが、実際には毒はない(食草に含まれたアルカロイドを体内に含有していることがあるので、小鳥のように摂食する分には有毒ではある)。ただし幼虫の柔毛がアレルゲンとなり発疹などを引き起こすことがある。また同じヒトリガ科のヤネホソバなど近縁種の幼虫は、この毛が有毒の毒針毛になっているため、むやみに素手で触れるべきではない』。『成虫は他の多くのガ同様夜行性であり、光源の周囲を渦を描くように飛びまわる走光性を持つ。この習性は特に本種に限ったものではなく、他のガや昆虫で普遍的に見られるのだが、特に本種において目立つ。光源がたき火など直火の場合、最終的にはに火に飛び込んで自ら焼け死ぬ結果となり、和名のヒトリガもここに由来する。また自らを滅ぼすような禍の中に進んで身を投じたり、みすみす敵の餌食になる行為を指す飛んで火に入る夏の虫ということわざも、本種のようなガが見せるこうした習性から生まれたものである』とあって、良安の記載にまずまず合致する。図鑑を見ると、ヒトリガ科 Arctiidae の幼虫には上皮の色が殆んど黒に近いものや、毛の密生したそれを白昼の乾燥した白っぽい地面で垣間見た際、はなはだ黒く見えるので、私は問題なく本種を想起するのであるが、昆虫愛好家の方の中には、異義を唱える方もおられるかも知れない。大方の御叱正を俟つ。

・「蛅蟖」東洋文庫版は音で『せんし』とルビするが、ここは良安の独擅場で、彼の観察は本邦でのものである。私はこれは「けむし」を漢字で書くとこうも書くほどの意味で良安は記しているのだと思う。さればこれで「けむし」と読みたい気はする。但し、原典にルビはないので、断言は出来ぬ。

・「髯虫」これも前注と同じく、そうさ、「ひげむし」と訓じたくなる。

・「烏毛虫」わざわざ「烏」(色からであろう)を増やしてあるし、古語辞典でもこれで、記されている今一つの呼称、「かはむし(かわむし)」と訓じていよう。他に「皮虫」の字も当てる。何故、毛虫を「皮虫」と古く呼んだものか? 私はこれは、この「皮」は毛の密生した「獣皮」を指しているのではないか? と踏んでいる

・『「本草綱目」に、以て一物と爲す』前項で既に述べたが、「本草綱目」の「雀甕」の冒頭の「釋名」には、各本草書から引用して「雀兒飯甕」「蛅蟖房」「天漿子」「毛蟲」「雀癰」「蚝」「楊瘌子」「棘剛子」を上げ、「附方」では「天漿子、即、紅姑娘」と述べており、これらが総て、同一生物(種)の異名に過ぎないと認識していることが判る。

・「詳らかなることを欠く」正当な納得出来る詳しい説明に欠けている、だから、正しくない、ここで私が項立てする「」(「」=「虫」+「黑」)は、「雀甕」になる前の毛虫「蚝(いらむし)」と同類ではあるものの、形状が「」よりも平たくて、毛も遙かに疎らであり、色も斑(まだら)に多彩色を呈し、しかもその毒は強烈であって、明らかに形態や属性・毒の性質が違う、だから異なった種なのだ、と良安は時珍を激しく批難し、独自に主張をしているのである。]

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