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2016/05/10

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 いひあり

Iiari

いひあり   
1螘

【音籠】

       【和名以比阿里】

ロン

[やぶちゃん字注:「1」=「虫」+「丁」。「2」=(上)「龍」+(下)「虫」。]

 

本綱2乃蚍蜉之赤者也五行記云後魏時兗州有赤蟻

與黒蟻闘長六七歩廣四寸赤蟻斷頭死則離騷所謂南

方赤蟻若象玄蜂若壷者非寓言也

嶺南有獨脚蟻一足連樹根下止能動揺不能脱去亦一

異者也

 

 

いひあり   1螘〔(たうぎ)〕

【音、籠。】

       【和名、以比阿里。】

ロン

[やぶちゃん字注:「1」=「虫」+「丁」。「2」=(上)「龍」+(下)「虫」。]

 

「本綱」に、2は乃〔(すなは)〕ち、蚍蜉(をほあり)の赤き者なり。「五行記」に云ふ、後魏〔(こうぎ)〕の時、兗〔(えん)〕州に赤蟻有り、黒蟻と闘(たゝか)ふ。長〔(た)〕け六、七歩〔(ぶ)〕、廣さ四寸あり。赤蟻、頭を斷(き)られ死すと云ふ時は、則ち、「離騷」に謂へる所の、『南方に赤蟻あり。象のごとし。玄蜂(くろばち)壷のごとし。』と云ふは、寓言に非ず。

嶺南、獨脚の蟻、有り。一足にて樹の根の下に連なり、止〔(た)〕だ能く動揺して脱去すること能はず。亦、一異なる者なり。

 

[やぶちゃん注:以下の叙述から、一応、アリ科ヤマアリ亜科ヤマアリ属アカヤマアリ亜属アカヤマアリ Formica sanguinea を同定候補の一種に挙げておきはする。闘争シーンが示されるが、ウィキの「アカヤマアリによれば、『ヨーロッパ、ロシア、東アジアなどに』棲息し、体長は六~七ミリメートルで『胸部や肢は赤く、頭部や腹部は通常』は黒色を成す。『アカヤマアリは奴隷狩りをすることで知られており』、同亜属の近縁種であるクロヤマアリ亜属クロヤマアリ Formica japonica・ヤマクロヤマアリ Formica lemani・ツヤクロヤマアリ Formica candida・ハヤシクロヤマアリ Formica hayashi などを『狩り、奴隷として巣に住まわせ』ている。殆んどの『巣で他種のアリと混生しており、単独で巣を作ることは少ない。また蟻塚を作ることはほとんどない』。また、『アカヤマアリ亜属の種として初めて融合コロニー』(一つの『コロニーが多数の巣を形成すること)の存在が確認され』てもいる、とあり、強ち、トンデモ同定とも思えないように私には思われる。

 

・「いひあり」これは私の単なる直観だが、「飯蟻(いひあり)」(いいあり)ではなかろうか? 古代米は赤いからである。

・「蚍蜉(をほあり)」大蟻。ここは種としてそれ(現行ではアリ科ヤマアリ亜科オオアリ属オオアリ亜属クロオオアリ Camponotus japonicus を代表種(本邦最大種)として示し得る。但し、それでも働きアリの体長は七~十二ミリメートルである)ではなく、単に大きな蟻の謂いである。

・「五行記」東洋文庫版書名注には『一巻。無名氏撰』とのみあるが、子の書誌情報で合致するデータがネット上にはない。識者の御教授を乞う。

・「後魏〔(こうぎ)〕」拓跋(たくばつ)氏が華北を統一して五胡十六国時代を終焉させて建国した北魏(三八六年~五三四年)のこと。国号は「魏」であるが、戦国時代の「魏」や三国時代の「魏」などと区別するため、通常はこちらを「北魏」と呼称する。ウィキの「北魏」によれば、また別に三国時代の「魏」が曹氏が建てたことから、これを「曹魏」と呼ぶのに対し、拓跋氏の「魏」はその漢風姓である元氏からとって「元魏(げんぎ)」と呼ぶこともあり、広義には後に分裂して出来る「東魏」と「西魏」もこれに含まれ、さらにこうした国号の由来から「曹魏」のことを「前魏」、「元魏」のことを「後魏」と呼ぶこともある。

・「兗〔(えん)〕州」現在の山東省・河北省に当たる広域古称。

・「六、七歩〔(ぶ)〕」九・三~一〇・八メートル。古代中国でもこの単位は大きく変わらない。言っておくが、以上は私の計算や表記違いではない。

・「廣さ四寸」体の幅は十二センチメートル。同前。

・「離騷」誤り。「楚辞」の「招魂」篇の中の一節。当該の前後を抄出する。但し、「幸」は奇体な別字であるが、表記出来ないし、字注するにもまっこと奇体な字体あり、本テクスト化の主旨からは字を説明する必要を認めないので、意味の通り易いこちらに換えた(中文テクストでもこの「幸」を用いており、理不尽なこととは思わない)。

   *

 

魂兮歸來

南方之害

流砂千里些

旋入雷淵

散而不可止些

幸而得脱

其外曠宇些

赤蟻若象

玄蜂若壺些

五穀不生

叢菅是食些

 

やぶちゃんの勝手書き下し文

魂よ 歸り來たれ

南方の害

流砂 千里たり

旋りて 雷淵に入らば

散(びさん)して止まるべからず

幸ひにして脱するを得るとも

其の外(がい) 曠宇(くわうう)たり

赤蟻は象のごとく

玄蜂は壺のごとし

五穀 生ぜず

叢菅(そうくわん) 是れを食らひたり

   *

「雷淵」は砂漠地帯で発生した強烈な砂嵐のこと(そのびしびしと打ち当たる砂を「雷」としたもののようである)。「散」粉砕され粉々になって飛び散ってしまうこと。「曠宇」果てしなく広がる荒野。本文にも出るが、この「壺」はその素材からの謂いで瓢簞(ひょうたん)の謂いであるので注意されたい。「叢菅」草むらに生えた茅(かや)。以上の注はは昭和四二(一九六七)年集英社刊藤野岩友校注訳注になる「楚辞」を参考にさせて戴いた。

・「寓言」事実に基づかない誇張したトンデモ譬え話。

・「嶺南」現在の広東省・広西チワン族自治区の全域と湖南省及び江西省の一部に相当する地域の古称。

・「獨脚の蟻、有り。一足にて樹の根の下に連なり、止〔(た)〕だ能く動揺して脱去すること能はず」一読、私はこれは高い確率で、前の項で掲げたアリ科ヤマアリ亜科ケアリ族ミツツボアリ属 Myrmecocystus に属する一種ではあるまいか? 私が映像で見た蜜をためることに特化したこの種の中の働きアリは、暗い地中の巣の上部に密生して固着し、飲み溜めた巨大な蜜壺のようなそれをぶら下げたまま動かないからである。但し、同種群の一首が中国の上記地方に棲息するかどうかは、確認出来ていない。識者の御教授を乞う。]

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