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2016/05/13

ガリヴァの歌   原民喜

  ガリヴァの歌

 

必死で逃げてゆくガリヴァにとつて

巨大な雲は眞紅に灼けただれ

その雲の裂け目より

屍体はパラパラと轉がり墜つ

轟然と憫然と宇宙は沈默す

 

されど後より後より追まくつてくる

ヤーフどもの哄笑と脅迫の爪

いかなればかくも生の恥辱に耐へて

生きながらへん と叫ばんとすれど

その聲は馬のいななきとなりて悶絶す

 

[やぶちゃん注:私が私の「原民喜全詩集」で底本とした一九七八年青土社刊「原民喜全集 Ⅲ」では総標題「魔のひととき」の五篇目に配されてある。同書書誌によれば、初出は原民喜自死から四ヶ月後に出た昭和二六(一九五一)年細川書店刊「原民喜詩集」である。私のポリシーにより正字化して示した。但し、現在進行中の私の「ガリヴァー旅行記」の原稿復元作業では彼は旧字の「聲」を「声」と書く傾向は窺える。「憫然」は「あわれむべきさま」の意。本詩篇は「魔のひととき」詩群の順列から見ても戦後の創作であり、本篇のイメージには原子爆弾の惨状のイメージが意識的確信犯としてダブらせてあると考えてよい。]

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