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2016/05/18

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) 小人國(6) 五章 大てがら (その二)

六章

 

 さて、〔私は〕これからこれでこれから、→ここで、〕リリハット國の風俗を〔、〕少し〔みんさんへお話し致しませう。みなさんに傳へて見■■■→説明しておきたいと思ひます。〕話して 述べておきます。

[やぶちゃん注:現行版は前の段落との間に一行空きがあるだけで、「六章」の章表示はない。また「述べておきます。」はママ。現行版は『さて、私はこゝで、リリパット国の風俗を少し説明しておきたいと思います。』である。]

 この國の住民の身長は、平均して、まづ六吋以下ですが、その他の動物の大きさも、これと〔、〕正比例して出來ています。ま〔づ〕一番大きい牛や馬でも〔、〕せいぜい四吋か五吋ぐらゐ、羊なら〔、〕一吋半ぐらい、鵞〔鳥〕なんか、殆ど雀ぐらゐの大きさです。だんだんこんな風に小さくなつてゆきますが、一番小さな動物など〔、〕私の眼では殆ど見えません。

[やぶちゃん注:「六吋以下」凡そ一五センチメートル以下。

「四吋か五吋ぐらゐ」一〇・二~一二・七センチメートル程。

「一吋半」三・八センチメートル。]

 ところが、リリバット人の眼には〔、〕〔非常に〕小さなものでも、ちやんと見えるのです。彼等〔の眼〕は、細かいもの る〔なら〔、〕〕精確よく見ることができます〔えますが、〕あまり遠いところは見えません。私が感心したのは、〔リリバットの〕料理人は〔普通の蠅ほどもない大きさ〕雲雀の毛をむしつてゐ〔→雲雀は普通の蠅ほどもない大きさですが、〕リリバットの料理人は、ちやんと、その毛をむしることができます。それから〔私が〕感心したのは、若い娘が〔、〕見えない針に〔、〕見えない絲を通してゐるのです。この國で一番高い木は七呎ぐらいで、その木は國立公園の中にありますが〔、〕私が握りこぶしを固めても〔、〕屆く〔すぐ、〕てつぺんにとどくのです〔きます〕。

[やぶちゃん注:「七呎」二・一三メートル。私が実際にやってみた高さから試算すると、ガリヴァーの身長は一メートル八十センチ強というところである。]

 〔ところで、〕この國では〔、〕學問も古くから〔非常に〕發達してゐますが、ただ〔文〕字の書き方が〔、〕実に風變りなのです〔でした。→なのです〕。ヨーロッパ人のやうに〔、〕左から右へ書くのでもなく、アラビア人のやうに〔、〕右から左へ書くのでもなく、シナ人のやうに〔、〕上から下へ書くのでもなく、かといつて〔、〕下から上へ書くのでもないのです〔ありません〕。リリバット人は〔、〕紙の隅から隅へ〔、〕斜めに字を書いてゆくのです。

 リリバットでは、人が死ぬと〔、〕頭〔の〕方を下にして、逆さまに土に〔う〕めます。死人は〔、〕一萬一千月たつといきかへる、その時、世界はひつくりかえつてゐるから、〔逆さま〕にしておけば、ちやんと立てる、と彼等は考へてゐるのです。もつとも、そんな馬鹿なことはないと、學者〔た〕ちは 〔笑〕つています。

[やぶちゃん注:字の空隙はママ。「學者」の前には何かを挿入しようとした線の痕跡があるが、字は書かれていない。

「一萬一千月」試みにグレゴリオ暦一年十二ヶ月に換算すると、九百十六年半になる。]

 この國では、盜みよりも〔、〕詐僞の方がいけな〔わる〕いことになつてゐます。〔ゐて、〕詐僞をすれば死刑にされるのです。リリバット人の者によれば、なぜかといふに、→盗みは、〕こちらが馬鹿でなく用心さへしてゐれば、〔まづ〕物を盗まれるといふことはありません。ところが、こちらが正直〔のために〕〔不正直なものに〕だまされるといことは〔これはどうも〕防ぎやうがない、だから詐僞が一番いけない罪とされてゐます。〔のだとリリバットの人〔たち〕は考〕へています。それから、忘恩も死刑にされます。〔人が〕恩に仇をもつてむくゐるといふことは〔やうな〕ことをする人は、生きる資格がないとされてゐます。

[やぶちゃん注:「詐僞」はママ。現行版は、『この国では、盗みよりも詐欺の方が悪いことになっています。詐欺をすれば死刑です。盗みは、こちらが馬鹿でなく用心さえしていれば、まず物を盗まれるということはありません。ところが、こちらが正直のために、不正直なものに、騙されるのはこれはどうも防ぎようがない、だから、詐欺が一番いけないのだ、リリパットの人たちは考えています。それから、忘恩も死刑にされます。恩に仇をもってむくいるというようなことをする人は、生きる資格がないとされています。』で、「詐欺」だけでなく、各部の表記表現に微妙な違いがある。]

 〔人を〕この國でで人をの官 つくには、〔官職にえらぶ場合、〕〔その人の→この國では〕才能より德〔義〕の方を大切にします。重く見ます。政治といふものは〔、〕誰にも必要なのだから、普通の才能があればいいとされています。しかし、〔けれども、〕德義のない人は、いくら才能があつても、危險だから、〔そんな人に〕官職は〔政治〕つか〔まか〕せ〔られ〕ないといふのです。

[やぶちゃん注:どこか国の、憲法をあってなきが如くに振る舞う総理大臣や血税を湯水のように使って恥じない都知事はリリパット国でも政治家にはなれないということである。]

 私はこのリリバット國に九ヶ月と十三日間滯在してゐたのですが、こゝで、一つ私がその間どんな風にして〔どんなぐあいに〕暮したか、それを〔これから〕お話ししてみませう。

[やぶちゃん注:「どんな風にして〔どんなぐあいに〕」の併存はママ。現行版は『ひとつ私がその間どんなふうにして暮したか、』である。]

 私は生れつき手先は器用でしたが、どうしてもテーブルが一つ欲しかつたので、帝室庭園の一番大きな木を何本か切つて、手ごろなテーブルと椅子をこしらへました。

 それから、二百人の女裁縫師が〔、〕私のために、シヤツとシイツとテーブル掛けを作つてくれました。そ〔れ〕には出來るだけ丈夫な布を使つてくれたのですが、それでも、一番厚いのが紗(さ)よりまだ薄いのです。だから、何枚も重ねて縫ひ合さねばなりませんでした。

[やぶちゃん注:「紗」のルビの「さ」はママ。]

 女裁縫師たちは〔、〕私を寢ころばしておいて、寸法をはかりました。一人が私の頭のところに立ち、もう一人は〔、〕私のふくら脛〔足のところ〕に立ち、そして丈夫な綱を兩方から〔、〕二人が持つてピンと張ります。すると、さらにもう一人の裁縫師が〔、〕一吋ざしの物さしで、この綱の長さを〔かな〕つてゆくのです。私は自分の古シヤツを地面に拡げて雛形〔見せ〕てやつたので、仕立〔シヤツ〕はピツタリ私の身躰に合ふのができ上りました。

[やぶちゃん注:現行版では「頭」ではなく『首』となっている。次の段も同じ。]

 〔私の〕服をこしらへるにはまた、三百人の洋服屋が、かかり〔つき〕きりでやつてくれました。今度もその寸法のとりかたが、また振(ふる)つてゐました。私が膝(ひざ)まづいてゐると、地面から頭のところへ梯子をかけ、一人がこの梯子にのぼつて、私の襟首から地面まで、錘のついた綱をおろすのです、それが丁度、上衣の丈になるのでした。腕と腰の寸法は〔、〕私が自分で計りました。いよいよ、〔それが〕出來上つてみると、それは、寄片〔よせぎれ〕細工のやうに妙な服でした。

[やぶちゃん注:「かかり〔つき〕きりで」の併存はママ。現行版は『つききりで』。「寄片〔よせぎれ〕細工」は現行では『寄切細工』である。これは所謂、パッチ・ワークのことであろう。]

 〔私の〕食事の世話をする〔は、私の〕ために、三百人の料理人が〔ついていました。彼等は〕それぞれ、私の近所に小さな家を建ててもらつて、家族もろとも〔、〕そこ〔で〕暮してゐました。〔そして、〕一人が二皿づつ、こしらへてくれることになつてゐました。私はまづ〔、〕二十人の給仕人をつまみ上げて、食卓〔テーブル〕の上にのせてやります。すると下には百人の給仕が控へてゐて、肉の皿や葡萄酒や樽詰などを、それぞれ肩にかついで待つてゐます。私がほしいといふ品を、テーブルの上にゐる給仕人がテイブルから綱をおろして、上手く〔うまく〕引き上げてくれるのです。肉の皿は一皿が一口になり、酒一樽が〔私にはまづ〕一息にのめます。〔ここ〕の羊の肉はあまり上等でないが、牛肉はなかなかおいしいのでくあります〔す〕。→かつたので、〕三口ぐらゐの大きさの肉は滅多にありません。

[やぶちゃん注:現行版では「こしらへてくれることになつてゐました。」と「私はまづ」の間で改行されてある。なお、最後の部分の読点繋がりはおかしい。現行版では『こゝの羊の肉はあまり上等でないが、牛肉はなかなかおいしかったのです。三口ぐらいの大きさの肉はめったにありません。』となっている。]

 召使たちは〔、〕私が骨もろともポリポリ食べてしまふのを見て、ひどく驚いてゐました。それから、鵞鳥や七面鳥も〔、〕大がい一口で食べられますが、これはイギリスのよりずつとおいしいのでした。〔いい味です。〕小鳥なんかは、一度に二十羽や三十羽は、ナイフの先ですくいあげて食べました〔るのでした〕。

 ある日、皇帝は私の食事振りをきかれて、それでは〔では〕自分〔たち〕も〔皇后、皇子、皇女たちと、〕一緒に、私と會食がしてみたいと望まれました。そこで彼等が來ると、私はみんな〔彼→みんな〕テイブルの上の椅子に乘せて、〔丁度〕私とむき合ひになるやうに坐らせました。そのまはりには〔、〕見張りの兵もついてゐました。

[やぶちゃん注:現行版では『ある日、皇帝は私の食事振りを聞かれて、では自分も皇后、皇子、皇女たちと一しょに、私と会食がしてみたいと望まれました。そこで彼等が来ると、私はみんなテーブルの上の椅子に乗せて、ちょうど私と向き合うように坐らせました。そのまわりには、見張りの兵もついていました。』である。]

【第一次稿】

大藏大臣のフリムナプも〔、〕この〔食事の〕席に一緒に來てゐましたが、どういふものか、彼は時々〔、〕私の方を見ては、苦い顏をします。しかし私はそんなことは氣にしないで、ひとつみんなを驚かしてやらうと〔れと〕思つて、思ひきり澤山食べてやりました。これは後で氣づいたのですが、大藏大臣はかねてから私に反感を持つてゐました〔たのです〕。で、私のやうな大食を養つてゐては入費が大變だからできるだけ早くいい折を見て追放なさつた方が得でございませう」と、こんな風なことを陛下に言つたらしいのです。

【第二次稿】

大藏大臣のフリムナプも、この席に一緒に來てゐましたが、どういふものか、彼は時々、私の方を見ては、苦い顏をします。しかし私はそんなことは氣にしないで、ひとつみんなを驚かしてやれと思つて、思ひきり澤山食べてやりました。これは後で氣づいたのですが、大藏大臣はかねてから私に反感を持つてゐたのです。それで〔彼は〕、この会食の後で陛下訴へたらしいのです。「あんなものを國家が〔陛下が〕養つてをられては、お金がかかつて大變です、できるだけ早くいい折を見て追放なさつた方が、國家の利益でございませう。」と、こんなことを言つたものとみえます。

【決定稿】

大藏大臣のフリムナプも、この席に一緒に來てゐましたが、どういふものか、彼は時々、私の方を見ては、苦い顏をします。しかし私はそんなことは氣にしないで、ひとつみんなを驚かしてやれと思つて、思ひきり澤山食べてやりました。これは後で氣づいたのですが、大藏大臣はかねてから私に反感を持つてゐたのです。彼は、この会食の後で陛下に訴へたらしいのです。「あんなものを陛下が養つてをられては、お金がかかつて大變です、できるだけ早くいい折を見て追放なさつた方が、國家の利益でございませう。」と、こんなことを言つたものとみえます。

[やぶちゃん注:以上の段落は例外的に推敲過程を全体で三回に分けて再現してみた。現行のそれを以下に示す。

   *

【現行版】

 大蔵大臣のフリムナップもこの席に一しょに来ていましたが、どういうものか、彼はときどき、私の方を見ては、苦い顔をします。しかし私はそんなことは気にしないで、ひとつみんなを驚かしてやれと思って、思いきりたくさん食べてやりました。これはあとで気づいたのですが、大蔵大臣はかねてから私に反感を持っていたので、この会食のあとで陛下に言ったらしいのです。

「あんなものを陛下が養っておられては、お金がかゝって大へんです。できるだけ早くいゝ折を見て追放なさった方が、国家の利益でございましょう。」

 と、こんなことを言ったものとみえます。

   *

下線は私が引いたもので、自筆原稿決定稿との相違箇所を示す(それ以外にフリナップの台詞が改行表示されている点も相違点である)。]

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