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2016/06/29

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 蝎

Kikuimusi

きくいむし 木蠹蟲

【音曷】 蝤蠐 蛣

      蛀蟲

      【和名乃牟之】

カツ

 

本綱蝤蠐即蝎也狀如蠐螬節長足短口黑無毛在朽木

中食木心穿木如錐至春雨後化爲天牛

凡似蠺而在木中食木者爲蝎 似蠶而在樹上食葉者

爲蠋 似蠋而青小行則首尾相就屈而後伸者爲尺蠖

似尺蠖而青小者爲螟蛉【蠋尺蠖螟蛉】此三蟲皆不能穴于木

至夏俱羽化爲蛾

凡蝎隨所居所食之木性味良毒不同未可一槩用也古

方用蠹多取桑柳構木者亦各有義焉

按蝎【破古木枝見之在中】和方取臭樹蠹炙用治小兒五疳保童

 圓藥中亦入用此蠹内外白而形色與柳蠹無異售者

 僞之宜辨之

 

[やぶちゃん注:ここに縦罫。]

 

柳蠹蟲【甘辛平有小毒】 至春夏化爲天牛蓋桑柳蝎共有治驚

 風及血症之功然今俗以柳蟲爲治痘瘡變症神藥予

 屢試之未見効

桑蠹蟲【甘温無毒】 其糞能治小兒胎癬先以葱鹽湯洗浄用

 桑木蛀屑燒存性入輕粉等分油和敷之凡小兒頭生

 瘡手爬處即延生謂之胎癬

桃蠹【和名毛毛乃牟之一名山龍蠹】 食桃樹蟲也殺鬼辟邪惡不祥又

 其蛀糞爲末水服則辟温疫令不相染

蒼耳蟲 生蒼耳草梗中狀如小蠶取之但看梗有大蛀

 眼者以刀截去兩頭有蛀梗多收線縛掛簷下其蟲在

 内經年不死用時取出細者以三條當一用之以麻油

 浸死收貯毎用一二枚擣傅疔腫惡毒即時毒散大有

 神効

 

 

きくいむし       木蠹蟲〔(こくそむし)〕

【音、曷(カツ)。】 蝤蠐〔(しゆうせい)〕 蛣〔(きつくつ)〕

            蛀蟲〔(しゆちゆう)〕

            【和名、「乃牟之(のむし)」。】

カツ

 

「本綱」〔に〕、蝤蠐は、即ち、蝎〔(きくひむし)〕なり。狀〔(かたち)〕、蠐螬〔(すくもむし)〕のごとく、節、長く、足、短く、口、黑くして、毛、無し。朽〔ち〕木の中に在りて、木の心を食ひ、木を穿〔(うが)〕つこと、錐(きり)のごとし。春雨の後に至りて、化して天牛(かみきり)虫と爲る。

凡そ、蠺〔(かひこ)〕に似て、木の中に在りて木を食ふ者を蝎〔(きくひむし)〕と爲す。 蠶に似て、樹上に在りて葉を食ふ者を蠋(はくひむし)と爲す。蠋に似て青く小さく、行く時は則ち、首尾、相ひ就き屈して後〔ろに〕伸〔(の)ぶ〕る者を尺蠖(しやくとりむし)と爲す。尺蠖に似て青く小さき者を螟蛉(あをむし)と爲す。【蠋。尺蠖。螟蛉。】此の三つの蟲は皆、木に穴すること能はず。夏に至りて俱に羽化して蛾と爲る。

凡そ、蝎、居る所、食ふ所の木に隨ひて、性・味、良・毒、同じからず、未だ一槩〔(いちがい)〕にして用ふるべからざるなり。古方に蠹〔(きくひむし)〕を用ふるに、多く桑・柳・構〔(かじ)〕の木の者を取る〔は〕亦、各々、義、有り。

按ずるに、蝎【古木の枝を破りて之れを見るに中に在り。】、和方〔にては〕、臭樹蠹(くさきのむし)を取りて炙りて用ひ、小兒五疳を治す。保童圓の藥中にも亦、入れ用ふ。此の蠹〔(きくひむし)は〕内外、白くして、形・色、柳の蠹と異なること無し。售〔(う)〕る者、之れを僞る。宜しく之〔れを〕辨ずべし。

 

[やぶちゃん注:ここに縦罫。]

 

柳蠹蟲(やなぎのむし)【甘辛、平。小毒、有り。】 春夏に至りて化して天牛(かみきり)虫と爲る。蓋し、桑・柳の蝎、共に驚風及び血症を治するの功、有り。然るに今、俗、柳蟲を以て痘瘡變症を治する神藥と爲す。予、屢々之れを試みるも未だ効を見ず。

桑蠹蟲〔(くはのむし)〕【甘、無。毒。】 其の糞、能く小兒の胎癬(かしらのかさ)を治す。先づ、葱鹽湯〔(ねぎしほゆ)〕を以て洗浄して桑の木の蛀屑(むしくそ)を用ひ、燒きて、性を存〔し〕、輕粉(はらや)を入れて等分に油に和して之れを敷く。凡そ小兒の頭に瘡〔(かさ)〕を生〔ぜしは〕、手を以て爬〔(か)〕く處、即ち、延生〔(えんしやう)〕す。之れを胎癬と謂ふ。

桃蠹〔(たうと)〕【和名、「毛毛乃牟之〔(もものむし)〕」。一名、「山龍蠹〔(さんりうと)〕」。】 桃の樹を食ふ蟲なり。鬼を殺し、邪惡を辟(さ)く。又、其の蛀糞(むしくそ)、末と爲し、水服すれば、則ち、温疫を辟け、相ひ染(うつ)らざらしむ。

蒼耳蟲(をなもみのむし) 蒼耳草の梗(くき)の中に生ず。狀、小〔さき〕蠶のごとく、之れを取るに〔は〕、但だ、梗を看〔(み)〕れば、大なる蛀-眼(むしあな)有る者、刀を以て兩頭を截り去るに、有る〔のみ〕。蛀〔(むし)〕あら〔む〕梗を多く收〔め〕、線(くゝ)り縛〔り〕て簷〔(のき)〕の下に掛くれば、其の蟲、内に在りて年を經ても死せず。用ひる時、取り出す。細なる者は三條を以て一〔(いつ)〕に當て、之れを用ふ。麻油を以て浸死〔(ひたしじに)させ〕、收〔めて〕貯〔ふ〕。毎用、一、二枚を擣〔(つ)き〕て疔腫(てうしゆ)・惡毒に傅〔(つ)〕く。即時に、毒、散ず。大いに神効有り。

 

[やぶちゃん注:「本草綱目」の引用部には前の「蠐螬」に出る漢字が頻繁に出て明らかに時珍を始めとする明以前の本草家が、これらを一緒くたにして平気でいた(漢方製剤に使用していた)ことが窺える。ともかくも差別化するならば、まずは、「蝎」、「木食虫」の異名を持つ生物(或いは幼体)であり、その形状は前項の「蠐螬(すくもむし)」、即ち、鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目コガネムシ下目コガネムシ上科コガネムシ科スジコガネ亜科スジコガネ族スジコガネ亜族コガネムシ属 Mimela に属するコガネムシ類の幼虫に似ている。但し、それよりもよりも有意に「節、長く、足、短く、口、黑くして、毛、無」いこと、その棲息する場所は、土中にいる「蠐螬(すくもむし)」とは異なり、「朽ち木の中に在りて、木の心を食ひ、木を穿(うが)つこと、錐(きり)のごと」く強力に食い、そして、「春雨の後に至りて、化して天牛(かみきり)虫と爲る」というのであるから、これはもう、

鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目ハムシ上科カミキリムシ(髪切虫・天牛)科 Cerambycidae の幼虫

としてよい。ウィキの「カミキリムシ」によれば、以下に示すように(下線やぶちゃん)、『全世界の熱帯から亜寒帯まで、陸上性の多年生植物がある所にはたいてい分布する。名前がついているものだけで』も約二万種を数え、本邦だけでも凡そ八百種ほどが知られている。『ごく一部の種を除き草食で、成虫の体は前後に細長く、触角、脚、大顎が目立つ。 幼虫成虫という一生を送る完全変態の昆虫で』、『成虫の触角は長く、英名"Longhorn beetle(長い角の甲虫)"または"Longicorn"もここに由来する。また、漢字表記の一つ「天牛」は中国語に由来し、長い触角をウシの角になぞらえたものである。触角の長さは種類やオスメスによって異なり、体長の半分くらいのものから体長の』三倍『以上に及ぶものまで変異に富む。同種では雄の方が長い』。『脚はカブトムシなどのような棘は発達しないが、長くがっしりしている。脚先に並んだ付節はハート型で細かい毛が生えており、吸盤とは構造が違うがものにくっつくという点では同じである。この付節と鉤爪があるため、垂直に立つ木の幹も、ガラス面でも歩くことができる』。『成虫は植物の花、花粉、葉や茎、木の皮、樹液などを食べる。植物の丈夫な繊維や木部組織をかじりとるため、大顎もそれを動かす筋肉もよく発達する。うかつに手で掴むと大顎で咬みつかれることがあり、大型種では出血することもあるので注意が必要である。カミキリムシという呼び名も、髪の毛を切断するほど大顎の力が強いことに由来する(「噛み切り虫」からという説もある)』。『また、カミキリムシを手でつかむと、ほとんどの種類が「キイキイ」という威嚇音を出す。多くは前胸と中胸をこすり合わせて発音するが、ノコギリカミキリ類など前翅の縁と後脚をこすり合わせて発音するものもいる』。『幼虫の食草・食樹は種類によってだいたい決まっており、卵もそれらの植物に産卵される。幼虫は細長いイモムシ状で、体色はたいてい半透明の白色をしており、日本では俗にテッポウムシ(鉄砲虫)などと呼ばれる。一般には円筒形の体で、前胸だけが大きく、腹背にやや平たい。胸部の歩脚も腹部の疣足も外見上はない。草の茎や木の幹など、植物の組織内に喰いこんでトンネルを掘り進み、大顎で植物の組織を食べながら成長する。生きた植物に食いこむものと、枯れた植物に食いこむものとがいるが、大型の種類は生木に入りこみ、数年かけて成長することが多い』。『充分に成長した幼虫は自分が作ったトンネル内で蛹になる。蛹はほぼ成虫の形をしており、触角が渦巻き状に畳まれる。羽化した成虫は大顎でトンネルを掘り進み、植物の外へ姿を現すが、羽化した段階で越冬するものもいる』。「種の多様性」の項は中略し、ここでは種によって異なる樹種を選ぶ(成虫・幼虫ともに)の生態を記載する「人間とのかかわり」を以下に引く。『カミキリムシは、草木を利用する人間の観点では害虫としての存在が大きい。幼虫(テッポウムシ)が生木に穴を開けて弱らせたり、木材そのものの商品価値をなくす。また、成虫でも木や葉、果実を食害するものがいるので、林業・農業分野においてカミキリムシ類は害虫の一つといえる』。『害虫として挙げられるおもなカミキリムシには以下のようなものがある』(一部で個人的に増やしてある。分類タクサと学名は独自に調べた)。

・カミキリムシ科フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族ゴマダラカミキリ属ゴマダラカミキリ Anoplophora malasiaca

 ――ミカン・ヤナギ・クリ・イチジク等

・フトカミキリ亜科シロスジカミキリ族クワカミキリ属クワカミキリ Apriona japonica

・フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族キボシカミキリ属キボシカミキリPsacothea hilaris

 ――両種ともクワ・イチジク等

・シロスジカミキリ族シロスジカミキリ属シロスジカミキリBatocera lineolata

・カミキリ亜科ミヤマカミキリ族ミヤマカミキリ属ミヤマカミキリMassicus raddei

 ――両種ともクリ・クヌギなど

・カミキリ亜科スギカミキリ族スギカミキリ属スギカミキリ Semanotus japonicus

 ――スギ・ヒノキ

・フトカミキリ亜科ルリカミキリ族ルリカミキリ属ルリカミキリBacchisa(Bacchisa) fortunei

・フトカミキリ亜科トホシカミキリ族リンゴカミキリ属リンゴカミキリOberea japonica

 ――サクラ・リンゴ・ナシ及びバラ科の樹木

・カミキリ亜科トラカミキリ族トラカミキリ属ブドウトラカミキリ Xylotrechus pyrrhoderus

 ――ブドウ類

・フトカミキリ亜科トホシカミキリ族キクスイカミキリ属キクスイカミキリPhytoecia(Phytoecia) rufiventris

 ――キク類

・フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族イタヤカミキリ属イタヤカミキリMecynippus pubicornis

 ――ヤナギ

・フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族ビロウドカミキリ属イチョウヒゲビロウドカミキリ Acalolepta ginkgovora

 ――イチョウ・ニワトコ・クサギ

「桃蠹」でモモが出るが、お分かりとは思うが、「桃」はバラ科 Rosaceae(モモ亜科 Amygdaloideae モモ属モモ Amygdalus persica)である。また、後で出すが、後の本文に出る「構」(カジ)はクワ科 Moraceae の、「蒼耳草」(オナモミ)はキク科 Asteraceae の植物であるから、これらで一応、本文で叙述する食害対象の樹木類をカバー出来たと思う。以下、ウィキの戻る。『また、飛んで移動できるカミキリムシの成虫は、植物の伝染病などを媒介するベクターの役割も果たす。たとえば「マツクイムシ」と呼ばれる』カミキリムシ科フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族ヒゲナガカミキリ属『マツノマダラカミキリ Monochamus alternatus は日本の在来種だが』、二十世紀『前半頃にマツを枯らす線虫の一種・マツノザイセンチュウ Bursaphelenchus xylophilus が北アメリカから日本に侵入、以降は線虫を媒介するとして線虫共々「マツクイムシ」として恐れられ、駆除が進められるようになった経緯がある』。『害虫として嫌われる一方で、大型種の幼虫は世界各地で食用にされ、蛋白源の一つにもなっている。日本とて例外ではなく、薪の中などにひそむカミキリムシの幼虫は子どものおやつとして焚き火で焼いて食べていた。ただし、これも薪などが身近にあった時代の事象になりつつある』。『総じて、大顎が下を向くフトカミキリ亜科』Lamiinae『の多くや、カミキリ亜科』Cerambycinae のトラカミキリ族トラカミキリ属トラフカミキリトラフカミキリ Xylotrechus chinensis・トガリバアカネトラカミキリ族トガリバアカネトラカミキリ属スギノアカネトラカミキリAnaglyptus(Anaglyptus) subfasciatus ・トラカミキリ族トラカミキリ属ブドウトラカミキリ Xylotrechus pyrrhoderus『等が、農林業害虫として問題視される』。『一方、あまり害虫視されていないのは』、カミキリムシ科ノコギリカミキリ亜科ノコギリカミキリ族ノコギリカミキリ属 Prionus のノコギリカミキリ類やノコギリカミキリ亜科ウスバカミキリ族ウスバカミキリ属ウスバカミキリMegopis(Aegosoma) の』系統で、これらの種の幼虫が食するのは地中に埋もれた倒木や、腐朽した木である。その意味で幼虫の生態はクワガタムシ』(多食(カブトムシ)亜目コガネムシ上科クワガタムシ科 Lucanidae)『に近いといえるが、クワガタムシほど腐朽、軟化が進行した材を食べるわけではない』。ハナカミキリ亜科 Lepturinaeの『幼虫はほぼ全種が枯死、腐朽した材を食樹とする。中でも原始的な種とされるヒラヤマコブハナカミキリ』(ハイイロハナカミキリ族ヒラヤマコブハナカミキリ属Enoploderes(Pyrenoploderes) bicolor『やベニバハナカミキリ』(ハナカミキリ族ベニバハナカミキリ属Paranaspia anaspidoides)、『ハチに擬態した』ホソコバネカミキリ亜科ホソコバネカミキリ属ホソコバネカミキリ属Necidarisの『大型種オニホソコバネカミキリ』(Necydalis gigantea)『等は、老木の芯腐れ部分を食べるという特異さから、生態がなかなか解明されなかった』。ハナカミキリ亜科ハイイロハナカミキリ族『ヒメハナカミキリ属Pidoniaの一部は幼虫の食性がさらに極端であり、腐葉土を食べている』。『また、カミキリムシはその多種多様さ、多彩さから昆虫採集の対象としても人気があり、熱心な収集家も多い。彼らは各種の花や木、伐採後の木材置き場や粗朶場(そだば : 間伐材などを積み上げた場所)、夜間の灯火などに集まったカミキリムシを採集する。木材置き場には生殖と産卵のために多くの種が集まる。また、ハナカミキリ類は小型の美麗種が多く、多くは初夏に山地の花に集まる。それもクリの花とかリョウブ』(ツツジ目リョウブ科リョウブ属リョウブ Clethra barbinervis)『など、花がふさふさとしたものに集まるものが多く、これを捕虫網ではたくようにして捕まえるのが大変な楽しみである』とある。

 

・「蝎」既に述べたが、これは漢語で蠍(サソリ)以外に地虫の類を広く指す語でもあるので注意されたい。

・「蛀」この字は現代中国でも「木食い虫」(蠹)、他に広く、虫が木や書物を対象として「食い荒らす」謂いがある。

・『和名、「乃牟之(のむし)」』。「和妙類聚抄」に、『蠹 説文云蠹【音妬和名乃牟之】木中虫也』とあるから、非常に古くからの呼称であることが判る。

・「蠋(はくひむし)」所謂、芋虫で、広く蝶・蛾の幼虫に対する漢語の俗称である。

・「尺蠖(しやくとりむし)」狭義には鱗翅目シャクガ(尺蛾:幼虫の尺取虫に由来)科 Geometridae に属するガの幼虫の名であるが、そうした運動形態を持つ幼虫は概ね、こう呼ばれてしまう(但し、通常は無毛或いは無毛に見えるものに限定されるように思う)。

・「螟蛉(あをむし)」音「メイレイ」は青虫(あおむし:蝶や蛾の幼虫の中で体に長い毛を有さず、緑色を呈しているものの総称)のこと。因みに、膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目アナバチ科ジガバチ亜科 Ammophilinae 或いはその下位の ジガバチ族 Ammophilini ジガバチ(アナバチ)類の一部が、麻酔をかけて卵を産むのを見た中国の古人が「青虫を養い育てて自分の子とする」と誤認したことから、この語には「養子」の謂いもあるのは面白い。

・「【蠋。尺蠖。螟蛉。】此の三つの蟲は皆、木に穴すること能はず。夏に至りて俱に羽化して蛾と爲る」博物学的には概ね正しいのであるが、さて、この項、「蝎(きくひむし)」の記載としてこれが相応しいかといえば、首を捻らざるを得ない。本草書ではしばしばあることではあるが、迂遠な記載ではある。しかし、読んでいて楽しくはあるから、それでよい。

・「一槩〔(いちがい)〕」一概に同じい。

・「構〔(かじ)〕の木」本邦では「梶」の漢字表記の方が一般的であるが、実際に「構」とも書く(但し、その場合は「こう」の木と音読みするようである)。イラクサ目クワ科コウゾ属カジノキ Broussonetia papyrifera ウィキの「カジノキ」によれば、『樹高はあまり高くならず』、十メートルほどで、『葉は大きく、浅く三裂するか、楕円形で毛が一面に生える。左右どちらかしか裂けない葉も存在し、同じ株でも葉の変異は多い。雌雄異株』。『古い時代においてはヒメコウゾ』(クワ科コウゾ属ヒメコウゾ Broussonetia kazinoki:種小名に注目!)『との区別が余り認識されておらず、現在のコウゾ』(コウゾ属コウゾ Broussonetia kazinoki × Broussonetia papyrifera)『はヒメコウゾとカジノキの雑種といわれている』(学名参照)。『また、江戸時代に日本を訪れたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために今日のヒメコウゾの学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっている』。『なお、カジノキは神道では神聖な樹木のひとつであり、諏訪神社などの神紋や日本の家紋である梶紋の紋様としても描かれている』。『古代から神に捧げる神木として尊ばれていた為、神社の境内などに多く生えられ、主として神事に用い供え物の敷物に使われた』。『煙などにも強い植物であるため、中国では工場や鉱山の緑化に用いられる』。『葉はブタ、ウシ、ヒツジ、シカなどの飼料(飼い葉)とする。樹皮はコウゾと同様に製紙用の繊維原料とされた。中国の伝統紙である画仙紙(宣紙)は主にカジノキを用いる。 また、昔は七夕飾りの短冊の代わりとしても使われた』とある。

「各々、義、有り」それぞれの樹種の木食い虫にはその発生と食性に由来する、処方にそれなりの厳然たる区別がある、という意であろう。

・「臭樹」シソ目シソ科クサギ属クサギ Clerodendrum trichotomum。和名は葉を触わると、一種異様な臭いがすることに由来する。

・「小兒五疳」小児のひきつけ・眩暈(めまい)・悪寒・発熱などの症状の総称。

・「保童圓」本邦のオリジナルな漢方の薬方の名である。青森市公式サイトの「あおもり歴史トリビア」第五十五号二〇一三年四月二十六日配信「浪岡の桜の名所」の中に、室町時代のこの浪岡城(青森県青森市浪岡(旧南津軽郡浪岡町))の城主であった浪岡北畠氏が公家山科言継(やましなときつぐ 永正四(一五〇七)年~天正七(一五七九)年)のもとに使者を派遣し、朝廷から位を受ける許可を得ようと、さまざまな根回しをしていたことが山科の「言継卿記(ときつぐきょうき)」に残っているとある記事の中に、賄賂として送ったもの中になんと『煎海鼠(いりこ、干しナマコ)』があり、また、逆に『昆布や煎海鼠をたびたび送ってきている浪岡北畠氏の使いの者、彦左衛門に保童円(ほどうえん)三包と五霊膏(ごれいこう)三貝を遣したともあります。保童円の「円」は練り薬のことですから旅の疲れを癒すために服用するように、また五霊膏の「膏」は膏薬のことですから、疲労した脚にでも塗るように遣わしたのかもしれません。言継の旅人をいたわる心遣いがうかがわれ、身近な人のように感じてしまいます』とたまたま書かれてあったので、特に引いておきたく思う。但し、京都府京都市下京区中堂寺櫛笥町にある「寶蓮寺」の公式サイトの「歴史」の記載には、『京都寶蓮寺の十八代目までは、萬里の小路(までのこうじ)(現在の柳馬場三条下ル)に所在した境内地に住んでいた。この萬里の小路の境内には、前田という医者が住んでいて(現在の前田町の町名の起源となる)、保童円(ほどうえん)という丸薬を売り有名であったとも記録に残されている』とある。因みに、これは私自身が『博物学古記録翻刻訳注 12「本朝食鑑 第十二巻」に現われたる海鼠の記載』で注したものを援用した。そこでは記さなかったが、「保童」とある以上、もともとは小児処方薬であったものであろう(ここでの記載からもそれは判る)。

・「售〔(う)〕る」売る。

・「柳蠹蟲(やなぎのむし)」例えば先に出したイタヤカミキリMecynippus pubicornis の幼虫であろう。以下は別個に記載しないので、先の私の作成した例一覧を参照されたい。

・「驚風」小児がひきつけを起こす病気。癲癇の一種や髄膜炎の類に相当する。

・「血症」婦人の生理不順や或いは「血の道」(思春期・生理時・産褥(さんじょく)時・更年期などに訴える、眩暈・のぼせ・発汗・肩こり・頭痛・疲労感などの諸症状を含む古語で現在の自律神経失調や更年期障害に相当する)のことを指すか。

・「痘瘡變症」天然痘の症状の中でも特徴的な、水疱性発疹が化膿して膿疱となった状態を指すか。

・「小兒の胎癬(かしらのかさ)」これは当初は無気門(コナダニ)亜目ヒゼンダニ科ヒゼンダニ Sarcoptes scabiei var. hominis に感染することによって生ずる皮膚感染症である疥癬の一種かと思ったが、後に掻いた部分が延伸して痒くなるというのだから、これはもしや、現行で言うところの「アトピー性皮膚炎」ではなかろうか? 識者の御教授を乞う。

・「葱鹽湯〔(ねぎしほゆ)〕」ネギを塩茹でしたその液であろう。

・「蛀屑(むしくそ)」これは幼虫の本体(それも含むのであろうが)よりも、その食って糞となって出たもぞもぞになったものを指していると読める。

「燒きて、性を存〔し〕」東洋文庫版現代語訳は入れ替えて、『性を損なわないように焼いて』とする。意味は分かるが、どうすること? と反問したくはなる。焦がさないようにするということか。

・「輕粉(はらや)」普通に「けいふん」とも読み、古く中国から伝えられた薬品で、梅毒薬及び白粉(おしろい)の原料にした白色の粉末。塩化第一水銀(甘汞(かんこう))が主成分で水に溶けにくく毒性が弱い。「水銀粉(はらや)」などとも表記し、別に「伊勢おしろい」とも呼んだ。

・「敷く」塗布する。

・「鬼を殺し、邪惡を辟(さ)く」これは神話時代の中国からの、桃の仙木仙果思想(神仙に力を与える樹木・果実の意)に基づく謂いである。ウィキの「モモ」によれば、『昔から邪気を祓い不老長寿を与える植物として親しまれている。桃で作られた弓矢を射ることは悪鬼除けの、桃の枝を畑に挿すことは虫除けのまじないとなる。桃の実は長寿を示す吉祥図案であり、祝い事の際には桃の実をかたどった練り餡入りの饅頭菓子・壽桃(ショウタオ、shòutáo)を食べる習慣がある』。『日本においても中国と同様、古くから桃には邪気を祓う力があると考えられて』おり(というより、私は中国伝来のものと考えている)、「古事記」では、『伊弉諸尊(いざなぎのみこと)が桃を投げつけることによって鬼女、黄泉醜女(よもつしこめ)を退散させ』ている(私が「古事記」の中で最も偏愛する呪的逃走のシークエンスである)。『伊弉諸尊はその功を称え、桃に大神実命(おおかむづみのみこと)の名を与え』ている。

・「蛀糞(むしくそ)」ここも前の「蛀屑(むしくそ)」と同義である。

・「水服」「すいふく」。水で服用すること。

・「温疫」漢方では「瘟疫」とも書き、種々の急性伝染病を総称する。急性の発熱症状が激しく、伝染力が強い流行性感冒などを指す。

・「蒼耳(をななみ)」キク目キク科キク亜オナモミ属オナモミ Xanthium strumarium。聴いたことない? いや! 知ってるさ! ほら! よく人にひっつけたあのトゲトゲの楕円形のあれの仲間さ! ウィキの「オナモミによれば、『果実に多数の棘(とげ)があるのでよく知られている』。草の丈は五十センチから一メートルで、『葉は広くて大きく、丸っぽい三角形に近く、周囲は不揃いなギザギザ(鋸歯)がある。茎はやや茶色みをおび、堅い。全体にざらざらしている。夏になると花を咲かせる。雌雄異花で、雄花は枝の先の方につき、白みをおびたふさふさを束ねたような感じ。雌花は緑色の塊のようなものの先端にわずかに顔を出す』。『見かけ上の果実は楕円形で、たくさんの棘をもっている。その姿は、ちょうど魚類のハリセンボンをふぐ提灯にしたものとよく似ている。先端部には特に太い棘が』二本『ある。もともと、この』二本の『棘の間に雌花があった』のである。『見かけ上の果実は最初は緑、熟すると灰褐色となり、棘も堅くなる。その前後に根本からはずれる。この棘は防御のためというよりは、動物の毛にからみついて運んでもらうためのものと考えられる。事実、オナモミは強力なひっつき虫であり、その藪を通れば、たいていどんな服でもからみついてくる。特に毛糸などには何重にもからみついてしまう。皮膚に当たっても結構痛い。ただし、大きさがあるため、はずすのはそれほど難しくない。これらの特徴から、投げて遊ぶ目的で使用される場合もある』。『オナモミはアジア大陸原産で、日本にはかなり古くに侵入した史前帰化植物と考えられている。ただし、現在ではオナモミを見ることは少なくなっている。多くの地域では近縁種のオオオナモミ X. canadenseやイガオナモミ X. italicum などの新しい帰化種に取って代わられているからである。また、それら種の繁殖にも波があるようで、オナモミ類全体をさほど見かけない地域もあるようである。帰化植物には侵入して大繁殖しても、次第に廃れたり、種が入れ替わったりといった移ろいが見られるのが、その一つの例である』。なお、『オナモミは生物時計が精密で』、八時間三十分の『暗黒時間を経てつぼみをつける性質があるが』、八時間十五分では『つぼみをつけない』とある。

・「梗(くき)」茎。

・「蛀-眼(むしあな)」虫食いの孔。

・「刀を以て兩頭を截り去るに、有る〔のみ〕」前の「但だ」に呼応させて「のみ」を振ったが、あまり意味の通りはよくない。ここは孔を見つけて、有意に離れたその前後を小刀で切り取れば簡単に採取出来る、という謂いである。

・「麻油」胡麻(ごま)油のことであろう。中国語ではそうであり、ここは処方に関わるからそれでよいと思う。

・「擣〔(つ)き〕て」搗き潰して。

・「疔腫(てうしゆ)」汗腺または皮脂腺が化膿し、皮膚や皮下の結合組織に腫れ物を生じた症状。顔面に発症した場合の「面疔」がよく知られる。

・「惡毒」前の「疔腫」から考えて、これは毒腫(諸毒による腫れ物)或いは、進行して膿みを持った性質の悪い腫れ物の謂いであろう。]

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