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2016/06/21

和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 蝨

Sirami

しらみ   蝨 虱【俗】

【音瑟】【和名之良美】

      蟣

スヱツ   【和名木左佐】

 

本綱其人物皆有蟲但形各不同虱始由氣化而生後乃

遺卵出蟣也蝨六足行必向北人頭虱黒色着身變白身

虱白着頭變黒也

人將死虱離身或云取病人虱於床前可卜病如虱行向

病者必死也

虱味鹹微毒誤食之在腹中生長爲癥能斃人用敗箆敗

梳各以一半燒末一半煮湯調服即從下部出也

蝨能治脚指間肉刺瘡及脚指雞眼傅之

除蝨法【卲氏錄云呂晋伯曰】 吸北方之氣噴筆端書欽深淵默漆

五字置之於牀帳之間即盡除呂公正直非妄者

按蝨字俗作虱故稱半風初生於人身垢遺卵故毎日

 沐浴梳髮人不虱生也避頭虱以大風子油塗髮則虱

 蟣死所謂治脚指雞眼俗云惠岐禮【指裏橫文裂如皹者】

 

 

しらみ   蝨 虱【俗。】

【音、瑟〔(シツ)〕】 【和名、「之良美」。】

      蟣〔き〕

スヱツ   【和名、「木左佐〔(きささ)〕」。】

 

「本綱」、其れ、人・物、皆、蟲、有り。但し、形、各々同じからず。虱、始め、氣化に由りて生じ、後には乃ち、卵を遺し、蟣(きささ)を出だす。蝨、六足あり、行けば必ず北に向ふ。人の頭の虱は黒色なり。身に着けば、白に變ず。身の虱は白し。頭に着けば、黒に變ず。

人、將に死せんと〔すれば〕、虱、身を離る。或る人の云く、病人の虱を床(とこ)の前で取りて病ひを卜〔(うらな)〕ふべし。如〔(も)〕し、虱、行きて病者に向へば、必ず死すなり〔と〕。

虱の味、鹹〔(しほから)〕く、微毒あり。誤りて之れを食へば、腹中に在りて生長し、癥〔(ちよう)〕と爲り、能く人を斃〔(た)〕ふす。敗(ふ)る箆(たうぐし)・敗(ふ)る梳(すきぐし)を用ひて、各々一半を以て燒末し、一半を湯に煮て、調服すれば、即ち下部より出づ。

蝨、能く、脚の指の間の肉刺瘡及び脚指の雞眼を治す。之れを傅〔(つ)〕く。

蝨を除く法【「卲氏錄〔しようしろく〕」に呂晋伯〔(りよしんぱく)〕が云ひて曰く、】『北方の氣を吸ひ、筆端を噴きて「欽深淵默漆」の五字を書きて、之れを牀帳〔(しやうちやう)〕の間に置けば、即ち、盡〔(ことごと)〕く除くと云ふ。呂公は正直にして妄者に非ず。』〔と〕。

按ずるに「蝨」の字、俗に「虱」に作る。故に「半風」と稱す。人身の垢より初生して、卵を遺す。故に毎日、沐浴(ゆあ)び、髮を梳く人は、虱、生ぜず。頭虱〔(あたまじらみ)〕を避くるには、大風子の油を以て髮に塗れば、則ち、虱・蟣〔(きささ)〕、死す。謂ふ所の、脚指・雞眼を治すとは、俗に云ふ、「惠岐禮(ゑきれ)」〔なり〕。【指の裏の橫文〔(わうもん)〕の裂け皹〔(ひび)〕のごとくなる者なり。】

 

[やぶちゃん注:昆虫綱咀顎目シラミ亜目 Anoplura のうちで、ヒトに寄生して吸血するのは、

ヒトジラミ科 PediculidaeのヒトジラミPediculus humanusの、

亜種アタマジラミ Pediculus humanus humanus

亜種コロモジラミ Pediculus humanus corporis

の二亜種と、ケジラミ科 Pthiridae の、

ケジラミ Phthirus pubis

の三種類であるが、ケジラミ Phthirus pubis は既に述べた通り、次項に「陰蝨」として独立項となっているから、ここには上記ヒトジラミ二亜種に同定するのがよい。ウィキの「ヒトジラミ」によれば(アラビア数字を漢数字に代え、記号の一部を省略した)、『ヒトジラミはヒトだけを宿主とする外部寄生虫である。アタマジラミは頭髪、コロモジラミは衣類にいて、皮膚より吸血する。歩脚の先端は挟状になり、これで毛髪や繊維を掴み、素早く移動する。不完全変態であり、幼虫も成虫に似た形態と生態を持つ。卵も頭髪ないし衣類の繊維に張り付いた形で産み付けられ、その生涯を生息域から離れない。他者への感染は接触による。そのために集団生活する場合には広がる場合がある。成虫は条件にもよるが、数日程度は人体から離れても生存出来る』。『ヒトジラミは吸血することで痒みを与えるが、それだけでなく』、『病原体を運ぶベクターでもあり、特に発疹チフス』(真正細菌プロテオバクテリア門 Proteobacteria アルファプロテオバクテリア綱 Alphaproteobacteria リケッチア目リケッチア科リケッチア属リケッチア・プロワツェキイ(発疹チフスリケッチア)Rickettsia prowazekiiの感染による感染症。「アンネの日記」アンネ・フランク(Annelies Marie Frank 一九二九年六月十二日~一九四五年三月上旬)も強制収容所で発疹チフスによって死亡したとされている)『は伝染病として恐れられた』。『ヒトジラミの宿主はヒトに限られる。他の動物の血を吸うことが出来ても、それで生育は出来ない』。『アタマジラミは常に頭髪にいるが、コロモジラミは下着の縫い目にいて、吸血時のみ肌に移動する。成虫が一日に吸血する回数は、実験では二回とされるが、現実には四回かそれ以上と考えられる』。『人体から離れ、吸血できない状態では、コロモジラミは条件にもよるが一週間程度まで生存できる場合がある。この点でアタマジラミの方が弱く、せいぜい二日程度で死亡』してしまう。『体長は成虫で二~四ミリメートル程度、アタマジラミのほうがやや小型である。体は全体として腹背に扁平で、体表に弾力があり、全体に半透明で淡い灰白色だが、アタマジラミの方が黒みが強く、特に体の側縁に沿って黒い斑紋が入る。頭部は丸みを帯びた三角形で、口器は普段は頭部に引き込まれており、吸血する際には突出する。その上唇には歯状の突起があり、吸血する際に口器が皮膚に固着するのを助ける。触角は五節、その基部の後方に目がある』。『胸部の三体節は互いに癒合しており、三対の歩脚があるが、翅は完全に退化している。歩脚はよく発達し、先端ははっきりと爪状になる。脛節末端にある突起と先端の爪とが向き合って鋏状となっており、この間に毛や繊維を掴むことが出来る』。『腹部は九節からなり、各節の両端に側板があり、この部分は褐色をしており、またここに気門が開く。気門があるのは』第三節から『第八節である。腹部末端の節には内部に生殖器があり、雄では先端に向けて細くなるが、雌では先端が軽く二裂する』。『卵は楕円形で乳白色を呈し、先端に平らな蓋があってその中央に』一五個から二〇個の『気孔突起がある。卵は毛髪(アタマジラミ)や繊維(コロモジラミ)にセメント様の物質で貼り付けられ、産卵直後は透明で、後に黄色っぽく色づき、孵化直前には褐色になる。卵の孵化には約一週間を要する。孵化時には蓋が外れ、これが幼虫の脱出口となる』。『孵化直後の幼虫は成虫の形に似ているが、触角は三節で体が軟らかい。側板は二令から見られる。幼虫は成虫と同様に吸血しながら成長し』、七日から十六日の間に『三令を経て成虫になる。成虫の寿命は』三十二日から三十五日で、『雌成虫は約四週間の間、一日に八個、生涯で約二百個の卵を産む』。『シラミ類は動物の体表に常在するものであり、衣服のようにその外を住処とするのは異例である。衣服は人類のみが持つものであり、そこを住処とするシラミの存在、その発祥には興味の持たれるところである。コロモジラミが体毛に生息するアタマジラミとごく近縁であることは古くより認められた。分子系統の発達により、これらの近縁性が絶対的な時間を含めて論じられるようになった。それによると、本種に近縁な同属の種がチンパンジーに寄生するが、それと本種が分岐したのは五百五十万年前である。これは、宿主の種分化の時期、つまり人類の起源にほぼ相当する。ただ、問題なのは、ヒトジラミが遺伝的にはっきりした二タイプがあり、一つは凡世界的なもの、もう一つは新世界のものである。それらが分化したのが、この方法では百十八万年前となることである。これは、明らかに現生のヒト Homo sapiens の起源を大幅に上回る。ここから推察されるのは、この種分化が、現生のヒトの祖先がホモ・エレクタス H. erectus から分化してきた頃に起こったと言うことである。それから約百万年、ヒト属の二種が共存し、彼等は交雑はしなかったかも知れないが、外部寄生虫の行き来はあったであろう。この様な中でシラミの二系統が生じ、それが共存するに至ったと考えられる』。『アタマジラミとコロモジラミが分化したのは十万年前と推定されている。これは人類が衣類を身につけ始めてすぐのことであったと考えられている。アタマジラミは髪の毛に住み着いてその部位の肌から血を吸うが、毛の少ない身体の皮膚では繁殖できない。だが、衣類に生息の場を得て、コロモジラミはそれ以外の皮膚での生息が可能になった。さらに、分子系統によると、コロモジラミはアタマジラミの』汎『世界系統から複数回にわたって発生したと考えられる』とある。人類発生と文化史の中のヒトとシラミの密接な関係性と進化は非常に興味深いではないか。しかも、『ホームレスや独居老人といったシラミの温床になりやすい場が新たに生じ』たことも挙げられ、『コロモジラミではこの様な高齢化を舞台にした増殖が、アタマジラミでは幼稚園や小学校などの集団での感染拡大が見られている』のは御承知の通り。シラミを侮ってはならぬ。

 

・「木左佐〔(きささ)〕」小学館の「日本国語大辞典」に、「きささ」漢字「蟣」として、『虱(しらみ)の卵。きさし』とし、「和名類聚抄」を例文として引く古語である。語源説には、『背にギザギザ(刻々)があることから。ギザギザの略〔大言海〕』、『「風土記」に「沙虱」の訓を「耆少神」と注しているところから、キサシン(耆少神)の転か〔塵袋〕』、また、『髪に蟣が産みつけられるとカミ(髪)がシラゲル(白)ところから、カミシラシラの反〔名語記〕』とあるが、私は孰れも信じ難い。

・「氣化に由りて生じ」こういう化生的叙述は、既に議論として成立しない。時珍に失望するところである。叙述で卵生としているくせに、「化生」的叙述をする博物学者として許し難いバカ叙述だからである。

・「行けば必ず北に向ふ」敗者の方角、即ち、根源的にシラミを陰気の生物とする認識に基づく。

・「如〔(も)〕し、虱、行きて病者に向へば、必ず死すなり」これは明らかに誤った逆叙述である。「酉陽雑俎」の続集巻二の「支諾皋中」にも、

   *

相傳人將死、虱離身。或雲取病者虱於床前、可以蔔病。將差、虱行向病者、背則死。

   *

とあり、快方に向かうならシラミは病人に向かい、反対の方へ向かう(「背」)時は、死ぬとある。当然である。

・「癥〔(ちよう)〕」腹の中に出来るしこりの意。

・「敗(ふ)る箆(たうぐし)・敗(ふ)る梳(すきぐし)」原文のルビを少し改変した。「箆」は竹製の単体(一本の)簪状のものと読み、「梳」は所謂、櫛と区別した。大方の御批判を俟つ。

・「各々一半を以て燒末し、一半を湯に煮て」これは一本の簪状のものを半分に折り、櫛の方も同様に半分に折り、それをそれぞれ半分は焼いてその灰を粉末にし、残ったそれぞれを別に熱湯で煮沸せよ、と言っていると読む。

・「下部」というのは、現象的にはよく分らないが、消化器官を通してシラミが体外へ排泄されるという風にしか読めない。

・「脚の指の間の肉刺瘡及び脚指の雞眼」足の指の股に生ずる肉刺(まめ)や魚の目。

・「傅〔(つ)〕く」塗りつける。シラミ自体を擂り潰して貼付するという意。

・「卲氏錄〔しようしろく〕」東洋文庫版の「書名注」に「卲氏聞見後録」三十巻。宋の卲博撰になる随筆集とある。

・「呂晋伯〔(りよしんぱく)〕」伊川の令であることしか分からぬ。

・「北方の氣を吸ひ、筆端を噴きて」北に向かってその空気(気)を十全に吸った上で、それを一気に筆の先に吹き付けて。北の陰気を込めて筆に移す意。

・「欽深淵默漆」呪言なれば意味不詳。

・「牀帳〔(しやうちやう)〕」寝室の帳(とばり)寝台の内。

・「呂公は正直にして妄者に非ず」よう知らんが、卲博曰く、呂晋伯なる男は正直一途な人だからいい加減なことは言わぬ、これは絶大な効果があると太鼓判を押しているのである。

・『故に「半風」と稱す』「風」の字を包むはずの大事な第一画を欠字するからである。

・「大風子の油」大風子油はキントラノオ目アカリア科(最新説の分類)イイギリ属ダイフウシノキ Hydnocarpus wightiana の種子から作った油脂。、飽和環状脂肪酸であるヒドノカルピン酸(hydnocarpic acid)・チャウルムーグリン酸(chaulmoogric acid)・ゴーリック酸(gorlic acid)と、少量のパルミチン酸などを含む混合物のグリセリンエステル。古くはハンセン病治療に使われた(ここは概ねウィキの「大風子油に拠った)。

・「惠岐禮(ゑきれ)」不詳(「日本国語大辞典」の見出しにも出ない)。割注からはシラミとは無縁な水虫の症状のように私には見える。]

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