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2016/07/02

芥川龍之介手帳 1―11

《1-11》

○石塔婆二本(兩側) 圓頂石塔 石垣の上にある

[やぶちゃん注:「圓頂石塔」こういう言い方は、狭義には上部の四つの角或いは左右が丸くなだらかに成形されている円頂方形墓標や円頂方柱墓標を指すが、こうした墓石の形態は近世にならないと現われない。これが芥川龍之介が考えていた王朝物のメモとするならば、五輪塔の火・風・空輪が崩れ去り、丸い水輪とその下の方形の地輪のみが残った五輪塔の残骸としか思われない。]
 

Contradiction of morals of thieves

[やぶちゃん注:「偸盗の群れの内部の倫理意識の矛盾」か?]
 

○すずしの生絹の水干をきた童。菜をうる販婦(ひさぎめ)。菜はいらんかな――すゞな すゞしろ あしなづな せり はこべら みつばせり ――菜はいらんかな

[やぶちゃん注:「すずし生絹」は重複した表現で、蚕繭から採った、未だ練らないままの絹糸。生糸(きいと)のことを「すずし」「きぎぬ」と言うが、漢字では「生絹」と書くからである。

「(ひさぎめ)」はルビではなく、本文同ポイント。

「あしなづな」は「あしな」「なづな」の謂いであろう。一般に春の七草というと、

 せり なづな 御行(ごぎやう) はこべら 佛の座 蕪(すずな) すずしろ これや七草

で知られるが、行誉らによって撰せられた室町時代に成立した百科辞書・古辞書である「塵添壒囊抄(じんてんあいのうしょう)」には(以下、WEB画題百科事典「OPEN画題WIKI(一般公開版』の「春の七種」から引いた)、

 芹、なづな、五行、たびらこ、仏の座、あしな、みみなし、これや七くさ

 芹、五行、なづな、はこべら、仏の座、すずな、みみなし、これや七くさ

とあるという。但し、引用元に、『みみな草は石竹科の小草で別名を巻耳といひ、『あしな』は詳でない、すずなは菘と書くが、普通の菜のこと、すゞしろは今の大根である』とあり、その対象は不明である。龍之介は登場する春の七草を鬻ぐ女の売り声にも古い謂いを語らせようと、この「塵添壒囊抄」辺りまで紐解いていたのかも知れない。]
 

○播磨の国飾磨の里 卯花のかざみを着た女の童。

[やぶちゃん注:「飾磨」は「しかま」と読み、現在の姫路市南部の地区名。この地名があらわれたのはかなり古く、「播磨国風土記」にも「飾磨郡」の名が見える。地名の由来は「鹿が居て啼いたため」とされている、とウィキの「飾磨」にある。

「かざみ」漢字表記は「汗衫」(字音「カンサン」の音変化)で、本来は衣類に汗が滲むのを防ぐために着た単ひとえ)の下着を指すが、ここは平安以降に後宮に奉仕する童女が表着(うわぎ)の上に着用した正装用の服であろう。脇が開いていて裾を長く引くもので、この服装の賽には濃(こき:赤紫)の袴に、この少女のこの装束時専用の表袴(うえのはかま)を重ねて穿くのが礼式である。]
 

Iconoclastic novel

[やぶちゃん注:「因習打破の小説」。]
 

○大友宗麟

[やぶちゃん注:芥川龍之介に彼を登場させた作品はない。きっと面白い切支丹物が出来たと思うと、少し惜しい気がする。]
 

○畫家良秀 礼拜不動。

[やぶちゃん注:明白な大正七(一九一八)年五月発表の「地獄變」関連のメモである。]
 

男地蔵。PoeDomain of Arnheim 鷗外の傳記的にhardにかく

[やぶちゃん注:私は当初、この後半の「鷗外の傳記的にhardにかく」という叙述から、これはやや古いが、大正五年四月に発表された「孤獨地獄」のプランのかと思ったものである。抹消であるが、一人の大酒豪の女色家の禪超なる孤独「地獄」に堕ちた「男」を描いて筆致はハードであり、そもそもが芥川龍之介の大叔父「細木香以」が語った話として書かれている点でも、「鷗外の傳記」風の厳然としたリアルな構造を持った作品だからである。新全集の後記では本ノートの上限を大正五年としており、それにぎりぎり入る範囲でもあるのであるからでもある。しかし乍ら、「PoeDomain of Arnheim」が、いけない。エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe 一八〇九年~一八四九年)の奇体な人工庭園小説「アルンハイムの地所」(The Domain of Arnheim 一八四六年)は、ちょっと「孤獨地獄」とは結びつかない。寧ろ、これは私の偏愛する後の「庭」(大正一一(一九二二)年七月)の異様奇怪な庭の運命と、それを包む妖気が如何にも「PoeDomain of Arnheim」を感じさせる。それに「庭」では登場する一家一族(野垂れ死にする、かの実在した乞食宗匠井上井月まで登場する)の多くが、散り散りばらならとなっては没落したり、斃死してゆく悲惨な様態が描かれ、実に確かに「Poe」的なのであり、その筆致も確かに「鷗外の傳記的」な「hard」さを備えているようにも私には見える。大方の御叱正を俟つ。]
 

AssignationPoe Venice 日本使節 筋未定

[やぶちゃん注:丸括弧の閉じるがないのはママ。Assignation」はポーのヴェニスを舞台とする悲恋心中物の「約束事」(The Assignation 一八三四年)を指す。「日本使節」は不詳。筋立てとして「約束事」は例えば人物関係と毒薬による主人公の自死という構造では「開化の殺人」辺りと似ていなくもないが、明白なインスパイアと感ずるものは私にはない。]

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