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2016/10/02

佐渡怪談藻鹽草 頰つり姥が事

     頰(ほゝ)つり姥が事

 

 井坪(いつぼ)村に年老たる女の有(あり)しが、左の頰は落(おち)くぼみ、目のむけかへりて、いとあやしき顏付に侍れば、

「珍敷(めづらしき)顏かな」

と處のものに尋(たづね)しに、

「其事に侍れ。生れ付の顏にも候わず。あのばゝ若き時、此(この)所に薪のなき處にて、草を刈置(かりおき)て、冬より春迄の焚ものにし侍る。夏の間に刈置て、にほふといふ物にいたす也。其草をかりしに誤(あやまり)て、眞蟲(まむし)の草の中に居るをしらず、鎌にて首を切(きり)しよりあさましくおもひて、そこら尋(たづね)見れども、首はいづくへか飛けん、見えざりければ、すべきよふなくて歸りしに、其年もくれて春の頃、彼(かの)柴をとりに行(ゆき)しに、柴の中より去年切(きり)し蛇の首と覺しくて、目を見張(はり)て飛かゝり、頰に喰付(くひつき)しかば、

『あ、いたし』

とて、蛇の頭をとらへ、我頰ともに鎌にて切(きる)。頓(やが)て蛇顏共に打(うち)碎き捨(すて)、其跡に草など付侍(つきはべり)しかば、次第にいへたりしかど、あの如くかたわに成り侍(はべり)し。されど、蛇は毒氣の強きものなるに、我身を惜しく侍らば、腐入(くさりいり)て、命もあやうく侍らん、いと健にけなげなる女にこそ」

とかたりし。

 

[やぶちゃん注:「井坪(いつぼ)村」佐渡市井坪。小佐渡南の真野湾側の沢崎寄り。航空写真を見ると、現在の同地区は海岸部から内陸にかけて細長く、中央に平地があるが、その左右は山で谷も多い感じである。マムシの棲息しそうな感じはする。

「目のむけかへりて」目が飛び出たようになっており、の意か。

「焚もの」「たきもの」。燃料。

「にほふ」不詳。いろいろな表記い変えて調べて見たが判らぬ。ともかくも焚き物の燃料とする干し草の謂いであることだけは判る。佐渡の地の方、或いは井坪にお住いの方、御教授戴けると助かる。

「眞蟲(まむし)」脊索動物門 Chordata 脊椎動物亜門 Vertebrata 爬虫綱 Reptilia 有鱗目 Squamata ヘビ亜目 Serpentes クサリヘビ科 Viperidae マムシ亜科 Crotalinae マムシ属 Gloydius ニホンマムシ Gloydius blomhoffii。佐渡にも棲息する。ブログ「上横山自然公園をつくる会」の「佐渡カケスの瓦版 佐渡のヘビ」に、『「マムシ」にも、佐渡には、見掛けがちがうパターンレス個体や黒型が大佐渡山間を中心に多く存在するので、紛らわしい』とし、『このマムシのパターンレス個体には、ヤマカガシの短系関西型個体に似たものがおり、見分けが厄介で』あるとある。

「其跡に草など付侍(つきはべり)しかば、次第にいへたりしかど、あの如くかたわに成り侍(はべり)し」この部分、意味がとりにくい。

――其跡に草など」が附着していたので、その草の薬効で「次第にいへた」けれども、「あの」ように障碍者「に成」ってしまったので御座る。――

ともとれるし、逆に、

――「其跡に草など」が附着していたのをほおっておいたために、その草のせいで(草に毒性があったか、或いは草に腐敗菌が付着していたかして)時間が経つうちに死には至らず「いへた」けれども、「あの」ような障碍者「に成」ってしまったので御座る。――

ともとれる。説明者の意図はどちらかであろうが、真相は孰れともとれるとは思う。眼球が腫れあがっているのは恐らく、マムシの毒がすでに眼の方には廻っていたものかも知れぬし、或いは鎌に細菌が附着していた可能性もあり、二次感染によって眼疾患が発生したとも考え得る。

「健に」「すこやかに」と訓じておく。]

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