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2016/10/23

谷の響 二の卷 十 蜘蛛の智

 十 蜘蛛の智

 

 文政の年間のよし、紺屋町の鍛冶工(かじや)金次郎と言へるもの、裡(うら)の木蔭に暑を避てありけるが、大きなる赤蜂一つ飛來りて蜘蛛の圍(かこひ)に係りたるに、蜘蛛も亦大きなるものにて互に挑みあふことしばらくなりしが、蜂竟(つい)に蜘蛛を刺し圍を脱れて飛行けり。さるにこの蜘蛛卽便(そのまゝ)圍を下り地上を這ひ行きしに、見る見る滿身(みうち)脹張(はれあがり)て動きもあへぬ程なりければ、何事すらんと眼も放さで視て居たるに、蜘蛛は苦しげに轉び𢌞る事三四囘にして、芋(いも)の葉に把(と)り着きしが、直ちにその葉を咬み又蔓をも嚙みてその汁を軀(からだ)にすり塗るに、漸々(しだいしだい)に腫(はれ)退(も)けてもとの形になりしかば、やがて糸を傳ひてその巣に歸りにき。金次郎奇異の事に思ひ、且蜘蛛の智に感じける。然(さ)てその後、近き邊(わたり)の兒童蜂に刺(さゝ)れしとていたく啼きけるに、この芋の葉を捼(も)みて摺(す)り着たれば、間(ほど)なくいたみ歇みて癒えたりと、この金次郎の語りしなり。

 

[やぶちゃん注:「文政」一八一八年~一八三〇年。

「紺屋町」現在の弘前市紺屋町(こんやまち)。弘前城の西北直近。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「赤蜂」限定は出来ないが、これは膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目スズメバチ上科スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属ケブカスズメバチ亜種キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera の地方名としてよく聴くものではある。或いは名前の「赤」に不満を感ずる方は、赤茶色の強い、やはり小型のスズメバチの一種である同属のチャイロスズメバチ Vespa dybowskii を挙げておきてもよい。

「圍(かこひ)」捕食網。

「脱れて飛行けり」「のがれてとびゆけり」。

「いたく啼きけるに」ひどく泣いているのを見かけ。

「捼(も)みて」「捼」には「押す・揉む・摺る」の意がある。

「歇みて」「やみて」。]

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