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2016/11/17

谷の響 三の卷 十一 巨薔薇

 

 十一 巨薔薇

 

 相馬の澤目關ケ平村の山中箒澤と言へる土(ところ)に一株の野薔薇(のばら)ありき。きはめて大きなるものにして、周圍三尋あると言へり。この樹根より三間あまりの間は條椏(えた)なく、中※(なかごろ)に至り數十條を生じて、その長抽(ながき)ものは五六間、婆々(あらあら)として十二三間の際(あひだ)にひろごれり。土(ところ)の人こを神の木なりとて、傍に神門(とりゐ)を造立(たて)たり。四月花の頃はいといと見事にして、さながら靑葉の中に雲山を築けるが如く、そのあたりこれが爲に白光(あきらか)にして、にほひ又ことに香しく澗(たに)の中に充滿(み)てり。薔薇にかゝる巨きなるありしとは、未だ聞かざることにして、世の中にいといと希(まれ)なるものといふへし。[やぶちゃん字注:「※」=「木」+「萠」。]

 

[やぶちゃん注:「巨薔薇」「おほばら」と訓じておく。哀しいかな、この野薔薇は最早、ないらしい。見たかったなぁ…………

「相馬の澤目關ケ平村」底本本文では「關ケ代村」であるが、註の見出しと内容から、「關ケ平村」の誤植と断じ、特異的に本文を訂した。底本の森山泰太郎氏の補註に『中津軽郡相馬村関(せき)ケ平(たい)。藍内川上流の峡谷にある』とある。現在は弘前市藍内(あいない)。ここが藍内(グーグル・マップ・データ)で、その中のここが「関ケ平」。

「箒澤」不詳乍ら、関ケ平の南に東西に分かれる川沿いの沢であろう。

「野薔薇」バラ亜綱バラ目バラ科バラ亜科バラ属ノイバラ(野茨)Rosa multiflora 。標準的なものは樹高は二メートル程度であるが、私自身、それを遙かに超えるものを何度も現認したことがある。

「周圍三尋」「一尋」(ひとひろ)は六尺で約一・八メートルであるから、五・四メートル。これは無論、主幹ではなく、後に出るところの、枝を広げたその叢の塊りの平均外周が、という意味であろう。しかし、そうとっても、以下の数値を見ると、これはあり得ない大きさである。

「三間」五メートル四五センチメートル。これで樹高のやっと半ばに達するというのだから、驚くべき高さであることが判る。

「條椏(えた)」二字へのルビ。読みはママ。「枝」。

「五六間」九メートル~十一メートル。

「婆々(あらあら)として」「荒々として」ノイバラは棘が多い。

「十二三間」二十二~二十四メートル弱。

「へし」ママ。]

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