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2016/12/08

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 蚱蟬(むまぜみ)


Umazemi

むませみ  【音】 馬蜩

蚱蟬

 

     【俗云 無末世美】

本綱五月始鳴黒色而大蟬類雖多獨此一種入藥醫方

多用蟬殻亦此殻也

按和名抄蚱蟬【和名奈名波世美】以爲雌蟬不能鳴者非也此據

 陶氏之本草謬然矣蓋蚱蟬卽馬蟬也形長大於蟬身

 深褐色羽畧厚美灰白色聲大而緩不如蟬之連聲也

むまぜみ  【音[やぶちゃん字注:欠字。]】 馬蜩〔(ばてう)〕

蚱蟬

     【俗に云ふ「無末世美〔(むまぜみ)〕」。】

「本綱」、五月、始めて鳴く。黒色にして大なり。蟬の類、多しと雖も、獨り、此の一種〔のみ〕、藥に入る。醫方、多く蟬の殻を用ふる〔は〕亦た、此の殻なり。

按ずるに、「和名抄」、「蚱蟬」【和名「奈名波世美〔(なはせみ)〕」】、以つて雌蟬(め〔す〕せみ)にして鳴くこと能はざる者と爲〔(す)〕るは、非なり。此れ、陶氏が「本草」の謬〔(あやまり)〕に據つて然〔(しか)〕る。蓋し、蚱蟬は卽ち馬蟬なり。形、蟬より長大にして、身、深褐色。羽、畧〔ほぼ〕厚く、美にして灰白色。聲、大にして緩〔(ゆる)〕く、蟬の連聲には若(し)かざるなり。

[やぶちゃん注:この「馬蟬」とは本邦種としては「熊蟬」、

昆虫綱有翅昆虫亜綱半翅(カメムシ)目頚吻亜目セミ型下目セミ上科セミ科セミ亜科エゾゼミ族クマゼミ属クマゼミ Cryptotympana facialis

である。同種は日本特産種で、体長六~七センチメートルにも及び、本土ではセミ類の最大種である(本邦の最大種はクマゼミの近縁種であるヤエヤマクマゼミCryptotympana yayeyamanaで、沖縄県石垣島及び西表島に分布する固有種。鳴き声はミンミンゼミに似、本記載の「本草綱目」のそれと判断してよい、大陸や台湾の低山帯に分布するタイワンクマゼミ Cryptotympana holsti の近縁種でもある。体長はクマゼミよりさらに大きく、日本最大のセミである)。以上はウィキの「クマゼミ」他に拠った。

『「和名抄」、「蚱蟬」【和名「奈名波世美〔(なはせみ)〕」】、以つて雌蟬(め〔す〕せみ)にして鳴くこと能はざる者と爲〔(す)〕る』源順「和名類聚抄」の「虫豸(ちゅうち)類」の部に、

蚱蟬 本草云蚱蟬【作禪二音和名奈波世美】雌蟬不能鳴者也

と確かにある。なお、この条の次に、

馬蜩 爾雅注云馬蜩一名【音綿和名無末世美蟬中最大者也】

ともあり、この後の極めて正確な叙述と合わせると、良安がかくも論(あげつら)って指弾するほどの誤りとは私には思われない。寧ろ、中国では鳴かぬ「馬蜩」(「蚱蟬」の)を「蚱蟬」として区別していたとすれば、古来の博物学上では納得がゆくではないか。というより、小学館の「日本国語大辞典」を見ると、「蚱蟬」を鳴かない雌の雌を指す語としており、「本草和名」(「蚱蟬 一名瘂【雌蟬不能鳴者】)をも引いており、古語辞典でも雌の蟬として「蜻蛉日記」のも出ているから、寧ろ、こうした現象的分類としては私はすこぶる腑に落ちる。そもそもが博物学的分類や命名はそういった現象的分類命名であったからである。但し、「なは」が「鳴かない・啞(おし)の」の意味であることは探し得なかった。【2020年6月16日:追記】たまたま必要があって「和漢三才図会」の「蟬」の条々を再読したのだが、ふと気づくと、本書には「油蟬」(セミ亜科アブラゼミ族アブラゼミ属アブラゼミ Graptopsaltria nigrofuscata)が記されていないことに気づいた。個人ブログ「FLOS, 花, BLUME, FLOWER, 華,FLEUR, FLOR, ЦBETOK, FIORE」の「アブラゼミ 大和本草,和漢三才図会,本草綱目啓蒙」に、『江戸の本草書では「蝉(蚱蝉)」はクマゼミで,アブラゼミはアカゼミと呼ばれていたらしい.クマゼミの抜け殻が漢方薬として使われていたからか,後期になると「蚱蝉=アブラゼミ」となっている(『本草綱目啓蒙』)が,これは著者の住んでいた地域の違いも知れない』とあり、貝原益軒の「大和本草」(宝永七(一七〇九)年刊)には「蚱蟬(セミ)」として、『(中略)羽スキトホラサルアリ赤セミト云』『晩ニナク』『コノ者其形(蚱蝉=クマゼミと)相似テ別ナリ』とあると記しておられるので補っておくこととした。

『陶氏が「本草」の謬に據つて然る』「本草綱目」の「蟲之三」(化生類)の「蚱蟬」の「集解」中に『弘景曰、蚱蟬、啞蟬、雌蟬也。不能鳴。』(弘景曰く、「蚱蟬、啞蟬、雌蟬なり。鳴く能はず。)とあるのを指す。陶弘景(四五六年~五三六年)は六朝時代の道教の茅山派の開祖で医学者・科学者。ウィキの「陶弘景によれば、山林に隠棲し、フィールド・ワークを中心に、本草学を研究、『今日の漢方医学の骨子を築』き、『また、書の名手としても知られ、後世の書家に影響を与えた』人物でもある。彼は『前漢の頃に著された中国最古のバイブル的な薬学書』「神農本草経」を整理して、五〇〇年頃、「本草経集注」を著した。『この中で薬物の数を』七百三十種類と従来の二倍に増やし、また、『薬物の性質などをもとに新たな分類法を考案した。この分類法はいまなお使われている』とある。

「畧」少しく。

「蟬の連聲には若(し)かざるなり」通常の蟬の鳴き声とは似ていない。]

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