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2016/12/10

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) 大人國(8) 猿にからかはれて(Ⅲ) / 猿にからかはれて~了

 

六章

 

 國王は非常に音樂が好きで、時時〔だから、よく〕宮廷で〔は〕音樂會がありました。私も時時、連れて行かれて、テーブルの上に箱を置いてもらつて聞いたものですが、なにしろ大へんな音で、曲も何もわからないのです。軍樂隊の太鼓と喇叭をみなもつて來て耳もとで鳴らし〔す〕より、もつと凄い騷がしさです。ですから、私はいつも一番、遠いところに箱を置いてもらい、扉も窓もすつかり閉め、カーテン〔ま〕でおろし〔ます。そうすると〕、それでまづ、どうにか聞けるのでした。

[やぶちゃん注:「て」は原稿では除去されていないが、落ちと判断し、削除線を引いた。]

 國王は〔、〕また、非常に賢い方でしたので〔が、〕 よく〔を〕箱のまま連れて來て、陛下のテーブルの上に置くやうに命令されます。それから陛下〔、〕は〔私に〕椅子を一つ持つて箱から出て來いと〔させ、〕■〔云〕はれます。そこで、〔〕私は〔三ヤードと離れてゐない近くの〕簞笥の上に坐らせます。そこで〔、〕私の顏と陛下の顏が向ひ合へなることができるわけです。こんな風にして〔、〕私たちは何度も話し合ひましたが、ある日、私は思ひきつて、こんなことを申上げました。

[やぶちゃん注:「そこで、〔〕私は」の部分は、挿入記号のみがあって挿入語句が記されてない。それをかく再現したものである。

「三ヤード」二メートル七十四センチ。

「私の顏と陛下の顏が向ひ合へなることができる」はママ(現行版は以下を参照)。

 以上の段落は現行版とかなり異なる。以下に示す。

   *

 国王はまた非常に賢い方でしたが、よく私を箱のまゝつれて来て、陛下のテーブルの上に置かれます。私は椅子を一つ持って、箱から出て来ると、陛下の近くの簞笥の上に坐ります。そこで、私の顔と陛下の顔が向い合いになります。こんなふうにして、私たちは何度も話し合いましたが、ある日、私は思いきって、こんなことを申し上げました。

   *]

 「一たい陛下がヨーロツパなどを輕蔑なさるのは、どうも賢い陛下に似合はぬことのようです。知慧はなにも身躰の大きさ〔に〕よるのではありません。いや、あべこべの場合だつてあるやうです。蜜蜂とか蟻とかは、他のもつと大きな動物たちよりも、はるかに勤勉で、器用で、利巧だと云はれてゐます。私なども、陛下は取るに足りない人間だとお考へでしせうが、これでも、いつか素晴しいお役に立つかもしれませんのです。」

 陛下は、私の話を一心に聞いてをられましたが、前よりよほど私をよくわかつて下さるやうでした。そして、

 「それでは一つイギリスの政治について出來るだけ正確に話してもらひたい」と仰せになりました。

 そこで、私はわが祖國の議會のこと、裁判所のこと、人口について、宗教について、或は厂史のことまで、いろいろとお話し申上げました。〔ることになりました。〕この私の説明は五回私は王に→何〕回〔も〕お目にかかつて、毎回数時間この話をお聞せしたのですが、まだ話はのこつてゐました。王はいつも非常に熱心に聞いて下さいました。私の〔そして、〕ノートには、一々、後で質問しようと思はれるところや、私の話の要点を書込んでをられました。

 ある日、私は王の御機嫌をとるつもりで、こんなことを申上げました。

 「実は私は素晴しいことを知つてゐるのです。といふのは今から三四百年前に〔ある粉が〕發明されましたが、その製造法を〔私〕よく知つてゐるのです。〔まづ、〕この粉説明から申上げませう〕といふのは〔いふのは〕、それを集めておいて、これに〔、〕ほんのちよつぴりでも火をつけ〔て〕やると、たとへ山ほどつんである物でも、たちまち火になり、雷よりももつと大きな音を立てて、なにもかも空へ高く吹飛ばしてしまひます。

 で、もし、この粉を眞鍮か鐵の筒に〔うまく〕詰めてやると、それは恐ろしい力と速さで遠くへ飛ばすことができるのです。かういふ風にして、大きな奴を打ち出すと、一度に軍隊を全滅さすことも、鐵壁を破つたり、〔大きな〕〔軍〕船を沈めてしまふこともできます。また、この粉を大きな鐵の球に詰めて、機械仕掛で〔敵に向つて〕打放つと、舖道は碎け、家は崩れ、かけらは八方に飛び散つて、〔そのそばに〕近づくもの〔は〕、誰でも腦味噌を叩き出されます。

[やぶちゃん注:「腦味噌」の「噌」の字は原稿では「口」+「曽」。

 本原稿のノンブルは「161」であるが、原稿用紙上部罫外には、175-161=14を示す計算式が、同下部罫外には、178-14=172を示す計算式が記されてある。これは明らかに出版社から各パートごとに予め規定された標準枚数があり、それを計算しているように見える。規定原稿枚数には幅があって、175枚から上限178枚だったのではあるまいか?]

 私はこの粉末を〔を〕、どういふ風にして製つたらいいか、よく心得てゐるのです。で、職人〔たち〕を指図して、この國〔で使へるぐらいの〕大きさに、それを作らせることも出來ます。一番大きいので長さ百呎あればいいでせうが、かうした奴を二三十本打ち出すと、この國の一番丈夫な城壁でも〔、〕二三時間で打ち壞せます。もし首都が陛下の命令に背くやうな場合は、これさへあれば〔の粉で〕首都を全滅させることだつて出來ます。とにかく、これは私の陛下の御恩かへしの に感じて、 これは御恩あへしのともりで、陛下に〔これを〕〔私は陛下の御恩に報いたいと思つてゐるので、〕〔こんなことを〕申上げる次第です。」

[やぶちゃん注:「百呎」三〇メートル四十八センチ。]

 私がこんなことを申上げますと、國王はすつかり御機嫌を損じて〔ひどく〕呆れかへつてゐられました。〔つたやうに〕〔國王はすつかり仰天してしまはれたやうです。そして呆れかへつた顏つきで、かう仰せになりました。〕

 「よくもよくも、お前のやうな、ちつぽけな、蟲けらのやうな動物が、そんな鬼、畜生のやうな〔にも等しい〕考へを抱けるものだ〔。〕そのうえ〔れに〕、そんな酷ごたらしい有樣を〔見ても〕、お前はまるで平氣で〔ない顏して〕ゐられるのか。お前はその人殺し道具〔機械〕をさも自慢げに話すが、そんな機械を發明する奴こそはを平氣で使つて恥ぢない→の發明こそは〕人類の敵〔か、惡魔の仲間のやること〕にちがひない。そんな、けがらわしいものの〔奴の〕祕密ばかりは、たとへこの王國の半分を無くしても、〔余は〕知りたいとは思はない。〔くないのだ。〕だから、お前も、もし生命が惜しければ、二度と〔もう〕そんなこと〔は〕話さないがいい喋らないでくれ。〕〔申すな。〕」

[やぶちゃん注:この陛下の台詞は推敲の痕が甚だしい。被曝した原民喜ならではの、強い思いがその筆致から激しく伝わってくる。]

 王御自身は、技術〔科學〕に興味を持たれ、自然に関する發見など非常に喜ばれたのですが、火薬のことを申上げ殺人の話火薬のことを申上〔げて、こんなに〕げるとひどく御恐られた 私の話〔このこと〕には大変御機嫌を損じられました。〔聞かうとなさならにのでした。〕〔ばかりは頑として〕許されないのでした。

[やぶちゃん注:最後の「〔聞かうとなさならにのでした。〕」は前の抹消部の書き替え(恐らくは最初の「私の話」(は)に続くもの)であるが、文脈からも現行版からも、ここでも抹消されているものと思われるが、抹消線はない。以下、原民喜の思いを汲んで、主人公の火薬伝授の語りから、それを受けた陛下の嫌悪と怒気を含んだ言葉以降、現行版の「四、猿にからかわれて」のエンディングを示す。

   *

 ある日、私は王の御機嫌をとるつもりで、こんなことを申し上げました。

「実は私は素晴しいことを知っているのです。というのは、今から三四百年前に、ある粉が発明されましたが、その製造法を私はよく知っているのです。まず、この粉というのは、それを集めておいて、これに、ほんのちょっぴりでも火をつけてやると、たとえ山ほど積んである物でも、たちまち火になり、雷よりももっと大きな音を立てゝ、何もかも空へ高く吹き飛ばしてしまいます。

 で、もし、この粉を真鍮か鉄の筒にうまく詰めてやると、それは恐ろしい力と速さで遠くへ飛ばすことができるのです。こういうふうにして、大きな奴を打ち出すと、一度に軍隊を全滅さすことも、鉄壁を破ったり、船を沈めてしまうこともできます。また、この粉を大きな鉄の球に詰めて、機械仕掛で敵に向って放つと、舗道は砕け、家は崩れ、かけらは八方に飛び散って、そのそばに近づくものは、誰でも脳味噌を叩き出されます。

 私はこの粉を、どういうふうにして作ったらいゝか、よく心得ているのです。で、職人たちを指図して、この国で使えるぐらいの大きさに、それを作らせることもできます。一番大きいので長さ百フィートあればいゝでしょうが、こうした奴を二三十本打ち出すと、この国の一番丈夫な城壁でも、二三時間で打ち壊せます。もし首都が陛下の命令に背くような場合は、この粉で首都を全滅させることだってできます。とにかく、私は陛下の御恩に報いたいと思っているので、こんなことを申し上げる次第です。」

 私がこんなことを申し上げると、国王はすっかり、仰天してしまわれたようです。そして呆れ返った顔つきで、こう仰せになりました。

「よくもよくも、お前のような、ちっぽけな、虫けらのような動物が、そんな鬼、畜生にも等しい考えを抱けるものだ。それに、そんなむごたらしい有様を見ても、お前はまるで平気でなんともない顔をしていられるのか。お前はその人殺し機械をさも自慢げに話すが、そんな機械の発明こそは、人類の敵か、悪魔の仲間のやることにちがいない。そんな、けがらわしい奴の秘密は、たとえこの王国の半分をなくしても、余は知りたくないのだ。だから、お前も、もし生命が惜しければ、二度ともうそんなことを申すな。」

 王御自身は、科学に興味を持たれ、自然に関する発見など非常に喜ばれたのですが、このことばかりは、頑として許されないのでした。

   *]

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