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2016/12/12

アリス物語 ルウヰス・カロル作 菊池寛・芥川龍之介共譯 (十一) 誰がお饅頭を盜んだか

 

    十一 誰がお饅頭を盜んだか

 

 二人がやつてきましたときには、ハート王樣と女王とが、王座に坐つてゐて、そのまわりには多勢(おほぜい)のものが集つてゐました。――その面面(めんめん)といふのはいろいろな小さな鳥獸(とりけもの)や、トラムプカルタの組(くみ)全部でした。その前にはハートのジヤツクが、鎖につながれて立つてゐて、兩脇には一人づつ兵士がついて見張をしてゐました。王樣の傍(そば)には、白兎が片手に喇叭(らつぱ)をもち片手に羊皮紙の卷いたものを持つてゐました。その法廷のちやうど眞中にはテーブルが一つあつて、それには饅頭の入つた、大きな皿がのつて居りました。それが餘りおいしさうに見えましたので、アリスは一眼見ただけで、すつかりか腹が空いてしましました。「裁判なんか、もうおしまひにしてしまふといいに。」とアリスは考へました。「そして早くこのお茶うけを渡してくれればいいに。」けれどもそんなうまい具合には、まるでなりさうもありませんでしたから、自分のぐるりにあるいろんなものを見て、時間をつぶしてゐました。

[やぶちゃん注:「お饅頭」原文は“THE TARTS”。タルトで、主に英国で用いられるそれは、中に果物やジャムなどを包んみ込んだ「パイ」である。

 なお、以下、濁点や句読点の脱落・錯字がかなり見られるが、再現せずに私が補正した。それは一々断らない。]

 アリスは今までに、裁判所に行つたことは一度もありませんでした。けれども、本で色色と讀んでゐまししたから、今そこにあるものの名前を知つてゐるので、全く嬉しくなりました。「あれが判事だわ。大きな假髮(かつら)をかぶつてゐるから、」と獨語(ひとりごと)をいひました。

 ついでのことですが、判事は王樣でした。で、王樣は假髮(かつら)の上に王冠をかぶつてゐたものですから、大變具合が惡さうで、又確かに似合つてゐませんでした。

「それから、あれが陪審席だわ。」とアリスは考へました。そしてあの十二匹の動物(アリスは「動物といはないでは居られませんでした。」といふのは、それは獸やら鳥だつたからでした。)應のものたちが陪審官なのね。」アリスはこの最後の言葉を、二三度繰返して言つて見て、少し得意になりました。といふのは、アリス位(くらゐ)の年齡(とし)のもので、陪審官の竟味を知つてゐる子供なんてほんの少しだと思つたからでした。そして實際その通りなのです。

 十二人の陪審官たちは、大變忙がしそうに石板(せきばん)の上に何か書いてゐました。「あの人達は何をしてゐるのですか。」とアリスはグリフオンに低聲(こごゑ)で言ひました。「裁判が始まらないうちは、何も害くことなんかありそうもないのに。」

「自分の名前を書いてゐるんだよ。」とグリフオンは小さい聲で答へました。

「何故なら裁判のすまないうちに、自分の名前を忘れるといけないと思つてだよ。」

「何て馬鹿者でせう!」とフリスは、大きなおこつた聲でいひかけましたが、あわてて直めてしまひました。なぜなら白兎が「法廷では靜肅に」とどなり、王樣は眼鏡(めがね)をかけてものをいつたものを探しだすやうに、ぐるりを見まはしたからでした。

 アリスは陪臣官たちの肩をすかして見るとみんなが「馬鹿者」と石版に書いてゐました。中には、「馬鹿」といふ字を知らなくつて隣の者にきいて居るものさへあるのを、アリスは見つけました。「どの石版だつて裁判が濟まないうちにきつと出鱈目書(でたらめが)きでいつぱいになつてしまふに違ひないわ。」とアリスは考へました。

 陪審官の一人は、キーキー軋(きし)む鉛筆をもつてゐました。無論のことアリスには、これが我慢できませんでした。そこでアリスは法廷を一𢌞りして、その陪審官の後(あと)へ行き、直ぐうまい隙(すき)を見つけてそれをとり上げてしまひました。それが餘り上手な早業だつたものですから、可哀さうなこの小さい陪審官は(それは蜥蜴(とかげ)のビルでした)鉛筆がどうなつてしまつたのかさつぱ見當(けんたう)が付きませんでした。それでそこいらをさんざん探して見ました揚句(あげく)、しかたなく、その日は石板のにに指で書かなければなりませんでした。しかし石板の上には何の跡ものこりませんでしたから、それはまるて無駄な事でした。

「傳令官(でんれいくわん)罪狀を讀み上げろ。」と王樣がいひました。

 そこで白兎は三度ラツパを吹き、それから羊皮紙の卷物を解いて、次の樣に讀みました。

   「ハートの女王樣が、夏の日一日かかつて

    お饅頭をつくりました。

    ハートのジヤツクがそれを盜んで

    もち逃げをしました。」

「君方(きがた)の意見を述べてもらひたい。」と王樣は陪審官にいひました。

「まだです、まだです。」と兎はあわててさへぎりました。「そのまへにまだ澤山の手續きがあります。」

の「第一の證人を呼ベ。」と王樣はいひました。白兎は三度ラツパを吹いて、

「第一の證人!」と呼び上げました

 第一の證人はお帽子屋でした。お帽子屋は片手に茶呑荼碗(ちやのみちやわん)、片手にバタ附パンをもつてゐました。「陛下、御許し下さい。」とお帽子屋は言ひ始めました。「こんなものを持ちこみまして。でもわたし、お呼びだしをうけたとき丁度お茶をのみかけてゐたものですから。」

「そんなものは濟ませて來るものだ。」と王樣は言ひました。「いつからお前は始めたのだ。」

 お帽子屋は、自分のあとから、山鼠(やまねづみ)と腕を組んで法廷に人つてきた三月兎を見ました。「三月の十四日だと思ひます。」とお帽子屋は言ひました。

[やぶちゃん注:「山鼠」既注であるが、再掲しておく。原文“Dormouse”。ネズミ目ヤマネ科 Gliridae のヨーロッパヤマネ属ヨーロッパヤマネ Muscardinus avellanarius 。英名は“Hazel Dormouse”であるが、本種は『ブリテン諸島に自生する唯一のヤマネ科の動物であり、単にDormouseとも呼ばれる』と参照したウィキの「ヨーロッパヤマネにある。グーグル画像検索「Muscardinus avellanariusをリンクしておく。因みに、本邦産のヤマネ(山鼠・冬眠鼠)は固有種(種小名は正に正真正銘)であるヤマネ科ヤマネ属 Glirulus ヤマネ Glirulus japonicus で別種である。参照したウィキの「ヤマネ」によれば、『現生種では本種のみでヤマネ属を構成する。別名ニホンヤマネ』とも言い、同属の化石種ならば『ヨーロッパの鮮新世の地層から発見されている』。『日本が大陸と地続きで温暖な時代に侵入した遺存種と考えられて』おり、山口県の五十万年前『(中期更新世中期)の地層から化石が発見されている』。このヤマネ(ニホンヤマネ)は『大陸産ヤマネからは、数千万年前に分岐したと推定され、日本列島に高い固有性を誇る。遺伝学的研究によれば、分布地域によって、別種と言ってよいほどの差異が見られる』とある。グーグル画像検索「Glirulus japonicusもリンクさせておくので比較してご覧になられることをお薦めする。]

「十五日だよ。」と三月兎は言ひました。

「十六日だよ。」と山鼠は付け加へました。

「それを書きとめろ。」と王樣は陪審官に言ひました。陪審官は一生懸命にこの三つの日附を石板に書きとめて、その數(すう)をたして、何錢何厘といふ答訥(こたへ)をだしました。

「お前帽子をぬげ。」と王樣はお帽子屋に言ひました。

「これはわたしのものではありません。」とお帽子屋は言ひました。

「盜んだな。」と王樣は叫びながら、陪審官の方を向きました。早速陪審官は事件の覺え書をつくりました。

「わたしは賣物をもつてゐるのです。」とお帽子屋は説明をつけ加へました。

「わたしは自分のお帽子なんか持つてゐません。わたしはお帽子屋商賣なんですから。」

 このとき女王は眼鏡(めがね)をかけて、お帽子屋をヂツと見つめはじめました。お帽子屋はすつかり顏色蒼ざめ、もじもじしだしました。

「おまへの證言(いひぶん)をいへ。」と王樣はいひました。「ビクビクナるな、でないとこの場で死刑に處するぞ。」

 これでは、少しも證人に元氣をつけるどころではありませんでした。帽子限は右足と左足と、かはるがはるに一本足で立ち、不安さうに女王の顏を見たりしましにが、餘りどぎまぎして、茶呑茶碗をバタ附パンと間違へ、その端をかじりとつたりしました。

 丁度この時、アリスは大層變な氣持を感じました。そしてそれが何の爲だか、少し經つて分りだすまでは、隨分當惑させられました。

 アリスは又、大きくなりはじめたのです。アリスは初めは立上つて裁判所をでていかうと思ひましたが、又考へ直して自分のゐられる場所があるかぎり、とどまつてゐようと決心しました。

「そんなに押さないでくれ。」とアリスの隣りに坐つてゐた山鼠がいひました。「わたしこれでは息ができないよ。」

「わたし、どうにもならないの。」とアリスは、大層やさしく言ひました。

「わたし今大きくなりかけて居るんです。」

「ここでは大きくなんぞ、なる權利はないよ。」と山鼠はいひました。

「馬鹿なことは云ひつこなし。」とアリスは少し大膽(だいたん)になつて言ひました。

「お前だつて大きくなりかけて居るわよ。」

「さうさ、だけれど、こつちはいい工合に大きくなるのだよ。」と山鼠は言ひました。「そんなをかしな風(ふう)にはのびないのだ。」そして山鼠は大層ふくれて立上(たちあが)り、法廷の向ふ側にいつてしまひました。

 かうした間(ま)も女王は、お帽子屋をヂツと目もはなさずに見つめてゐました。そして丁度山鼠が法廷をよこぎりましたとき、法廷の役人の一人に女王は言ひました。「先達(せんだつて)の音樂會に出た唄手(うたひて)の名簿を持つてきておくれ。」それを聞いて、あはれなお帽子屋はひどくふるへましたので、穿(は)いてゐた兩方の靴がぬげてしまひました。

「證言(いひぶん)をいへ。」と王樣は怒つて又言ひました。「それでないとお前がビクビクしてゐようがゐまいが死刑に處するぞ。」

「陛下、わたしは哀れなものです。」とお帽子屋は震へ聲で云ひ始めました。

「そしてわたしはやつとお茶を飮みだしたばかりのときでした――せいぜい一週間程にしかなつてゐませんでした。――それにこんなにうすつぺらなバタ附パンでもつて、そしてお茶のちらちらちらは――。」

「何のちらちらだ。」と王樣はいひました。

「それは茶から始まりました。」とお帽子屋は答へました。

「無詣、ちらちらはちの字から始まつてゐる。」と王樣は鋭くいひました。

「お前はわたしを阿呆(あほう)と思つてゐるのか、さあ後を云へ。」

「わたしは哀れなものでございます。」とお帽子屋はつづけて言ひました。

「そして大概のものが、それからちらちらしました。――ただ三月兎のいひますには。」

「わたしはいひませんでした。」と三月兎は大層あわてて言葉を遮りました。

「お前は言つたよ。」とお帽子屋はいひました。

「わたしはそれを否定します。」と三月兎はいひました。

「あの男はそれを否定してゐる。」と王樣は言ひました。「その部分は省いておけ。」

「ええ、しかし兎に角山鼠は言ひました。」――とお帽子屋は山鼠がそれを又否定しやしないかと、おそるおそる振り返つていひました。けれども山鼠はよく寢込んでゐましたので、一言も否定しませんでした。

「そのあとで。」とお帽子屋は言ひつづけました。「わたしはもつとバタ附パンを切りました。」

「しかし山鼠は何といつたのだ。」と陪審官の一人が訊きました。

「それをわたしは思ひ出せません。」とお帽子屋はいひました。

「お前は思ひ出さねばならんぞ。」と王樣は言ひました。「でないと、死刑に處するぞ。」

 可哀さうなお帽子屋は、荼碗とバタ附パンを落してしまひました。そして片膝をつきました。「陛下、わたしは哀れなものでごさいす。」とお帽子屋は言ひ始めました。

「お前は非常に哀れな話手だよ。」と王樣はいひました。

 このとき一匹の豚鼠(ぶたねづみ)が拍手をしましたが。直ちに廷丁(ていてい)が制止してしまひました。(この制止するといふ言葉は、少しわかり難い言葉ですから、豚鼠がどうされたのか、ここで説明をします。役人は大き左ズツク製の袋を用意してゐるのでした。そしてその口のところは綱で堅く結(ゆは)へるやうになつてゐるのでした。ところで、役人は豚鼠をこの袋の中に頭の方から入れ、その上に坐つたのです。

[やぶちゃん注:「豚鼠」前出で「(ギニアピツグ)」とルビされてあった。この一見、些細な不統一を見ても、前半を芥川龍之介が、後半を菊地寛が訳したという事実を物語っているように思われてならない。一つの再度、注しておくと、原文は“guinea-pig”で、これは所謂、モルモット、即ち、家畜化されたテンジクネズミ(天竺鼠:英語“cavy” 齧歯(ネズミ)目ヤマアラシ亜目テンジクネズミ上科テンジクネズミ科テンジクネズミ属Cavia)のこと。]

「わたしうれしいわ。いいところを見て、」とアリスは思ひました。「わたし、新聞で裁判記事の終りに『數人の者拍手せんとするものありしも、直ちに廷丁(ていてい)に制止せられたり」と書いてあるのをよく見たけれど、今まで何のことだか分らなかつたわ。

「お前の知つてゐることがそれだけなら、お前は下つてよろしい。」と王樣は續けて言ひました。

「わたし、これより下ることができません。」とお帽子屋はいひました。「わたしはこの通り床の上に居りますので。」

「それでは腰を下してよろしい。」と王樣は答へました。

 この時他の豚鼠が拍手をしましたので、前のやうに制止されてしまひました。

「さあ、あれで豚鼠のかたがついた。」とアリスは思ひました。「さあ、これからよくなるだらう。」

「わたし一層(そ)のこと、お茶をすましたいと思ひます。」とお帽子屋はまだ音樂の唄手(うたひて)の名簿を讀んでゐた女王を、心配さうに見て言ひました。

 すると王樣が、「お前行つてよろしい。」と言ひましたので、お帽子屋は大急ぎで靴なんか穿(は)く時間もとらずに、法廷を出て行(い)きました。

「外で、今直ぐにあの男の首を切れ。」と女王は役人の一人に言ひました。けれども、役人が入口のところに行つたときには、お帽子屋はもう影も形も見えませんでした。

「次の證人を呼べ。」と王樣は言ひました。

 次の證人は公爵夫人の女料理番でした。この女は片手に胡椒箱(こせうばこ)を持つてゐました。アリスはこの女が法廷に入つてこないうちから、今度は誰だか分つてゐました。 何故なら戸口の側にゐた人達が皆一齊に嚏(くさめ)を始めたからです。

「お前の證言をいへ。」と王樣はいひました。

「いはないよ。」と料理番はいひました。

 王樣は心配さうに白兎を見ました。すると兎は低い聲で、「陛下この證人を對質(たいしつ)訊問なさらなければいけません。」

「よし、しなけばならないといふならするよ。」と王樣は情ないやうな風(ふう)をして言ひました。そして兩腕を組み、目が見えなくなるほど眉をしかめて料理番を見てから、「お饅頭は何でこしらへてある。」と厚い聲で言ひました。

「大抵(たいてい)胡楸です。」と料理番は言ひました。

「お砂糖水だよ。」と料理番のうしろからねぼけ聲(ごゑ)が言ひました。

「あの山鼠の首を抑へろ。」と女王は金切聲(かなきりごゑ)をだしました。「あの山鼠を打首(うちくび)にしろ。あの山鼠を追ひだしてしまへ。あいつをとりおさへろ。あいつをつねつてやれ、ゐいつの頰髯(ほおひげ)をぬいてしまへ。」

 暫くの間(あひだ)法廷は、山鼠を追ひ出す爲に、隅から隅まで大騷ぎでした。そしてみんなが再び席に落ちついたときには、料理番の女の姿は見えなくなつてゐました。

「構はんよ。」と王樣はほつとした樣子でいひました。「次の證人を呼べ。」それから王樣は小聲で女王に言ひました。「お前が今度の證人を訊問しなければならないよ。わしは訊問をすると頭痛がしてくる。」

 アリスは次の證人は、誰だらうかと知りたくなつたので、兎が人名簿をくつて居るのをヂツと見てゐました。

「まだ證言(いひぶん)があんまり上(あが)つてゐない。」とアリスは獨語(ひとりごと)をいひざした。ところでまあ想像してみて下さい。兎が小さい金切聲を張りあげて、「アリス」と呼び上げたとき、アリスのその驚きが何んなものだつたかを!

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