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2016/12/08

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 茅蜩(ひぐらし)


Higurasi

ひくらし  茅【當作字】

茅蜩

     【和名比久良之】

ミヤウ゜チヤウ

 

本綱茅蜩小而青綠色蟬也

△按深山中有之人家近處希有也至晩景鳴聲寂寥

     月淸
                 後京極

 日くらしのなく音に風を吹添て夕日凉しき岡のへの松

 

――[やぶちゃん注:ここに本文完全閉鎖の縦罫が入る。]――

 

寒蟬【寒蜩◦寒螿◦𧕄】 本綱小而色青赤者名寒蟬【和名加無世美】月令

 云七月寒蟬鳴者是也

啞蟬         本綱未得秋風則瘖不能鳴者

 △按此蟬如土用中則觸物如言吃吃而不能鳴立秋

 始鳴然不如常蟬蓋和名抄所謂奈波世美是乎

冠蟬【胡蟬 螗蜩】  本綱頭上有花冠蟬也

 △按詩大雅曰如蜩如螗蓋蜩尋常蟬也螗則冠蟬也

螓【麥】      本綱小而有文蟬也

蜋蜩         本綱五色具蟬也

𧑗母         本綱小於寒蟬二三月鳴者也

 △按蟬之類有數種而其初所化之蠐螬腹蜟等亦不

 一故有大小遲速之異

 

 

ひぐらし  茅〔(ばうせつ)〕【當(まさ)に「」の字に作るべし。】

茅蜩

     【和名「比久良之」。】

ミヤウ゜チヤウ

 

「本綱」、茅蜩は小にして青綠色の蟬なり。

△按ずるに、深山の中に、之れ、有り。人家近き處には希れに有り。晩景に至りて鳴く聲、寂寥たり。

    「月淸」
                 後京極

 日ぐらしのなく音〔(ね)〕に風を吹き添へて夕日凉しき岡の邊(へ)の松

 

―――――――――――――――――――――

寒蟬(かむせみ)【寒蜩寒螿𧕄】 「本綱」、小にして、色、青赤き者を寒蟬と名づく【和名「加無世美」。】「月令〔(がつりやう)〕」に云ふ、『七月に寒蟬鳴く』と云ふは、是れなり。

啞蟬(なはせみ) 「本綱」、未だ秋風を得ざれば、則ち、瘖〔(いん)にして〕、鳴くこと能はざる者なり。

 △按ずるに、此の蟬、土用の中〔(うち)〕は、則ち物に觸れて、「吃吃〔(きつきつ)〕」と言ふがごとくにして、鳴くこと、能はず。立秋に始めて鳴く。然〔れど〕も、常の蟬のごとくならず。蓋し、「和名抄」〔に〕所謂〔(いはゆ)〕る「奈波世美〔(なはせみ)〕」は是れか。

冠蟬(かむりせみ)【胡蟬 螗蜩】 「本綱」、頭の上に花冠〔(くわかん)〕有る蟬なり。

 △按ずるに、「詩」の「大雅」に曰く、『蜩(ちやう)のごとく、螗〔(たう)〕のごとし』とあり。蓋し、「蜩」は尋常(よのつね)の蟬なり。「螗」は則ち、冠蟬なり

螓(あやせみ)【麥】 「本綱」、小にして文〔(もん)〕有る蟬なり。

蜋蜩(いろどりせみ) 「本綱」、五色具(そな)はる蟬なり。

𧑗母 「本綱」、寒蟬より小さく、二、三月に鳴く者なり。

 △按ずるに、蟬の類、數種有りて、其の初〔めて〕化する所の「蠐螬〔(きりうじ)〕」・「蠐螬〔(にしどち)〕」等、亦、一〔(いつ)〕ならず。故、大小・遲速の異、有り。

 

[やぶちゃん注:私がその声を偏愛する、

セミ科セミ亜科ホソヒグラシ族ヒグラシ属ヒグラシ Tanna japonensis

及び他のセミ類の附記である。但し、最後の他の蝉は「本草綱目」からのごく短い抄録であって、同定も放棄している。なお、私がどれぐらい偏愛しているかというと、私は実はもうこの五年近く、好きなバッハもジャズも殆んど実は聴いていないのである。パソコン前での作業中(一日延べ八時間以上)は専ら、Tomoki BGM ViluReef Group の録音になる「川のせせらぎとひぐらしの鳴き声3時間版/作業用BGM・勉強用BGMYou Tube)や【作業用BGM】ひぐらしの鳴き声1時間を流しているのである。私は一年中、蜩の声を聴いていて飽きない人種なのである。いや、人と話すのはおろか、人の作った音楽も最早、私の心を和ませてはくれないのだとも言えるのである。

「茅【當(まさ)に「」の字に作るべし】」割注は「(「」の字は)「」の字を用いねばならない」の意。調べて見ると、「」は「」の俗字らしいので、それを言っているものか。或いは、「」はネットの中文サイトの辞書を見ると「青緑色の蟬」の意の他に、海産のある種の蟹をも意味するので、そこで良安はかく主張しているのかも知れぬ。

「月淸」「秋篠月清集(あきしのげっせいしゅう)」。公卿で繊細で気品のある新古今風の歌人として知られる九条良経(嘉応元(一一六九)年~元久三(一二〇六)年:摂政関白九条兼実次男で従一位・摂政・太政大臣。「後京極殿」と号した)の自撰家集。四巻。元久元(一二〇四)年成立。

「日ぐらしのなく音に風を吹き添へて夕日凉しき岡の邊の松」よか、歌じゃて。

「寒蟬(かむせみ)」「かんぜみ」。音は「カンセン」。本邦では秋に鳴く蟬で、先行するヒグラシ・ツクツクボウシなどを指す。

「寒蜩」「寒螿」「𧕄」以上、現代仮名遣で「カンチョウ」・「カンショウ」・「ヨウ」と読む。以下、印したものは同じ処理を施したものなので、この注記は略す。

「月令〔(がつりやう)〕」五経の一つである、「礼記(らいき)」の内の、年間行事を理念的に述べた「月令篇」。「げつりょう」と読んでも構わないようだが、私は昔からこうしか読んだことがない。

「七月に寒蟬鳴く」「礼記」「月令篇」に「孟秋之月」の条に『涼風至、白露降、寒蟬鳴』(涼風至り、白露(びやくろ)降り、寒蟬鳴く)とある。「七月」は旧暦であるから秋。

』と云ふは、是れなり。

「啞蟬(なはせみ)」基本、種ではなく鳴かないの蟬を指す語である。先行する「蚱蟬」の私の注を参照のこと。

「瘖」声が出ないこと。

「土用」五行に由来する暦の雑節の一つである立秋直前の夏の土用(二度ある場合は二度目の「二の丑」)現行の新暦では通常、八月七日より前である。

「吃吃〔(きつきつ)〕」これはが身体を動かす際の羽音の擦れるオノマトペイアであろう。

「鳴く」これはの蟬。

「常の蟬のごとくならず」それは普通の蟬の鳴き声とは違っている。ということは、寧ろ、後期に鳴くか、他の蝉が静まって鳴き声が判り始める、やはり、ヒグラシ・ツクツクボウシなどの類が想起される。言っておくが、ここは良安の附記部分であるから、本邦の蟬に限って考えてよいのである。

『「和名抄」に所謂る「奈波世美」』「蚱蟬」の私の『「和名抄」、「蚱蟬」【和名「奈名波世美」】、以つて雌蟬(めせみ)にして鳴くこと能はざる者と爲る』注を参照のこと。

「冠蟬(かむりせみ)」これは「頭の上に花冠」から、多くの主がその胸部背面や頭部上面に、実に変わった多様な形状(烏帽子形・剣形・瘤のついた樹木の枝状で、色も多様である種もある)を成す「ヘルメット」と呼ばれる構造を持っている、セミ型下目ツノゼミ上科ツノゼミ科 Membracidae の類を私は直ちに想起した(それが当たっているかどうかは知らぬ)。グーグル画像検索「Membracidaeをリンクしておく。なお、この「冠蟬」は文字からも納得出来るが、現代中国語では「蟬花」などとも称し、特定の蟬に附着する冬虫夏草(例えば、本邦では、セミ亜科ニイニイゼミ族ニイニイゼミ属ニイニイゼミ Platypleura kaempferi の幼虫に寄生する菌界ディカリア亜界子嚢菌門チャワンタケ亜門フンタマカビ綱ボタンタケ亜綱ボタンタケ目オフィオコルディケプス科オフィオコルディケプス属セミタケ Ophiocordyceps sobolifera など)に対する名ともなっているようである。

「胡蟬」「コセン」。

「螗蜩」「トウチュウ」。

「詩」「詩経」。

『「大雅」に曰く、『蜩(ちやう)のごとく、螗〔(たう)〕のごとし』とあり』。「蕩之什」の一節に「如蜩如螗、如沸如羹。小大近喪、人尚乎由行」(蜩の如く、螗の如し、沸くが如く、羹(こう)するが如し。小・大、喪(ほろ)ぶに近きも、人、尚ほ、由りて行く)とある。

「麥「バクサツ」。

「文〔(もん)〕」紋。

「蜋蜩」不詳。「五色具(そな)はる蟬」なら見て見たいのだが、「蜋蜩」で画像検索をかけたら、トホホ! 自分のサイトの挿絵が、これ、いっぱいだわ!(本「蟲類」の目録に載せた字を拾ってしまうため)

𧑗母」「デイボ」。

「寒蟬より小さく、二、三月に鳴く者なり」本邦の種として類似するものを当てるとすれば、セミ亜科ホソヒグラシ族ハルゼミ属ハルゼミ Terpnosia vacua がよく一致する。私は二十年ほど前、法師温泉で満山に亙るその鳴き声を聴いたことがある。彼らの声も、とても、好きだ。

「蠐螬〔(きりうじ)〕」・「蠐螬〔(にしどち)〕」先行する「蚱蟬」の私の注及びそのリンク先を参照されたい。]

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