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2016/12/08

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 蟬蛻(せんぜい)


Senzei

せんぜい  蟬殻  枯蟬

      金牛兒 蟬退

蟬蛻

     【和名 世美乃毛奴介】

チヱン トイ

 

本綱蟬蛻【鹹甘寒】治皮膚瘡瘍風熱驚癇眼目翳膜及啞病

夜啼皆宜用馬蟬之蛻

按腹蜟蠐螬等冬蟄夏出背裂而爲墠出去殻也紀州

 越州之産爲佳形大而馬蟬之殻也藥肆所售者多常

 蟬蛻也

     源氏

       うつ蟬の身をかへてける木の本に猶人からのなつかしき哉

 

 

せんぜい  蟬殻  枯蟬

      金牛兒 蟬退

蟬蛻

     【和名「世美乃毛奴介〔(せみのもぬけ)〕」。】

チヱン トイ

 

「本綱」、蟬蛻は【鹹甘、寒。】皮膚瘡瘍(そうちやう)・風熱を治す。驚癇〔(きやうかん)〕・眼目の翳膜〔(かすみ)〕及び啞病〔(おし)〕・夜啼き、皆、宜しく馬蟬(むませみ)の蛻〔(ぬけがら)〕を用ふべし。

按ずるに、腹蜟(にしどち)・蠐螬(きりうじ)等、冬、蟄(すごもり)、夏、出でて、背、裂けて墠〔(せん)〕と爲り、出でて去りし殻なり。紀州・越州の産、佳と爲す。形、大きくして、馬蟬(にしどち)の殻なり。藥肆〔(やくし)〕に售(う)る所の者は、多く、常の蟬(きりうじ)の蛻(から)なり。

    「源氏」

       うつ蟬の身をかへてける木〔(こ)〕の本〔(もと)〕に猶〔(なほ)〕人がらのなつかしき哉

 

[やぶちゃん注:半翅(カメムシ)目頚吻亜目セミ型下目セミ上科 Cicadoidea に属するセミ類の幼虫の脱皮した殻。

 なお、平凡社東洋文庫版現代語訳(一九八七年刊。杏林堂版を底本とする)では、良安の解説の冒頭が私の所持するもの(五書肆名連記版影印)とは異なる。幾つかの画像アーカイブを見たが、当該の杏林堂版原文を見出せないので、現代語訳を引用しておく。

 

思うに、『本草綱目』に、あるいは腹蜟を蟬蛻とする、とあるのは誤りである〔腹蜟とはまだ蟬となる前の名である〕。およそ蟬蛻は』[やぶちゃん補注:以下、「紀州」と続くが、そこは訳から見て同一と思われる]。

 

内容から見て、杏林堂版は、五書肆名連記版を改稿したものと思われ、良安の最終意見はこちらに落ち着くものか

「枯蟬」(こせん)「金牛兒」(きんぎゅうじ)「蟬退」(せんたい)は孰れも言い得て妙の別称ではないか。こういう感覚が現代生物科学から失われたのは、私は非常に淋しい気がしている。

「「世美乃毛奴介〔(せみのもぬけ)〕」「蛻」は、現行でも「もぬけ」と訓ずる。噓だと思ったら、「もむけ」と打って変換して見られよ。

「瘡瘍」瘡(かさ)や腫瘍。

「風熱」風邪の中でも重症のもので、特に高い熱を発する病態及びそれよって生する合併症をも含む症状。

「驚癇」癲癇(てんかん)。

「馬蟬(むませみ)」セミ上科セミ科セミ亜科エゾゼミ族クマゼミ属クマゼミ Cryptotympana facialis 前項参照。

「腹蜟(にしどち)」これは半翅(カメムシ)目頸吻亜目セミ上科 Cicadoidea のセミ類の比較的終齢期の方に近い幼虫を指すと私は考えている。前出の腹蜟を参照されたい。とすると、これを杏林堂版でかく修正したのは誤りと私は思う

「蠐螬(きりうじ)」鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目コガネムシ下目コガネムシ上科コガネムシ科スジコガネ亜科スジコガネ族スジコガネ亜族コガネムシ属 Mimela に属するコガネムシ類の幼虫を指すと私は考えている。前出の「蠐螬」を参照されたい。さすれば、こちらは杏林堂版でかく修正したのは正しいと私は思う。総合的に見て、杏林堂版の方が現代の生物学的知見からは無難な線とは言える。

「越州」越後国・越中国・越前国の総称。

「馬蟬〔にしどち〕」ルビは何故か、左側に配されてある(底本は「ニシトチ」と清音)。前の注での私の比定からは「ニシトチ」は広義には正しいとは言えるが、「馬蟬」に振るのは誤りである。

「藥肆〔(やくし)〕」薬屋。

「售(う)る」売る。

「蟬(きりうじ)」ルビは左側に配されてある(底本は「キリウシ」と清音)。但し、こちは、右に「ノ」「カラ」と送り仮名とルビを振った結果、書けなくなったために過ぎない。この「キリウシ」の方は前の注での私の比定からは「蟬」に振るのは全くの誤りであると言わざるを得ない。

「うつ蟬の身をかへてける木〔(こ)〕の本〔(もと)〕に猶〔(なほ)〕人がらのなつかしき哉」「 空蟬の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな」言わずもがな、「源氏物語」の第三帖「空蟬」のエンディング、源氏が、逃げ去る際、空蟬が脱ぎ捨てた衣を持って帰り、そのせつない思いを詠んで、空蟬に贈った印象的な源氏の一首である。良安先生、大好き

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