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2017/01/03

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) 飛島(ラピュタ)(1) 「變てこな人たち」(Ⅰ)

 

    飛島、

      變てこな人たち

 

[やぶちゃん注:標題と章見出しは原稿用紙右罫外に記している。現行版では標題が『第三、飛島(ラピユタ)』、章見出しは『一、変てこな人たち』である。]

 

 私が家に戾ると間もなく、ある日、「ホープウエル号」の船長が訪ねて來ました。それから度々彼はやつて來るやうになりましたが、いろいろ話し合つてゐるうちに、私はまた〔、〕船に乘つてみたくなつたのです。これまで私は隨分苦しい目にもあつてゐます〔ひました〕が、それでも〔、〕まだ海へ出て外國を見たいといふ氣持が消えません。がありました。→強かつたのです。〕

[やぶちゃん注:「ホープウエル号」この船名は原典でもここが初出。]

 そこで、私は一七〇六年八月五日に出帆し、翌年の四月十一日にフオート・セン・ヂヨーヂ(印度の港)に着きました。それから、トンキンに行つたのですが、ここで私は〔船長と別れて、〕別の船に乘り、十四人の船員を一緒に〔つれて〕出帆しました。

[やぶちゃん注:「一七〇六年八月五日」本邦では宝永五年八月十九日、「翌年の四月十一日」は宝永六年三月一日に相当する。これは第五代将軍徳川綱吉から次代家宣の治世に当たる。

「フオート・セン・ヂヨーヂ」インド・チェンナイ(マドラス)の沿岸都市の基礎となったセント・ジョージ要塞(英語:Fort St. George)のこと。一六三九年にインドで初めてイギリス東インド会社がイギリスの実効支配を目的として建造したイギリスの交易所兼要塞。

「トンキン」現在のベトナム北部及びその中心都市ハノイの旧称。当時は後黎(れい)朝(一五三二年~一七八九年)期。]

 出帆して三日もしないうちに〔、〕暴風雨にあひ、船は〔北へ東へと〕流されてゐました。十日〔その〕後、天氣がよくなつたかと思ふと、私たちの船は二隻の海賊船に見つかり、たちまち追ひつかれてしまひました。

 海賊どもは〔、〕兩方の船から〔、一せいに〕乘りこんで來ました。(海賊どもは)恐ろしいけんまくで、手下の先頭に立つて入つて來ましたが、私たちが大人しくひれ伏してゐるのを見ると、丈夫な繩で〔、〕一人のこらず縛りあげ、番人を一人つけておいて、そのまま〔、〕彼等は船中を搜しに行きました。

[やぶちゃん注:「(海賊どもは)」は現行では丸括弧はない。]

 海賊の〔なか〕に〔、〕一人のオランダ人がゐましたが、私たちを〔、〕今に海の中に抛り込んでやるぞ〔、〕と云つてゐました。海賊船の一隻の方は、日本人が船長でした。その男は私の所へやつて來て〔、〕いろんな質問をするので、私は一つ一つ、叮ねいに答へました。すると彼は〔、〕命だけは助けてやる〔、〕と云ひました。ほかやがて、私は〔小さな舟に〔一人〕乘せられ〕〔八〕日分の食べものを與へられました。、そして、どこへでも〔一人で勝手に〕行くがいいと海へ放されました。

 海賊船を離れてしばらく行くと、〔私は〕望遠鏡で島影を五つ六つ見つけました。〔そこで、〕とにかく、一番近い島へ漕ぎつけるつもりで、帆を張りました。〔すると〕三時間ばかりで、その島へ着きました。見ると〔、〕海岸は岩だらけなのです。だが〔、〕鳥の卵が澤山見つかつたので、火を起して、枯草を燃やして、卵を燒いて食べました。その晩は岩の蔭に木の葉を敷いて寢ましたが、よく眠れました。

[やぶちゃん注:段落冒頭の一マス目の右には何かを一字書いて抹消した跡があるが、場所柄、判りにくくなるなるので再現しなかった。]

 翌日は次の島へ渡りました。それからまた次次へと渡つて行きました。そして五日目に〔、〕私は目に見えてゐた最後の〔まだ見殘してゐた〕島へ來ました。〔の方へ〕〔向ひました。〕

 その島は〔、〕思つたより遠く、渡るのに、五時間もかかりました。〔私は〕ぐるりと〔島を〕一まはりしてみて、上陸するのに都合のいい所を見つけました。上つてみると、〔あたりは〕岩だらけで、ただところどころに雜草や、香のいい藥草などが生えてゐます。私は食物を取出して、腹ごしらへをすると、殘りは洞穴のなかにしまつて置きました。それから岩の上で卵を拾つたり、乾ゐた枯草や海草を集めたりしました。私は〔明日は一つ〕これに火をつけて卵を燒いておかうと考へたので思つたの→思ひま〕した。その夜は〔、〕食物をしまひこんだ空洞〔に入つて、〕〔拾ひ集めた枯草の上〔で〕〔〕寢た〔で〕た〕寢ました。けれども、〔私は〕心配ごとでなかなか眠れませんでした。〔なかつたのです。〕こんな無人島で、どうして生きて行けるでせう、いづれ〔私は〕みぢめな死に方をしなければならないのです。こんなことを考へてゐると、もう元氣もまくなつて、立上がる氣も〔私はぐつたりしてしまつて、立上る元氣も〕出なかつたのです。〔それでも氣を取りなほして〕やつと洞穴からはひ出ましたが、その時には、もう日が高く昇つてゐました。私はしばらく岩の間を步き𢌞つてゐ〔り〕ました。

[やぶちゃん注:「食物をしまひこんだ空洞」の「空洞」は現行版では前後と同じく『洞穴』となっている。]

 空には雲一つなく、太陽がギラギラ照りつけるので、眩しくてたまりません。〔〔私は〕顏をそむけてゐました。〕その時〔でした〕、突然あたりが暗くなつたのです。しかも〔、〕これは太陽が雲に遮られた時の暗さとは違つてゐました。私は〔振り〕返つて見ると、〔これはまたどうしたことでせう、今、〕私と太陽との間になにか途方もなく大きなものが、ずんずん島の方へ向つて進んで來るのです。高さは二哩ばかりありそうでした。そして、六七分間といふものは〔、〕すつかり、太陽を隱してしまひました。

[やぶちゃん注:「高さは二哩ばかりありそうでした。」の抹消は現行版では生きている。「二哩」は三キロ二百十九メートル弱。]

 やがて〔、〕そ〔の物〕は私の眞上に來ましたが〔、〕見ると〔、〕どうも〔、〕それは固い塊りのやうで、底の方が平たくなつてゐ〔るので〕す。〔ちようどその時、〕私は高い二百ヤードばかりの高い丘の上にゐたのですが、やがてその塊りは〔大きな〕〔物体→もの〕はずんずん下に降つて來ました。そして〔、〕私の眼の先に〔から〕一哩とはなれ〔てゐない〕ないところ〔眼の前に〕見えて來ました〔たのです〕。〔さつそく〕私は望遠鏡をとり出して見ました。その物体の斜面には〔、〕澤山の人間が〔上下に〕動き𢌞つてゐるのです。その姿→が〕はつきり〔と〕見えるのです。ただ何をしてゐるのかは、〔ちよつ〕わかりませんでした。

[やぶちゃん注:「一哩とはなれ〔てゐない〕ない」のダブりはママ。「一哩」は一キロ六百十メートル弱。

「二百ヤード」百八十三メートル弱。]

 空中〔の→に〕に浮んでゐる〔その〕島〔は〕どちら〔側〕へ動きだすかと、そればかり注意してゐました。〔じつと〕私は〔眺めてゐました。〕が間もなく〔、〕島はこちらの方へ近づいて來ました〔たのです〕。見ると、その側面に通路がぐるりととりまい〔何段にも分れてゐて、〕て、ゐて所々に階段があつて、上下へ行け〔のぼりおりでき〕るやうになつてゐます。一番下の通路では、數人の男が長い釣竿で魚釣をしてゐるし、それをそばから眺めてゐる男もいます。

[やぶちゃん注:差し込み校正指示に従って整序したが、この段落の冒頭部は現行版とは異なる。

   *

 私は、今、空に浮んでいるその島が、どちら側へ動きだすかと、じっと眺めていました。が、間もなく、島はこちらの方へ近づいて来たのです。見ると、その側面には、通路が何段にも分れていて、ところどころに階段があって、のぼりおりできるようになっています。一番下の通路では、数人の男が長い釣竿で魚釣をしているし、それをそばから眺めている男もいます。

   *]

 私はその島に向つて、帽子とハンケチを振つたり〔りましたが〕、いよいよ近づいて來たので、声をかぎりに叫んでみました。それから〔そのうち〕に向ふでは〔、〕私の一番よく見える側へ〔、〕人々がぞろぞろ集つて來ました。そして〔、〕彼等は〔今〕しきりに私の方を指さしながら互に顏を見合せてゐるのです。私はと、矢庭ににはかに→ただちに〕四五人の男が階段を駈け上つて行きました〔つたかと〕思うと、そのまま見えなくなりました。これはきつと誰かこの島の偉い□上□偉い〕人に 目上のうへの人に私のことを告げに行つたのだらうと、私は考へました。そしてそれはそのとほりでした。

 〔向では集る〕人間の数が殖えて來ました。

 人の数が次第に增えて來ました。それから半時間ばかりすると、島は上の方へ昇つて行き、一番下の道路が〔、〕私の立つてゐる丘から百ヤード位のところに、眞正面に見えるんです。私は一生懸命、救ひを求めるやうに話しかけてみましたが、何とも答へてくれません。丁度私の眞正面〔すぐ前〕に立つてゐるのが〔人人は〕〔その身なりで〕偉い方らしい身なりをしてゐました。その人たちは私く思はれました。私の方を見ては、なにか〔しきりに〕相談してゐるやうでしたが、ついにその一人が、綺麗上品な言葉で〔何か〕呼びかけました。私も早速返事しました。が、どちらも、言葉は少しも〔まるで〕通じません。ただ私がひどく困つてゐることだけは、身振りで、わかつてくれました。

[やぶちゃん注:「百ヤード」九十一・四四メートル。]

 相手は私に、岩から降りて海岸の方へ行け〔、〕と合圖しました。〔で、〕私はそのとおりにしました。すると、その〔飛ぶ〕島は〔、〕加減丁度〔、〕私の頭の上にその緣が近づいて、一番下の通路から〔、〕一本の鎖がするすると降りて來ました。鎖の先には腰掛が一つついてゐました〔す〕。私がそれに乘ると、鎖はそのまま卷き上げられて行きました。

 

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