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2017/02/22

小穴隆一「鯨のお詣り」(88)「答人」

 

 答人

 

 童(わらべ)ありて、駱駝(らくだ)を描(ゑが)くに、

 駱駝の顏、

 まこと駱駝の顏なれど

 駱駝の足(あし)、

 駱駝の足はまこと松葉杖をつきたらむにも似つ、

 さればわれわが杖をとりて庭に出(い)で、

 首(かうべ)をのべて童にわが駱駝の足を見するかな。

 

 童あり、脱疽にて足頸(あしくび)を失へるわが脚(あし)、

 わが脚は袋(ふくろ)かむせてあれば、

 馬の首(くび)馬の首とてうち囃(はや)す。

 まこと馬の首に似つ、わが脚。

 さればわれわが片足を撫(ぶ)して立ち、

 馬首(ばしゆ)を廻(めぐら)して童に嘶(いなゝ)きてみするかな。

 

 童あり、「おまきかへ」をするわが部屋に入込(いりこ)みて、

 踵(くびす)なきわが足の創口(きりくち)を窺(のぞ)き、

 象(ぞう)の鼻(はな)象の鼻とて喜悦す。

 まことわが足は象の鼻の如くなりて癒ゆるかな。

 さればわがこころ象となりて、

 わが象の鼻をのばし、ふりたてて童に戲むる。

 

[やぶちゃん注:「答人」の標題にルビはない。謂いは「人に答ふ」であるが、「タフジン(トウジン)」と音で読ませる気かも知れぬ。

「おまきかへ」老婆心乍ら、「お卷き替へ」で切断面をカバーしている繃帯を取って交換し、巻き替えることである。]

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