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2017/06/10

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 螻蛄(ケラ)

Kera

けら   大螻 土狗

     
𧎅◦仙姑

螻蛄 【和名介良

     又異名多】

レウ゜クウ

 

蟪蛄【與蟬同名】螻蟈【與蛙同名】石鼠【與碩鼠同名】梧鼠【與飛生同名】

本綱螻蛄善穴土而居夜則出外求食短翅四足雄者善

鳴而飛立夏後至夜則鳴其聲如蚯蚓雌者腹大羽小不

善飛翔吸風食土喜就燈光入藥用雄用火燒地赤置螻

於上任其跳死覆者雄仰者雌也此蟲有五能而不成一

技其五能能飛不能過屋能𦂁不能窮木能游不能度谷

能穴不能掩身能走不能免人

螻蛄【鹹寒有毒】利大小便通石淋除水腫甚効【但其性急虛人戒之】

此蟲自腰以前甚澁能止大小便自腰以後甚利能下

大小便

△按螻蛄能治小鳥病養鸎者如有煩則取螻蛄爲餌卽

時活有神効諺謂百舌鳥喜則螻蛄憤者是也

 

 

けら   大螻〔(たいらう)〕 土狗〔(どく)〕

     
𧎅〔(こく)〕 仙姑〔(せんこ)〕

螻蛄  【和名、介良〔(けら)〕。又、異名、多し。】

レウ゜クウ

 

蟪蛄〔(けいこ)〕【蟬と同名。】螻蟈〔(らうかく)〕【蛙と同名。】石鼠【碩鼠〔(せきそ)〕と同名。】梧鼠【飛生〔(ひせい)〕と同名。】

「本綱」、螻蛄、善く土に穴して居す。夜、則ち、外に出でて食を求む。短き翅、四足。雄は善く鳴きて飛ぶ。立夏の後、夜に至つて、則ち、鳴く。其の聲、蚯蚓(みゝづ)のごとし。雌は、腹、大に、羽、小にして、善く〔は〕飛び翔(かけ)らず。風を吸ひ、土を食ふ。喜びて燈光に就く。藥に入るには雄を用ふ。火を用ひて地を燒き、赤〔(せき)〕に〔なし〕、上に螻〔(けら)〕を置く。其の跳死〔(とびじに)〕するに任せ、覆(うつふ)く者は雄なり。仰(あふむ)く者は雌なり。此の蟲、五つの能〔(のう)〕有りて、而〔も〕一技(げい)を〔も〕成さず。其の五能は、能く飛べども屋〔(をく)〕を過〔(すぐ)〕ること能〔(あた)〕はず。能く、𦂁(のぼ)れども、木を窮〔(きはむ)〕ること能はず。能く游(をよ)げども、谷を度〔(わた)る〕こと能はず。能く穴〔(あな)〕ほれども、身を掩〔(おほ)ふ〕こと能はず。能く走れども、人〔を〕免〔(まぬか)〕ること能はず。

螻蛄【鹹、寒。毒、有り。】大小便を利し、石淋を通す。水腫を除くに甚だ効あり【但し、其の性〔(しやう)〕、急なり。虛人、之れを戒む。】

此の蟲、腰より以前、甚だ澁〔(しぶ)〕り、能く大小便を止〔(と)〕む。腰より以後は、甚だ利し、能く大小便を下〔(くだ)〕す。

△按ずるに、螻蛄、能く小鳥の病〔ひ〕を治す。鸎〔(うぐひす)〕を養ふ者、如(も)し、煩ふこと有れば、則ち、螻蛄を取〔り〕て餌と爲〔(す)〕れば、卽時に活〔(かつ)〕す。神効有り。諺に謂ふ、「百舌鳥(つぐみ)喜(よころ)べば、則ち、螻蛄憤る」とは是れなり。

 

[やぶちゃん注:直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目コオロギ上科ケラ科 Gryllotalpidae のケラ類であるが(「本草綱目」があるので、まずはここまでで、一旦、示す)、本邦産のそれはグリルロタルパ(ケラ)属ケラ Gryllotalpa orientalis である。ウィキの「ケラ」によれば、『世界中の熱帯・温帯に多くの種類が分布している。日本では』「おけら」という『俗称で呼ばれることも多い。なお「虫けら」とは虫全般を指すのであって、ここでいうケラとは関係ない』。成虫の体長は三センチメートルほどだが、大型種では五センチメートル程に達するものもいるという。『全身が褐色で、金色の短い毛がビロードのように密生する。他のキリギリス亜目昆虫と比べて触角や脚が短い。頭部と前胸部は卵型で、後胸部・腹部は前胸部より幅が狭い。尾端には触角と同じくらいの長さの尾毛が』二本ある。『成虫には翅がある。長さは種類や個体によって異なるが、おおむね前翅は短く、後翅は長い。他のコオロギ類と同様』に『オスの前翅の翅脈は複雑で、鳴くための発音器官があるが、メスの翅脈は前後に平行に伸びた単純なものである』が、『ケラ類はメスもわずかに発音できる』。『前脚は腿節と脛節が太く頑丈に発達し、さらに脛節に数本の突起があって、モグラの前足のような形をしている。この前脚で土を掻き分けて土中を進む。手の中に緩く囲うと指の間を前脚で掻き分けて逃げようとする様子が体感できる。その他に、頭部と胸部がよくまとまって楕円形の先端を構成すること、全身が筒状にまとまること、体表面に細かい毛が密生し、汚れが付きにくくなっていること等もモグラと共通する特徴である。なお、モグラは哺乳類でケラとは全く別の動物だが、前脚の形が似るのは収斂進化』(しゅうれんしんか:convergent evolution:複数の全く種としては異なる群の生物が同様の生態的地位に棲息を続けた結果、系統とは無関係に身体的特徴が非常に似通った姿に進化する現象を言う)『の例としてよく挙げられる』。属名Gryllotalpa(グリルロタルパ)は“Gryllo”が「コオロギ」、“talpa”が「モグラ」の意である。また、英名“Mole cricket”も『「モグラコオロギ」の意である』。『草原や田、畑などの土中に巣穴を掘って地中生活する。巣穴は大まかにはねぐらとなる地面に深く掘られた縦穴と、そこから伸びる、地表直下を縦横に走る餌を探すための横穴からなる。乾燥した硬い地面よりも、水を多く含んだ柔らかい泥地や湿地に多く、そうした環境の地表にはしばしば先述の横穴が盛り上がって走っているのが認められる。成虫幼虫ともに食性は雑食性で、植物の根や種子、他の小昆虫、ミミズなどさまざまな動植物質を食べる収斂進化の類例に挙がるモグラと同様、運動量、代謝量が膨大であるため、水分不足、飢餓に大変弱い。水分が得られないと一晩程度で死んでしまう』。『土をただ起こしても見つけにくいが、田植え前の代掻き(しろかき)の際などは土を起こした際に水上に浮かんでくるので見つけやすい。水上では全身の短毛が水を弾いてよく水に浮き、脚で水面を掻いてかなりの速度で泳ぐ。また、地中生活するうえに前翅が短いため飛ばないようにも見えるが、長く発達した後翅を広げてよく飛び、夜には灯火に飛来する。若齢幼虫は多くのコオロギ類同様よく跳ねるが、成長するとむしろよく走り、飛翔の予備動作として跳ねるぐらいである』。『行動可能範囲をまとめると、地中を掘り進み、水上を泳ぎ、空を飛び、地上を歩くと、様々な環境に対応しており、昆虫界のみならず、生物全体から見ても、対応範囲が非常に広い生物である』(現代の生物学上では本文と異なり、かれらの能力は高く評価されている点に注意されたい。但し、後の部分ではその能力の限界性が「おけら」の別な悪しき意味の語源である旨が書かれてもいる)。『オスは初夏によく鳴き、巣穴を共鳴室として使って鳴き声を大きく響かせる。鳴き声は「ジー……」とも「ビー……」とも聞こえる連続音。地中から聞こえるため、日本では古来「ミミズの鳴き声」と信じられてきた』。『卵は巣穴の奥に泥で繭状の容器をつくってその中に固めて産みつけ密閉し、親がそばに留まって保護する。孵化する幼虫は小さいことと翅がないこと、よく跳ねること以外は成虫とよく似ており、しばらく集団生活した後に親の巣穴を離れて分散すると成虫と同様の生活をする』。『天敵は鳥類、カエル、イタチ、タヌキ、モグラなどである。ことにムクドリはケラの多くいる環境ではケラをよく摂食していることが知られている。鳥が好んで食べることから、江戸時代は江戸城大奥で愛玩用に飼育されている小鳥の餌として、江戸近郊の農村にケラの採集と納入が課せられていた』。『また、幼虫・成虫に産卵し捕食寄生する寄生バチや、麻酔して産卵する狩蜂がいる』。『食用や民間療法の薬などに使う地域もあるが、日本では先述の江戸城大奥での愛玩動物用の飼料としての利用を除いては特に利用はされず、むしろ農作物の地下部分を食害する害虫とみなされてきた』。『所持金がない状態を「おけら」、遊泳、疾走、跳躍、飛翔、鳴き声、穴掘りなど多芸だが』、『どれも一流の能力でないとみなして器用貧乏な様を「おけらの七つ芸」、あるいは「けら芸」というなど、いずれもあまり良い意味に使われない』。『子供のおもちゃとしては、掌に握り込むと前足で指の間などをかき分けようとするのを喜ぶ、というものがある。これを両手を広げる動作に結びつけてはやし立てる遊びもあるようで』ある(私は、幼稚園の頃、父が庭のケラを採ってきて、「ター坊(私のこと)のちんちんどれくらい?」と言い、ケラに両手を広げさせて「これっくらい。」と囃したのをよく覚えている)。二十『世紀後半頃からは人間が土に触れる機会が減少し、ケラも個体数を減らした。そのためケラを目にしても何の虫かわからないという人が増えている』そうである。哀しいことだ(下線やぶちゃん)。なお、事実確認していないが、あるブログ記事に、ケラの交尾はの背に乗って行われるとあった

「土狗」中文ウィキの「螻蛄」によれば、香港での異名とする。因みに、そこではグリルロタルパ(ケラ)属グリルロタルパ・ブラキプテラGryllotalpa brachyptera を主画像に採用している。

「異名、多し」ここに出る以外にも(主に漢方の生薬名)「杜狗」「津姑」「炙鼠」「拉蛄」「仙古」などがある。

「碩鼠」「詩經」の「魏風」に出る古語。大鼠(おおねずみ)のこと。

「飛生」齧歯(ネズミ)目リス亜目リス科リス亜科 Pteromyini 族ムササビ属 Petaurista のムササビ類。

「立夏」現在のグレゴリオ暦では五月四日から七日頃。前世紀末から今世紀前半(二〇二五年)は圧倒的に五月五日である。

「其の聲、蚯蚓(みゝづ)のごとし」ここは「本草綱目」では北宋の本草家冦宗奭(そうせき)の恐らくは「本草衍義」(一一一九年成立)からの引用で、『宗奭曰、「此蟲立夏後至夜則鳴、聲如蚯蚓、「月令」「螻蟈鳴」者是矣』とある。「いやいや、そうせき先生、それは逆でげす。中国も日本も、まあ、永い間、永い間、ケラの鳴き声をミミズの鳴き声と誤認してきたんですぜ!」

「風を吸ひ、土を食ふ」ははん! だから別名が「仙姑」なんだな! これ! 無論、そんなんじゃその日のうちに死んじまいますぜ! 先に引いた通り、成虫・幼虫ともに雑食性で、『植物の根や種子、他の小昆虫、ミミズ』(鳴き声を盗られた恨み骨髄じゃん!)など、『さまざまな動植物質を食べる』んでございますぞ! 時珍センセ!(『時珍曰、「螻蛄穴土而居、有短翅四足。雄者善鳴而飛、雌者腹大羽小、不善飛翔。吸風食土、喜就燈光。入藥用雄。或云用火燒地赤、置螻於上、任其跳死、覆者雄、仰者雌也』下線太字はやぶちゃん)

「火を用ひて地を燒き、赤〔(せき)〕に〔なし〕」石の上か。でないと灼熱しても赤くはならんぜよ。

「屋」家屋。

「能く𦂁(のぼ)れども」東洋文庫版訳は『よく這うのに』とするが、これはおかしい。採らない。但し、調べた限りでは「𦂁」の字に「のぼる」とか「はう」の意はなく、佩玉(はいぎょく)などに通す組紐、或いは遺体を覆う衣服の意である。不審。

「人〔を〕免〔(まぬか)〕る」捕えようとする人間から逃げる。

「石淋」以前に注したが、「せきりん」は尿路結石症を伴う排尿が困難になる障害を指す。「水腫」ここは広義の「浮腫(むく)み」のこと。

「急」急激な効果を発生させること。

「虛人」漢方で人の体質を二分(あるいは三分)する法の一つである、「虚証」のこと。栄養状態が悪く、体型は水太り或いは真逆の痩せ型を呈し、声が弱々しく、皮膚に艶(つや)がなく、筋肉も弾力性を失い(特に腹筋が薄く緊張に欠ける)、食事のペースも鈍(のろ)く、過食すると胃もたれを生じ易く、冷たい物を食べると腹痛や下痢を起こ易い。暑さや寒さに弱いことが大きな虚証の特徴で、夏バテを起こし、寝汗を多くかく人が多い。因みに反対語は「実証」(筋肉質の堅固な体格で消化器系も健やか、一日でも便秘をすると不快に感じ寒暑をあまり感じず、通常は寝汗をかかない)で、その実証と虚証の中間相のバランスのとれた状態を「中間証」と言うのだそうである(信頼出来る漢方サイトの解説を参照した)。

「澁り」これは「現象がすらすらと進行しない・滞る」の意。なお、激しい下痢と勘違いしている人が多いので一言言っておくと、「渋り腹(しぶりばら)」 というのは、「裏急後重」とか「結痢」とも称し、下痢の一種ではあるが、激しい便意を感じるものの、殆んど大便が出ない症状を指す

「鸎」鶯の異体字。

「百舌鳥(つぐみ)喜(よころ)べば、則ち、螻蛄憤る」「日本国語大辞典」の「つぐみ」の項に「つぐみ喜べば螻蛄腹立てる」という諺が載るが、もずには載らない。それによれば、『鶫を捕えるには螻蛄をえさとして繋いでおく』『ことから)一方が喜べば一方が怒るというように両者の利害が反すること』と記し、用例として「譬喩尽」(たとえづくし:諺(ことわざ)集で全八巻。松葉軒東井(しょうようけんとうせい)の編に成り、天明七(一七八七)年に成立であるから、江戸中期には既に諺として知られていたと考えてよかろう)が挙げられてある。先に引用したウィキにも『天敵は鳥類』と筆頭に挙げており、殊にムクドリ(スズメ目ムクドリ科ムクドリ属ムクドリ Sturnus cineraceus)は『ケラの多くいる環境ではケラをよく摂食していることが知られている。鳥が好んで食べることから、江戸時代は江戸城大奥で愛玩用に飼育されている小鳥の餌として、江戸近郊の農村にケラの採集と納入が課せられていた』とある。問題は「百舌鳥(つぐみ)」のルビである。「百舌鳥」は普通は「もず」と読み、

スズメ目スズメ亜目モズ科モズ属モズ Lanius bucephalus

で、一方、「つぐみ」(普通は「鶫」)は、

スズメ目ツグミ科ツグミ属ツグミ Turdus eunomus

であって、モズには特徴的なアイ・ラインがあり、「百舌の速贄(はやにえ)」で知られる通り、小さな猛禽と言え、モズは自分よりがたいの大きなツグミを摂餌生物として襲うことさえもあるのであって、一緒くたや誤認のしようがないと私は思う。但し、両種ともに雑食性で昆虫類を好むから、ケラも格好の摂餌生物ではある。私はしかし「百舌鳥」或いは「百舌」と書いて「つぐみ」と読ませる例を知らぬ。或いはそんな例があるのであろうか? 識者の御教授を乞うが、前の「日本国語大辞典」の記載から見て、これは良安の漢字表記の誤りと考えた方がよいように思われる。]

 

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