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2017/08/31

北越奇談 巻之五 怪談 其四(埋蔵金伝説)

 

    其四

 

 「漆千杯・朱千盃・黄金(わうごん)千兩、朝日映夕日暉有梨樹下(あさひ、えいじ、ゆふひ、かがやく、りじゆのしたに、あり)」、如ㇾ此(かくのごとき)古碑、他邦は知らず、が國、已に三ケ所あり。

 其一 長岡東山下、釜ケ島村(かまがしまむら)、觀音。

 其二 新發田(しばた)より南、牧山藥師(まきやまやくし)。

 其三 村上關谷(せきたに)、桂村なり。

 其里俗、頻りに此古碑をつのりて、

「昔、長者某(それがし)、黄金等(とう)を土中(どちう)に埋(うづ)め、此碑を立(たつ)。」

と。

「今、其所在を失(しつ)して、尋ね求(もとむ)るに由なし。」

と云へり。

 是を見聞(みきく)人、羨み思はざるはあらじ。

 按ずるに、中古、如何なる好事の人か、如ㇾ此(かくのごとき)戲作(ぎさく)をなして、衆人の惑(まど)ひを起さしめけん。是、必ず、禪家の僧のなす所なるべし。只、三ケ所の中(うち)、其一所は碑を建(たて)たること、實(じつ)にして、其余(そのよ)は、下愚の人、羨み思ふが故に、

「此事、我郷にもありし。」

なんど云ひ觸らしたるを、誤まり傳(つたふ)るなるべし。

 密(ひそか)に此句を考(かんがふ)るに、漆は黑(くろき)が故に北となし、朱は赤を以つて南となし、金(かね)は黄(き)なるを以(もつて)中央とし、朝日は東にして、夕日は西なり、梨樹は和訓して「なし」と云ふ。是、即(すなはち)、「東西南北中央ともに一物(いちもつ)無し」と云ふ。義なるべし。誠に可一笑(いつせうすべし)。これを以つて是を見れば、黄金は實(じつ)に得難きものか。

 凡(およそ)此三話、怪事にもあらざれど、が國民間(かん)、下愚の輩(ともがら)、他邦の人に對して、是等の話を以つて我國を誇(ほこら)んとす。深く恥べきの至(いたり)なり。只、他邦の人も下愚は信ずべし。中智は謗(そし)るべし。上智は心裡(しんり)に笑(わらひ)て罷(やま)ん。

 

[やぶちゃん注:これは要するに、全国各地に伝わるところの怪しげな埋蔵金伝説の一つであり、似たような符牒はゴロゴロある(漆や朱(辰砂(しんしゃ):硫化水銀。古えより高貴な赤色顔料や漢方薬原料として珍重されてきた)は実際のそれではなく、この「漆千杯・朱千盃」で高価な財宝の譬えである)。例えば、群馬の桐生氏の埋蔵金伝説では「朝日さす夕日耀く雀のみよとりのところ黄金千杯朱千杯あり」(に従う)、石川県の春日野のそれでは元旦に鶏が「漆千杯、塩千杯、黄金の鶏が七番」と鳴くのだと言い(に従う。ここの頭には新潟県の埋蔵金伝承地が列挙されてある。但し、新潟県に関わるこの暗号歌は確認出来なかった)、長野県竹山砦のそれは「朝日さす夕日輝くその下に黄金千両朱千杯」(同前)とあり、静岡県旧金山繩地のそれは「朝日さし夕日輝くゆずり葉の下に黄金千杯数千杯」(同前)、東北地方もゴマンとある()。崑崙ではないが、私はこの手の話に全く興味がないので食指が動かないので、これ以上は注さない。悪しからず。ともかくも、崑崙先生、越後ばかりじゃござんせんよ、ニッポン全国そこたらじゅうにござんすぜ!

「長岡東山下、釜ケ島村(かまがしまむら)、觀音」現在の新潟県長岡市釜ケ島か。(グーグル・マップ・データ)。「觀音」とする場所或いは寺は不詳。

「新發田(しばた)より南、牧山藥師(まきやまやくし)」不詳。因みに、現在の新発田市街の南に「真木山」という山ならばある。(グーグル・マップ・データ)。

「村上關谷(せきたに)、桂村」これは現在の新潟県岩船郡関川村桂である。(グーグル・マップ・データ)。

「つのりて」調子に乗って言いつのって。

「禪家の僧のなす所なるべし」後の崑崙の解読からは確かに「無一物無尽蔵」のそれっぽい感じはするね。

「三ケ所の中(うち)、其一所は碑を建(たて)たること、實(じつ)にして」三箇所のどこかぐらい、崑崙先生、一言、書いといて下さいよ! そうすりゃ、もうすこしディグできるのに!

「此事、我郷にもありし」直接体験過去の「き」であることに注意。確かにあったのを私は知っているが、惜しいかな、今は失われてしまった、とうそぶいているのである。

「漆は黑(くろき)が故に北となし……」以下は陰陽五行説の色と方位の組み合わせに基づく。

「此三話」これは「其二」からこの埋蔵金伝説までの三話としか読めない。即ち、「其二」のお化け井守も巨大泥鰌も、「其三」の光り蚯蚓も、蚯蚓が鳴くのも、田螺が鳴くのも、妖魚「河鹿」の話も、皆、調べて見れば、他愛もない普通の生き物を大袈裟に言ったり、誤認したりした馬鹿話に過ぎず、この埋蔵金話も採るに足らないガセ話だと一笑一蹴しているわけである。既に「怪談」は二巻目に入ってはいるものの、実は鬼神は信じるが、崑崙先生、なかなか、伝聞の怪談には眉に唾つけるタイプである。都市伝説(アーバン・レジェンド)にはそうそう騙されない人物と見た。だから、好き!!!]

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