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2017/08/19

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 竈馬(いとど)


Itodo

いとど  竈雞

いとじ

竈馬

     【古云 伊止止

      今云 伊止之】

ツアゥ マアヽ

 

本綱其狀如促織稍大脚長好穴竃旁俗言竈有竈馬足

食之兆也

△按竃雞似促織而小色亦淡身團而足長秋夜鳴聲似

 蚯蚓而細小最寂寥

 

 

いとど  竈雞〔(そうけい)〕

いとじ

竈馬

     【古へ、「伊止止〔(いとど)〕」と云ひ、今に「伊止之〔(いとじ)〕」と云ふ。】

ツアゥ マアヽ

 

「本綱」、其の狀〔(かたち)〕、促織〔(こほろぎ)〕のごとく、稍(やや)、大〔(おほき)〕に〔して〕、脚、長し。好〔(このみ)〕て竃〔(かまど)〕の旁〔(かたはら)〕に穴〔(あな)す〕。俗の言〔(いは)〕く、「竈に竈馬〔(いとじ)〕有れば、食を足(た)すの兆(きざし)なり」〔と〕。

△按ずるに、竃雞〔(いとじ)〕は促織(こうろぎ)に似て、而〔(しか)〕も小さく、色、亦、淡(うす)し。身、團〔(まろ)〕くして、足、長し。秋の夜、鳴〔く〕聲、蚯蚓(みゝづ)に似て而〔(しか)〕も細〔く〕小〔さく〕、最も寂寥(さび)し。

 

[やぶちゃん注:直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目カマドウマ上科カマドウマ科カマドウマ亜科カマドウマ属カマドウマ亜種カマドウマ Diestrammena apicalis 或いはその近縁種或いは亜種。ウィキの「カマドウマ」竈馬)によれば、形状的には同じ剣弁(キリギリス)亜目 Ensifera のキリギリス(次項)・コオロギ(次々項)・ウマオイ(キリギリス科ウマオイ属ハヤシノウマオイ Hexacentrus japonicus・ハタケノウマオイ Hexacentrus unicolor)にやや似た部分はあるものの、『成虫でも翅を』持たないために翅による飛翔は出来ず、専ら、『長い後脚で跳躍する。その跳躍力は非常に強く、飼育器の壁などに自ら激突死してしまうほどである。姿や体色、飛び跳ねるさまが馬を連想させ、古い日本家屋では竈の周辺などによく見られたことからこの名前が付いた。俗称として「便所コオロギ」などと呼ばれることがある。日本列島及び朝鮮半島の一部に分布するが、地域によっては体の色や交尾器の特徴などが微妙に変化しているため、いくつかの亜種に区別されている』。『カマドウマという和名は、厳密には北海道から九州の地域と韓国に分布する原名亜種(複数ある亜種のうち最初に学名が付けられた亜種)のみを指し、他の亜種には別の和名が付いている。しかし』、『カマドウマ科の昆虫は互いに似たものが多く、日本産のカマドウマ科だけでも』三亜科七十『種以上が知られ、専門家以外には正確な同定は難しい。したがって、明確な種別の認識なしにこれらカマドウマ科の昆虫を一まとめにカマドウマと言うこともある。この場合は「カマドウマ類」の意か、別種を混同しているかのどちらかである』原名亜種のカマドウマの体長はで約一・八~二・一センチメートル、で一・二~二・三センチメートルほどで、は『腹部後端に長い産卵管があり、この産卵管を含めると』二・一~三・三センチメートル『ほどになる。他のカマドウマ科の種と同様に、成虫でも翅をもたない。体はやや側扁し(左右に平たく)、横から見ると背中全体が高いアーチを描いた体型をしている。背面から側面にかけては栗色で、腹面や脚の付け根、脛節などは淡色となる。各部には多少の濃淡はあるが、目立つ斑紋はない。幼虫も小型である以外は成虫とほぼ同様の姿をしているが、胸部が光沢に乏しいことや、』第一跗節から第三跗節(ふせつ:節足動物の脚の最終節。脛節の下にあり、昆虫では通常は数節以内に分かれていて(脛節に近い方を第一跗節と呼び、最終跗節の先には小さな爪を有する)の『下面に多数の剛毛があることなどで成虫と区別できる』。『顔は前から見ると下方に細まった卵型で、口付近には』一『対の長い小顎鬚(こあごひげ)がある。体長の』三『倍以上ある触角で、暗所でも体の周囲全体を探れる。』三『対ある脚のうち後脚は特別に発達して跳躍に適した形になっており、腿節は体長とほぼ同じ長さがあり、脛節は体長よりも長い』。『主に身を隠せる閉所や狭所、暗所、あるいは湿度の高い場所などを好むため、木のウロ、根の間、洞穴などに生息し、しばしば人家その他の建物内にも入る。また時には海岸の岩の割れ目に生息することもある。古墳の石室内にも群生し、しばしば見学者を驚かせる。夜行性のため日中はこれらの隠蔽的な空所にいるが、夜間は広い場所を歩き回って餌を探す。夜に森林内を歩けば、この仲間がよく活動しているのを見ることができる(特に夏季)。また後述の通り樹液にも集まるため、カブトムシ等の採集のために設置したトラップに大量に集まるということも珍しくない』。『極めて広範な雑食性。野生下ではおもに小昆虫やその死骸、腐果、樹液、落ち葉などを食べている。飼育下ではおおよそ人間が口にする物なら何でも食べ、山岳部では好んで羊の生き血をすする』(これは知らなかった。驚き!)。『動物質、植物質、生き餌、死に餌を問わない。野外でも共食いがしばしば発生しているという』。『繁殖は不規則で、常に卵、成虫、様々な齢の幼虫が同時期に見られる』。『天敵はヤモリ』、『ネズミ、カエル、各種鳥類、寄生蜂、ゲジ、カマキリ、アシダカグモ等である』。『カマドウマ科にはよく似たものが多いため正確な同定はかなり難しく、単なる絵合わせによって正しく同定をすることは不可能で、脚の棘や交尾器の形態などの詳細で正確な観察に基づいて同定しなければならず、それほど簡単ではない。特に幼虫の場合は専門家でない限り正確な同定はほぼ不可能と考えてよい』。但し、『ただし家屋や納屋などに見られるカマドウマ科』Rhaphidophoridae『のうち、胴体や脚に濃淡の斑紋が明らかなものは少なくともカマドウマではなく、多くは』Tachycines属クラズミウママ Tachycines asynamorus)かカマドウマ属マダラカマドウマDiestrammena japonica『である。また一つの地域に生息する種は限られるので、産地や環境からある程度の種に絞り込むことも可能である』。『竈馬という風流な名』を持ち、『特に大きな害をなさないこの虫も、今日では』「便所蟋蟀(べんじょこおろぎ)」『というイメージの良くない名とともに不快害虫として忌み嫌われることも少なくない。かつての日本家屋は密閉度が低かったため、カマドウマが周辺の森林などから侵入し、多くの日陰や空隙と共に食料も提供してくれる土間の隅などに住み着くことも多かった。そのため家人にとっては馴染みの日常的な存在であったが、自然が住宅から遠ざかり家屋の構造や住環境も変化した結果、カマドウマ類が生息する家も少なくなった。更に殺虫剤の発達と相俟って、人間に発見されれば即座に殺傷駆逐の対象とされることも多くなり、駆除対象以外での日本人とのかかわりが少なくなっている』とある。そういえば、私も小さな頃は勝手口の風呂釜の横で何時も見かけたのに、気がついてみると、もう何十年も見ていない。ちょっぴり、淋しい気がした(但し、先にあるように私が少年の頃にしばしば出逢ったのはその色から、カマドウマではなく、クラズミウママかマダラカマドウマであったのだと気がついた)。私はあの頃、「えびばった」と呼んでいたのをふっと思い出した(その頃、芭蕉の「海士(あま)の屋は小海老にまじるいとどかな」の句は知らなかった)が、彼らは他に本文でも吉兆とするように、「カミノツカイ」「ダイコクノヒゲ」「イドカミサマ」「エビスノウマ」「フクコオロギ」や、よく跳ねることから兎に譬えて「ウサンコ」「ウサギムシ」「カベウサギ」、同じく猿で「オサルコオロギ」「サルッチ」、猫で「ネコギス」「ハネネコ」という別名もあるようである。

 

「竈雞〔(そうけい)〕」「雞」は「鷄」(にわとり)に同じい。よく飛び跳ねるところの比喩であろうが、カマドウマ類の中には脚部が先端にゆくに従って、有意に赤く見えるものがおり、これは私には鷄の鶏冠(とさか)の色を連想させるし、の腹部末端の尖って突き上がる産卵管も赤く、これは私にはやはり鶏の蹴爪(けづめ)のようにも見えることを言い添えておく。

「促織〔(こほろぎ)〕」直翅目剣弁亜目コオロギ上科 Grylloidea のコロオギ類。

「竈馬〔(いとじ)〕」「かまどむま」と読みを振りたくなったが、先の今の呼称に従った。後の「竃雞〔(いとじ)〕」も同前。

「食を足(た)すの兆(きざし)なり」食物に不足して困ることがないことの吉兆とする。先の異名の「神の使い」「大黒の髭」(長い触角を喩えたのであろう)「恵比寿様」(大黒も恵比寿も福の神である)「福蟋蟀」もそうした系列のものと読める。

「秋の夜、鳴〔く〕聲」無翅であるカマドウマ類は鳴くことは出来ないから、これは他のバッタ類の鳴き声の誤認である。以下で「蚯蚓(みゝづ)に似て而も細く小さく、最も寂寥(さび)し」とあるところからは、環形動物門貧毛綱 Oligochaeta のミミズ類の鳴き声と誤認された、直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目コオロギ上科ケラ科 Gryllotalpidae ケラ(螻蛄)類の鳴き声と限定して考えてもよいとも思われる。]

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