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2017/08/22

北越奇談 巻之三 玉石 其十六(奇石数種)

 

    其十六

 

 頸城池舟(くびきいけふね)、上原(うえはら)氏(うぢ)、音穰石(おんじやうせき)と云へる物を藏(おさ)む。その形、河貝子(びんらうしかひ)のごとく、長八寸、又、貝の化石にもあらず。自然に孔(あな)ありて、是を吹(ふく)に、其聲、淸(すめ)る篳篥(ひちりき)のごとく高く鳴渡(なりわた)りて、數里(すうり)に聞(きこ)ゆ。以(もつて)、樂器となすに堪(たえ)たり。其石、皴文(しゆんもん)なく、形、麁(そ)にして雅なり。同(おなじく)、宮口村(みやぐちむら)、池田氏、胡瓜石(こくはせき)を、藏む。外(ほか)、堅實、麁皮(そひ)、黄赤色(くはうせきしよく)、これを兩片なせば、内、自然に肉白く、仁(にん)ありて、眞(しん)のごとし。同、深町(ふかまち)、田中氏、木賊石(せきぞくせき)なるを藏む。已に圖に表はす。同、梶村(かぢむら)、田中氏、大勾玉(おほまがだま)三品(ひん)を藏む。其圖、石鏃の部に出す。同、高田塩町(たかたしほまち)、大眼寺(だいがんじ)に牛額珠(ぎうがくしゆ)あり。丸くして、少し、平(ひら)みあり。灰色の毛、濃(こまやか)に包みたるものゝごとし。倉石氏(くらいしうぢ)は北越の奇石家にして、藏す所、數百品(すひやくひん)、一々(いちいち)擧ぐるに遑(いとま)あらず。只、予が國の産物追(おつ)て考(かんがへ)、後編に出(いだ)す。同(おなじく)、糸魚川(いとゐがは)上出村(かみでむら)神社、その神體、只、白玉一双、あり。誰人(たれびと)の納めたると云ふことを知らず。

 

Onjyousekigousei

 

[やぶちゃん注:この最初の「音穰石」の図が、後(「其十三」の後)に出るが、二頁に亙っていて分断されてしまっているので合成した上、周囲の枠や続く鍾乳石(「其十九」で後述される)などをトリミングして本文の後に示した。私の仕儀の割には、かなり上手く合成出来た部類である。

「頸城池舟(くびきいけふね)」現在の新潟県上越市牧区池舟か。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「上原(うえはら)氏」電話帳でも現在の池舟地区には上原姓の方が多い。或いは現在もこの石がこの上原姓のどなたかの家に伝わっているかも知れぬ。

「音穰石(おんじやうせき)」「穰」は「豊穣」のそれで、「穀物が豊かに稔る」・「豊か」の意であるから、音を共鳴させてよく響かせる石の謂いであろう。或いはこれは鍾乳石の一種か? 鍾乳石の成長したものには鍾乳管(ソーダ・ストローあるいは単にストロー)と呼ばれる中空状の部分(ここで言う孔)が生ずるからである。

「河貝子(びんらうしかひ)」腹足綱吸腔目カニモリガイ上科カワニナ科 Pleuroceridae に属するカワニナ(河螺)類(模式種はカワニナ属カワニナ Semisulcospira libertina)のこと。

「八寸」二十四・二四センチメートル。

「貝の化石にもあらず。自然に孔(あな)あり」かくも断言している以上、自然石らしい。

「皴文(しゆんもん)」「皴」は「皺」(しわ)に同じい。普通、多くの石の表面に生ずるはずの筋目・節理。

「麁(そ)」通常は「粗く雑な様子・大まかなこと」「賤しく粗末なこと」の意であるが、ここは「素朴なさま」ととっておく。

「宮口村(みやぐちむら)」上越市牧区宮口。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「池田氏」やはり現在の電話帳でも三氏を認める。

「胡瓜石(こくはせき)」胡瓜(ウリ目ウリ科キュウリ属キュウリ Cucumis sativus)そっくりな石らしい。

「麁皮(そひ)」粗い表面。

「これを兩片なせば」二つに折ってあって。

「仁(にん)」種(たね)。それが胡瓜と全く同じ位置に並んであるから、まさに本物の胡瓜が石となったように見える(「眞(しん)のごとし」)というのである。

「深町(ふかまち)」不詳。

「木賊石(せきぞくせき)なるを藏む。已に圖に表はす」本「巻之三 玉石」の冒頭これ。そこでは「とくさいし」と訓じている。私はウミトサカ(八放珊瑚)亜綱ヤギ(海楊)目角軸(全軸)亜目トクササンゴ科トクササンゴ属 Ceratoisis のトクササンゴ類に同定した。

「梶村(かぢむら)」新潟県上越市吉川区梶か。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「大勾玉(おほまがだま)三品(ひん)を藏む。其圖、石鏃の部に出す」「石鏃の部」は誤りで、「其九」(白玉環・勾玉・管玉)のこれである。

「高田塩町(たかたしほまち)」不詳。

「大眼寺(だいがんじ)」新潟県上越市寺町(通称で高田寺町。(グーグル・マップ・データ))に、現在、浄土宗五台山常住院大嚴寺(だいごんじ)、及び、曹洞宗高陽山太岩寺(たいがんじ)ならば存在する。

「牛額珠(ぎうがくしゆ)」不詳。形状も想起出来ない。識者の御教授を乞う。因みに、ナデシコ目タデ科タデ属ミゾソバ Polygonum thunbergii ィキの「ミゾソバによれば、『葉は互生し、形が牛の額にも見えることからウシノヒタイ(牛の額)と呼ばれることもある』とある。この葉の形(確かに牛の頭部に似ている)かと思ったが、「丸くして」とあるから違う。

「倉石氏(くらいしうぢ)は北越の奇石家」不詳。識者の御教授を乞う。

「後編」冒頭の注で述べたが、結局、この「北越奇談」後編なるものは出版されず、その草稿の有無も判明していない。まことに惜しい!

「糸魚川(いとゐがは)上出村(かみでむら)神社」現在の新潟県糸魚川市上出にある神明神社か。(グーグル・マップ・データ)。なお、一般には天照大神を祀る神社を神明神社と呼ぶが、太陽神である彼女を白玉で象徴することはおかしくはない。]

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