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2017/08/13

北越奇談 巻之三 玉石 其二(水昌石)

 

    其二

 

 蒲原郡(かんばらごほり)河内谷(かはちだに)の奧、陽國寺(やうこくじ)より東南一里、山谷(さんこく)の間(あいだ)、流(ながれ)にしたがつて尋ね求(もとむ)るに、水昌石(すいせうせき)、甚(はなはだ)、夛(おほ)し。紫瑛石(しえいせき)・白(はく)瑛石、また、夛(おほ)し。此谷より、樵夫、日々、薪(たきゞ)を負(おふ)て五泉(ごせん)の市に賣(うる)。寛政の頃ならん、一日、樵夫、滑らかなる石の、大斗(と)のごとくなるを擔(にな)ひ來りて、市(いち)に賣(うら)んことを請ふ。一商家(いつしようか)某(それがし)なる者、其石の靑白色(せいはくしよく)に透き通り、しかも、水を包めるがごとくなるを以(もつて)、遂に樵夫に米五斗(と)を與へて求ㇾ之(これをもとむ)。曽(かつ)て、其奇石(きせき)なることを知ると雖も、又、如何(いかん)ともすること、なし。試に鐵槌を以つて、石頭(せきとう)を打(うつ)て是に穴を穿(うがた)んとするに、誤(あやまつ)て両断となす。忽(たちまち)、石中(せきちう)より淸水(せいすい)、傾出(かたむけいで)たり。これを見るに、中(うち)、自然に空所ありて、皆、水昌(すいせう)なり。其奇觀、絶品、云ふべからず。即(すなはち)、商人(しやうじん)、これを擔ふて東武賣る。見る人、惜しまずと云ふことなし。一日、雅客(がかく)來りて、是を十五金に求む。即(すなはち)、客(かく)の曰(いはく)、

「此石、兩斷とならずんば、正(まさ)に直(あたひ)千金なるべし。」

と云へり。

 

[やぶちゃん注:話の中心となる石は高級装飾宝石としてしばしば見る、所謂、「晶洞(しょうどう)」を持った石で、内部の結晶体だけでなく、その外側も半透明の美しいものである。晶洞とは堆積岩や火成岩玄武岩の内部に形成された空洞を指し、鉱山などでは俗称で「がま」などとも称される。ギリシア語で「大地に似た」を意味する「ジオード」が海外での一般的な呼び名で、内部には熱水や地下水のミネラル分によって自形結晶が形成される(以上はウィキの「晶洞」に拠った)が、外見は汚いごつごつした岩の塊りであることも多い。この場合は、その中の空洞に古代水を封入したレア物であったわけである。この水に魚が生きて住んでいる(無論、そんなことはまずあり得ないのであるが)ものは「魚石」などと称し、愛石家の幻の奇石とされる。この話はそこまでぶっ飛んではいないから、事実であったと考えて何ら、問題はない。

「蒲原郡(かんばらごほり)河内谷(かはちだに)の奧、陽國寺(やうこくじ)」これも先の「無縫塔」で注した現在の新潟県五泉市川内(かわち)にある曹洞宗雲栄山永谷寺(ようこくじ)の誤りである。ここ(グーグル・マップ・データ)。崑崙はどうも固有名詞の表記に注意力を欠くきらいが有意にある。

「水昌石(すいせうせき)」ここは水晶というより、結晶体を形成する広汎な鉱石・玉石類の総称と考えてよい。

「紫瑛石(しえいせき)」「瑛」は「玉の光・水晶などの透明な美石」の意であるから、これは「紫水晶(アメジスト:amethyst)か。現在の本邦では宮城県白石市の雨塚山や鳥取県で産出されるという。因みに、私の三女アリスの血統書上の本当の名は「Amethyst」である(先代の次女のアリスは正真正銘「Alice」であった。)。

「白(はく)瑛石」二酸化ケイ素SiOが結晶した石英(quartz:クォーツ)。六角柱状の美しい結晶を成すことが多いが、その中でも特に無色透明なものを水晶(rock crystal:ロック・クリスタル)と呼び、古くから「玻璃(はり)」と称されて珍重されてきた。

「五泉(ごせん)の市」「市」は後でルビが振られるように「いち」。五泉の市街は永谷寺の西北三キロ強。

「寛政」一七八九年から一八〇一年。

「東武」江戸の異称。

「雅客(がかく)」風流人。

「十五金」野島出版脚注では、『金十五両、一両を今の二万円とすれば三十万円に相当する』とするが、江戸末期であるから、もう少し安く(一万円未満)見積もってもいいかもしれぬ。

「千金」江戸末期の一両を最低額で現在の三千円とする換算でも三百万円、前の野島出版脚注の換算値を採用すると、二千万円相当にもなる。]

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