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2017/09/17

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 吉丁蟲(たまむし)


Tamamusi_2

たまむし 【俗云玉蟲】

吉丁蟲

 

キッテイン チヨン

 

本綱甲蟲也背正緑有翅在甲下人取帶之令人喜好相

愛媚藥也

△按俗云玉蟲是也江州及城州山崎攝州有馬多有之

 婦女納鏡奩以爲媚藥用白粉汞粉藏之歷年不腐雄

 者全體正綠光色縱有二紅線腹亦帶赤色潤澤可愛

 長一寸二三分頗似蟬形而扁小頭其頸有切界露眼

 六足也雌者長一寸許全體黒光澤帶金色縱有同色

 筋脈數行蓋雄者多雌少

    【新六】花咲は露よりけなる玉虫のからを留めて筐とやみん 知家

 

 

たまむし 【俗、「玉蟲」と云ふ。】

吉丁蟲

 

キッテイン チヨン

 

「本綱」、甲蟲なり。背、正緑。翅、有りて、甲の下に在り。人、取〔りて〕之れを帶〔(お)〕ぶ。人をして好相〔(がうさう)〕を喜〔ばし〕、媚藥(こび〔のくすり〕)を愛せしむ。

△按ずるに、俗に云ふ「玉蟲」、是れなり。江州及び城州の山崎・攝州の有馬に、多く之れ有り。婦女、鏡の奩(いへ)に納(い)れて、以つて媚藥と爲す。白粉〔(おしろひ)〕・汞粉(はらや)を用ひて之れを藏(をさ)むれば、年を歷て〔も〕腐ちず。雄は、全體、正綠色に光り、縱(たつ)に二〔(ふたつ)〕の紅線(べにすぢ)有り。腹にも亦、赤色を帶びて、潤澤、愛しつべし。長さ一寸二、三分。頗〔(すこぶ)〕る蟬の形に似て、扁〔(ひらた)〕く、小さき頭〔(かしら)〕、其の頸(くびすぢ)に切界(きれと)有り。露(あらは)なる眼〔(まなこ)〕、六足なり。雌は長さ一寸許り、全體、黒くして、光澤、金(こがね)色を帶ぶ、縱(たつ)に同色の筋脈〔(すぢ)〕數行〔(すうぎやう)〕有り。蓋し、雄は多く、雌は少なし。

【「新六」】はかなさは露よりけなる玉虫のからを留めて筐〔(かたみ)〕とやみん 知家

[やぶちゃん注:「雄は、全體、正綠色に光り、」の部分は原典は「雄者全-體正--色」となっているが、これでは読めないので、敢えて書く読み変えてみた。因みに、東洋文庫の訳は『雄は全体に正緑色で光り、』となっており、私の読み変えたものと同じように訓読したものと思われる。また、最後の和歌は「新撰和歌六帖」(一首の作者である藤原知家が定家の没後に定家の次男藤原為家や家良・光俊らとともに寛元元(一二四三)年に詠んだもの。全部で二千六百三十五首に昇り、所収する知家の詠歌は五百を超える)の「第六」の「虫」にあるが、調べてみると、初句が「花咲は」ではなく、「はかなさは」であるので、特異的に訂した。]

 

[やぶちゃん注:鞘翅(コウチュウ)目多食(カブトムシ)亜目 Elateriformia 下目タマムシ上科タマムシ科 Buprestidae に属する種群を広く指すが、中でも、美しい外見を持つことから古来より珍重されてきたのはタマムシ(ヤマトタマムシ)Chrysochroa fulgidissima である。ウィキの「タマムシによれば、『細長い米型の甲虫で、全体に緑色の金属光沢があり、背中に虹のような赤と緑の縦じまが入る。天敵である鳥は、「色が変わる物」を怖がる性質があるため、この虫が持つ金属光沢は鳥を寄せ付けない』とあり、『上翅と下翅のサイズ、面積が大きく違わず、翅を閉じる際には下翅を折りたたむことなく上翅の下に収納する。また、下翅を展開する必要がない分だけ、翅を開いてから飛び立つまでに要する時間も短くて済む』とある。また、媚薬の話はないものの、『この種の上翅(鞘翅)は構造色によって金属光沢を発しているため、死後も色あせず、装身具に加工されたり、法隆寺宝物「玉虫厨子」の装飾として使われたりしている。加工の際には保存性を高める為にレジン』(樹脂)『に包む事もある』とあり、また、『日本には「タマムシを箪笥に入れておくと着物が増える」という俗信がある』と記す。

 なお、次の
「金龜子(こがねむし)」の冒頭注の終りも! 必ず! お読みかれし!! 中には大いにびっくりする人もいるだろう。

……玉虫厨子……ああ……小学校の教科書で読んだ「玉虫の厨子の物語」(平塚武二作)……主人公は「若麻呂」だった……また、読みたくなったなぁ……

 

「好相〔(がうさう)〕」相好(そうごう)に同じい。顔つき・表情。但し、ここは特に男女の戯れを指すようである。

「媚藥(こび〔のくすり〕)」原典では「こび」が「媚」の横に打たれているのでかく読むしかなかったが、まあ、意味では「媚薬(びやく)」ととって良かろう。特にこの場合は、具体的な交合するための精力剤を指しているようである。

「江州」近江国。

「城州」山城国。

「山崎」現在の京都府乙訓(おとくに)郡大山崎町(おおやまざきちょう)附近。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「攝」摂津国。

「有馬」有馬温泉のある現在の兵庫県神戸市北区有馬町附近。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「奩(いへ)」鏡を仕舞い置く(入れて蓋をする)匣(こばこ)・容器。元「奩」(音「レン」)は漢代の化粧用具の入れ物(青銅製或いは漆器)で身と蓋とから成り、方形や円形を呈する。この中に鏡や小さな香合に詰めた白粉・紅・刷毛・櫛などを入れた。

「以つて媚藥と爲す」これは先の精力剤ではなく、呪的なそれで、その虹色の光りで以って、女性の顔に男性を誘う媚(こび)、一種のオーラを与えると信じられたのであろう。

「汞粉(はらや)」おしろいの一種で、水銀に明礬・塩・にがり等を加えて加熱して得られる昇華物(塩化第一水銀の白色粉末)。十三世紀頃から、主に伊勢国飯南郡射和村で生産されたため、「伊勢白粉(いせおしろい)」の通称が知られた。白粉以外にも利尿剤・下剤或いは梅毒の治療薬としても用いられた。有毒な水銀ならば、殺菌作用はあるから、玉虫の翅が「年を歷ても腐ち」ないというのはあり得る話ではある。

「縱(たつ)」「縦(たて)」に同じい。

「潤澤」虹色の潤ったような輝きを指す。

「一寸二、三分」三センチ七ミリから約四センチメートル。

「蟬の形に似て」私は全然、似ていると思わない。分類学上も半翅(カメムシ)目頸吻亜目セミ型下目セミ上科 Cicadoidea で遙かに縁遠い。

「切界(きれと)」読みの「きれと」は「切戸」で有意な溝状の切れ目のこと。

「露(あらは)なる眼〔(まなこ)〕」眼が飛び出していることを指す。

「筋脈〔(すぢ)〕」私は敢えて二字に「すぢ」と当て訓した。東洋文庫訳は『きんすじ』とするが、その重箱読みは気持ち悪い。私はしたくない。

「雄は多く、雌は少なし」んなこたぁ、ねえ。♂♀が判別し難いだけだべ。判別法は腹部先板の形状の違いで、は交尾器を出すために、先の表面が腹側に凹んでいる

「知家」藤原知家(寿永元(一一八二)年~正嘉二(一二五八)年)は公家・歌人。藤原北家魚名流。正三位・中宮亮。「大宮三位入道」などとも呼ばれた。新三十六歌仙の一人に選ばれている。藤原定家に師事したが、死後、「新撰和歌六帖」でともに詠唱した、定家の後を継いだ藤原為家と不仲となり、反御子左(みこひだり)派の立場に立つようになった。藤原為家の判詞に反論して「蓮性(れんしょう)陳状」(蓮性は彼の法号)を著わした。勅撰集には実に百二十首が入る。]

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