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2017/09/19

和漢三才圖會卷第五十三 蟲部 䖟(あぶ)


Abu

あぶ   蝱【同】 魂常

【音萠】

マン

 

本綱從木葉中出卷葉如子形圓著葉上破之初出如白

蛆漸大子化折破便飛卽能牛馬血謂之木

【蜚飛也】 小於木如蜜蜂腹凹褊微黃綠色能飛

 牛馬血

鹿【一名牛】 小者大如蠅囓牛馬亦猛又南方溪澗中多

 水蛆長寸餘色黒夏末變爲螫人甚毒

 

 

あぶ   蝱【同。】 魂常〔(こんじやう)〕

 

【音、萠〔(ばう)〕。】

 

マン

 

「本綱」、木の葉の中より出でて、葉を卷き、子のごとくして、形、圓く葉の上に著〔(つ)〕く。之れを破れば、初〔め〕出〔づるに〕白〔き〕蛆のごとし。漸〔(やうや)〕く大にして、子、化〔し〕、折破〔(せつぱ)〕して、便〔(すなは)〕ち、飛び、卽ち、能く牛馬の血を(す)ふ。之れを「木〔(もくばう)〕」と謂ふ。

〔(ひばう)〕【「蜚」は「飛」なり。】 木より小さく、蜜蜂のごとく、腹、凹(なかくぼ)に褊(ひらた)く、微〔かに〕黃綠色。能く飛び牛馬の血をふ。

鹿〔(ろくばう)〕【一名、「牛〔(ぎうばう)〕」。】 小さき者、大いさ、蠅のごとく、牛馬を囓むこと、亦、猛し。又、南方、溪澗(たに)の中に、水蛆〔(すいしよ)〕、多し。長さ寸餘、色、黒。夏の末、變じてと爲り、人を螫〔(さ)〕す。甚だ、毒あり。

 

[やぶちゃん注:現在、広義には双翅(ハエ)目短角(ハエ)亜目 Brachycera のミズアブ下目 Stratiomyomorpha・キアブ下目 Xylophagomorpha・アブ下目 Tabanomorpha 及びハエ下目 Muscomorpha の中の一部を指す。実際には、これらの中で人や獣類を刺して吸血するアブ(吸血するのは総て)は凡そ三十種である。因みに、吸血性のハエ類は本邦ではハエ下目 Muscoidea 上科イエバエ科イエバエ亜科サシバエ族サシバエ属サシバエ Stomoxys calcitrans・イエバエ科イエバエ亜科サシバエ族ノサシバエ属ノサシバエ Haematobia irritans の二種である(私の愛読書である学研の「危険・有毒生物」(二〇〇三年刊)の記載に拠る)。

 

「木の葉の中より出でて、葉を卷き、子のごとくして、形、圓く葉の上に著〔(つ)〕く」この時珍の叙述は葉を巻いて蛆虫のような形に成して、それが子となると読めてしまい、トンデモ化生説のように読めてしまうが、「著く」がミソで、これはそこに産卵して附着させるという謂いとも読める。なお、後に「水蛆」とあるようにアブ類の幼生は水棲のものも多い。

「初〔め〕出〔づるに〕白〔き〕蛆のごとし」アブ類の幼虫は画像検索をかけると判るが、かなり特異な形状を成すものが多い。中でも既に出た蟲部 天漿子し)(双翅(ハエ)目短角(ハエ)亜目ハエ下目ハナアブ上科ハナアブ科ナミハナアブ亜科ナミハナアブ族 Eristalini に属するナミハアナブ類の幼虫で、通称「尾長蛆」と呼ばれるもの)が尾を持っていて面白い。

「折破〔(せつぱ)〕」完全変態の一過程であるところの脱皮・羽化。

「能く牛馬の血を(す)ふ」人獣類を襲って吸血する種は、アブ下目アブ上科アブ科アブ亜科ツナギアブ属イヨシロオビアブ Hirosia iyoensis・アブ属キンイロアブTabanus sapporoensis・アブ属ウシアブ Tabanus trigonus ・アブ属ヤマトアブ Tabanus rufidens・ニッポンシロフアブ Tabanus nipponicus 及びスズメバチ類にそっくりなアブ属アカウシアブ Tabanus chrysurus やアブ亜科ゴマフアブ属ゴマフアブ Haematopota pluvialis等が代表格であろう。イヨシロオビアブは「オロロ」(刺された時のうろたえるさまを形容する名らしい)とも呼称し、私は栃木県日光市川俣の加仁湯の露天の休憩所で蠅叩きを用いて多量に叩き殺し、湯守の方からコップ酒一杯を献呈された経験がある(譚海 卷之一 羽州深山つなぎ蟲の事の「つなぎむし」というのも恐らくそれである)。ウシアブは土中や水田にいる幼虫も人を刺す。なお、調べてみると、刺されて最も痛いのはアカウシアブのようである。

「木〔(もくばう)〕」時珍の記載なので、軽々に同定は出来ない。良安は略しているが、「本草綱目」の以上の記載は「集解」の中の陳蔵器の見解部分で、最初の「別録」という所からの引用では『生漢中川澤』とあって、この記載だと、幼虫は水棲となり、食い違うことになる。

「蜚〔(ひばう)〕」先に示したキンイロアブ Tabanus sapporoensis が形態的には近い。

「鹿〔(ろくばう)〕」「「牛〔(ぎうばう)〕」名前からは前掲のウシアブ Tabanus trigonus に比定したくはなるが、寧ろ、「小さき者」で「蠅のごとく」とすれば、やはり前掲した狭義のハエの一種で無数に牛馬にとりつくサシバエ Stomoxys calcitrans やノサシバエ Haematobia irritans のを挙げたくなる。後者は画像で見たが、その群がり方は半端なく強烈である。

「南方、溪澗(たに)の中に、水蛆〔(すいしよ)〕、多し。長さ寸餘、色、黒。夏の末、變じてと爲り、人を螫〔(さ)〕す。甚だ、毒あり」不詳。]

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