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2017/10/27

トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 砂時計


Sunadokei

   砂時計

 

 日は次いで流れる。慌しく、變化なく、跡もなく。

 思へば怖しい生の流れの早さ。ひたすらに、聲もなく、瀧瀨にかかる川水のやう。

 生の點滴は坦(なだ)らに間(ま)を刻んで、死神が骨の手に持つ漏刻の、砂のやう。

 四圍(めぐり)に逼る夜闇のなか、私が寢床に橫はるとき、流れ去る生の微かなさやめきは、耳について離れない。

 私は生を惜しまぬ。また、殘僅かな業(わざ)の力も惜みはせぬ。ただ惱ましい。

 まざまざと私は見る。枕邊に凝然と動かぬものの影が、片手には砂時計を、殘る手は私の心臟に當てがふのを。……

 胸は鳴る、心臟は戰く。最後の鼓動を、急いで打たうとするやうに。

            一八七八年十二月

 

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