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2017/10/06

和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 度古(こうがいびる)


Kougaibiru

どこ   土蟲

度古

 

トウクウ

 

本綱此蟲無足如一條衣帶長四五寸大者一尺身扁似

韭葉背上有黃黒襉其頭如鏟子行處有白涎生濕地稍

觸卽斷常趁蚓掩之則蚓化爲水有毒雞食之輙死

△按度舌形似笄故俗名笄蛭【加宇加伊比留】蓋蛭之屬也

 

 

どこ   土蟲

度古

 

トウクウ

 

「本綱」、此の蟲、足、無し。一條の衣帶のごとし。長さ、四、五寸。大なる者、一尺。身、扁にして韭(にら)の葉に似る。背の上、黃黒の襉(ひだ)有り。其の頭、鏟子〔(じふのう)〕のごとし。行く處、白き涎(よだれ)有り。濕地に生ず。稍〔(やや)〕、觸るれば、卽ち、斷(きれ)る。常に蚓(みゝづ)を趁(を)ふ。之れを掩〔(おほ)〕へば、則ち、蚓、化して水と爲る。毒、有り。雞、之れを食へば、輙〔(すなは)〕ち、死す。

△按ずるに、度舌は、形、笄〔(かうがい)〕に似る。故に、俗、「笄蛭(かうがいひる)」と名づく【「加宇加伊比留」。】蓋し、蛭の屬なり。

 

[やぶちゃん注:扁形動物門 Platyhelminthes 渦虫(ウズムシ)綱 Turbellaria 三岐腸(ウズムシ)目 Tricladida 陸生三岐腸(コウガイビル)亜目 Terricola に属する種群。或いはコウガイビル科 Bipaliidae コウガイビル属 Bipalium のコウガイビル類で、「本草綱目」の指示するのは、間違いなく、コウガイビル属オオミスジコウガイビル Bipalium nobile である。但し、本種は現代の外来種(中国南部原産。体長は50cmから1mと非常に大型で、背面が淡黄褐色でそこに縦に細く三本の線があり、腹面には二本の縦線を持つ。この背面の特徴が本文とよく一致する。本文のそれは体長が短く感じはするが、実際には身体長は異様に伸縮する生物であるから、私は特に気にしていない。本種は異様な長さから、奇怪未確認生物の烙印を押されて、しばしば話題に上ぼる)であるから、良安が言う場合のそれは、コウガイビル属クロイロコウガイビル Bipalium fuscatum あたりと思われる。ウィキの「コウガイビル」によれば、『往々にして数十cmを超える陸上動物で、外見的に扇形の頭を持つ。名前にヒルとあるが、環形動物に属するヒルとは異なる動物である』(下線やぶちゃん。以下、同じ。この部分は非常に大事なんですよ、良安先生!)。『コウガイビルは、陸上の湿ったところに生息する紐状の動物で、頭部は半月形である。「コウガイ」は、昔の女性の髪飾りである笄(こうがい)』(「髪かき」の意味で、中国では簪(かんざし)と同一であった。男子の笄は、小刀や短刀の鞘に差して、髪の乱れを整えるのに用いた。平安時代初期、女性に「笄始め」の儀式が定められ、後期には棒の形になったことが「類聚雑要抄」から知られる。室町時代には三味線の撥(ばち)の形になり、江戸時代に女子の結髪が盛んになると、棒状の笄を横に挿すようになり、後には反りのあるもの,頭の左右で抜き差しの出来るもの。耳掻きのついたものなどが生まれ、髪飾りの一つとして使用された。材質は象牙・鼈甲・木・竹・銀・ガラス・馬や鯨の骨など、多種に亙り、珍しいものでは鶴の脛骨製のものや、蒔絵を施した装飾的なものも製作された。ここは「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)『に頭部の形を見立てたものである。環形動物のヒルに比べ』、『筋肉や神経系の発達が劣るため、運動はゆっくりとしており、ゆるゆると這うだけである。種数は日本に数種以上が生息しているとされるが、詳細は不明である。扁形動物門渦虫綱に属するものは』、渦虫(ウズムシ)綱多岐腸(ヒラムシ)目 Polycladida ヒラムシ類(海産。岩の表面などで棲息域とし、這って生活するが、一部には寄生種もいる。体は名前の通り、扁平で、表面は粘液で覆われている。頭部背面には触角のような突起を持つ種もいる)や生物の「再生」の授業でお馴染みのプラナリア(Planaria:英語:扁形動物門渦虫(ウズムシ)綱三岐腸(ウズムシ)目 Tricladida に属する種群の総称。Planaria は「平たい面」を意味するラテン語planariusに由来し、plain「平原」やplane「平面」と語源が共通である)など、その殆んどは『海産または淡水産であり、陸上生活のものはこの仲間以外にはほとんどない』。『コウガイビルは雌雄同体とされ、体の大きさは長さが10cmから30cm、場合によっては1mを越えるのに対し、幅は大きくても1cmを越えない。厚みは数mmであり、平たく細長い体をしている。体の端部のうち』、『扇形に広がっている方が頭部で、頭部には肉眼で見えない眼点が多数存在する。近縁のものには頭部が広がらないものもある。体の中央腹面に肛門を兼用する口がある。消化管は口から体の前後方向へと分岐しながら伸び、それぞれの先で袋状に終わる。表面は粘液に覆われ、触るとくっつく感じがしたり、体の一部がちぎれて』、『まとわり付く場合もある。自切に似た機能を持ち、たとえば』、『体を針で刺されて地面などに固定されると』、『即座に針によって空けられた穴を自ら拡大、解放して針による固定から逃れることができる。プラナリア同様に再生能力が高く、開いた穴や切られた部分は後日』、『再生する』。『陸棲ではあるが、ミミズやナメクジ以上に乾燥に弱いので、湿った土壌や石の下、朽ち木の中などにおり、夜間に湿った所を徘徊する。肉食であり、ミミズやナメクジ、カタツムリなどを捕食する。捕まえた獲物に体全体で巻きついて腹面の口から吻を伸ばし、肉を消化しつつ飲み込む』。『人間にとって身近な場所に棲んでいて、畑地の周辺で石をめくればとぐろを巻くような形で休んでいる個体を見つけることができる。また、オオミスジコウガイビルは都会地の公園などに出没する』とある。私は山歩きでしばしば見かけた。驚くほど、長かった。ある時はまさに真正のヒルに尾部から丸呑みされる様を、ある種の悲哀を感じながら、見入っていたことがあった。無論、そのコウガイビルは僕自身を感じさせたのである。

 

「度古(どこ)」私は勝手にこれは、形から「仏具(元は古代インドの武具)の独鈷(とっこ)とだろう」なんどと勝手に思っていたのであるが、安易に「度」を「獨」に音通させてはいけないようだし、そもそも孰れも尖った独鈷とコウガイビルに形は実は似てない(色はそこそこ)ことに気づいた。はたと困ったところが、恐るべきページを発見した。サイト「Gen-yu's Files」のDr. Masaharu Kawakatsu 氏の「本草書の中のコウガイビル」だッツ! この考証は凄い! 内容はリンク先をお読み戴くとして、結論から言うと、李時珍は「本草綱目」で『土蟲と土蠱は違う、蔵器のいう土蟲は本当は土蠱即ち度古( = コウガイビル) だ、と言ってるようです。これが正しいのかどうかは不明ですが、いずれにせよ、どうも本草拾遺がルーツで、その後いろいろ微妙に変化した情報が伝わっていったようです』とされている部分に注目した。則ち、「度古(どこ)」は元「土蠱(どこ)」だったという説である! この二つの熟語は現代中国語でも音がほぼ一致する。しかも「蠱」は咒(まじな)いに用いる特殊な虫類(中国本草で言う広義のそれ)である。異様に長い、異様な頭をした、針で刺しても抜け出る、バラバラにしても生きているそれは、まさに「蠱」術に相応しい蠱の「蟲」ではないか?! と、独り、膝を叩いたのであった。
 
「韭(にら)」単子葉植物綱キジカクシ目ヒガンバナ科ネギ属ニラ
Allium tuberosum。言わずもがな、あの食べる「にら」である。

「襉(ひだ)」襞(ひだ)。

「鏟子〔(じふのう)〕」私の当て訓。「十能(じゅうのう)」は炭火を入れて持ち運ぶ道具で、通常は金属製の容器に木の柄をつけたものを指すが、現在のスコップのような形のものもあった。ここはそれをイメージして貰いたいのである。実際、現代中国語でも「鏟子」(音写:チァンズゥ)は「シャベル」を指す。

「白き涎(よだれ)」体表全体にを覆っている粘液。冒頭注引用を参照。

「稍〔(やや)〕、觸るれば、卽ち、斷(きれ)る」ちょっと触れるだけで、たちまち、千切れてしまう。冒頭注引用を参照。

「蚓(みゝづ)」蚯蚓(みみず)。前の引用にある通り、彼らが好む捕食対象の一つ。

「趁(を)ふ」追い続ける。この漢字(音「チン」)は「前の人にぴったりとついて追うこと」を意味する。

「之れを掩〔(おほ)〕へば」蚯蚓に覆い被さると。

「毒、有り」コウガイビルの体液に毒性があるという話は、今のところ、聞かない。

「雞、之れを食へば、輙〔(すなは)〕ち、死す」同前。

「笄〔(かうがい)〕」冒頭注の太線下線部を参照のこと。

「笄蛭(かうがいひる)」後の漢字表記から清音「ひ」とした。

「蛭の屬なり」ダメ押しです、良安先生、全然、明後日の、別な生物です!

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