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2017/10/27

和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 水馬(かつをむし)


Amenbo

かつをむし 水黽

      【俗云鰹蟲

       又云鹽賣】

水馬

 

しほうり

 

本綱水馬羣游水上水涸卽飛長寸許四脚非海馬之水

馬也有毒殺雞犬

五雜組云水馬逆流水而躍水日奔流而步不移尺寸兒

童捕之輙四散奔迸惟嗜蠅以髮繋蠅餌之則擒抱不脱

釣至案几而不知

△按水馬處處池川皆有頭尾尖兩髭曲高脚長身其色

 赤黑而似鰹脯故曰鰹蟲小兒以蠅之釣也和漢相同

 此蟲有酒氣以爲異人唾吐着之輙蟲如醉稍醒則復

 弄水

――――――――――――――――――――――

一種有水蠆 能變蜻蜒本初蜻蜒生卵於水際成水蠆

 還成蜻蜒【詳于蜻蜒下】

 

 

かつをむし 水黽〔(すいばう)〕

      【俗に「鰹蟲(かつをむし)」と云ひ、

       又、「鹽賣(しほうり)」と云ふ。】

水馬

 

しほうり

 

「本綱」、水馬は水上に羣游す。水、涸れり〔→るれば〕、卽ち、飛ぶ。長さ、寸許り。四つ脚。海馬(たつのおとしご)の水馬に非ず。毒、有りて、雞・犬を殺す。

「五雜組」に云はく、『水馬、流水に逆らひて、水に躍り、日に奔流して、步むこと、尺寸を移らず。兒童、之れを捕るに輙〔(すなは)〕ち、四散・奔迸〔(ほんはう)〕す。惟だ、蠅を嗜〔(す)〕く。髮を以つて蠅を繋ぎ、之れを餌〔とすれば〕、則ち、擒(と)り、抱きて、釣〔(つりいと)〕を脱せず。案-几(つくへ)に至りても、知らず。

△按ずるに、水馬、處處の池川に、皆、有り。頭尾、尖り、兩髭〔(ひげ)〕、曲り、高き脚、長き身、其の色、赤黑にして鰹脯(かつをぶし)に似る。故に「鰹蟲」と曰ふ。小兒、蠅を以つて之れを釣ることや、和漢、相ひ同じ。此の蟲、酒の氣(かざ)、有り。以つて異と爲す。人、唾(つばき)吐きて之れに着くれば、輙ち、蟲、醉ふがごとし。稍〔(しばら)〕く〔して〕醒むれば、則ち、復た、水に弄〔(はし)〕る。

――――――――――――――――――――――

一種、「水蠆〔(たいこむし)〕」有り。 能く蜻蜒(とんばう)に變ず。本〔(もと)〕、初〔め〕にして、蜻蜒、卵を水際に生〔(うみ)な〕して、水蠆と成り、還(ま)た、蜻蜒と成る【「蜻蜒」の下に詳〔(くは)〕し。】

 

[やぶちゃん注:主節部分は節足動物門 Arthropoda昆虫綱 Insecta 半翅(カメムシ)目 Hemiptera 異翅(カメムシ)亜目アメンボ下目アメンボ上科アメンボ科 Gerridae のアメンボ類。本邦で最も普通に見られるのはアメンボ(ナミアメンボ)Aquarius paludum である。アメンボは「飴ん棒(ぼう)」の約で「棒」は体幹は細長いことからで、「飴」は人が捕えた際、カメムシの仲間であるからして、臭腺から臭いを発するのであるが、それが焦げた飴のような臭いに感じられるからという。実は私は嗅いだことがないので、事実そうかどうかは知らないので「という」としておく。なお、印象からは想像し難いのであるが、アメンボは肉食で、餌は水面に落ちてしまった昆虫などに針状の口吻を挿して体液を吸って栄養としている。

 

「水黽〔(すいばう)〕」「黽」は蛙・青蛙の意。中脚と後脚を四足に擬えたものであろうが、似ているとは思えない。現代中国音ならば「シゥイミィン」或いは「シェイミィン」か。

「鹽賣(しほうり)」確かに本邦のアメンボの異称であるが、由来は不詳。スマートな体幹を塩売りの天秤棒に譬えたものか? ただ、「飴ん棒」の異称の対局性が気になる。臭いは飴売りだが、姿は塩売りという洒落かも知れないと、ふと思った。

「しほうり」中国音ではなく、異名がその位置に配されてあるのは特異点。

「水、涸れり〔るれば〕、卽ち、飛ぶ」「れり」では繋がりが悪いのでかく言い代えを添えた。アメンボの殆んどの種は飛翔能力を持ち、現在いる水溜まりが干乾びかけると、飛んで、別の水辺に移動をする。他にも繁殖時や越冬のため、或いは、現在位置では餌が得られなくなりそうになると、飛ぶことがある。但し、飛んでいるアメンボを実際に見ることは必ずしも多くない。私も画像で見たことがあるだけである。 

「四つ脚」無論、昆虫であるから三対六脚である。ただ、アメンボの場合、身体を水上に浮かせて支える有意に長い、中脚と後脚が極めて近接して存在するのに対して、前脚は頭部近くに有意に離れてあって、しかも短い。それを無視したか、それを顎の一部とでもとったか、或いはまた、後脚を腹部端にある鋏と錯覚したものかも知れない。さらに言えば、その「顎」や「鋏」に「毒、有りて、雞・犬を殺す」と錯覚したものかも知れぬ。無論、アメンボに毒など、ない。

「海馬(たつのおとしご)の水馬」海産魚類であるトゲウオ目 Gasterosteiformesヨウジウオ亜目 Syngnathoideiヨウジウオ科 Syngnathidaeタツノオトシゴ亜科 Hippocampinaeタツノオトシゴ属 Hippocampus のタツノオトシゴ類。私の電子化注「和漢三才圖會 卷第五十一 魚類 江海無鱗魚」の「海馬」の項を参照されたい。

 

「水馬、流水に逆らひて水に躍り、日に奔流して、步むこと、尺寸を移らず」これはアメンボが水上に脚を使って器用に浮いてスイッスイッと走る(脚に生えた細かな毛の水面張力によって滑走している)のを見て、流れに逆らっているように見え、水の上で躍り上りっているように見え、常に流れに逆らっているのであれば、一日経っても、殆んど同じ位置に居続けている(そんなことは実際にはないが)ように見え、さればこそ一日で三十センチどころか、三センチも動かない、と見たのである。

「奔迸〔(ほんはう)〕」素早く走り逃げること。

「擒(と)り」「獲り」。

「釣〔(つりいと)〕」髪の毛製の釣り糸。を脱せず。

「案-几(つくへ)」「机(つくゑ)」。陸の、家屋内の机。

「鰹脯(かつをぶし)」「鰹節」。

「酒の氣(かざ)」甘い酒のような匂い。

「人、唾(つばき)吐きて之れに着くれば、輙ち、蟲、醉ふがごとし。稍〔(しばら)〕く〔して〕醒むれば、則ち、復た、水に弄〔(はし)〕る」やったことがない。何時か、やってみようとは思う。

「水蠆」トンボ(「蜻蜒(とんばう)」)の幼虫のヤゴのこと。

『「蜻蜒」の下』先行するトンボの項名は蜻蛉ばう)。「蜻蜒」はその異名の一つとして挙がっている。但し、それよりなにより、その「蜻蛉」の次に独立て「水蠆たいし)があのだから、ここはこちらへの「見よ割注」とすべきところである。]

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