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2017/10/25

トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) われ行きぬ


Watasihatakaiyama

   われ行きぬ

 

 われ行きぬ高嶺のあひを

 谿のみち淸きながれを……

 まながひに見ゆるものみな

 ささやくはただ一つこと

 人ありてこの身を戀ふと

 そのほかはなべて忘れぬ

 

 靑ぞらはかがやき滿ちて

 葉のそよぎ小鳥のうたや

 ゆきかひのしげきわた雲

 ながれては行方しらじら……

 澤(さは)なれやここのさひはひ

 さはれうれなに羨まむ

 

 わだつみの波もさながら

 身は搖るる波のひろびろ

 哀樂をとほく離(さ)かれる

 しづもりに胸もはろばろ……

 いつしかはわれ忘られて

 おもへらくこの世の王(きみ)と

 

 などとくに命たえせぬ

 などふたり生(せい)をつなげる……

 年かはり星にうつれど

 あだめけるかの佳きときに

 いやまさる幸(さち)もひかりも

 消(け)ぬ雲と絶えてあるなく

 

            一八七八年十一月

 

[やぶちゃん注:全体が一字下げであること、最後のクレジットの前が一行空いていることは底本のママである。文語定型詩としては美しいが、訳として達意であるかどうかは、やや疑問が残る。以下に、中山省三郎達意を掲げておく。

   *

 

  私は高い山々の間を行くのであつた

 

 私は高い山々の間を、淸らかな河のほとりを

 谷から谷へと行くのであつた……

 瞳に映るありとあらゆるものは、

 ただひとつのことを私に語る。

 自分は愛されてゐた、愛されてゐた、この私は!

 私はほかのことを忘れはててゐた!

 

 空は高く光り、

 葉はそよぎ、鳥は歌ふ……

 雲は嬉々としていづくともなしに

 つぎつぎに飛びわたり……

 あたりのものは何もかもめぐみにあふれ、

 しかも心はめぐみに不自由はしなかつたのだ。

 

 波ははこぶ、私をはこぶ、

 海の波のやうに寄せてくる波!

 こころにはただ靜寂があつた、

 喜びや悲しみを越えて……

 やうやくにして心に思ふ、

 この世はみな私のものであつた! と。

 

 かかる時に私はどうして死ななかつたのか、

 さうしてふたり何ゆゑに生きて來たのか、

 歳月(としつき)は遠くうつる、……うつろふ月日(つきひ)

 さうしてあの愚かしくめぐまれた日にもまして、

 何ひとつとして甘美(うるは)しく明るい日を

 與へてはくれなかつたのだ!

 

   *]

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