フォト

カテゴリー

サイト増設コンテンツ及びブログ掲載の特異点テクスト等一覧(2008年1月以降)

The Picture of Dorian Gray

  • Sans Souci
    畢竟惨めなる自身の肖像

Alice's Adventures in Wonderland

  • ふぅむ♡
    僕の三女アリスのアルバム

忘れ得ぬ人々:写真版

  • 縄文の母子像 後影
    ブログ・カテゴリの「忘れ得ぬ人々」の写真版

Exlibris Puer Eternus

  • 吾輩ハ僕ノ頗ル氣ニ入ツタ教ヘ子ノ猫デアル
    僕が立ち止まって振り向いた君のArt

SCULPTING IN TIME

  • 熊野波速玉大社牛王符
    写真帖とコレクションから

Pierre Bonnard Histoires Naturelles

  • 樹々の一家   Une famille d'arbres
    Jules Renard “Histoires Naturelles”の全挿絵 岸田国士訳本文は以下 http://yab.o.oo7.jp/haku.html

僕の視線の中のCaspar David Friedrich

  • 海辺の月の出(部分)
    1996年ドイツにて撮影

シリエトク日記写真版

  • 地の涯の岬
    2010年8月1日~5日の知床旅情(2010年8月8日~16日のブログ「シリエトク日記」他全18篇を参照されたい)

氷國絶佳瀧篇

  • Gullfoss
    2008年8月9日~18日のアイスランド瀧紀行(2008年8月19日~21日のブログ「氷國絶佳」全11篇を参照されたい)

Air de Tasmania

  • タスマニアの幸せなコバヤシチヨジ
    2007年12月23~30日 タスマニアにて (2008年1月1日及び2日のブログ「タスマニア紀行」全8篇を参照されたい)

僕の見た三丁目の夕日

  • blog-2007-7-29
    遠き日の僕の絵日記から
無料ブログはココログ

« トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 髑髏 | トップページ | トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 薔薇 »

2017/10/05

トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 勞働者と白い手の人――對話


Zatrueki

   勞働者と白い手の人

          ――對話

 

 勞働者 なんだつて其處をうろうろするんだ。何か用かい、仲間でない奴にあ、出て行つて貰はう。

 白い手の人 仲間だよ、兄弟。

 勞働者 仲間だと? こりや大笑ひだ。まあ俺の手を拜んでみろ。ほれ、眞黑ぢやないか。肥(こえ)やタールの臭ひがするだらう。ところでお前のはどうだ。その生白い奴は、一體なんの臭ひがするんだ。

 白い手の人(手を伸べる) 嗅いでみたまへ。

 勞働者(嗅ぐ) こりや妙だぜ。鐡氣(かなけ)くせえや。

 白い手の人 鐡の臭ひさ。まる六年、手錠を嵌めてゐたのだ。

 勞働者 そりや又、どうして。

 白い手の人 君たちのためを思へばこそさ。君たち無智な惨めな連中を、自由の身にして上げたいばかりに、君たちの壓制者に齒向つたのさ。謀叛をやつたのさ。それで投(ぶ)ち込まれた。

 勞働者 ぶち込まれたのか。へん、餘計な眞似をするからよ。

 

   二年後

 

 同じ勞働者(もう一人に) おい、ペー公。一昨年(をととし)の夏、なんだか色の生白い奴が、俺たちと話をして行つたのを覺えてるかい。

 第二の勞働者 覺えてるさ。それがどうした。

 第一の勞働者 彼奴、いよいよ今日絞められるんだぜ。お布令が出た。

 第二の勞働者 やつばり謀叛だな。

 第一の勞働者 やつばり謀叛だ。

 第二の勞働者 ふうん。……おい、ミー公。彼奴の絞められる繩のきれつ端が、なんとか手に這入らないかなあ。どえらい福の神が舞ひ込むつて話だぜ。

 第一の勞働者 違ひねえ、ペー公。ひとつやつて見ようぜ。

             一八七八年四月

 

[やぶちゃん注:「彼奴」「きやつ(きゃつ)」。

「お布令」「おふれ」と読んでいよう。お触れ。

「彼奴の絞められる繩のきれつ端が、なんとか手に這入らないかなあ。どえらい福の神が舞ひ込むつて話だぜ」これは西洋の古い民俗的な迷信を皮肉に用いたのであろう(それが呪力を持つというのはしばしば聴いた)。私はこの一篇を読むと自然、処刑される革命家の人肉饅頭を食べさせられる肺病病みの少年を描いた魯迅の凄絶な名篇「薬」が思い出されてならないのである。]

« トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 髑髏 | トップページ | トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 薔薇 »