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2017/10/25

トゥルゲーネフ「散文詩」全篇 神西清個人訳(第一次改訳) 長蟲


Hatyu

   長蟲

 

 長蟲の兩斷されたのを見た。自ら漏らす血膿と粘液に塗(まみ)れて身をのた打ち、引攣るやうに鎌首をもたげて舌を吐く。未だに脅喝を歇めないが、それにもう力は無かつた。

 また、侮蔑にいきり立つ駄作家の雜文を讀んだ。

 己れの吐散す唾に咽せかえり、自分の漏らす毒膿に塗れて、やはり輾轉とのた打ち𢌞つた。稍〻もすれば、請ふ決鬪の庭に相見えよう、白刄の下に恥を雪がうと口走つてゐた。――ありもせぬ恥を。

 私は思い出した。兩斷された長蟲が汚辱の舌を吐くさまを。

             一八七八年五月

 

[やぶちゃん注:一九五八年岩波文庫刊の神西清・池田健太郎訳「散文詩」版の注には以下のようにある。

   《引用開始》

長虫 この一軍編は、当時の反動的ジャーナリストであるマルケーヴィチ B. Markevichを諷している。彼のことは『処女地』にも触れてある。

   《引用終了》

「マルケーヴィチ」はロシアの作家・文芸評論家でジャーナリストであったボレスラフ・マルケビッチ Болеслав Михайлович Маркевич(一八二二年~一八八四年:ラテン文字転写:Boleslav Mikhailovich Markevich)。英語版ウィキの彼の記載を見られたい。]

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